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■2010/07/13 (Tue)
シリーズアニメ■
第1話 再び空へ
ネウロイは圧倒的な攻撃力で欧州の地域を瞬く間に併合。毒を持った瘴気を振り撒き、大地を腐らせ、人々の作りし文明を崩壊させた。
そんな最中、宮藤一郎博士は魔道エンジンを推進力とする
1944年。連合軍は第501統合戦闘航空団「STRIKE WITCHES」を結成。各国のトップエースや要望なウィッチた
扶桑皇国の女学生である宮藤芳佳も、その1人として招かれ、ネウロイとの戦いの中に身を投じていく。
あの戦いから、間もなく1年の時が流れようとしている……。
卒業式を終えて、宮藤芳佳は自宅である診療所に戻った。静かな居間でくつろぎつつ、何気なく手にした写真に目を向ける。
写真はまだ若い頃の、海が見える絶壁を背景にした姿が映し出されていた。モノクロトーンの写真は、淡く色褪せかけている。
芳佳は心の中で、もうここにいない父親に報告した。
写真をめくる。
次の写真は、ストライカーユニットを背景に、父と坂本美緒が並んで記念写真のように撮影した写真だった。坂本もまだ幼い頃で、軍服姿であるもののあどけない可愛らしさがあった。
……坂本さん。
芳佳をストライクウィッチーズに誘い、ともに戦った戦友であり、永遠の先輩。
ふと芳佳は、坂本との日々を懐かしく思った。それはまるで、白黒写真の風景のように、思い出として色褪せつつあった。
あれから、半年……。まだ戦いの日々は克明な感触として体が記憶しているのに、時間はもう半年が過ぎていた。
……みんな、この手紙から始まったんだよね。
不意に、山川美千子の声がした。何か急を告げる声だった。
芳佳ははっと立ち上がり、玄関に飛び出した。
美千子は悲しそうな顔で、はあはあと肩を揺らし、両掌で何かを包みこむように持っていた。
「みっちゃん、どうしたの」
美千子は今にも涙を噴き出しそうな目を閉じて、何も言わず、掌を差し出した。掌にあったのは、傷ついたウグイスだった。羽根が折れて曲がり、全身をぴくぴくと震えさせていた。
「うん、大丈夫」
芳佳はウグイスを引き取ると、掌の中に包み、目を閉じて意識を集中した。掌がじわりと温もりを宿し、青い光がウグイスを包んだ。
ウグイスがぱっと芳佳の手から飛び立った。治ったのだ。ウ
「よかったね、みっちゃん」
「うん、ありがとう芳佳ちゃん」
芳佳は美千子に微笑みかけた。美千子は目の端に涙を残しながら、嬉しそうにウグイスが去った青空を見ていた。
芳佳は、もう一度空を眺めた。飛び立ったウグイスを見届けようとした。
が、そのとき、空に別の何かが現れた。
「あれ?」
何だろう、と目を凝らそうとした。
落ちてくる!
物凄い速度だった。それは自由を失った感じで、まっすぐ落ちてきた。
芳佳と美千子は、身を小さくして目を閉じた。
周囲は衝撃を残すように、ちらちらと葉や土煙を噴き上げている。芳佳はおそるおそる目を開けて、何が落下したのか確かめようとした。
「ウィッチ!」
芳佳は驚きの声を上げた。
茂みに、女の子が一人、目を回して倒れていた。体をさかさまにして、全身に木の葉をまとい、ストライカーユニットを茂みから突き出していた。その格好
軍人の女の子がはっと芳佳に気付き、体を起こして地面にぺたりと座り込んだ。
「あの、私、陸軍飛行第47中隊、諏訪天姫であります」
顔を上げて、諏訪天姫はしおらしく挨拶する。
「こんにちわ」
「えっと、宮藤芳佳さんは……?」
と諏訪が辺りを見回す。
「はい、私ですけど」
諏訪は安堵の微笑を浮かべると、立ち上がり、居住まいを正すように直立すると、芳佳に手紙を差し出した。
「宮藤博士よりお手紙です」
「え? えーーー!」
芳佳は驚いて声を上げた。
2年の時が流れている今ですら、その影響力は鮮烈であり、「パンツじゃないから恥ずかしくないもん」の台詞はアニメ史に残る名台詞として記憶され、様々なメディア、あるいは別作品に繰り返し引用さ
放送当時より続編を望む声は大きく、あるいは続編制作の噂は決して絶えることなく、多くのユーザーの願いを叶えるかのごとく、2010年、ついに第2シリーズが放送された。
世界の脅威であるネウロイに戦いを挑むのは、あどけなさ
身体に残る幼さはもっと強調的で、全身の比率に対して頭は大きく描かれ、手足は切り詰めたかのように短く描かれている。
少女たちの表情に戦いの影はどこにもなく、丸くふっくら膨らんだ白い頬は、いつもほんのりと朱色に染められている。
そんな存在が、我々と同じ人間であるわけがない。『ストライクウィッチーズ』の男性キャラクターはおそらく現実的な存在であるのだろうが、少女たちは夢想世界から来たりし者たちだ。
おそらく空中を駆け抜けていく姿が、少女たちの本来あるべき姿なのであろう。地上という現実的束縛から解放され、夢想世界の住人である本来的性質がもっとも魅力的に輝く瞬
空中浮遊は戦闘という題目のために用意された舞台であるが、アクションとしての重量感は一切ない。作り手の目論みは、空中を舞台としたアクションにはなく、あくまでも少女たちの姿が中心であり、ストライカーユニットを装着して飛翔する瞬間のフォルムを描くことに意識が向けられている。
空中戦のカメラは、執拗に少女たちの背後に回り、あるいは股間に深く飛び込み、穏やかなカーブを描くヒップラインとパ
多くのアニメの場合、アクションの衝撃の瞬間、あるいは変身シーンの変形箇所、あるいはカメラに向って大見得を切るキャラクターの目線。
しかし『ストライクウィッチーズ』のアクションで「止め」が入るのは、ヒップを写した瞬間だ。コマにして3コマから4コマ。場
キュビズムの思想は、一つの絵の中に、多面的に表情や、実際には見えるはずのない反対側の世界を取り入れて観
『ストライクウィッチーズ』は描き手の欲望が、思うまま空中という舞台の中に制約なく解き放たれた作品である。あるいはそのために構想された場所が空中なのである。
作り手の意識がどこに向かって全力投球されているのか、憶測するまでもない作品である。
ストライクウィッチーズ2 公式サイト
ニコニコ動画 ストライクウィッチーズチャンネル
作品データ
監督:高村和宏 原作:島田フミカネ&Projekt Kagonish
企画:安田猛 シリーズ構成:ストライカーユニット 副監督:八谷賢一
軍事考証・世界観設定:鈴木貴昭 キャラクター原案:島田フミカネ
アニメキャラデザイン:高村和宏 メカデザイン・メカ総作監:寺尾洋之
キャラクター総作画監督:山川宏治 倉嶋丈康 美術設定・美術監督:松本浩樹
カラーデザイン:甲斐けいこ 池田ひとみ 3D監督:下山博嗣
撮影監督:林コージロー 編集:三嶋章紀
音響監督:吉田知弘 音楽:長岡成貢 音楽プロデューサー:植村俊一
製作:第501統合戦闘航空団2010
アニメーション制作:AIC
出演:福圓美里 世戸さおり 名塚佳織 田中理恵
〇 園崎未恵 斉藤千和 小清水亜美 郷田ほづみ
〇 花澤香菜 浅野真澄 佐藤有世 日野聡
〇 天野由梨 翠準子 城山堅 岩崎了
〇 里卓哉 高橋研二 吉開清人 金光宣明
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■2010/04/15 (Thu)
シリーズアニメ■
Story・1 刻、動き出す
白いドレスの女は、その風景から目を背
「……ねえ、ルカ。最後の刻はお願い。このまま死ぬ運命なら……解放してほしい。あなたの手で。あなたが私を殺して」
女の声は怯えるように震えて、言葉の一つ一つに絶望が滲み出ていた。
「お前を苦しませるようなことはしない」
男――ルカが答えた。
ルカは女から離れて立ち上がると、側に
「それはもしもの時の話だ。お前は俺が守る」
ルカは一度女を振り向き、そう告げた。
女は必死に声を上げて手を伸ばした。雨を吸った泥が、女の白いドレスの膝を汚した。だが女は構わず泥をドレスに浴びて、ルカの背中を追いかけようとした。
「俺はお前を裏切らない」
ルカは言葉を残して去っていった。
そんな夕月はこの頃、おかしな夢を見るようになった。目を覚めると何も憶えていないけど、忘れてはいけないような気がする――不思
夕月がぼんやり夢のことを考えていると、若宮奏多が夕月に声を掛けた。夕月と同じく養護施設の出身で、今は1人暮らしをしているものの頻繁に訪ねてくるのだ。
奏多は養護施設の子供たちのために絵本を持ってきてくれた。それからそろそろ1人暮らしをするつもりの夕月は、奏多に部屋を探してくれるようお願いする。
夕月が動揺しているところを、不良たちが逆襲しようとする。とそこに、叢雨九十九と叢雨十瑚の2人が助けに現れた。不良たちは負けを認めて去っていく。
叢雨姉弟とは初対面だが、叢雨姉弟は夕月を知っているように話し、「あなたとは仲良くやっていけそう。またね」と去っていく。
放課後、夕月は奏多が過ごすアパートを訪ねた。奏多は夕月のために部屋をいくつか探してきてくれていた。
さらに奏多は語る……。
「今、世界はゆるやかに滅びに向かっている。環境破壊、飢餓、終わらない戦争……。人間はなんて愚かで罪深い人間なんだろうね。この汚れた世界をリセットさせるには、すべてを終わらせるしかない……」
養護施設に帰宅する夕月。その後も、奏多の言葉をずっと考えていた。
「……遠い昔、何もない大地に王子様とお姫様だけが暮らしていました。2人は
◇
物語は歴史の時代から始まっていた。常人とは違う力を持った『祇王一族』と『悪魔(デュラス)』。その戦いは決して終わらず、数百年ごとに繰り返されていた。
桜井夕月はそんな運命に捉われる少年だった。夕月は相手の心を読み取る能力を持っていた。しかしなぜ自分がそんな力を持っているのか、どうして捨てられたのか、自分の由来を求めて迷っていた。
そんな時に、夕月を知っている人物が次々に現われる。叢雨姉弟、それからゼス。ゼスは「死を招く赤い月の夜“ワルプルギスの夜”には外に出てはならない」と忠告する。
輪廻転生を繰り返し無間に続く戦い――刻は少年たちの意思とは無関係に巡りだす……。
やがて激しい戦いに身を投じる少年たちの物語。第1話はその前奏となるおだやかな風景と不安な予感を描いてみせた。
日常と非日常の狭間に立つ少年たちは、シャープな線でその存在が描き出されている。少年たちは頬肉がなく、顎に向って一気に線が滑り落ちている。その先端は鋭角的にピンッと尖っている。輪郭線だけではなく、目も鼻も口も、なにもかも鋭角的に切り取られ、ナイフのように突き刺さりそうなイメージで描かれている。
それは顔の印象だけではなく、体もすらりと長く、線の一本一本がすっきりしたシャープな線で描かれ、鋭角的に組み立てられた顔をしっかり支えている。
何もかも極端で、繊細な美意識が全体に緊張感を持って張り巡らされている。
『裏切りは僕の名前を知っている』は戦いの物語というより美意識の物語だ。
言葉の一つ一つはぼんやり漂う空気の中、独白のように流れ、互いの心を撫であっている。どの言葉もあまりにも甘く優しく、愛の告白のように強い響きを持っている。
背景美術は色彩が抑えられ、近景は彩度が抑えられた落ち着きのあるディティールが描かれているが、遠景ほど極端にコントラストが強くなり、真っ黒な影になって沈む。虹色の光がじわりと滲み出し、その効果が前面に立っているキャラクターの印象を強くさせている。
背景画がキャラクターが抱えている暗い運命と耽美な結びつきを静かに語るようである。
物語は現実的ではなく、どこか夢の中を漂うようなふわふわした印象が漂う。物語はなだらかに流れていくようで、慌しさや混乱は感じさせない。
ただそこに深い闇が静かに佇み、少年たちをゆったりと飲み込み、非日常に引きこもうとしている。その中心に立っている少年たちは、脆く崩れそうなくらい細い線で描かれている。
『裏切りは僕の名前を知っている』の物語は甘く、それでいて残酷な美意識を胸に抱きながら密やかに語りだす。
◇
夜になって夕月が携帯電話を確認すると、そこにメールが一通入っていた。クラスメイトの宇筑からたった一文――「助けて」
信号が赤になろうとしている。しかし宇筑はそこから動こうとしない。
いったい何が……。夕月は動揺するように辺りを見回す。
とそこに、トラックが飛び出した。夕月はそこから離れようとする。が、何かにつかまれたように膝が動かなかった。
トラックは容赦なく向ってくる。
もう駄目だ。夕月は目を閉じた。
夕月が目を開けると、男に抱かれて空を漂っていた。
トラックはガードレールにぶつかり、よう
「痛むところは?」
男は夕月の側に座り、静かな声で訊ねた。
「だ、大丈夫です」
夕月は緊張で高鳴る胸を抑えながら男を振り返った。そこではっとし
男の銀色の瞳。眠っていた何かが呼び覚まされるような、そんな感覚があった。
何て言うんだっけ? 夕月は自分の体内から言葉を探していた。男の名前を。僕は、知っている。この人の目を、この人の印象を――。
どこかで囁くように声がした。
「いま、何か……」
夕月ははっと立ち上がり、声の主を探そうとした。
男もゆっくり立ち上がる。
「奴には気をつけろ」
「奴?」
夕月は鸚鵡返しにして、はっと宇筑を思い出して立ち上がると歩道橋から身を乗り出し、横断歩道を覗き込んだ。
しかしそこに、宇筑はいなかった。
男は静かな声で詩を吟ずるように語り始めた。
「闇がすべてを?」
夕月は戸惑うように訊ねた。
「心当たりがあるんじゃないか?」
男が訪ねた返した。
夕月はひそかにはっとした。この頃、脅迫状が届いていた。「桜井、死ね!」と。その送り主は――。
「俺がいる。自分1人で抱え込もうとするな。俺が助けてやる――夕月」
「何で僕の名前を……」
夕月は信じられない思いで男をじっと見た。それでいて、きっとそうだろうという不思議な予感があった。
「俺はお前を裏切らない――」
男は答えず、代わりに短くそう告げると夕月に背を向けた。
夕月は男を追いかけようと手を伸ばし――。
裏切りは僕の名前を知っている 公式ホームページ
作品データ
監督:桜美かつし 原作:小田切ほたる
シリーズ構成:高橋ナツコ キャラクターデザイン:中山山美 松浦麻衣
プロップデザイン:植田和幸 美術監督:栫ヒロツグ 色彩設計:村永麻耶
撮影監督:岩井和也 編集:西山茂 音響監督:明田川仁 音楽:海田庄吾
アニメーション製作:J.C.STAFF
出演:保志総一郎 櫻井孝宏 井上麻里奈 福山潤
〇 石田彰 ゆかな 立花慎之介 田中晶子
〇 高岡瓶々 日笠陽子 関山美沙紀 米澤円
〇 永田依子 矢作紗友里 藤井啓輔 金光宣明
〇 酒巻光宏 中西英樹
■2010/04/14 (Wed)
シリーズアニメ■
第1話 美咲ちゃんはメイド様!
当然、反抗する者や、鮎沢の意向に従わない生徒も多くいた。いわゆる三馬鹿と呼ばれる白川直也、更科郁斗、黒崎龍太郎などはその代表格だった。
それから、鮎沢には気になっている男子生徒がいた。
碓氷拓海――成績優秀でスポーツ万能。しかも美形。女子生徒に告白されること数知れず。しかし本人は周囲の視線や恋愛などに関心はなく、いくら女子生徒に告白されても「興味ない」とさらりと断る。それで泣かされた女子生徒が多くいた。
だから鮎沢は碓氷を嫌っていた。同性として許せないという思いがあったし、父親を思わせるところがあった。
鮎沢も働かないわけにはいかず、隣町まで行き、メイド喫茶メイド・ラテで働いていた。
厳しい生徒会長のイメージで通っている自分がメイド喫茶やっているなんて知られたら……。
と思っていると、鮎沢の前に碓氷拓海が現れた。
しかしメイド喫茶でバイトしている事実は学校に知られていなかった。拓海が黙っていてくれたらしい。その代わりに、拓海はメイド・ラテに訪ねるようになり、鮎沢を
生徒会長の仕事が忙しく、勉強も続けなければならないし、メイド喫茶のバイトをやめるわけにはいかない。多忙の日々が続き、鮎沢は体調を崩し始めていた。
感謝した鮎沢は、碓氷に何か礼をしたいと申し出る。そこで碓氷が言ったのは――、
「一日だけ俺のメイドやってくれる?」
◇
鮎沢美咲のイメージは成功したキャリアウーマンだ。妥協を許さず、自身に厳し
また鮎沢は男性中心の社会に徹底した反逆を行っている。男嫌いを公言し、男性の習慣を矯正させ女性社会の勢力を拡大させようとす
ただし今時のキャリアウーマンの例にあるように、鮎沢が抱く理想の男性像と恋
あまりにも高く設定しすぎた理想像を抱く現代の女性の意識を、作品はずばり指摘し、かつそれを満たす作品構造を作り上げている。
ふとすると生々しくなりがちな願望の実相を、生徒会長とメイド喫茶という今時の言葉を使ってオブラートに、健全な作品として描いている。現代女性の願望を、安心して楽しめるエンターティメントとして描いた作品だ。
会長はメイド様! 公式ホームページ
作品データ
監督:桜井弘明 原作:藤原ヒロ
シリーズ構成:池田眞美子 キャラクターデザイン:井本由紀
プロップデザイン:原修一 美術監督:小林七郎 色彩設計:石田美由紀
撮影監督:黒澤豊 編集:後藤正浩 音響監督:本山哲 音楽:前口渉
アニメーション製作:J.C.STAFF
出演:藤村歩 岡本信彦 椎橋和義 花沢香菜
〇 小林ゆう 市来光弘 寺島拓篤 細谷佳正
〇 豊崎愛生 阿澄佳奈 儀武ゆう子 櫻井浩美
〇 川澄綾子 石原夏織 大原崇 中西英樹
■2010/04/12 (Mon)
シリーズアニメ■
第1話 高3!
まだ朝の早い時間で、光は穏やかで人通りは少なかった。
そんな通りを、女の子がぱたぱたと慌てるように駆け抜けていく。路上に散った花びらがふわりと舞って、女の子の足にまとわりついた。平沢唯だ。
唯は高校の校舎に入っていくと、茫然と立ち尽くしてしまった。
誰もいない。
唯はあっと思って、階段を駆け上り音楽
ギー太とアンプをコードで繋いで、スイッチを入れた。ぶぅんと低いソニックブーム音が響いた。
唯はベンチに座り、軽く弦を弾いた。低く淀んだ音が空間一杯に長く尾を引いた。
今度は連続してピックで弦を弾いた。音の一つ一つが音楽を作り出し、心地よいリズムを作り出す。
唯は自分で作り出したメロディにうっとりと身を委ねた。気持ちは次第に膨らんで行き、いきなり立ち上がると腕を大きく振り回すように弦を弾いた。
そうして演奏が終わった。
「何やってんの?」
田井中律、秋山澪、琴吹紬、中野梓の4人だった。
4人は何ともいえない、ぽかんとした表情で唯を見守っていた。
「え? 新歓ライブに向けて、必殺技開発中!」
唯は元気に答えた。
「それにしても、唯先輩早いですね」
何気ない感じに梓が訊ねる。
「目覚まし時計見間違えて、1時間早く登校しちゃった」
唯は軽い失敗を笑って、自分の頭をなでた。梓が呆れた微笑を浮かべた。
「何かついてるぞ」
律が自分の顎を指差した。
「あ、パン。……食パン!」
唯は物凄い発見のように声を上げた。
◇
といっても、当初は後に語られるほどの大きな評判はなかった。その他の多くの作品と同じように、しれっと深夜の時間に放送され、『けいおん!』はその他の多くの作品の一つ
しかし放送後まもなく、人気はじわじわと、それでいて猛烈な勢いで広がって行き、その影響力は日本全土を覆うばかりではなく世界にまで広がっていった。
関連商品の売り上げは言うに及ばず、登場キャラクターが使用する楽器は空前の売り上げを記録した。秋山澪が使用するフェンダー・ジャズベースは在庫が尽き、平時の2年分の発注があったという。
DVD売り上げは『エヴァンゲリヲン新劇場版:序』、『化物語』に次いでその年の第3位を記録。『けいおん!』は関連する商品だけでも数億円を売り上げ、特に関連していない多くの企業がその恩恵にあずかった。
『けいおん!』は作品人気や評判だけにとどまらず、不況を救う起爆剤でもあるのだ。
それはある意味、めまぐるしく隙間を埋めたがる現代に対する反逆でもある。現代は何もかもに効率を求め、ほんの一時の休憩の“間”すら有効利用するべき、と語られる。現
『けいおん!』そんな現代に対するアンチテーゼのように、活動の合間にほんの一瞬訪れる“間”のみを集めて描かれる。
『けいおん!』を鑑賞していると、時間の経過が停止しているような不思議な感覚に捉われる瞬間がある。『けいおん!』と接している間は忙しく流れていく時間は忘却され、驚くほど静かで穏やかなくつろぎの時間がやってくる。考えてみれば、贅沢な一幕を描いた作品であるといえる。
作中に登場する風景のほとんどは実際の世界に存在する風景である。制服はオリジナルで制作されたものだが、もし現実世界にあったとしても普通の女学生と何ら違和感はないだろう。登場キャラクターが身につける衣装や
しかしよくよく考えてみれば映像作り作品作りにおいて当然のアプローチである。現実世界の風景をよく観察し、作品のなかで再現し、物語の一様として描写する。むしろ作品作りに
『けいおん!』のような作品を、いわゆる“癒し系”と呼ばれがちだが、実際の画像は濃密に描き込まれ、充実した世界が舞台となっている。
最近製作された学園ものアニメは、ほとんどが現実世界ではありえないような装飾の多い制服で、学校制度に謎めいた魔術や超能力の要素が加えられている。日本の漫画・アニ
だから『けいおん!』は、実は平凡な特徴を持った作品であるといえる。しかしその平凡さが、今の時代において際立った個性を持ったのだ。
作品を特徴付けようとして奇抜さに捉われてしまっている作家は、『けいおん!』を学んだほうがいいかもしれない。
だが第2期放送に懸念もある。
ほとんどの第2期作品が失敗作になるのは、製作期間の短さと、制作進行が作家側になく製作側の都合で決定されているからである。
一見すると第2期作品は必要な要素――設定や世界観が第1期で準備され容易に思える。だが実際の現場は想像以上に過酷だ。
まずいって時間がない。実際にあるメカ作監に話しを聞いたことがあるのだが、第2期制作に用意された期間がたったの3日だったという。だから3日間徹夜作業で必要なデザインを全てを書き起こしたそうだ。
シナリオ作りでも同じ状況なのだろう、と思う。第1期放送の人気で急遽続編が決定し、放送日時もすでに決められている。しかしアニメは一本作るのに3ヶ月。シナリオや設定に費やせる時間は自然と少なくなってしまう。一週間とか一ヶ月といった期間で、あれもこれも決定して制作をスタートしないと間に合わなくなってしまう。結末をどうするかも決められず、後は作りながら出たとこ勝負、という状態だ。第1期で全て語り終えたつもりになっている作家にとって、どうモチベーションを維持するか、という問題にもぶち当たる。
しかも『けいおん!』は展開の遅い4コマ漫画が原作で、もちろんまだ連載中の作品だ。だというのに第1期放送で物語中時間は2年も過ぎ去ってしまった。このペースで作品が進むと、どう考えても登場キャラクターの卒業まで描くことになる。原作に描かれていない領域に入っていくわけだ。
オリジナルという骨組みを頼りにできず、何もかも脚本をゼロから作らねばならない。ちょっとした匙加減で作品が大きく転覆する可能性をはらんでいるわけだ。
第1話は高校三年生になった唯たちが描かれている。
その描写や物語の運びは相変わらずだ。静かで穏やかな休息のひとときがゆったり綴られていく。何も変わらない、1年前の延長が当り前のように流れ過ぎていく。
今は懸念を抱くより、唯たちが戻ってきたことを素直に喜びたい。
作品データ
監督:山田尚子 原作:かきふらい
シリーズ構成:吉田玲子 キャラクターデザイン・総作画監督:堀口悠紀子
音楽プロデューサー:小森茂生 音楽:百石元 楽器設定:高橋博行
音響監督:鶴岡陽太 編集:重村健吾
美術:田村せいき 色彩設計:竹田明代 撮影監督:山本倫
アニメーション制作:京都アニメーション
出演:豊崎愛生 日笠陽子 佐藤聡美 寿美菜子 竹達彩菜
〇 真田アサミ 藤東知夏 米澤円 永田依子
〇 山村響 平田真菜 永木貴依子
■2010/04/10 (Sat)
シリーズアニメ■
第1話 救出行
上海の都市は濃い霧に包まれていた。真夜中に関わらず煌々と瞬く光が、霧に霞んで都市を幻想的な手触りに変える。
周囲四方は人の影もなく、静かに沈黙していた。そんな最中を、男が気配を潜ませながら歩いてくる。
三好は目印代わりにヴァイオリンを弾いた。男はヴァイオリンの音を頼りにこちらに向かってきた。
建物の陰に隠れ、慎重に中の様子を覗きこむ。ようやく誰もいないと察して、男は建物の中に入ってきた。
三好はヴァイオリンの演奏をやめた。男は抜け殻の部屋をいくつか潜り抜けて、その向うのテラスに出た。三好は男を待ち受けて、ヴァイオリンの弦を引っかいた。ぐりぐりと、耳障りな音を発する。
男は耳を押さえ、中国語で怒鳴った。
「ご挨拶じゃないか。待っててやったんだぞ。今夜は忙しいんだ」
三好は演奏を止めて男に軽く応じた。
「気付いたいたのか。お前を追っていたことを……」
「元は言えば、あんたを探っていたのはこっちだからね。動きはお見通しってとこかな?」
「お前、何者だ。日本軍の工作員か」
男に警戒心が戻ってきた。
「まあ、そういうところだ。あんたが地方の軍閥、“劉宗武”の一派だと知って探っていた。まあ、待てよ。ところがとんだ見込み違いだ。あんた、軍需物資の調達を請け負っていただけらしいな。つまり、劉の商売相手だ。俺は鏑木財閥の会長が誘拐された一件を探っていたんだ。あんたは関係ないからもう興味はない。そっちも俺に付きまとわないでくれ」
男は拳銃を三好に向けた。
「え、待てよ。何か勘違いしているんじゃ……」
三好は慌てて男を留めようとした。
男が引き金を引いた。乾いた音が静寂に木霊する。しかし銃弾は、三好から大きくそれて足元を弾いた。
三好が空を飛んだ。男の背後に着地する。
男は振り返り、三好に銃を向けた。だが不可思議な力が男を押しの
三好が男を追いかけ、その腕を掴んだ。部屋の向うには何もなく、奈落が落ちているだけだった。都市を包んでいた霧が晴れかけて、はるか下に見える地面を浮かび上がらせた。男は右脚を部屋の端に乗せて、三好に腕をつかまれているだけで重心は空中にあった。
「悪いな。突然だと加減が難しいんだ」
三好は男を警戒しつつ、余裕の笑いを浮かべた。
「お、お前何を……」
「またあんたに興味が出てきた。勘違いの元について、ちょっとだけ話し合う気はないか?」
三好は男に顔を近づけて、にやりと微笑んだ。
「あ……ある」
男は引き攣る声で答え、頷いた。
鏑木会長が地方軍閥である劉宗武の一味に誘拐された。鏑木会長は日本の軍事兵器を扱っている財閥のトップだ。劉宗武は国民党に対抗するために、鏑木会長の身代金代わりに最新の兵器を要求していた。
三好たちは上海の一角に潜伏する劉宗武のアジトを特定し、そこから飛び出した車両を追跡し取り押さえるが囮だった。すでに鏑木会長は別の場所へ運ばれ
鏑木会長の居場所は劉宗武軍の本拠だった。南京の東の田舎で、2000人規模の軍団を結集していた。
ここで劉宗武側が交渉人を通じて要求の変更が提示された。武器ではなく、金をよこせ、と。
夜になり、三好と伊波の二人はパラシュートを使って密かに劉宗武本拠地へと潜りこんだ。その後、三好と伊波は劉宗武の仲間の振り
鏑木会長に対面した三好と伊波は、鏑木会長が劉宗武と取引したことを問い詰める。鏑木会長は自分のところで、兵器の調達を引き受けると劉宗武と契約していた。こんな間際に関わらず、鏑木は誘拐犯
三好と伊波は鏑木会長を殴り倒し、「いきなり倒れた。軍医のところに連れて行く」と塔から脱出する。しかし間もなく潜入がばれて攻撃が始まった。三好と伊波は向ってくる劉宗武軍に応戦しながら、秘密の地下通路のある場所へと向った。
その時、国民党の攻撃が始まった。激しい砲撃に地下通路の入口が破壊されてしまう。三好と伊波は脱出の手段をなくしてしまった。
仕方なく伊波はテレポートの能力を使い、際どく劉宗部軍本拠地から脱出した。
◇
上海は1840年の阿片戦争を切っ掛けにイギリスのバンドが成立
『閃光のナイトレイド』はそんな時代を舞台に活躍するスパイたちの物
キャラクターたちはそんな世界背景に対して主張しすぎず、むしろ埋
それでも活劇が始まると映像はダイナミックに飛躍し、キャラクターたちは異能の力を発揮して力強く際立ち始める。
『閃光のナイトレイド』の物語はほとんど説明がないままにスタートす
物語は冒頭から急転直下の勢いで流れていく。すでに事件の渦中で
映像への信頼と自信がなければそうそうできない演出であるし、『閃光のナイトレイド』は難しい課題を見事にクリアして独自の魅力を放っている。
1930年代の上海は、おそらくこれまでアニメに描かれなかった舞台であろうし、スパイものというジャンルもひょっとすると初めてかもしれない。
今、アニメの世界で主流になっているのは、いかに安易に描けるか、である。物語の背景となる世界をおざなりに描き、キャラクターの特徴は他作品でよく見かける言語イメージをカスタマイズして作っただけで独創や挑戦はどこにもない。机の上だけでいかに早く、簡単に、そこそこに黒字出せるものが作れるか。安易に考えて安易に作る。小さな市場の中で競い合って作品自体も小さく縮みかけている。
そんな最中だからこそ、『閃光のナイトレイド』の印象はより強く輝きだす。夜の闇を照らす、上海のネオンサイトのように。
◇
「劉一派の情報を、国民党に流しましたね」
三好は牽制するように尋ねた。劉宗武軍本拠地を襲った国民党の爆撃のことだ。
「国民党にとっても、劉は邪魔な存在だったからね。内と外、両面か
桜井は好々爺の調子で語り始めた。
「親切な話ですね。日本とは微妙な関係にある国民党に……」
「国是に反してはおらんよ。東アジアの安定と繁栄は理想だよ」
桜井が三好を振り返って答えた。
「……俺たちの目撃者を消すのが目的じゃないんですよね?」
三好は試すように、声のトーンを落とした。
「察しがいい。期待通りだ。君たちの力はそれ自体、国家機密だ。目撃者全員が死ななくとも、秘密が漏れる確率は少しでも減るほうがいい」
桜井の顔に油断ならない影が現れていた。
「君の胸に収めておけ。あの際、仕方ない。田舎軍閥とはいえ、兵隊はどこで死ぬかわからんものだよ。ご同様だよ。君たちや、僕も。そうは思わんかね。まあ、おかげで君らのいう要請を上層部に渡らせるこ
桜井は立ち上がり、三好に笑いかけた。
三好は桜井の前に進み出て、内ポケットからメモ用紙を引っ張り出した。
「いや、余禄はありますよ。鏑木会長のポッケから失敬しました。劉が鏑木財閥に発注した兵器の目録らしいですよ」
「なるほど。これは色々と使えそうだな。だが、なぜ僕に渡す気になったのかね?」
桜井はメモを受け取り、不思議そうに顔を上げた。
「味方と敵の両方に武器を売る鏑木のほうがよけい腹が立つ。あなたよりね」
三好は平然とした語り調子で、怒りを込めた。
不意に、三好が笑った。桜井は顔を上げて三好の顔を見た。今度は二人で笑った。
「君にはこれ以上、嫌われないようにしたいね」
桜井は愉快そうに言ってその場を去った。
「……食えない手合いばかりじゃないか。確かに、魔都だね」
三好は静かに呟き、ふわっと欠伸を漏らした。
閃光のナイトレイド 公式ホームページ
作品データ
監督:松本淳
キャラクター原案:上条明峰 キャラクターデザイン:佐々木啓悟
メインライター:大西信介 メカ・プロップデザイン:常木志伸
美術監督:谷岡善王 美術設定:金平和茂
音楽:葉加瀬太郎 門倉聡 音響監督:山田稔
撮影監督:那須信司 助監督:ヤマトナオミチ 色彩設計:中島和子
中国語指導:任暁剛 中国語翻訳:毛淑華
原作・アニメーション制作:A-1 Pictures
出演:吉野裕行 浪川大輔 生田善子 星野貴紀 大林隆介
〇 鏑木洋三 石原凡 篠原佐和 任暁剛
〇 凌慶成 斉中凌 国本直樹