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■2016/08/10 (Wed)
第7章 Art Loss Register

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33
 ツグミは杖の柄に両掌を置いて、じっとヒナの作業を見守った。心に何も浮かばなかった。ヒナの作業は、順調に続いた。間もなく溶けた絵画の下から、別の色が現れた。
 絵画の中央辺りだ。川村の絵と、明らかに質感の違うイエローだった。よく見ると、服の袖部分だとわかった。
 ここまで来て、ヒナは作業を中断させて、ツグミを振り返った。ツグミは無言で頷いた。
「ツグミさん……どうして、わかったんですか」
 木野は困惑して、ツグミを振り返った。素人の木野にも、状況はわかるらしい。しかし釈然としない様子だった。
 ツグミは杖に体重を預けて、席を立った。
「この絵に、チェンバロが描かれているのを見付けた時から、変な絵だなと思っていたんです。これはルッカース製のチェンバロで、17世紀の初め頃に作られた楽器です。チェンバロだけじゃありません。椅子も、テーブルも、奥に置かれた楽器も、すべて17世紀のものです。どれも、あの絵に出てくるアイテムやなって」
 ツグミは絵に描かれているものを1つ1つ指で示しながら解説した。ツグミが指した道具は、どれも溶け始めて、判別が難しくなっていた。
「要するに、この絵は『合奏』の模写を作るために集められたアイテムを、再構築して別の絵に仕立て上げた絵、というわけやね」
 ヒナが重い調子で、ツグミの後を引き継いだ。
 絵画の贋作は、本物を右に置いて、同じ位置に絵具を置けばできあがるわけではない。元絵の画中に描かれた、全てのアイテムを集めなければならない。
 実物がなければ、画中に描かれたアイテムが正確にどんな形を持っているかは絶対にわからない。実物を手に入れて、初めて画家がどのような意図を持って描いたか、明らかになるのだ。
 川村の絵には『合奏』に描かれている、全てのアイテムが描かれていた。しかも全て配置が違う。それが、川村が画中のアイテムを全て実際に集めた証拠だった。
「それに、この絵に描かれている本。これ、すべて偽典でしょ」
 ヒナが絵を眺めながら、ツグミに確認した。ツグミは重く頷いた。
 絵画には、隙間を埋めるように、夥しい数の本が、積み上げられていた。『アブラハムの遺訓』『オクタヴィア』『ビブリオテーケー』……。全て、『偽典』と呼ばれる本だ。
 つまり、この絵は精一杯の力で「偽りがありますよ」と主張していたわけだ。
 ヒナは作業を再開しようと、菜箸を手に取った。すると木野が、慌ててヒナの腕を掴んだ。
「待って! 待ってください。ツグミさん、いいんですか。この絵は、川村さんの唯一の手掛かりですよ。これを消してしまったら、川村さんがいた痕跡は、なくなってしまうんですよ」
 木野がツグミの顔を覗き込んで、説得するように訴えかけた。
 ツグミは困惑して、返事ができなかった。木野に言われて、ツグミは初めてこの絵の重要さに気付いた。
 これは、川村が残した唯一の証拠品。川村の実在を示す唯一の品。
 ツグミは決断が下せなかった。ツグミは何も言えず、うつむいてしまった。画廊の空気が、重く沈黙した。
 すると、ヒナが木野の肩にそっと手を置いた。ツグミと木野が、ヒナを振り返った。
「木野さん、それは間違っています。名画の上に描かれたものは、どんなものであれ、落書きです。落書きには価値はありませんし、許される行為ではありません。それに、私とツグミは、本物の『合奏』を取り戻さねばなりません。父もそれを望んで、この絵を託してくれたのですから」
 ヒナの言葉は、冷たいくらいに毅然としていた。
 木野は茫然として、口を開けたままにした。ヒナの主張には、反論不能だった。
「ツグミ。いいんやね」
 ヒナがツグミを振り返って、念を押した。少しだけ、気を遣う優しさが浮かんだ。
 ツグミは唇を噛んで、無言で頷いた。ツグミは悲しいとか思わなかった。『合奏』を取り戻すんだ、という義務感があった。なのに、左の頬に、涙がこぼれた。

次回を読む

目次

※ 物語中に登場する美術家、美術作品、美術用語はすべて空想のものです。

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