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■2009/09/22 (Tue)
シリーズアニメ■
前巻までのあらすじ(第13集より)
三次のあと
原作170話 昭和84年2月10日掲載
原作170話 昭和84年2月10日掲載
臼井影郎は下足箱を前にして、手と足を止めた。蓋を開けたそこにあるのは、いったい――。
「開けなければ、いいと思うよ」
風浦可符香が現れ、臼井に優しく微笑みかけた。
「開けさえしなければ、チョコをもらえている臼井くんと、もらえていない臼井くんが同時に存在する、並行世界が続くんだよ」
死ぬかもしれない猫に箱をかぶせておく。するとその箱の中では、生きている猫と死んでいる猫の二つの世界が並行して存在することになる。
臼井は自分の下足箱をガムテープでべたべたに貼り付けて封印する。
今時、下足箱にチョコを入れるのかという行為については置いておくとして、開けなければ幸せな箱は事実存在する。
物事、蓋を開けてみるまでわからない。逆に開けさえしなければ、無限の可能性を持ち続けることができるのだ。
唐突に現れる、明らかに学校の部外者と見られる中年の男性。その頭に、箱をかぶせている。
「シュレディンガーの“デコ”です。昔、生え際がちょっときちゃったかなって時にこの箱を被ったのです。箱さえ開けなければ――まだ生えている自分も並行世界に存在しうるのです!」
教室に行くと、クラスの全員が揃っていた。
奈美が早々に考えを放棄して微笑んだ。
それをうしろからじーっと見ているあびる。
「奈美ちゃん、太った?」
「太ってないわよ!」
「そんな日塔さんには、これを。シュレディンガーの体重計です」
目盛部分に箱をかぶせた体重計。これならば、可能性として太っている日塔奈美と、太っていない日塔奈美が同時に存在し続けることができる。
箱さえ開けなければ、あらゆる可能性は同時に存在し続ける。
例えば、選挙の投票箱は開けなければ当選している自分と落選している自分が同時に存在し続けられる。
例えば、1週間放置したお弁当箱は、開けなければ奇跡的にまだ食べられる弁当と、新しい生命が誕生しちゃっているお弁当が同時に存在し続けられる。
可能性は多様に、どこまでも広がっていくのだ。
企画/スタッフ/予算/スケジュール/出来映え/売り上げ
絵コンテ・演出:鎌田裕輔 作画監督:北崎正浩 色指定:森綾 制作協力:虫プロダクション
葬られそこねた秘密
原作178話 昭和84年4月22日掲載
原作178話 昭和84年4月22日掲載
「困った」
困惑の糸色望。
「どうする?」
答えの見付からない小節あびる。
思考を放棄する日塔奈美。
テニスコートの中央。そこに円筒形の鉄の物体が突き刺さり、周囲の土を抉り取っている。衝撃で吹っ飛んだらしい土の下から、薄く白い煙が吹き上がっていた。
「これって、あれだよね? ニュースでやってた、ミサ……」
あびるが決定的なそれを口にする前に、望が遮った。
「報道では列島を飛び越えたって言ってませんでした?」
千里が茫然と円筒形の物体を見ている。
「実は迎撃に失敗して落ちたんじゃ……」
まといが望の背後から、懸念を囁きかけた。
「まさか……」
ま
ならば、なぜここにある?
「迎撃に失敗して落ちてたと報道されているのに、ここに存在している――」
「これは、超国家機密じゃないの?」
「政府はこの存在を何がなんでも隠したいはず!」
少女達が思考をまとめるように言葉を重ねていった。
「国家機密を知ったら、消されるナ」
全員が沈黙した。
誰もがまさかと思い、同時にもしやと疑い否定しきれない事態が起きてしまった。
「そ、そうだ。先にマスコミを呼んで、報道してもらおうよ。そうすれば、国も下手に手出しできなくなるはずよ」
奈美が顔を青ざめさせながら、解決策を提案する。
しかし、誰の顔にも希望は戻らなかった。
「マスコミ? マスコミなんて信用できると思う? マスコミはいつも私たちのお友達みたいな顔をしている。けど、実体は政治的デマゴギーの協力者じゃない。そのマスコミが列島を飛び越えたと報道しているのよ。私たちの立場を守ってくれると思う? マスコミが?」
まといが冷静な答えを告げた。
真っ先に望がぷいっと目を背けた。
「私も見ていない」
奈美も顔を背けた。
さらに木村カエレも。
「ちょっと、見て見ぬフリして放置するのも問題よ! このまま放っておくと――、爆発オチの可能性があるわよ。」
千里の警告。
国家よりも恐ろしく、漫画が避けなければならないのは、読者をがっ
こうして2のへ組絶望少女達は、爆発オチの回避と国家的陰謀を隠蔽のために、鉄の物体を隠そうと奔走を始める……。
人工衛星/が/飛んでいませんね/音楽/が/聞こえていない
絵コンテ・演出:鎌田裕輔 作画監督:田中穣 色指定:渡辺康子
原作第18集の記事へ
(※爆発オチの画像は、下の「つづき」にあります)
(※爆発オチの画像は、下の「つづき」にあります)
閉門ノススメ パート2
原作183話 昭和84年6月3日掲載
原作183話 昭和84年6月3日掲載
「ラーメン!」
勢いよく振り落とす。壁が砕けて、道が通じた。
「ラ・ア・メ・ン・ラ・ア・メ・ン」
奈美は異様に目をギラギラ輝かせながら、道を進んだ。目の前に現れる壁は破壊するべきものだとハンマーを振り上げる。今や奈美をとどめる者など誰もいなかった。
「もう、その壁の向うがラーメン店ぞ」
糸色 倫が地図を見ながら指示を与えた。
「よっしゃ!」
奈美がハンマーを振り上げる。目の前の白漆喰の壁を叩き壊した。
奈美と倫、それから時田はカウンターに並んで、ラーメンを注文した。
間もなく三人分のラーメンが並ぶ。
奈美と倫は期待を浮かべて、箸を二つに割り、麺を手繰った。麺を一口啜る。すぐにでも、「うっ」と呻き声を漏らしそうになった。
「経営者が変わって、味が変わった……」
倫が茫然と、丼に浮かぶ麺を見下ろしな
「現在の経営者は倫さまでございます」
時田が冷静に事実を突きつけた。
「とんだ、盲点」
倫ががっくりと視線を落とした。
「なに、その新作落語みたいなオチ! ああ、もうなんかガッカリ! 気晴らしに、カラオケ行こう、カラオケ!」
奈美はすぐに気分を入れ替えて、別の提案をした。
「カラオケ?」
時田が地図を広げた。
「このように買収していけば、辿り着けます」
地図には、隣り合った家を貫くように矢印が引かれ、その過程に「買収済み」の判子が押されていた。
「金のかかる級友だ」
倫は呆れるように呟くが、止める気はなかった。
と、いつの間にやら奈美の後を追うように女の子たちが従いてきていた。
「って、なんであなた達まで従いてきているの?」
奈美はようやく気付いて振り返った。小節あびるに、藤吉晴美、音無芽留、三珠真夜の4人だった。
「私たちの家もルート上にあったのよ」
あびるがクールな言葉で説明する。
「その壁の向うが待望のカラオケだ」
倫が地図を見ながら指示を与えた。
「カラオケ!」
奈美はハンマーを大きく振り上げて、力強く落とした。
「お兄様!」
「倫!」
倫に見咎められて、望は気まずそうに振り向いた。
「外出禁止ですよ!」
「そういうお前は何ですか」
望は色んなものを棚上げにやり返そうとする。
「土地の買収により、今やこの場所まで倫さまのご自宅の敷地内でございます」
「何という強引な……。だったら私はセーフです。学校に住民票を置くわけにはいかないので、書類上、倫と同じ住所なのです。あなたたちは家にいないと」
望は少し呆れた顔をするが、すぐにほっと安堵を浮かべた。今度は集ってきた少女達を見咎めるように振り向く。
あびるが“糸色家公認”と書かれた書類を見せた。原作第16集152話参照である。
そうだった、と望が表情を引き攣らせる。
「と、とにかく、これで外出禁止令を破らずどこにでも行けます」
「甘味屋さんに行きたーい!」
奈美は朗らかに手を上げた。
というわけで、ハンマー片手に次々と壁を破壊していく。そうして次の壁を破壊すると、目の前に現れたのは、学校のグランドだった。
「学校も買収したの?」
「はい。ルート上にございまして」
意外な驚きを浮かべる望に対し、時田が事務的な言葉を返した。
つまり、今この高校は『糸色高校』なのである。
一同は2のへ組教室に集合した。当然、クラスの少女達も一緒だった。彼女達は全員、糸色家が公認している
「はーい、それでは授業をはじめまーす」
望は憂鬱な顔で授業を始めた。せっかくの休日、やっかいな生徒に顔を合わせなくていいと思ったのに、この結果である。笑顔でいるのは、やはり望の嫁である木津千里だけだった。
イ/ト/セ/ズ/タ/イムリーニ
絵コンテ・演出:龍輪直征 作画監督:小林一三 色指定:石井理英子
『懺・さよなら絶望先生』第11回の記事へ
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さよなら絶望先生 シリーズ記事一覧へ
作品データ
監督:新房昭之 原作:久米田康治
副監督:龍輪直征 キャラクターデザイン・総作画監督:守岡英行
シリーズ構成:東富那子 チーフ演出:宮本幸裕 総作画監督:山村洋貴
色彩設計:滝沢いづみ 美術監督:飯島寿治 撮影監督:内村祥平
編集:関一彦 音響監督:亀山俊樹 音楽:長谷川智樹
アニメーション制作:シャフト
出演:神谷浩史 野中藍 井上麻里奈 谷井あすか 真田アサミ
〇〇〇小林ゆう 沢城みゆき 後藤邑子 新谷良子 松来未祐
〇〇〇矢島晶子 後藤沙緒里 根谷美智子 堀江由衣 斎藤千和
〇〇〇上田耀司 水島大宙 杉田智和 寺島拓篤 高垣彩陽
〇〇〇立木文彦 阿澄佳奈 中村悠一 麦人 MAEDAXR
この番組はフィクションです。実在する迎撃に失敗して落ちてきたミサイル、SONV、暗黒心中相思相愛をたまにカラオケで熱唱する神谷浩史とは一切関係ありません
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■
さのすけを探せ!
■2009/09/15 (Tue)
シリーズアニメ■
前巻までのあらすじ(第12集より)
眼鏡子の家
原作86話 昭和82年3月7日掲載
原作86話 昭和82年3月7日掲載
「おはようございます」
いつもの挨拶で教壇の前に立つ。
だけど教室中の全員が、言葉をなくしてじっと望を注目した。
「なんか、イメージ違くない?」
「あー、眼鏡!」
はじめに気づいて声をあげたのは、藤吉晴美だった。
しかしあまりにも端的で現実的でない説明に、千里が困った顔をする。
「言っている意味が、よくわかりませんが、眼鏡をなくしてしまったんですね。」
とりあえず、千里がわかったことを繋げて解釈した。
「まあ、緊急用の使い捨てコンタクトがあったので、当分コンタクトで過ごそうかと……」
望は自分の目を示した。その目が不自然な艶が加えられている。コンタクトによる反射だった。
突然、晴美が机を叩いた。
激昂した藤吉の声。教室の全員が茫然と藤吉を振り返った。
「みんなカンパよ! 先生に眼鏡を買うのよ!」
強制的な募金。教室中の全員から、持っている金を供出させる。すぐにそこそこのお金が集まった。風浦可符香が眼鏡を買いに行く役目を請け負った。
「なんでそんな色の眼鏡を、買ってきたのよ。」
千里があきれたように可符香に理由を尋ねた。
「可愛いかなぁって思って」
可符香はいつもの朗らかさで答えた。
望は眼鏡の調子を確かめるように周囲を見回す。
「不思議と度はあっているようですが……」
と千里に目を向け――、
「女子高生ってみんなパンツ売っているんでしょ。渋谷にいる女子高生はみんなエンコーしているんでしょ。巨乳はバカ。乳首黒いヤツは遊んでいる」
「なっ!」
いきなりの発言に、千里が戸惑いの声をあげる。
「先生が――物事を色眼鏡で見始めた」
望の背後に潜んでいたまといが、異変に対する答えを与えた。
物事を偏見や固定観念で観ることを、「色眼鏡で見る」と言う。例えば、
IT企業はみんな悪いことをしている。
公務員は全員働かない。
アニメは子供の見るもの。
派遣は3ヶ月でやめちゃう。
労働組合は左より。
等など。
「こんな危険な色眼鏡、どこで買ってきたの?」
と可符香がクラス一同を導いたのは、「メガネ道楽」という怪しげな眼鏡屋であった。そこでは世間に溢れるありとあらゆる「色眼鏡」が陳列されていた。
色眼鏡は時代の意識や空気を反映する。その色眼鏡をかけてしまうと、与えられた知識と意識だけで、思考力と判断力を失う。視野は限
だが、店長の鯖江はこう指摘する。
「こんな店でわざわざ買わなくとも、もう皆さんかかっているんじゃないですか? 色眼鏡」
原画マンさんはよく連絡が取れなくなる/演出さんはコンテが読めない/制作進行さんはカット袋をなくす/仕上げさんは怖い/美術さんは怖い/撮影さんは怖い
絵コンテ:高村彰 演出:信田ユウ 作画監督:鎌田仁 色指定:佐藤加奈子
制作協力:スタジオパストラル
閉門ノススメ
原作183話 昭和84年6月3日掲載
原作183話 昭和84年6月3日掲載
暇、退屈、することがない。
そろそろ昼の12時を回る。でも何となくぼんやりとしていて、外出の予定がない
テレビをつける。ちょうど「笑っていいともろう」が始まる時間だった。
面白くない。
テレビを流しながら、ソファの上に積んでいる本を手に取った。
やっぱり面白くない。
溜息とともに、言葉が漏れた。誰にするわけでもない実況的な台詞。
テレビをつけたままノートパソコンを開く。でも特別しなければならない用事はない。結局なにもせず、色んなものを付けっぱなしにしてソファのアームに後ろ頭を載せ、天井を仰ぎ見た。
「ああ、暇で死にそう。あ、そうだ。誰かに電話しよう」
奈美は名案を思いついたように携帯電話を手に取った。電話帳を呼び起こして、一番に目についた大草麻菜美にかける。
パラピロッ。
「もしもし、大草さん? いま暇?」
「ごめん。私忙しいから」
大草は奈美の話を聞かず、一方的に電話を切ってしまった。
「もう、何よ」
奈美は誰となく不満を訴える。
「決めた。カラオケに行こう!」
奈美ははっと決断すると、体を起こそうとした。
が、
パラピロッ。
「はい、もしもし」
掛けてきたのは千里だった。
「も、もちろんだよ、千里ちゃん」
千里の妙に迫力のある声に、奈美は意味もなくごまかすように声を引き攣らせた。
通話終了。でもまた、携帯がパラピロッと音を鳴らした。
「へぇーんーとぉー」
千里のぞっとするような囁き声だった。
「これじゃ恐ろしくて外出なんてできないよ!」
奈美はバタバタと両脚を振り上げた。
「ああ、退屈じゃ」
糸色倫が退屈を口にする。
「仕方ございません。家から出てはいけない決まりでございます」
「しかし、この部屋は狭すぎるぞ」
家具もそこそこの6畳の空間。しかしそれは、倫にとって窮屈な空間だった。
「ご自分で始めた貧乏ごっこのせいではありませんか」
時田はそれとなく倫を非難する。
倫は不満な顔を浮かべる。が、すぐに名案を思いつい
「そうか! 要は自宅の敷地から出なければよいのだろう」
倫は立ち上がると、すぐに思い付きを時田に伝えた。
ブルドーザーで隣家の塀が突き崩される。隣の家を買収したのだ。
倫は自分の思いつきに納得して、笑顔で頷いた。
自分の家の庭と、隣家の庭と繋げた、そこそこに広くなった空間にチェアとテーブルをおく。倫はゆったりと椅子にくつろぎ、雑誌を広げ
間もなく、テーブルの上に置いた携帯が振動した。
「ちゃんと家にいる?」
恐ろしげな千里の声だった。
「もちろんだ。ちゃんと自宅におるぞ」
倫はなんとなく後ろめたいものを感じて、声を引き攣らせてしまった。
携帯を切る。
「……嘘は言ってないよな」
「はい」
倫は時田に確認を取る。時田はしおらしく頷いて答えた。
「ふーん、近所にこんな店があったのか。ラーメン……。なあ時田。この庶民の食べ物が食べたい」
倫が時田を振り向き、希望を伝えた。
「しかし、出前はやっていないようですが」
あっさりと言葉を返される。
倫が駄々っ子のような声をあげる。
「少々お待ちを!」
時田は慌てた顔をして、その場から走り去った。
時田は必要な準備を整え、倫の元に戻ってきた。
時田が地図を広げ説明した。どこまでも連なる隣家。それを辿って行った先に、目的のラーメン屋があった。
「よし、買収しろ。行くぞ」
倫が出発の命令を下した。
ある古ぼけた木造住宅。その壁を破壊すると、向うに見覚えのある少女を見かけた。
「どうした。面白いポーズをして。新手のダイエットか?」
日塔奈美だった。奈美は尻を突き出すように倒れ、顎を畳の上に乗せていた。短いスカートがまくれ上がり、小さなヒップラインを覆う薄
「あんたがぶっ飛ばしたんでしょうが、壁ごと!」
奈美が倫を振り向き、手を振り回して怒りの声をあげた。
「ここはもう我々の敷地だ。早々に立ち去れ」
「ちょっとそれ、どういうこと? ことと次第によっちゃ、法的手段に訴
奈美は畳に両手をついて身を乗り出した。
「今は忙しいのだ。後で法務に説明させよう」
「今すぐ説明しなさいよ」
「ラーメン食べてからじゃダメか?」
「ラーメン?」
意外な言葉に、奈美はきょとんとした。
つづく
原作サイドとの/やりとりの不備で/単行本になってない/各話表紙を/まだもらえていないので/仮のサブタイトルです
絵コンテ・演出:龍輪直征 作画監督:小林一三 色指定:石井理英子
学者アゲアシドリの見た着物
原作159話 昭和83年11月5日掲載
原作159話 昭和83年11月5日掲載
「アカ倒せ! アカ倒せ!」
千里が景気のいい声をあげて足を振り上げる。千理の声にあわせて、少女達一同が足を揚げる。
きもい男子の誰かが、興奮した声をあげた。
「キモいなぁ。こんなに喰いついて。見えてもいいパンツだから、あえて足を揚げているに決まっているでしょ」
奈美は軽蔑の目で、かぶりつきで注目している男子に目を向けた。
奈美はちらと望に目を向けた。望は体育祭だというのに、パイプ椅子に座って『人間失格』の読書に夢中になっていた。奈美はそんな望を見て、軽くニヤッとした。
「センセー……」
奈美はわざとらしく太股を上げた。短いスカートがずり下がっていき、白く細い太股がするすると現れる。傷も汚れもない、陶器のようにすべらかで、それでいて絹のような柔らかいぬくもりを持った奈美の肌――。
「無視かよ、おい!」
奈美は悔しさに声をあげた。
望は本を閉じて、奈美を振り返った。
「あえて揚げ足を揚げてみせる。最近、わざわざ取られるように、上げているんじゃないかって揚げ足の多いこと……。
ファンの気をひくために、わざとパンチラをしているんじゃないかっていうアイドルとか、
非難されるのわかっていて、あえて言っているんじゃないかっていう大臣の発言、
シャラポワの付け乳首、
もうね、わざと揚げているとしか思えません!」
世の中、感心を引くために意図的に騒動を起こそうとする人がいる。例えば、
未発表の新曲がネットに流出してしまった!
「俺役。小池哲平君」
等など。
そんな、わざと取られるように揚げている揚げ足。それを取ってしまったら負けである。取られるように揚げた揚げ足は、彼ら扇動者による罠である。揚げ足を取るのは、彼らの策略に進んで陥ることだ。
特定スポーツ新聞の見出し。
“パ”の文字の欠けたパチンコ店(絶対に突っ込み待ちである!)。
揚げ足を取るリスクは非常に高い。揚げ足を取ることにより恥を掻くだけならまだいいが、場合によっては犯罪に絡む場合すらある。だから望はこう考える。
「揚げ足を取って酷い目に遭うより、進んで揚げ足を揚げる側に回りましょう!」
本/来/光/明/真/言?
絵コンテ:高村彰 演出:信田ユウ 作画監督:前田達之 色指定:渡辺康子
制作協力:スタジオパストラル
『懺・さよなら絶望先生』第10回の記事へ
『懺・さよなら絶望先生』第12回の記事へ
さよなら絶望先生 シリーズ記事一覧へ
作品データ
監督:新房昭之 原作:久米田康治
副監督:龍輪直征 キャラクターデザイン・総作画監督:守岡英行
シリーズ構成:東富那子 チーフ演出:宮本幸裕 総作画監督:山村洋貴
色彩設計:滝沢いづみ 美術監督:飯島寿治 撮影監督:内村祥平
編集:関一彦 音響監督:亀山俊樹 音楽:長谷川智樹
アニメーション制作:シャフト
出演:神谷浩史 野中藍 井上麻里奈 谷井あすか 真田アサミ
〇〇〇小林ゆう 沢城みゆき 後藤邑子 新谷良子 松来未祐
〇〇〇矢島晶子 後藤沙緒里 根谷美智子 堀江由衣 斎藤千和
〇〇〇上田耀司 水島大宙 杉田智和 寺島拓篤 高垣彩陽
〇〇〇立木文彦 阿澄佳奈 中村悠一 麦人 MAEDAXR
この番組はフィクションです。実在する福井県鯖江市、川〇三郎、バクマンとは一切関係ありません。
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さのすけを探せ!
■2009/09/08 (Tue)
シリーズアニメ■
前巻までのあらすじ(第十一集より)
腕に巻かれた茶緑の腕章に「若草四姉妹」の文字が・・・・。
クラックな卵
原作176話 昭和84年4月8日掲載
原作176話 昭和84年4月8日掲載
「卵が先か、ニワトリが先か?」
望は卵のひとつを手に取り、神妙な顔で呟いた。
それから卵を置くと、教室を出て行く。
「どちらへ?」
風浦可符香が望の後を追って、訊ねた。
「引きこもりが先か、家が先か?」
望は重大そうな口ぶりで、命題を口にした。
「家でしょう。でないと、引きこもれないって。」
しかし望は命題を引っ込めるつもりはなく、さらに深く考えるように顎に手を当てた。
「いや、そうでもないと思うんですよ。人類が家とか建てる前にも、引きこもり的な人はいたと思うんですよ。――森とか穴に」
「森に……。それは、まだずいぶんアウトドアな、引きこもりですね。」
千里は納得するというか、望の意見に呆れたような表情をした。
千里が「あっ!」とマリアを引き止めた。
「また、パンツ穿いていない。恥ずかしくないの!」
千里は怒ってマリアを嗜めようとした。
「待ってください。これにも疑問を持たざるを得ません。パンツが先か、羞恥心が先か?」
そう。世の中、卵が先かニワトリが先かのように、どちらが先なのかわからない現象がいくつもある。
利権があるから族議員が生まれるのか。
単行本を出すために雑誌に載せるのか、雑誌に載せて溜まったから単行本にまとめるのか。
地名があって企業名になったのか、企業があって地名になったのか。
明らかにどちらが先かわかっているような対象であっても、充分注意して吟味しなければならないのである。
アニメがあるからオタクが生まれるのか/オタクがいるからアニメが生まれるのか/生きていくために作品を作るのか/作品を作るために生きているのか/スケジュールが崩れているからスタッフが壊れていくのか/スタッフが壊れているから/スケジュールが崩れていくのか
絵コンテ・演出:近藤一英 作画監督:原田峰文 色指定:大谷和也 制作協力:スタジオイゼナ
君よ知るや隣の国
原作156話 昭和83年10月8日掲載
スパイ天国日本――。原作156話 昭和83年10月8日掲載
現在日本国内に潜伏する某国の工作員だけでも2万人いると言われている。日本社会を混乱に陥れるために。
列の先頭にはおばちゃんが立っていた。覗き込むと、店員の前に小銭を並べ、さらに見付からない2円をバッグの中から探ろうとする。
……ああ、もう。レジでそんなに懸命に小銭を探さなくても。後ろで大行列になっているじゃないですか。
望は苛々しながら口にできない不満を頭の中で訴える。その後ではっとした。
あのおばちゃんは、社会をちょっとした混乱に陥れている。もしや――、
「円滑な社会生活を妨害する、工作員の仕業に違いない!」
望は結論付けるように宣言した。
と望の後ろに並んだのは木津千里だった。いつも後ろについている常月まといと入れ替わる。
「ただの迷惑な人でしょう。」
千里はさらりと望の珍妙な発想を正した。
「いや、しかし実際こーして何人もの人間が足止めをくらい、経済的な損失が出ているわけですよ。日本経済を衰退させ、国家の衰退を目論んでいるのかもしれない。あのご婦人は工作員かもしれません」
しかし望はそれでも自説を曲げず、むしろ発展させた。
千里を押しのけて入れ替わったのは小節あびるだった。
先日の図書館でのできごとらしい――。
静かな図書館で、いちゃいちゃと絡み合う若者二人。
「みんな相当、集中力乱しているようでした。私はそんなに気にならなかったけど」
「図書館でいちゃいちゃするカップル……。それはもう工作員の仕業に違いありません! 日本人の学力低下を目論み、国力の弱体化を狙っているのです!」
望は危機感に震えながら、同意して頷いた。
とあびるを押しのけて日塔奈美が飛び込んできた。籠に新品のモグピープルが入っていた。
「あれも工作員の仕業ですか?」
話をはじめる奈美――。
先日の電車でのできごと。自動改札口の前では、粛々と行列が進行している。しかし、男が進行を止めてしまう。ゲートが閉じて、行列がぶつかりあってしまう。
「交通機関を麻痺するなんて。典型的な妨害工作です! 工作員の仕業に違いありません!」
望はさらに切迫した声をあげた。
いつの間にやらまた後ろに並んでいる女の子が入れ替わって、藤吉晴美が発言を始めた。
映画館にて。座席に座って映画の鑑賞をする藤吉。その手前には、スクリーンを遮らんばかりのまきまきに盛り上げたヘアスタイルのご婦人。(ああ、あるある。私のときは……また今度にしよう)
「それは日本のアニメ文化を衰退させ、親日外国人の減少させ、日本を世界から分断するのが目的です! 思い当たる節が多すぎます。円滑な日常生活を妨げる数々。そう、あれはすべて、スパイによる妨害活動に違いありません!」
望はもう動かない真実を発見したように結論付けた。
間もなく、
「次の方、どーぞー」
気付けば目の前の行列は無くなり、望が先頭になっていた。
望が購入しようとしていたのはお茶のペットボトル一つだけ。すぐに済むと思ったが――財布には1万円札しかなかった。
「店長ー、両替お願いしまーす」
両替をしている間、望の後ろにはずらずらと行列ができあがってしまう。
望は愕然とした。
――私も、工作員だったのか。
原画さんが体調を崩す/作画監督が見つからない/演出がいなくなる/総作画監督二人が化物語を手伝う/地震で海底ケーブルが断線して、データが届かない/ひだまり、ネギま!化物語と納品日が重なる
絵コンテ・演出:近藤一英 作画監督:原田峰文 色指定:大谷和也
制作協力:スタジオイゼナ
制作協力:スタジオイゼナ
ジェレミーとドラゴンの卵 パート2
原作169話 昭和84年2月4日掲載
原作169話 昭和84年2月4日掲載
いきなりやってきた訪問者に、霧は少し不機嫌そうに応じた。
「引きこもりがどこまで遠くにジャンプを買いにいけるか」
糸色倫がお題を霧に伝えた。
「これは飛距離でないでしょ。引きこもりだけに」
霧は「むかぱっ!」と怒りを表した。
「私、バーディくらいなら出せるよ!」
ちなみに規定スコアは、
〇+1(ボギー)ネットで買う
〇±0(パー)お母さんに買ってきてと言いに行く
〇-1(バーディ)近くのコンビニなら
〇-2(イーグル)駅前の本屋さん
霧は驚いて振り返った。学校全体に亀裂が入り、がらがらと崩れ始めた。
「座敷童が外に出ると、学校が滅ぶ!」
「忘れていました! 誰か止めてください!」
可符香と望が慌てて霧を学校に引き戻した。学校の崩壊はおさまった。どうやら全壊の危機を脱したようだった。引きこもり少女の外出は、中断となった。
「意外と皆さん、飛距離出ませんね」
色々なもののスコアを見て、望が呆れるように呟いた。
「お兄さまも人のこと言えなくありません。行ってらっしゃい」
倫が反論して、望を宿直室から追い出した。
説明も受けず、なんだろうと思いながら、望はとりあえず学校を離れて出かけようとした。だけど、学校の敷地から出て間もなく――。
望は慌てて宿直室に駆け戻った。
「閉めたっけ!」
「ほら、ぜんぜん飛距離でないじゃないですか」
扉を開けると、倫が待ち構えていたように言った。
望はきゅっとガスの元栓を確認した。
「確認したのでもう大丈夫です。今度は飛ばしますよ」
望は安心した笑顔を浮かべて、再び廊下に出た。
が、少しも進まないうちに――。
玄関の鍵、かけたっけ?
結局、望は学校に駆け戻ってしまった。
「ゴルフのドライバーは飛距離もさることながら、アプローチショットでどれだけそばに寄せられるかってのも醍醐味ですね」
唐突に現れて言い出す可符香。
街に繰り出し、可符香はその実例を示す。
そう、それはどこまで近所で不倫ができるか。
次は、
「凄腕の奥様。だんなの不在中に家の中まで寄せちゃいます。ナイスアプローチ!」
「それはもう、カップインしてませんか?」
ゴルフのアプローチはどれだけ寄せるか。だが、世の中には寄せてはならないアプローチショットもあるのだ。
どこまで労働基準法ぶっちぎれるか/どこまでスケジュール引っぱれるか/どれだけ睡眠時間を削れるか/どれだけ保険料を滞納できるか/どれだけ食費を削れるか/どこまでこの仕事を続けることができるのだろうか
絵コンテ:龍輪直征 演出:宮本幸裕 作画監督:小林一三 色指定:石井理英子
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作品データ
監督:新房昭之 原作:久米田康治
副監督:龍輪直征 キャラクターデザイン・総作画監督:守岡英行
シリーズ構成:東富那子 チーフ演出:宮本幸裕 総作画監督:山村洋貴
色彩設計:滝沢いづみ 美術監督:飯島寿治 撮影監督:内村祥平
編集:関一彦 音響監督:亀山俊樹 音楽:長谷川智樹
アニメーション制作:シャフト
出演:神谷浩史 野中藍 井上麻里奈 谷井あすか 真田アサミ
〇〇〇小林ゆう 沢城みゆき 後藤邑子 新谷良子 松来未祐
〇〇〇矢島晶子 後藤沙緒里 根谷美智子 堀江由衣 斎藤千和
〇〇〇上田耀司 水島大宙 杉田智和 寺島拓篤 高垣彩陽
〇〇〇立木文彦 阿澄佳奈 中村悠一 麦人 MAEDAXR
この物語はフィクションです。実在するジョン・ブルックフィールド、デビット・パピノウ、秋本康、正男とは一切関係ありません。
■
さのすけを探せ!
■2009/09/01 (Tue)
シリーズアニメ■
前巻までのあらすじ(第十集より)
尼になった急場
原作124話 昭和83年1月23日掲載
原作124話 昭和83年1月23日掲載
「急場しのぎじゃあ、学も身につかないでしょうに。」
千里は呆れる気持ちを隠さず呟いた。
糸色望の声が千里に掛けられた。千里が振り向くと、植え込みのブロック塀に望が座っていた。
「でも、急場しのぎでは根本的な解決にならないじゃないですか。」
しかし千里は、望の意見に反抗して声をあげた。
望は強い言葉で千里を諭そうとする。
ところ変わって、2のへ組教室。
「実は今日、私の誕生日なんだ」
「知ってた?」
「いや、初めて知った」
小節あびると藤吉晴美が顔を合わせる。どちらの顔も祝うといより、きょとんとした無表情だった。
「ははは、いーよ、いーよ。どうせ……」
奈美ががっかりした声をあげた。その目に、薄く涙が浮かぶ。
場を取り繕うようにあびるは言うと、教室を出て行った。すぐに戻ってきた。
「こ、これ」
あびるが持っていたのは、たった今、自動販売機で買ってきたパック
奈美の表情に、どんよりと横線が落ちる。
「ええ、どうしよう! 私も何も用意していない! ……あ」
おろおろとする晴美だったが、すぐに何か気付いたらしい。晴美は自分の鞄をごそごそと探り始める。そうして出てきたのは、漫画の単行本。しかも中途半端に第3巻。
急場しのぎのプレゼントは次から次へと集ってくる。
牛乳パックにお菓子、なんか鞄に入っていたらしい薬、折鶴、消しゴム、変な落書きが入ったモグ・ピープル……。
学校で急場しのぎで用意されたプレゼントには、切なさが漂う。
でもまだ、プレゼントを用意していない少女がいた。風浦可符香だ。
「どうしよう私は、みんなのように気のきくようなプレゼントを持ち合わせていない。そうだ。私には歌があるじゃないか!」
今のアニメに/足りないもの/それは/乱源流/つまり/大人のキャラクター
絵コンテ・演出:飯村正之 作画監督:山縣亜紀 色指定:森綾
制作協力:虫プロダクション
三十年後の正解
原作172話 昭和84年3月4日掲載
原作172話 昭和84年3月4日掲載
「あー! ここ正解なのに×が付いています!」
初めに大声をあげたのは木津千里だった。千里は望の立つ教壇の前に進み、テストを用紙を見せて抗議する。
しかし望は、言い訳もせず堂々と自説を宣言し始めた。
「はー!」
千里は当然納得がいかず、望に食って掛かろうとする。
いきなりだが、クイズ番組の始まりだった。最初の回答者は芸人達。回答席に、若手の芸人達がずらりと並んだ。
ピンポーン
「川流れ」
ブブー。
「ええー、合っているじゃない!」
千里が困惑を込めた声をあげた。
「質問の回答としてはね」
小節はあびるは淡々と千里に言葉を返した。
芸人がクイズ番組にフツーに答えてはならない。芸人にとって、クイズ番組は一種の大喜利である。
次の回答者は会社員達。出題者は会社社長である。
「キミたち。DIGOって誰の孫だか知ってる?」
ピンポーン
「竹下元首相の孫ですよね」
当り……だけどブブー。
正しい答え方はこうだ。
「存じません。流行には疎いもので。どなたか有名な方のお孫さんなんですか?」
正解だけど、正解ではない場合がある。とくに世間では、正しく答えてはならない状況は多くある。特にそれは国家においては顕著だった。
例えば「高知県足摺岬沖豊後水道周辺で領海侵犯したのはどこの国の潜水艦でしょう」
答えは「中国」
しかし、答え方としては正しくない。正しくは、
「国籍不明の潜水艦。もしくはクジラを誤認」
次の問題はある人物。「偽造パスポートで入国し、某テーマパークで遊んでいたあの中年の男は誰?」
答えは「金正男」
しかし、答え方としては正しくない。正しくは、
「もにょもにょもにょもにょ」
どんな答えでも、正しければ良いというものではない。正しい行動をとれば良いというものでもない。世の中には、正解ではない正解がいくつもあるのだ。
ツッ/コ/ン/だら/負けかなと/思っている
絵コンテ・演出:飯村正之 作画監督:田中穣 青葉たろ 岩崎安利 色指定:石井理英子
ジェレミーとドラゴンの卵
原作169話 昭和84年2月4日掲載
原作169話 昭和84年2月4日掲載
ティーイングランドに立ったのは藤吉晴美だった。ゴルフクラブを持ち、思い切りよく振りかぶる。ボールが空の青に消えた。再びグリー
「おー、凄い飛距離! ナイスショット!」
風浦可符香が元気な声をあげた。
だが例によって、糸色望の顔は淡白で暗い。
「……まあ、シロウトなんて飛距離さえ出れば、スコアボロボロでも満
「何か、言ってることが矛盾していません?」
また始まった、なんてあきれた顔を隠しながら、日塔奈美が意見をした。
「お兄様、新しいコースが完成しましたわ。皆さんをお連れして」
そういうわけで移動してきた場所は、小石川の町中だった。
一番ホールとして案内されたのは、独身男性の一人部屋。散らかった部屋に、ジャージ姿の男性が退屈そうにベッドの角にもたれかかっ
「部屋じゃない?」
千里が不可解をあらわすように声をあげた。
「この少年の飛距離がどんなものか見てみましょう」
「ちなみにボールもクラブも使いません」
望と倫が、ルールを端的に説明した。
間もなくして男が動き出した。ジャージ姿のまま、靴を穿いて部屋を後にする。
近所のコンビにでも行くのか――。いや、そのまま駅に向かい、電車に乗った。最終的には友達と映画館に到着。
そう、これは――家からジャージで外出できる距離!
繁華街で、路上駐車した車からどこまで離れられるか。
某テーマパークから、マスコットキャラクターの耳付きカチューシャをしたままどこまで遠くへ行けるか。
コミケで恥ずかしいキャラクターがプリントした紙袋を手に入れて、ど
幼子を車内に放置して、親はどこまで遠くに行けるか。
そして男が一度は挑戦してみたい難コース。それは――裸でどこまでいけるか!(関連する壁紙が商品紹介下の「続き」にあります)
飛距離の競い合いはまだまだ続く。次なる挑戦は、
宿直室。小森霧が急な来客に振り返った。
「引きこもりがどこまで遠くにジャンプを買いに行けるか」
「これは飛距離でないでしょ。引きこもりだけに」
常月まといが挑発的に笑った。
これには、霧はむかぱっと感情を示した。
「私、バーディくらいなら出せるよ!」
霧が不満な顔を浮かべて立ち上がった。
つづく
どこまで労働基準法ぶっちぎれるか/どこまでスケジュール引っぱれるか/どれだけ睡眠時間を削れるか/どれだけ保険料を滞納できるか/どれだけ食費を削れるか/どこまでこの仕事を続けることができるのだろうか(あまり無理しないで下さい)
絵コンテ:龍輪直征 演出:宮本幸裕 作画監督:小林一三 色指定:石井理英子
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作品データ
監督:新房昭之 原作:久米田康治
副監督:龍輪直征 キャラクターデザイン・総作画監督:守岡英行
シリーズ構成:東富那子 チーフ演出:宮本幸裕 総作画監督:山村洋貴
色彩設計:滝沢いづみ 美術監督:飯島寿治 撮影監督:内村祥平
編集:関一彦 音響監督:亀山俊樹 音楽:長谷川智樹
アニメーション制作:シャフト
出演:神谷浩史 野中藍 井上麻里奈 谷井あすか 真田アサミ
〇〇〇小林ゆう 沢城みゆき 後藤邑子 新谷良子 松来未祐
〇〇〇矢島晶子 後藤沙緒里 根谷美智子 堀江由衣 斎藤千和
〇〇〇上田耀司 水島大宙 杉田智和 寺島拓篤 高垣彩陽
〇〇〇立木文彦 阿澄佳奈 中村悠一 麦人 MAEDAXR
この番組はフィクションです。実在するドン・ブリコ、竹下元首相、ハン級原子力潜水艦とは一切関係ありません。
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さのすけを探せ!
■2009/08/25 (Tue)
シリーズアニメ■
前巻までのあらすじ(第9集より)
ああサプライズだよ、と私はうつろに呟くのであった
原作第153話 昭和83年9月17日
原作第153話 昭和83年9月17日
「丸井さん、相談したいことがあるんだけど、放課後ちょっといいかな?」
「え! あ、……はい」
丸井は動揺しながら頷いた。久藤は軽く片目を閉じて合図を送ると、教室を去っていった。
どどどどどどど、どうしよう! そんな、私と久藤君が……。心の準備が!
間もなく放課後がやってきた。丸井は久藤と一緒に、廊下を曲がった先にあるバルコニーに出た。
久藤は手に丸めたポスターを持ちながら、話を始めた。
「え……? あの、何の話をしているのでしょう?」
丸井は物凄い空振りをしてしまった後のように訊ねて返した。
久藤は爽やか少年の微笑を湛えたまま、手に持っていたポスターを広げてみせた。読書週間のポスターだった。
丸井が教室に戻ってきた。
過剰なサービスが氾濫する今の世の中、何も事件が起きないほうがむしろサプライズなのだ。
例えば、本当の誕生日に友人から――「みんなで飲んでいるから来
あるいは選挙前に、もう何年も会っていない友人から電話が掛かってきて、フツーに昔話をして、何事もなく切る感じ。
また、最近のコンサート。アンコールがなくてむしろサプライズ。
中央線、何の事故もなく定刻どおりやってくるとむしろサプライズ。
こんな生活して健康診断受けて、何事もなくてむしろサプライズ
深夜自転車で走っていて、警官とすれ違ったのにスルーされてむしろサプライズ。(リアルにありますよねぇ)
いろいろとありすぎる現代。過剰に事件が折り重なる今の日本。何事もなく、平静で平凡である現象こそが特別になっている。そんな逆転の時代を描き出す。そんな物語の最後に、マリアが言う。
「日本人わかってないな。この国の、何もない平和な日常が、サプライズなんだよ」
絵コンテ:板村智幸 演出:龍輪直征 作画監督:岩崎安利 色指定:石井理英子
告白縮緬組
原作第165話 昭和84年1月7日掲載
ある冬。登校中の千里は、交番の前で佇む糸色望に気付く。深い憂いを沈めた糸色先生の顔……。千里は何かが起きたと察して近付こうとした。原作第165話 昭和84年1月7日掲載
「私が……、やりました」
重く、呟くような声だった。
「先生! いったい何をやらかしたんですか!」
千里は慌てて望の前に走り、声をかけた。
「何も」
望の顔に、さっきまでの憂いも重い空気もなくなっていた。
「でも、今!」
それでも千里はまだ動揺が胸から去らず、望に身を乗り出した。
「いやこれは、自首トレです。――自首するトレーニングですよ」
「何でそんなことトレーニングする必要があるんですか!」
しれっと答える望に、千里は怒鳴って返した。望への心配が、一気に憤慨に置き換えられた気分だった。
望は、そんな千里を宥めるように、何かを諭すような顔を始めた。
「自ら罪を認めるのは難しいことです。その時、あなたは自首できますか? 何かの拍子で罪を犯してしまったとき、ハナから罪を認め、謝っておけば大事にならずに済んだのにということが多々あります! 非を認めることのできなくなった今の日本人には、このトレーニングが必要なのです!」
「で、あんたは何をやったんだ?」
「だから自首トレーニングですよ」
「何を言っとるんだキミは!」
当然の反応だ。
千里は望の提案に納得して、ならばと自分からも意見を出した。
望むが少し考えるふうに宙を見上げた。その結果、
「私がやりました。ぷーん」
望は反省していないいたずら小僧のような顔をして、鼻に小指を突っ込んだ。
千里は呆れて溜め息をついた。
千里は望を叱りつけると、全力の勢いで地面に額を落とし、嘆きの声を漏らした。
肩の温まらないうちに本気を出すのは怪我をする恐れがある。だから色んな事件に対し、予防線を張る意味でも自主トレは必要なのである。
例えば犯罪を犯したケースなど、自主トレの必要性が出てくる。一人だけ違うことを言ったり、話が2転3転して辻褄があわなくなってしまったり。
ところで、秘密などをカミングアウトするのを自首という場合がある。
例えば、カツラであると自首したり、
取っている新聞が宗教がらみだと自首したり、
浮気を自首したり、
特殊な趣味を自首したり、
某人気漫画ヒロイン(『かんなぎ』)が非処女であるばかりか、妊娠経験がある、とまでいきなり自首したり、
自首する側だけではなく、される側にとっても自主トレは大切なのである。
絵コンテ:龍輪直征 演出:清水久敏 作画監督:高野晃久 潮月一也 岩崎安利
色指定:石井理英子
最後の、そして始まりのエノデン
原作179話(正しくは160話) 昭和82年12月27日掲載
原作179話(正しくは160話) 昭和82年12月27日掲載
糸色望と可符香の二人が連れ添って、列車に乗り込んだ。
「子供騙しです。行き先不明なんてわけないじゃないですか。他の列車のダイヤとの兼ね合いもあるのですから、最初から到着駅は決まっているはずなのです」
望は可符香と向かい側の座席に座ると、うつむきながら退屈そうに呟いた。
「世の中、そんなことばかりですよ」
望は顔を上げて、沈んだ顔と声で話を締めくくった。
可符香は向かいの席でしおらしく座って、望の話を聞いているようだった。その表情には、いつものぬくもりのある微笑み。
窓の外は照明はなく暗く沈んでいる。しかし、はっきりと移動を感じる。望は窓の外の闇に目を向けた。行き先不明なわけがない。しかしこの列車は、果てしない闇を潜り抜けて、ど
ふと望の前に、スーツ姿の紳士が現れた。
「あの失礼ですが、学校の先生とお見受け致しました。アンケートにお答えいただきたいのですが」
と紳士は礼儀正しく話しかけてきて、アンケート用紙を差し出した。アンケート用紙には大きな文字で、
とお題が書かれていた。
「ん……。別にそうは思いませんけど。よくわからないし……」
望はアンケート用紙をちらと見て、退屈さを隠そうとせずに答えた。
「はあ? でも何か違和感を持つことはありませんか?」
無理に考えを捻れば、そういうのを見付からないわけではない。望が考える様子を見せると、紳士は急に勢いを持ち始めた。
「そうですか、やはりおありなんですね。では、教育現場に何か問題をかかえていると……」
望はうんざりしながら紳士を見上げた。
「“教育は死んだ”そう言わせたいだけなのでは? あなたの中で、結論出ているじゃないんですか?」
望は強い視線で紳士を見詰めつつ、それでいて落ち着き払った言葉を突きつけた。
紳士はその顔に動揺と困惑を浮かべ、逃げるように姿を消した。
――最近、やたら着地点の決まっている質問するケースが多い。すでに決定されている結論に着地したいがために、“意見”ではなく“同意”を求めるだけの質問。結局は「そう言わせたいだけだと」という質問。
後ろの座席に、年頃の女が二人、向き合って座っていた。立ち聞きするつもりはないけど、可符香と見詰め合っているとなんとなく会話が耳に飛び込んできた。
「もう、本当に毎日ケンカ……。こんなんじゃ、カレシと別れた方がいいかな?」
「いや、でも、悪いところばかりでもないのよ。それに……」
「結論、出てるじゃない」
女の決定的な一言。質問していた女は、困惑と動揺を顔に浮かべたまま、姿を消した。
別の座席でも、対話が始まっているようだった。
サンデー編集者「うん、やめれば」
漫画家「いや、でも、でもですね。次になに描こうかとかまったく決まっていない
サンデー編集長「何かお辛いみたいで。連載、まだ続けますか?」
漫画家「はい、もう少し頑張ってみようかと……」
サンデー編集長「そうですか。でも、余力のあるうちにやめるのも手だ
互いに別々の結論が出ている場合もあるようだ。
間もなくミステリートレインが駅で停車した。望と可符香は自分の旅行ケースを持って下車した。
「降りるんですか?」
望が説明した。ずらりと並ぶ線路に、様々なデザインの列車が停まっている。ミステリートレインと自称しつつ、どの列車も行き先は始めから決まっている。
-渋谷の若者は乱れている-
-ソーイチローの意見-
どんなに議論しても、結局は田原総一郎一人の意見にまとめられてしまう朝生。
-犯人はやつ-
「犯人はこいつだ」と結論付けたいがために、探偵気分で制作されたテレビの取材。
-アニメやゲームの原因-
最近の青少年のモラル崩壊、犯罪の凶悪化、あるいは増加(している、という仮定で)の原因は、アニメやゲームのせいだと結論付けたいために集まり、無駄な議論をする“有識者”会議。そこでは議論も仮定も異論も生まれない。なぜなら、始めの段階に結論、答は決まっているから。もし新しい事実がその道程に浮かび上がっても、決して目を向けようとしない。
……絶望した。答えの決まっているミステリートレインに。答えを押し付けたがる現代社会に。自身の力で答えを捜し歩き、見つけようとする努力をしない文明人に!
「さて、我々はこれからどうしますか?」
いつの間にか、駅の列車はあらかた行ってしまったようだった。雪がちらちらと降り始めている。ひっそりと残った照明に、雪の白い色彩が浮かび上がっていた。そんな静けさの中、望は可符香と二人きりだった。
可符香は望に優しい微笑を浮かべながら、提案をした。
「そうですね。誰がいいでしょう?」
望は可符香の微笑を愛おしく思いながら、微笑で返した。
「結論、出ちゃっているんじゃないですか?」
望は可符香の表情に少し困惑を感じた。でもそれを振り払うように、頷いた。
そうだ。結論は出ている。どの列車に乗るかも。
望は行き先のわからないミステリートレインに乗るつもりはなかった。もう、心では決心していた。あの終着駅に行く、と……。
あの法案は通るのか/執行猶予はつくのか/年金払ったほうがいいのか/電車、バスを利用するより自転車を買ったほうがいいのか/四期はあるのか/このサブタイトルネタを誰か読んでいるのだろうか
公演:劇団イヌカレー
『懺・さよなら絶望先生』第7回の記事へ
『懺・さよなら絶望先生』第9回の記事へ
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作品データ
監督:新房昭之 原作:久米田康治
副監督:龍輪直征 キャラクターデザイン・総作画監督:守岡英行
シリーズ構成:東富那子 チーフ演出:宮本幸裕 総作画監督:山村洋貴
色彩設計:滝沢いづみ 美術監督:飯島寿治 撮影監督:内村祥平
編集:関一彦 音響監督:亀山俊樹 音楽:長谷川智樹
アニメーション制作:シャフト
出演:神谷浩史 野中藍 井上麻里奈 谷井あすか 真田アサミ
小林ゆう 沢城みゆき 後藤邑子 新谷良子 松来未祐
矢島晶子 後藤沙緒里 根谷美智子 堀江由衣 斎藤千和
上田耀司 水島大宙 杉田智和 寺島拓篤 高垣彩陽
立木文彦 阿澄佳奈 中村悠一 麦人 MAEDAXR
この番組はフィクションです。実在するリーマン・ブラザーズ、JISマーク、アジア号とは一切関係ありません。
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さのすけを探せ!