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■2011/01/24 (Mon)
シリーズアニメ■
おんなのこって なんでできてる?
~Roses are red、violets are blue~
~Roses are red、violets are blue~

ぶかぶかなのを買ってもらったはずなのに、なんだか、窮屈に感じるなんて。
首のところを見たら、プラスチックの、板みたいなのが入っていたんです。
ベタッとくっついて、ヒヤッとして……。
でも、ちゃんと着なくちゃ。今日から中学生だから。
――おんなのこって、なんでできている?
問いかけなのか独白なのか、物語はその言葉から始まる。
女の子の服に憧れる少年。男の子の服に憧れる少女。
似ているようで、なぜか交わらない2種類の感性。二鳥修一と高槻よしのは小学生時代、恋愛感情を持って結びつきかけたが、今は少し距離を置いている。といっても、関係が破綻したわけではない。“恋人”の距離からもう一歩遠ざかって、“親友”をやり直しているところだった。
そんな2人が、中学校に入学するところから物語が始まる。
中学――小学生の頃と違って、社会が性の差を明確に区分けする
しかし主人公である二鳥修一は、男でありながら女性という社会的性――とりわけ女性服に憧れを抱いている。一方高槻よしのは、男性服に憧れを持っている。
だが、『放浪息子』が描いているのはどうやら性の不一致の問題で
詰襟はベタッと首にくっついて気持ち悪い。ぶかぶかのはずなのに窮屈で、息苦しいものすら感じさせる。あれを毎日着なくてはならないと考えた時、心底ゾッとした気持ちになる。
それが現代の男性像――と、そう自覚している人は(多少は)いるかも知れない。
その一方で、女性は自由で解放的で、現代ほど快活に毎日を過ごしている時代はないだろう。
一方の男性は、社会的抑圧の強さは相変わらず変わらず、公共的な
今、何よりも自由で何の社会的拘束も制限もなしに時代を謳歌してい
そんな女性であることの自由さと美しさに憧れることに、どんな不思議があるのだというのだろう。
男性であるからには――結婚して、家を建て、車を運転すべき。あまりにもわかりやすい価値意識がそこにあり、その流れにうまく乗ってさえさえいれば、自分で考える必要もなく、価値意識の良い悪いを
だが、そんな都合のいい価値意識はとっくに崩壊した。そのくせに社会は、男性であることの立場や態度といったポーズを要求する。ぶ
だから、もっと自由になりたい。性という絶対的な規範の向こう側へ飛び越えて、自身を解放させたい。今の自分は社会的性がそう要求しているから、上っ面だけで演じているだけだ。社会的な性は、もはや「抜け殻」のようなものでしかない。本当の気持ちは、男
でもそんな心理的欲求を社会は決して受け入れない。ここぞとばかりに前時代的な権威主義が猛威をふるって、その個人と欲求を徹底的に陵辱し、破壊しようとする。
だから二鳥修一と高槻よしのの2人は、密やかにお互いの願望を満たしあっている。恋心も同時に一歩一歩進めながら。
映像が美しい作品だ。キャラクターの線はカーボン転写したセル画をイメージした線ではなく、鉛筆のざらつきをわざと残し、色の境界線には手塗りふうの塗りむらを残している。まるで、一枚一枚を筆で塗ったかのような柔らかい色彩だ。
そんな淡い印象で貫かれた映像の中を、キャラクターの独白と、ピアノの淡々としたメロディが彩りを与えている。混乱の少ない静かで淡々とした物語だが、淡い映像と独白とピアノの演奏が、思いがけないビビッドな心象風景を持った作品にしている。
最近のアニメーション作品では群を抜いて“美しい”と言える作品だ。間違いなく、今期最強のダークホースだろう。
作品データ
監督:あおきえい 原作:志村貴子
シリーズ構成:岡田磨里 キャラクターデザイン・総作画監督:牧野竜一
小物設定・衣装デザイン:松本昌子 メインアニメーター:サトウミチオ
美術監督:伊藤聖 美術設定:児玉陽平 編集:右山章太 色彩設計:大内綾
コンポジットディレクター:加藤友宜 CGディレクター:松浦裕暁
音響監督:明田川仁 音楽プロデューサー:佐野弘明
音楽:神前暁 岡部啓一 アニメーションプロデューサー:長野敏之
アニメーション制作:AIC Classic
出演:畠山航輔 瀬戸麻沙美 南里侑香 南條愛乃 井口祐一
○ 千葉妙子 豊崎愛生 水樹奈々 堀江由衣 松岡禎丞
○ 水原薫 本田貴子 宮坂俊蔵 小堀友里絵 高岡瓶々
○ 寿美菜子 鈴木恭輔 室元気 栗山拓也 佐倉綾音
■2011/01/21 (Fri)
シリーズアニメ■
第1話 出会い
すぐにIPodがSDメモリーを認識した。古いものだけど、ちゃんと動きそうだ。クレインは背もたれに肘を乗せ、期待をこめて画面が何か表示するのを待った。
間もなくディスプレイにスタートウインドウが浮かび上がった。クレインはカーソルを動かし、OKサインをクリックした。すると、目の前に3D画像が飛び出してきた。
にわかに興奮してきた。クレインは背もたれにゆったりと体を預け視線を上げると、立体ウインドウを指先で目の高さまで持ってきた。
「……フラクタルは22世紀の科学を持ってネットワーク化された数兆の計算機の総体です」
クレインは、がっかりした溜め息を漏らした。
「何だ、教科書か。音楽データだったらよかったのに」
クレインはもう興味をなくして、空中に浮かんだ映像から視線を外した。それでも古いデータは、記録された通りの映像と音声を続ける。
「フラクタル・ターミナルを体内に埋め込み、高高度浮遊サーバにライフログを定期的に送信することによって、全ての人々が平等に基礎所得を受け取ることができます。働かなくても生活が保障される、争いとは無縁の世界。フラクタルこそが人類が生み出した、22世紀の神なのです……」
「フラクタル・システムが確立されたばっかの頃か。古典もいいところだな」
ぼんやりと、教科書に対する感想を告げる。
……この教科書の望む未来は確かにやってきた。おっしゃるとおり、ほぼ快適。誰かと触れ合わなくても、大抵うまくやっていける。ちょっと退屈ではあるけど、これ以上の何かがあるとは思えないし……。
クレインはゆったりと背伸びして体をほぐすと、さらにあくびを浮かべた。見える範囲に人はいない。というより、周囲に人の気配すら感じない。
たった一人。一人だけど、フラクタル・システムと常に繋がって、ドッペルを通していつでも交流できる。
幸福で望むべき未来。そう、きっとこれでいいんだ。
いつの間にか音声が途切れて映像も消えていた。考え事をしているうちに、終わってしまったらしい。クレインは代わりにいつもの音楽をかけた。
不意に、耳元で鐘の音がした。
「5時の祈りの時間です。あなたの現在位置から導き出される僧院の方角は、右方向約10度です。さあ、祈りをささげましょう」
「はいはい」
クレインは誰となく返事をして、ベンチから立ち上がると、指示のあった方角を振り向いた。
多少めんどうといえば、これだ。フラクタル・システムが神だとしたら、ライフログを送る行為は祈りである。こうしてフラクタル・システムの方向をまっすぐに見て個人データを送信する。そうすることで、フラクタル・システムの恩恵を永続的に受けることが可能になるわけだ。
「……まばたきをせず、おだやかに……」
フラクタル・システムの声が、クレインに指示を与える。クレインは言われた通りに、目の前の水平線をじっと見つめていた。
すると、何かが視界の端に紛れ込んできた。
何だろう?
クレインははっと身を低くした。グライ
クレインは振り返った。グライダーは少し向うを行ったところで、急速に方向を変えている。
「何だ?」
にわかに胸の奥がそわそわするのを感じた。少なくともここ何年かは体験していない動揺――困惑だった。
突然に、頭上を爆音がかすめた。慌てて頭を抑える。何か、大きなものが通り過ぎた。
通り過ぎたのを確認してから、クレインは目を開けて、何かに目を向けた。小型の飛行艇だった。操縦席に、何人かが乗っている。
飛行艇は少し進んだところで方向を変えて、さっきのグライダーを追跡した。
何だろう? 何が起きた?
何もわからないままに、クレインは茫然と目の前で起きる事件を見ていた。
グライダーに乗っているのは――女だ。青い僧院の装束を身にまとい、亜麻色の長い髪を風にな
突然に、爆音が轟いた。飛行船が銃撃を放ったのだ。銃弾の軌跡がグライダーを狙う。グライダーは左右に体を揺らし、銃弾をかわした。
それで、ようやくクレインははっとした。
「大変だ!」
と、車輪に何かがぶつかった。自転車が跳ね上がった。身を守る間もなかった。全身が石垣の向うに放り出され、体を草むらにぶつけ
「あいって!」
クレインは短く悲鳴を上げて、身を起こそうとした。
その時、目の前をグライダーが通り過ぎた。行ってしまう。そう思ったけど、グライダーの女がクレインに気付いたように旋回して戻ってきた。クレインは顔を上げて、女がどうするのか見守った。
「――え?」
次に女は、ハンドルから手を離し、両手を大きく広げた。そしてそのまま、グライダーから落ちた。
でもクレインはあまり驚かなかった。そんなはずはないとわかっていたけど、でもその時、彼女は飛べるのかもしれないって思ったから――。
そこは遥かな未来。22世紀、フラクタル・システムと呼ばれるコンピューターが完成し、人々は働かなくてもよい未来を獲得した。フラクタル・システムとさえアクセスしていれば、最低限の住処と食事と医療が保障される。と同時に、フラクタル・システムは人との接し方、社会性すらも激変させてしまった。
『フラクタル』の映像の中に、生身の人間はごく少数しか登場しない。クレイン自身と少女フリュネ、それからフリュネを追跡する謎の3人組。あとはほとんどがドッペルと呼ばれるアバターで間接的に接するだけだ。家族すらドッペルを通じて断片的に時間を共有するだけで、夫婦間ですらお互いがどこにいるかも感知していない。おそらくは深く探らないことが、『フラクタル』の時代における礼儀のようなものなのだろう。
家族すらも、フラクタル・システムが提示する役割でしかない。ただ“役割”という虚ろな役割意義(あるいは義務)だけが、家族を結び付けているだけなのだ。
すべてがフラクタル・システムと呼ばれる巨大なシステムに隷属する一断片に過ぎない。人間も動物も風景も、何もかもがフラクタルが作り出す無限大の細密さと情報量を持つパターンの一つなのだ。
それを映像として観察したとき、まるで万華鏡のように見える瞬間
『フラクタル』は目に映る総て――おそらくは自然の現象すらも何もかもがフラクタル・システムに隷属し、総てが同様のパターンを描き、システムの構造の中に隷属しているのだ。
他人の意識や思考は決して理解することはできない。他者とは基本的に不愉快な対象なのだ。だからこそ社会性という緩衝材が必要なのであり、人は人生の初めに相当な苦労をして社会性を身につける訓練を必要とし、不完全ながらエゴを妥協する術を身につける。
だが一方で人は他者という存在、あるいは他者という反応を求めて
人は他者を求め、他者にすがり、あるいは性的充足のために利用し、あるいは協力し合う。
フリュネはおそらくフラクタル・システムに隷属しない異物――フラクタルに対するカオスなのだろう(Wikpedia:カオス理論)。
何もかもがフラクタルに隷属し、総てがフラクタルの一断片として共有されている世界において、フリュネは小さなカオスであり、そのカオスに感化されたクレインは、やがてフラクタルという巨大なシステムを侵食し、ついには世界をカオスに飲み込んでいくのだろう(フリュネはフラクタル・システムの許容を超えた小さな他者であるのだ)。それはフラクタル・システムという揺り篭の世界に対する、思春期らしい自我と反抗の目覚めである。
もっとも、《物語の構築》は日本のアニメの問題点の一つであり、致命的な弱点でもある。日本のアニメのほとんどは物語の構想が不
果たして『フラクタル』はどのように物語を構想し、どんな結末を目指して進行していくのか。もしかしたら克目すべき傑作になるかもしれないし、大きな変化もない拍子抜けの駄作になるかもしれない。何もかもはこれからである。
作品データ
監督:山本寛 原作:マンデルブロ・エンジン
シリーズ構成:岡田磨里 ストーリー原案:東浩紀
キャラクター原案:左 キャラクターデザイン・作画監督:田代雅子
セットデザイン:青木智由紀 イノセユキエ プロップデザイン:田中祐介
メカニックデザイン:林勇雄 美術監督・イメージデザイン:袈裟丸絵美
色彩設計:中島和子 撮影監督:石黒晴嗣
音響監督:鶴岡陽太 音楽プロデューサー:佐野弘明 音楽:鹿野草平
音楽制作:フジパシフィック音楽出版 ソニー・ミュージックエンタテインメント エピックレコードジャパン
アニメーションプロデューサー:清水暁 プロダクション協力:Ordet
アニメーション制作:A-1ictues
出演:小林ゆう 津田美波 花澤香菜 井口裕香 宮下栄治
○ 近藤浩徳 木村雅文 吉田安愉子 松丸幸太郎 倉富亮
○ 松嵜麗 丸山ゆう
■2011/01/14 (Fri)
シリーズアニメ■
第1話 夢の中で会った、ような・・・
まるで目眩を引き起こしそうな心地だった。でも私は足を止められなく
呼吸が苦しくて、今にも途切れてしまいそうだった。私はどこに行くつもりなのだろう。何もわからないのに、でも確かなものを胸に抱きながら、私は走っていた。
どうしよう。どこにいけばいいんだろう。どの廊下も行く先の見えない果てへ続いている。
私は困惑を覚えて足を止めた。きょろきょろと、3方向の階段を見比べた。
ふと左の階段の先に、扉があるのに気付いた。扉の上に、「EXIT」と書かれたプレートがつるされて、ぼんやりとした緑色の光を投げかけていた。
少し長い階段だった。34、5……40。一段一段が高くて、目眩を引き起こしそうだった。
ようやく階段を上り詰めて、扉の前に立った。取っ手をつかみ、力をこめる。重い扉だった。ちょっとの力ではぴくりともしなかった。
やがて扉の向こう側で、ガシャと何かが動く感触があった。扉は急に軽くなって、私は一気に扉を全開にした。
私はくらくらするのを感じながら、欄干の前に進んだ。見下ろすと地上は遥か下で、暗闇に埋没しかけた歩道の街灯が、赤く明滅しているの
何が起きたのだろう。ここはどこなのだろう。私は茫然とする思いで、真っ黒に沈む空を見上げた。そこに、太陽の輝きも月のぬくもりもなかった。
女の子だった。灰色の制服を着て、闇に溶け込みそうな長く黒い髪をなびかせながら、女の子が飛んでいた。
その女の子の前に、巨大なコンクリート片が飛びついた。女の子はためらいもなくコンクリート片に突っ込んだ。コンクリート片が高層ビルにぶつかり、派手に黒煙を吹き上げた。周囲にびりびり振動が広がる。私は転びそうになって、欄干にすがりついた。
女の子は?
振動が去ると、私はすぐにあの女の子を探した。女の子は黒煙から逃れて、再び空を飛んでいた。でも赤い光が女の子を次々と襲い掛かる。女の子は赤い光を避けながら、まっすぐどこかを目指すように飛んでいた。
私はぽつりと呟くように口にした。
「勝てないよ。彼女一人では荷が重すぎた。でも、彼女も覚悟の上だろう」
言葉を返すように、側で声がした。
はっと振り向くと、側の瓦礫の上に白い仔猫のような生き物が座っていた。
私は言葉を話す仔猫に疑問を持たず、必死に訴えかけるように身を乗り出していた。
「諦めらそれまでだ。でも、君なら運命を変えられる」
生き物の言葉にためらいはなく、不思議な力強さをもって私に語りかけてきた。
不意に炸裂音が轟いた。激しい振動が周囲を揺らす。私は耳を閉じて、その場でしゃがみこんだ。
あの子は?
振動が去ると、すぐにあの女の子の姿を探した。女の子はダメージを受けて、太い根っこのようなところに倒れ、ぐったりとしていた。
女の子が私に気付いたように、顔にはっとしたものを浮かべた。それから何か訴えかけるように、口を大きく開けて、呼びかけるようにした。しかしその声は、周囲の轟きにさらわれて、何も届いてこなかった。
白い仔猫はさっきの続きを話した。
「本当なの? 私なんかでも、本当に何かできるの? こんな結末を変えられるの?」
私は仔猫を振り向き、ふらりと一歩その前に進んだ。
「もちろんさ。だから僕と契約して。魔法少女になってよ」
まるで今が夢の世界のようなぼんやりした心地だったけど、次第に体の感触がはっきり目覚めてきた。私はうさちゃんを抱いたままゆっくりと身を起こし、ため息を漏らした。
「……夢オチ?」
物語のあらすじだけを追うと、それまでに作られてきた夥しい数の魔法少女アニメに
主人公まどかの住まいは、目の錯覚を起こしそうな幾何学的な直線を組み合わせて構成されている。インテリアはもっと前衛的で、家具の一つ一つが慎重な感性で選択され、描かれている。傑出しているのは夥しい数の窓ガラスと鏡で構成された洗面所だ。カットが変わるたび
学校のシーンもそこは我々が知っている無骨なコンクリートの構造物ではなく、全面ガラス張りの教室というユニークな構成で描かれている。教壇に貼り付けられているのは黒板やホワイトボートではなく、タッチディスプレイだ。
キャリアウーマンとして一家の稼ぎ手となっている母親。主夫として家庭を守っている父親。まだ言葉が自由に話せない弟。そんな中にいて、家族と良好な関係を持っている主人公のまどか。
そんな様子の一つ一つを、およそ3分という時間をかけてじっくり描い
しかしそんな中だからこそ、少女たちはその空間が持っているパースティクティブから解放され、軽やかに舞い、蠱惑的な魅力とともに無限の力を放つ。
戦いの場面をクローズアップすると、そこは暴力的なイメージが容赦なく描かれる場所であり、さらに作家の感性が極限までに試される場所
『魔法少女まどか☆マギカ』は一見すると幼児向けアニメの外観を装った作品であるが、その実体はまったく別で、美しい少女たちもパースティクティブを無視した舞踊のようなアクションのイメージも、より先鋭化していく作家のスタイルを強調するのに必要な素材の一つでしかない。
しかし、原作がないという状況は制約がないということである一方、物語の手本となる骨組みがないということでもある。オリジナルストーリーはエピソード一つ一つが描くイメージは素晴らしくとも、作品全体がもつ大きなビジョンにはなかなか至らない場合が多い。『魔法少女まどか☆マギカ』はどのように物語を押し進め、最初に描かれたイメージがどのように変質し、どんなビジョンに到達させようとしているのか。その計画がなければあっけなく破綻するのが、オリジナルストーリーの難しいところだ。とにかく、心して見守って行きたい作品である。

作品データ
監督:新房昭之 原作:Magica Quartet
キャラクターデザイン:岸田隆宏 総作画監督:谷口淳一郎 高橋美香
シリーズディレクター:宮本幸裕 アシストディレクター:阿部望 神谷智大
レイアウト設計:牧孝雄 異空間設計:劇団イヌカレー
美術監督:稲葉邦彦 金子雄治 美術設定:大原盛仁 色彩設計:日比野仁 滝沢いづみ
編集:松原理恵 ビジュアルエフェクト:酒井基 撮影監督:江藤慎一郎
音響監督:鶴岡陽太 音楽:梶浦由紀 音楽制作:アニプレックス
アニメーション制作:シャフト
出演:悠木碧 斎藤千和 喜多村英梨 水橋かおり 加藤英美里
○ 新谷良子 後藤邑子 岩永哲哉 岩男潤子 松岡禎丞
■2010/08/10 (Tue)
シリーズアニメ■
第1話~第5話までのあらすじ
ある日の午後。小室孝は授業に出席せず、高校の片隅で退屈な時間を過ごしていた。
ふと、校門に不審者が現れる。教師たちの何人かがやってきて、不審者を追い払おうとする。しかし、何か様子がおかしい。
突然、不審者が教師に噛み付いた。悲鳴が上がり、派手に血が吹きあがる。噛み付かれた教師は、その瞬間、絶命してしまった。
だがその直後、死んだはずの教師が起き上がった。意思がないみたいにふらりふらりと足取り危うく歩き、他の教師に襲い掛かり、体に喰らいつき肉を貪る。
何かが起きた。
その様子を見ていた小室孝は、ただちに行動に移す。授業中にもかかわらず教室の中に飛び込むと、幼馴染の宮本麗と、親友の井豪永を連れて脱出を試みる。
学校内は瞬く間が感染が広がり、〈奴ら〉がうろつく修羅へと変わってしまった。小室と宮本、井豪は、〈奴ら〉から逃れつつ屋上へを目指す。
ようやく屋上の給水タンクまで辿り着いたが、井豪が〈奴ら〉に噛まれ、死亡してしまう。死亡してまもなく井豪は〈奴ら〉と同じように、生気のない顔になって、ゆらりと起き上がった。小室は覚悟を決めて、井豪の頭をバットで叩き割る。
一方その頃、学園内の各所でそれぞれの活動が始まろうとしていた。
高城沙耶は平野コータと共に武器を作り、脱出を試みる。
古武術の心得のある毒島冴子は、保険医の鞠川静香を危機から救い、職員室を目指す。
屋上に逃れた小室は、ここに篭城し続けても、いつかバリケードは突破されるし、食糧の蓄えがないと気付く。ここから脱出しなくてはならない。
小室と宮本は、意を決して屋上から脱出する。〈奴ら〉との危険な戦いを潜り抜けつつ、高城沙耶や毒島冴子たちと合流し、職員室に逃げ込む。
そこで、テレビ放送で世界中で〈奴ら〉による襲撃と蹂躙が始まっている事実を知る。学校に篭城していても、いつか〈奴ら〉に襲われ、殺されるだけだ。小室たちは、そこに集った全員と協力し合うことを誓い、マイクロバスで脱出する計画を立てる。
〈奴ら〉を撃退しつつ学校内を進み、ようやくマイクロバスの前まで辿り着く小室たち。すると、そこに生き残りである紫藤浩一と数名の生徒が同乗を求めて飛び込んできた。小室は紫藤たちをバスに乗せて、学校から脱出する。
しかし間もなく紫藤の存在に不満を訴えた宮本が、単独でバスから飛び降りてしまう。小室は毒島と合流する約束をして、宮本を追いかけてバスを降りる。
小室と宮本は、〈奴ら〉の襲撃を退けながら、落ちていたバイクを手に入れて合流地点を目指して走る。
高城たちは小室と合流する約束だった場所を目指して橋を渡ろうとするが、〈奴ら〉に取り囲まれ危機を迎える。
何とか合流できた小室と高城たち。鞠川が、近くに知り合いのマンションがあるから、そこを目指そうと提案する。一同はしばしの休息を求めて、マンションを目指すが、そこもすでに〈奴ら〉の巣窟となっていた……。
ゾンビというキャラクターが日本の作品で描かれる機会はあまりない(作品中では〈ゾンビ〉とは言及されず、あくまでも〈奴ら〉としている)。制作されてもB級映画かゾンビ映画パロディくらいしかない。どうしても、本家ゾンビ映画の模造品か亜流品などで、なかなかゾンビというキャラクターが受け入れることができなかった。
というのも、ゾンビというキャラクター自体が、西洋文化特有のものだからだ。ゾンビは西洋社会が生み出し、育んでいったキャラクターだ。それに、宗教観の違いも少なからず影響しただろう。西洋では死体は焼却せず土葬し、来るべき審判の日に備えるという。そしてゾンビ映画の背景にいつも語られるのは、その審判の日がついにやってきて、罪深き人々が罰を受けてゾンビにされて土の中から甦ったのだ、という解説だ。
ゾンビというキャラクターの発想自体が、西洋文化、宗教が背景にあるわけで、だから日本で描こうとしても、どうしても本家を手本にした模造品、亜流品にしかならないのだ。
かつて三池崇史監督が『スキヤキ・ウエスタン・ジャンゴ』という西部劇映画が制作した。この映画、舞台はどうやら日本らしく(“根畑(ネヴァダ)”という名前の宿場だ)、出演者はすべて日本人。なのに、なぜか台詞はすべて英語という奇妙な映画であった。
なぜならば、西部劇は英語文化が生んだエンターティメントだからだ。銃社会ですらない日本で、日本人が西部劇を演じても決して本物らしくはならない。だから、ここは日本だが日本ではないどこかという場所をでっち上げて、出演者は国籍不明状態で英語を演じたのだ。
「SF映画は英語圏文化の産物であって、日本語で撮影できない」
というのは、映画『アヴァロン』を制作した押井守監督の言葉だ。日本には日本特有の文化があり、日本人が演じる限り、その立場は守るべきである。その歴史的範疇から外れた作品をいくら努力しても、決して望んだ形で実現し得ない。
ゾンビ映画も同じだ。日本人が描くべきではない。
だが、そこは日本のアニメ・漫画である。日本のアニメ・漫画にはあらゆるものを飲み込む土壌がある。何でもあり、でたらめさ、現実の原理や概念など軽く飛躍し、ロボットでもモンスターでも妖怪でも忍者でも、何でも一つのフィールドの中で表現できる。
何でもありを60年続けてきたからこそ、自由な発想で何でも取り込んで、その作品におけるリアリティに異質なものを同居させられるのだ。
だからこそ、『学園黙示録』というゾンビ漫画・アニメがあり得たのである。
しかし、ゾンビを絵画世界で描く試みはそれ自体が難題であるはずだ。日本の漫画キャラクターは基本、人形を素体にしている。ゾンビのようなグロテスクな側面を強調した「生きる屍」のような描写は、日本の漫画のタッチでは難しいはずだ。
それに、ゾンビに襲われ、取り囲まれるという緊張感を描き出そうとしたら、技術面で相当の実力が必要になってくる。
しかもそれをアニメシリーズで描こうというのだ。高いクオリティを維持し続けないと、即座に緊張感を失ってしまうし、誰も続きを見ようとはしないだろう。物語の展開と共に、作画の高さが頼りなのだ。描写に一瞬の隙があってはならない、という難題を宿命付けられた作品だ。
『学園黙示録』に登場する女性キャラクターは最低でもバストサイズが83(毒島冴子 それでもDカッ
第1話においては、ゾンビに襲われる学校生徒はほとんどが女性キャラクターであり、その描写は異形の何かに襲われる恐怖感以上に、強姦を連想させるように描かれている。
だが、むしろそういったセクシャリティがこの作品の
ゾンビ映画の原点であるジョージ・A・ロメロの作品を見ると、意外なくらいゾンビが登場してこないとい
ジョージ・A・ロメロ作品では、ゾンビ以上に、異常な閉鎖状態で取り残された人間の描写を重視している。ゾンビという特殊状態に取り囲まれ、死という危険そのものに直面した人間が密室でどのように行
動し、葛藤を抱き、恐慌状態に陥るのか。
ジョージ・A・ロメロ作品は人間に重心を置いて、ゾンビ映画という状況を描く。
という前提でゾンビ映画というものを考えると、ゾンビ以上に人間の心理や集団が作りだす社会を中心に描くのは、源流に則っていると考えてもいいかもしれない。
ゾンビ映画はシリーズ化する場合が多いが、基本的に2時間で完結する。2時間で完結するという前提だから、主要となる舞台はたった一つだけ。大抵は、その小さな場所で作り上げた社会が限界を迎え、崩壊する結末で終わる。
しかし『学園黙示録』は大胆に最初の舞台から飛び出し、ゾンビの出現によって社会がどのように変質し、事態に対して対処しようとしているのか、その描写を一つ一つ取り上げていく。
2時間作品なら恐らく学校に篭城するだけで物語は終わっただろう。だが『学園黙示録』は面白いくらいに主人公たちの活動範囲が広げられ、社会が描かれ、物語の舞台を次々と移していく。たった2時間という範疇をはるかに飛び越えた物語展開が期待される作品だ。
果たして『学園黙示録』の物語がどのような結末を迎えるのか――。そもそもゾンビ映画は結末を――エピローグが描かれることはなかった。ある程度の希望的観測や、あるいは全員死亡という絶望が描かれるだけである。
ゾンビに取り囲まれている、という状況の向こう側を描いた作品が(多分)皆無なのだ。それは、シリーズではなく2時間作品だから、じっくり描きこめないという弱さがあるためだろう。
『学園黙示録』は史上初めて描かれたゾンビ・シリーズ作品である。ただどこかから脱出するだけの作品ではないだろうし、それで終結するだけの作品など誰も期待していないだろう。長編ならではの、エピローグのある作品が期待されているはずなのだ。
2時間作品では決して描かれない領域がきっとあるはずだ。ゾンビという異常状況の向こう側にいったい何があるのか――。続きの物語を期待して待ちたい作品だ。
学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD 公式ホームページ
学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD ニコニコチャンネル
作品データ
監督:荒木哲郎 原作:佐藤大輔 佐藤ショウジ
シリーズ構成・脚本:黒田洋介 キャラクターデザイン・総作画監督:田中将賀
サブキャラクターデザイン:落合瞳 プロップデザイン:新妻大輔
美術監督:川本亜夕 色彩設計:橋本賢 撮影監督:山田和弘
音響監督:たなかかずや 音楽:和田貴史 編集:肥田文
アニメーション制作:マッドハウス
出演:諏訪部順一 井上麻里奈 竹達彩奈 沢城みゆき
〇 谷山紀章 喜多村英梨 竹内順子 檜山修之
〇 福井裕佳梨 宮野真守
■2010/07/16 (Fri)
シリーズアニメ■
第1章 森島はるか編 アコガレ
辺りは暗く暮れかけている。影を落とした雲が、空を早く流れていた。
広場には、若い男女がそわそわした顔で待ち合わせていた。クリスマスだから、広場にはいつになくカップルで溢れている。僕はそんな人たちに混じって、彼女を待った。
何となく浮きだった様子の広場は、次第に人の数が減り、静かな寂しい空気を残し始めた。そんな場所に、僕は1人で取り残されてしまっていた。
欄干にもたれかかって、そこから街の風景を見下ろした。もう夜の帳は下りていて、きらきらした光がビルとビルの谷間を巡り始めていた。
腕時計をちらと見る。僕は約束の1時間前にこの広場にやって来た。それで、今は約束の時間を過ぎてしまっていた。
僕はもう一度広場を振り返った。広場にはもう誰もおらず、何もない空間を、ただ光が照らしているだけだった。
おかしい。時間も待ち合わせ場所も合っているはずなんだけど。
その時、音を立てて渦を巻いていた風が、際立って冷たくなった。振り返ると、雪が降り始めていた。夜の闇の中を、白い雪がちらちらと浮かび上がっていた。
それでも僕は、そこで彼女を待ち続けていた。でも、彼女はついに現れることはなかった。
「にいに! もおぅ、また押入れにこもって。早く起きないと遅刻しちゃうよ!」
妹の美也の声が飛び込んできた。押入れの中に、鈍い光が射し込んできて、僕の暗澹とした気持が妨害されてしまった。
僕はうんざりしながら重い体を起こし、戸を閉じた。
「うう……。にいに!」
「うるさい。僕はまだ寝ていたいし、ここから出たくないんだ。外は寒いし」
僕はぼんやりした声を漏らし、再び憂鬱な気分に沈む体勢を作った。
「暖房つければいいのに……」
美也が小さく不満を漏らすと、何か思いついたように「にしし…」と笑った。
美也が引き戸の取っ手を掴み、開けようとした。
僕は慌てて反対側の取っ手を掴み、閉めようとした。
「こら、やめろ! 入るな。これは僕1人で鑑賞する作品なんだ!」
がたがたと引き戸を揺らしながら、僕と美也は押し合い引き合いをはじめた。
「うるさい!」
「にゃあも入るの~!」
「わかった、もう出るから」
僕は観念して、引き戸を離した。戸がガラッと全開になり、それに釣られて美也がばたんと倒れた。
僕は欠伸をして押入れから顔を出すと、床に倒れたままになっている美也を見下ろした。
美也が慌てて起き上がり、スカートで剥き出しになった太ももを隠した。
「にいにのバカ!」
美也は髪をくしゃくしゃにしながら、僕に向って頬を真っ赤に膨らませていた。
◇
空想の物語は、失われた十代を取り戻させ、コンプレクスを癒し、あるいは永続的な思い出として残留させる。
失ったモラトリアムと、モラトリアムの再生。『アマガミSS』は十代にありがちな精神と葛藤、挫折、あるいは幸福の達成
言うまでもなく、橘准一の人物像には、見る側が意識を投影できるように設計されている。これは誰かの物語ではなく、あなた自身に向けられた物語である。
主人公の少年を中心に1人置き、その周辺を取り囲むように少女たちを配置する。今どきありがちな作品の構造を、そのまま捻りなく踏襲している。
少女たちは個性的で、自己主張が強く、その造形に作者の
『アマガミSS』は創作的に世界を構築した作品ではなく、普遍的に作られてきた作品の一形態であるのだ。
空間への意識が弱く、キャラクターの立っている位置が曖昧に描かれてしまうことがしばしばある。それに釣られるように、演技も平坦で単調になりがちだ。主人公の目線を意識したクローズアップの多さも、むしろ平坦さを増幅させてしまっ
人間の四肢の描き方も危うい。場面によって、胴体に対して手足が大きくなったり、小さくなったりと不安定だ。
空間と人物の捕らえ方を漫然と描いてしまっていることが、世界構造の弱さに繋がってしまっている。
◇
石畳で舗装された中庭は、中央で丸く切り取られ、水が張られていた。その水の淵に、森島先輩が1人きりで腰を下ろし、静かな佇まいで水面を眺めていた。
水面に宿した夕暮れの黄金色が、森島先輩の半身をきらきらと浮か
僕はそんな森島先輩の佇まいを見て、密かに胸をドキッとさせた。それはあまりにも美しくて、僕の気持ちを強く掴んでしまっていた。
不意に、森島先輩がくしゃみをした。そのくしゃみの声で、僕ははっと我に返った。
「先輩。これ、どうぞ」
僕は森島先輩に近付き、おずおずとカイロを差し出した。
「橘君。使い捨てカイロ?」
「風邪、ひいちゃいますよ」
「ありがとう。優しいのね」
森島先輩が暖かな微笑みを浮かべた。
森島先輩の手が僕の手に重ねられ、カイロを手に取った。ほんの一瞬、僕は掌に森島先輩の生々しい存在を感じて、ドギマギとしてしまった。
「な、何をしていたんですか」
緊張をごまかすように、なんでもない話題を始めた。
森島先輩が水面を振り返った。水面は黄金色を宿して、ゆらゆらと揺れていた。水の輝きが森島先輩の顔を白く浮き上がらせ、何となく寂しく見える表情を克明にさせていた。
「水、ですか?」
「うん。私、水を見るのが好きなの。海とか川とか、噴水とか」
僕は納得する気持で、頷いた。
「そういうふうに言ってくれるのって、響と橘君だけかも。優しいのね。このこの」
森島先輩は顔を上げて、おどけるように僕のお腹を軽く叩いた。
「そ、そんなことないです」
僕はドキドキしながら謙遜した。
不意に森島先輩は、まるで僕を試すかのような緊張をまとって、僕をじっと見詰めた。
「――え?」
僕は答えられず、恥ずかしくなって目を逸らした。
「なんちゃって」
森島先輩はふっと噴出した。
「そうよね。残念。……あったかい」
森島先輩は再び水面に目を移し、頬にカイロを当てた。
僕は、ドキドキと胸が高まってくるのを感じた。胸の底から何度も強い意思が浮かび上がったけど、その度にためらいが押し戻そうとした。
風が吹いていた。森島先輩の顔に映った光が、僕の感情を移すように揺れていた。森島先輩は風に吹き上げられそうになる髪を、そっと押えた。
僕は風が吹いて、過ぎ去るまでの間、ずっと葛藤していた。だけどある瞬間、決心が躊躇いを押し返した。
「好きです」
思い切って、僕は口にした。
「え?」
森島先輩が髪を押えながら、僕を振り返った。
「僕、森島先輩のことが好きです」
胸の中がかーっと熱くなっていた。でも、僕の気持ちは、抑えられなかった。
森島先輩は上目遣いになって、じっと僕を見詰めた。大きな瞳が、じっと僕を突き刺すように向けられる。
「はい! 本気です!」
躊躇いなく――というより、勢いに任せて捲くし立てていた。
「そうなんだ」
不思議な緊張が、僕たちを支配していた。森島先輩はふっと緊張を取り払うと、さっきまでのやり取りがなかったみたいに立ち上がった。
「橘君って、思っていたより男らしいんだね」
「そうですか」
照れて微笑を浮かべる。
森島先輩が僕を振り返り、楽しげに微笑んだ。
「うん。ちょっとびっくりしちゃった。ありがとう。凄く嬉しい」
「先輩……」
ということは……。この感じは……。
でも森島先輩は、ふとそっぽ向いた。
森島先輩は、残念でした、という感じで僕を振り返り、笑いかけた。
「そうなんですか」
僕はふらふらと下がり、愕然とする。
「うん。それじゃまたね、橘君。あ、カイロありがとう。凄く暖かいよ」
僕は茫然とする思いで、ずっと森島先輩の後ろ姿を見送った。森島先輩は向うの建物の陰に消えてしまった。それでも僕は、いつまでも茫然と見ていた。
何となく、冬の風が僕の裸の心をそっと撫でて、そのまますっと過ぎ去った、という感じだった。
それから、少しずつ僕に思考が戻ってきた。
僕、振られちゃったのか? ていうか、告白しちゃった?
いやいや、告白じゃないよ、今のは。今のは……とりあえず、帰ろうか。
アマガミSS 公式ホームページ
作品データ
監督・シリーズ構成:平池芳正 原作:エンターブレイン
スーパーバイザー・構成協力:高山箕犀 坂本俊博 キャラクターデザイン:合田浩章
美術監督:高橋麻穂 色彩設計:松山愛子 編集:廣瀬清志
コンポジットディレクター:加藤友宜 CGディレクター:松浦裕暁
音楽:大森俊之 音響監督:飯田里樹 音響効果:奥田維城
アニメーション製作:AIC
出演:前野智明 伊藤静 名塚佳織 新谷良子
〇 佐藤利奈 今野宏美 阿澄佳奈 寺島拓馬
〇 浅川悠 早水リサ 久保田竜一