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■2010/01/05 (Tue)
増田こうすけ劇場 ギャグマンガ日和+

40f846c2.jpga128dcec.jpg4e9b1de9.jpg
628eb093.jpg47a94f6e.jpg6dfb6bf2.jpg
462d8c2d.jpge4168ad6.jpg1370111c.jpg

ルノワールVSセザンヌ

bde59421.jpg1874年。パリで第1回印象派展が開かれた。後に印象派の巨匠と呼ばれる、ルノワール、セザンヌ、ピサロ、モネ、シスレー、ドガらが顔を揃える展覧会である。
その日、ルノワールはベンチで思い悩むように空を見上げていた。空はにわかに白く濁り、ルノワールの沈んだ気分を映し出しているようですらあった。
3a5554c9.jpg次の展覧会、果たしてどんな画題で臨むべきか。どんなタッチが相応しいか。ルノワールはこれだというテーマが決められず、思案に明け暮れていた。
「ああ……裸婦が書きたい……」
考えに考え、考えに惑った挙句、ふとそんな独り言がこぼれた。ルノe2a51576.jpgワールは自分にごまかすように笑った。
「ははは、ちょっと恥ずい独り言いってしまったな。ははは……はっ!」
背後にゆらりと気配。
ルノワールは「ギャー」と叫びそうになった。そこに立っていたのは、34d52746.jpgまさしくライバルセザンヌであった。
――まさか、今の聞かれたんじゃないだろうな。
「聞いたぞ」
セザンヌは勝ち誇ったように親指を突き出した。
「聞かれてるー! まさか人に言う気じゃないだろうな。言うなよ、セザンヌ! 略して言うヌ!」
「言うぜ!」
43194876.jpgセザンヌは誇らしげに髭をなでつつ、親指を突き立てた。
「言う気だー! いや待て。僕が画家だぞ? 何を恥じる必要がある? そりゃ裸婦くらい描くつーの。恥ずかしくないわー!」
「え~、ご通行中の皆さーん!」
「わー! わーー!」
504bf24a.jpg「なんとここにいるルノワール君が独り言で……」
「ぐはぁー!」
ルノワールの口から噴水のごとく血が吹き出した。まさに間血泉の勢いだった。
「コワいよお前! どんな喉の痛め方だろ。嫌だろ」
405ff6cd.jpgドン引きだが突っ込みは容赦のないセザンヌであった。
「じゃあどうしたら僕の独り言を秘密にしといてくれるんだ?」
ルノワールは密約を求めるようにセザンヌに囁きかけた。
セザンヌは悪代官の微笑を浮かべて内ポケットに手を突っ込んだ。
「今度の展覧会でこれを出品したまえ」
6d6b93c8.jpgと差し出したのはメモ用紙に描かれた落書きだった。ルノワールと注意書きされた人物が、笑顔でバベル・タワーの如きうんちを掌に乗せていた。
セザンヌは得意げになって脅迫めいた説明を続けた。
「タイトルは君が付けていいが、一応私が考えたのは、ルノワールおf26e8765.jpg前、何を食べてんだ……!」
「ルノワールロケット!」
ルノワール自身が空中を走った。ルノワールは容赦のない砲弾となり、セザンヌの腹に強烈な一撃を食らわした。セザンヌはくの字に体を折り曲げて「ぶへー!」と悲鳴を上げた。
「ふざけるな! そんなの出品したら僕の画家生命絶たれるだろうが!」
「ふん。それが狙いよ。私はライバルは早めに潰す主義なんだ。売れるのは私1人で充分なんだ」
セザンヌはルノワールロケットの衝撃を体に受け、ぜいぜい息を喘がせながらも、悪役らしい微笑みを絶やさず言った。
562c02a5.jpg「くきー! このケダモノ!」
「何とも言いたまえ」
セザンヌはむしろ誉め言葉と受け取ったように髭をいじり始めた。
「侍で切られた音みたいな名前しやがって!」
セザンヌ!
18622847.jpgセザンヌの脳裡に衝撃の鐘が鳴り響いた。セザンヌはくらくらと地面に手を置いて、愕然とうなだれた。
「そこまで言うとは……」
「図星だったようだな」
ルノワールは勝ち誇った優越を背負って反り返った。
ad23ea1d.jpg「黙れ! 貴様だってオッサンがワックスかけた床を全裸で滑る落としやがって!」
「がーん! それだけは言われたくなかったのに!」
ルノワールに衝撃が貫いた。ルノワールは人生の終わりを予感したように愕然とうなだれた。
「ぐうの音もでまい、ルノワール君。いやむしろ、全裸ワックス君!」
セザンヌは勝ち誇った優越を背負って、敗者を見下した。
「セザンヌ! こうなったら絵で勝負だ!」
ルノワールは立ち直り早く飛び上がり、宣言をした。
「臨むところだ!」
セザンヌがルノワールの挑発を付けて叫ぶ。2人の背後に、めらめらと闘士の炎が燃え上がった。

ef855792.jpg『ギャグマンガ日和』がまたしても戻ってきた。第4期を迎え、何か変わったのかといえば――何も変わっていない。あの休日の朝にやっつけで描いたような絵画はそのままだし、何より作品に流れる独特の空気は一切変わっていない。あの前後の時間や空気の流れを一瞬にして変貌させ、独特の世界に取り込んでいくような強引さ、それc039715b.jpgから魔術的魅力は相変わらずである。
『ギャグマンガ日和』は油断ならない作品である。絵画は子供の落書きだし、構図の作り方は映像の作法を完全に無視している。だが矢継ぎ早に迫るカットの速度や、畳み掛けるような言葉の応酬には人を惹き付けるエネルギーに満ち満ちている。この作品に接した多くは中403514fe.jpg毒者となり、続きを求め、日常生活の中でキャラクターの台詞やアクション(創作者は“文脈”を)を真似するようになる。
この作品から実に多くの名台詞や名シーンが生まれていった。「変態紳士」など、ネット上であまりにも有名でうんざりするほど使いまわされた称号も『ギャグマンガ日和』がオリジナルである(他にもあるはずb349a1a5.jpgだが、すぐには思い出せない)
『ギャグマンガ日和』が特別で油断ならないのはそのオリジナルの力である。ギャグ漫画の多くは、オリジナル作品を引用し茶化して同意の笑いを誘うだけである。有名作品を茶化し、極めてどうでもいい突込みを入れて笑いを引き出そうとしている。オリジナルを知っている人に限定した、小さくつづまっていく笑いだ。はっきり言えば、多くのギャグ作品にはオリジナル創作の努力がそこにない。創造の苦労を遠ざける作家は、自身が影響を受けた作品の数々を抽斗から全て出してしまえば、その瞬間に作家として枯れてしまうだろう。
『ギャグマンガ日和』にはそんなどこにでもあるような三流の笑いを求めていない。『ギャグマンガ日和』にはオリジナルの力が漲っている。
一見すると手抜きにしか見えない絵画も、おそらく見る側のガードを引き下げるための作戦であろう。だから我々は、極めて無防備な裸の姿で雹のごとく降り注ぐギャグをその身に浴びるのだ。
ふと気付けば、我々は単なるコピー人間となって、『ギャグマンガ日和』を引用してイミテーションを現実世界に作ろうとしている。『ギャグマンガ日和』の魅力に捉われ、創造主増田こうすけの精神的奴隷となっているのだ。
『ギャグマンガ日和』という作品はたったの5分だ。その他の25分シリーズ作品と較べると圧倒的に短い。しかしだからこそ、番組と番組の狭間にとどまり続けるのである。光に対する影のように、こっそりと、それでいて強烈な輝きを放ちながら――。それで気付けば、我々の精神構造の一片として組み込まれているのだ。番組と番組の狭間に残るように、意識の狭間に留まり続けるのだ。やはり油断のならない作品である。
『ギャグマンガ日和』は時代に引き摺られることなく、年代を越えて語り継がれていくだろう。その度に作品から生まれた名台詞の一つ一つを人々は模倣する。オリジナル作品がもはやわからなくなった後でも、恐らくは我々の思考様式、それから言葉の中に『ギャグマンガ日和』はとどまり続けていくだろう。

作品データ
監督:大地丙太郎 原作:増田こうすけ
演出・作画:かどともあき
音楽:山本はるきち 音響監督:たなかかずや 撮影:大山佳久
主題歌「希望の宇宙の…」
作詞:増田こうすけ 作曲:大地丙太郎 山本はるきち 唄:うえだゆうじ
エンディング曲「ハッピーゴーラッキーエンディング」
作詞・作曲:山本はるきち 唄:冠徹弥
アニメーション制作:ダックスプロダクション・スタジオディーン
出演:前田剛 うえだゆうじ 内藤玲 矢部雅史
  佐藤なる美 那須めぐみ 名塚佳織



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■2009/10/07 (Wed)
第1話 駄弁る生徒会

3c73965d.jpg79615007.jpgくりむ「メディアの違いを理解せよ!」
桜野くりむが今回のお題を力いっぱい声にした。ホワイトボードには『メディアの違いを理解せよ!』と大きく書かれている。背後の天井近い壁には『生徒会アニメ化緊急会議』の横断幕が張り込まれていた。
鍵「……はあ」
しかし一同の反応はそれぞれだった。
椎名深夏は漫画本をぺらぺら。深夏の妹の真冬はノートパソコンのキーを叩いている。紅葉知弦は読書に集中している。この場でホワイトボードを見ているのは、くりむの右手前に座っている、唯一の男性、杉崎鍵だけだった。
88e2a696.jpga7a51390.jpg深夏「てか、本当にアニメ化するのか? 『生徒会の一存』だぞ?」
知弦「アニメ、というよりドラマCDで充分って声は大きいわね」
18458011.jpgae48f91e.jpg真冬「密林さんの書評はどの巻も同じだ、とか相変わらず話は進んでない、とか……」
くりむ「自虐ネタやめいぃ! ともかく、これは碧陽学園生徒会の世界戦略の第一歩。メディアミックスを展開すれば、お小遣いアップも夢じゃないわ!」
くりむが夢を膨らませてニヤニヤと笑顔。
鍵「お小遣いって……」
くりむ「それには、メディアの違いを理解した展開が必要なの!」
深夏「アニメはアニメなりの見せ方をしたほうがいいと?」
真冬「それって、原作クラッシュ」
くりむ「アレンジ! だいたい部屋の中だけで成立しているアニメなんて、いまどき日曜夕方にしか生息していないわ!」
くりむがテーブルを叩き、激しく捲くしたてる。
28b2a427.jpg深夏が手を上げた。
深夏「はーいはーい! 映像化といえば、やっぱアクションだろ! そうだ、七つ集めると何でも願いが叶う……」
と拳を握る。
鍵「改!」
拳が鍵に落ちた。
7fbfe938.jpg真冬「あの、やっぱりこれからの作品は女性に受けることが大切だと思うんです。なので杉崎先輩の他に、もう一人の男性キャラを登場させて、許されない二人のフォーリングラブ要素を……」
鍵「て、これ誰!」
真冬「東池袋近辺じゃ大人気ですよ? 黒い執事さんに続く、大ヒッ3b11d2e2.jpgト御礼ですよ」
知弦「それよりまず、アニメのタイトル決めたほうがいいんじゃない?」
深夏「え? 『生徒会の一存』だろ?」
知弦「それは最初の巻だけでしょ?」
知弦が鋭い視線を深夏に向けた。
真冬「『碧陽学園生徒会議事録』とも書いてありますが……」
知弦「長すぎるわね。『生徒会の一存』、略して――“生存”」
くりむ「じゃあさ、ひらがなにしようよ。そんで真ん中に☆とか」
“せい☆ぞん“
深夏「星か! じゃあついでに、星が入った珠を七つ集める話に……」
深夏が拳を握って立ち上がる。
鍵「……エボリューション」
深夏「そっちは口にするな!」
c151b94d.jpg13c436de.jpgくりむ「仕方ない。じゃあ、いっそのこと新しいタイトルを……」
くりむがホワイトボードにきゅきゅっと文字を書く。
涼宮……
くりむ「憂鬱ってどう書くんだっけ?」
8ed31403.jpg鍵「書いちゃ駄目!」
くりむ「書いとけばみんな騙されて見てくれるよ」
鍵「犯罪です!」
唐突に衣装チェンジ。知弦はSFふう全身スーツ。深夏はファンタジー風に半裸の鎧姿と剣。真冬は学園祭ふうゴスロリファッション。
0046e528.jpg鍵「って何しているんですか?」
知弦「何事も最初が肝心」
深夏「やれることはやっとかないとな」
くりむが魔法少女ふう衣装で、たったっと知弦たちの前に飛び出してくる。そしてカメラを指さし――。
2ef55c26.jpg知弦「さあ、始めるザマスよ!
真冬「行くでガンス
深夏「フンガー
くりむ「まともに始めなさいよ!
鍵「……2重の意味でやばくないですか?」
c596fa77.jpg6863189b.jpg4f174b31.jpgbdf3cb65.jpg
『生徒会の一存』は冒頭から堂々とごまかしも避けもせず内輪ネタから始まる。そもそも物語が始まっておらず、観る者はどんな物語なのかどんなキャラクター設定なのか知らされないまま、内輪ネタとパロディが延々続く。
しかしこれこそが『生徒会の一存』という作品なのである。この後も『生徒会の一存』は同じキャラクターで舞台を一切動かさず、延々対話を、それも内輪ネタとパロディを繰り返し続ける。だからこの冒頭数分間のシーンは、まさに『生徒会の一存』という作品を直裁的に解説した場面であるといえる。
f2864233.jpg08c8d376.jpg『生徒会の一存』にオリジナルとして提示される部分は多分ない。すでに他作品で提示されたパターンからキャラクターと物語がカスタマイズされる。もっとも、『生徒会の一存』の個性はキャラクターや物語、背景などにはなく、語りにありそうだ。
6e7f31d2.jpg『生徒会の一存』はある高校の生徒会を舞台にしている。もちろん、実地的な取材に基づく作品ではない。登場するキャラクターたちの口から「生徒会って何をするんだ」と告白されてしまう。――第1話にして、だ。
だから生徒会を舞台にしているが生徒会の活動は物語の中心になりc3544e34.jpgえない。生徒会室と呼ばれる密室空間は、あくまでもキャラクターを寄せ集める場所に過ぎず、そこを「生徒会」としているのはただそう呼称しているだけだ。その生徒会と呼ばれる場所で、キャラクターたちはテーマ設定もせず、物語の進展を目的とせず、意味のない対話を延々と続けるのだ。
da339884.jpg対話の内容はパロディが多いせいか接地点は低い。物語中で交わされる対話はどれも聞き覚えのある内容ばかりだ。聞き覚えのある台詞回しに、聞き覚えのある用語、流行語、スラング……。「誰もが知っている」言葉と知識を、大量に羅列しているだけだ。
言葉の中に新しい何かが見出される機会はない。「誰もが知ってい0dafd4c0.jpgる」という範疇から物語を飛躍させられず、新しい知識や哲学が、あるいはそこを出発点とする何かが誕生しそうな期待は抱けそうにない。あえて言うなら、「駄弁る生徒会」ではなく「駄弁るオタク」と呼ぶべきだろう。
624a1428.jpgとにかく台詞量が多い。登場人物数が5人。新キャラfe1ad9c7.jpgクターの追加はほぼなしで、舞台もそこから移せない。だから5人が常に連続的に掛け合って台詞を紡ぎだしていかねばならない。見ていると楽しい雰囲気だが、作り手は相当緊張するはずだ。
しかし、実際この種類の作品を描くとなれば、作り手にとって大きな949f5fad.jpg試練となる。
一幕劇はただでさえ難易度が高い。並みの脚本家ならば、簡単に弾かれてしまうだろう。そのうちにも台詞が一行も出てこなくなり、途中で作品趣旨を捻じ曲げてでも別展開に活路を、あるいは救いを求めるようになる。
8ccc93c6.jpgどうにかこうにか書いてみせても、読者がついてこないだろう。同じ場面でどこまで物語を、あるいは言葉を延長させられるか。よほどうまく書かない限り、読者はそこに停滞を感じてしまう。
読者が物語にストレスを感じ、投げ出してしまうパターンには2つある。物語がよく理解できないか、物語が停滞しているように感じるか……。この場合作家は、読者の気持ちを鋭く察して、主人公がその場面からの痛快の脱出劇を描いて物語を別展開へと飛躍させる。
しかし一幕劇は“舞台を移動させない”が絶対的ルールだ。足枷であるといっていい。舞台を移さず、それでいて確実に物語を進行させ、読者に停滞感を与えてはならない。しかも『生徒会の一存』はシリーズ作品として1クール描こうと試みている。……狂気の沙汰としか思えない。
『生徒会の一存』の言葉のやり取りは冒頭から勢いよく、流暢に流れていき、一瞬でも停滞しない。まるで閉所恐怖症のように、台詞が交わされ言葉で埋め尽くされていく。一瞬でも、読者の気分がどこかに逸れる隙すら作らない。
一幕劇は難易度が高いばかりではなく、リスクが異常に高い。書くには相当の能力と労力、それから引き出しの数が必要になる。だが悲しいことに、脚本家の苦労はほとんど理解されない。例えて言えば、未開の地への無謀な冒険に出かけて、宝を得て帰還しても、誰も誉めてくれなくれなければ気付いてさえくれない、という感じだ。よほどの傑作でない限り、読者の痛烈な批判を受けるだけだ。
それでも『生徒会の一存』という作品は、その無謀さに挑戦した。『生徒会の一存』は徹底的に言葉で埋め尽くされる。会話に一瞬でも隙を作らず、笑いに間を作ろうとしない。ただとにかく、持てるすべてを注ぎ込むように、言葉で埋め尽くされる。『生徒会の一存』はライトなデザインとは裏腹に、難題に挑戦している最中なのだ。

作品データ
監督:佐藤卓哉 原作:葵せきな 狗神煌
シリーズ構成・脚本:花田十輝 キャラクターデザイン:堀井久美
美術監督:東潤一 中村恵理 セットデザイン:青木智由紀
CGIディレクター:佐野秀典 色彩設計:松本真司
撮影監督:川口正幸 編集:松村正宏
音響監督:岩浪美和 音楽:かみむら周平
アニメーション制作:スタジオディーン
出演:近藤隆 本多真梨子 斉藤佑圭 富樫美鈴
〇〇〇堀中優希 小菅真美 能登麻美子



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■2009/10/04 (Sun)
#1 電撃使い(エレクトロマスター)&作品解説

55e408e5.jpg男は路地裏に逃げ込んだ。白井黒子はその後を追って、路地裏に飛び込んでいく。
「くそっ! ついてねえな。いったい何なんだ、あいつは……」
男は走りながらぼやいた。
白井は男を追って走り、その背中を目視範囲に収めた。
d5fc973a.jpg男が追跡者を確かめようと後ろを振り向く。白井はそのタイミングに合わせて、空間を跳躍した。
男の顔が一瞬はっとした。白井は男の前に出現した。男がもう一度驚愕を浮かべた。
白井は男の足を払い、地面に転がせた。すぐにその背中にのしかかり、腕を後ろに捻る。
b5415257.jpg「ジャッジメントです。通報にあった暴漢というのは、あなたですわね」
白井は慌てふためく男の姿を見て、にやりと笑った。手錠を引っ張り出し、男の腕を近くのパイプ管と繋ぐ。
標的は男一人だけではない。白井は残りの数人を探して走った。
9e8b6e9e.jpg「こちら白井黒子。犯人の一人を確保。初春、残りの野蛮人どもはどこですの?」
白井は走りながら情報を求めた。
「その路地の突き当りを左へ。5メートル先をさらに左です」
すぐに応答が返ってきた。おっとりしている声だけど、的確なナビゲーbb8bfb63.jpgターだ。
白井は次の角を左へ曲がった。ナビゲーションどおり、確かに左へ折れる道があった。
白井はその向うに飛び出して、右袖につけた腕章の盾の紋章を見せた。
b33f4cd2.jpgd7910dfa.jpg「ジャッジメントですの! 通報を受けてまいりました。どうぞ大人しくお縄を……て、これって?」
威勢のいい口上で決めようとしたが、すぐに異変に気付いた。
狭い路地に、男達がぼろぼろに力尽きて倒れていた。その体が軽く焦げて煙を噴き上げている。路地全体も、煤けたように黒い色を浮かべ、硫黄の臭いが全体を満たしていた。そんな陰惨な地獄絵図の中に、ただ一人、平然と立っている少女がいた。
「……ああ、黒子」
少女がはっと白井を振り返った。しかし白井だと気付いて、緊張を解いた。
8321d485.jpg03fbd2cd.jpg「お姉さま!」
白井は茫然とした声をあげた。
御坂美琴――この学園都市にたった7人しかいない最強の能力者。常盤台中の超電磁砲(レールガン)と呼ばれる少女だった。

2d7936f8.jpg物語の前半は、独創的に練り上げた背景世界の説明に消費される。
その都市は、近代技術の力によって高度に発達した学園都市である。総人口は230万人、そのうち、8割が学生で占められている。
その学校では通常の授業に加えて、能力開発と呼ばれる特殊な授業がある。舞台となる学園都市に通う学生たちは、皆なんらかの特cc15631f.jpg殊能力を持ち、定期的な身体検査(システムスキャン)によってその能力が推し量られる。能力によってランク付けもされおり、「無能力者(レベル0)」「低能力(レベル1)」「異能力(レベル2)」「強能力(レベル3)」「大能力(レベル4)」「超能力(レベル5)」の5つに分類される。

白井黒子テレポーターでレベル4(大能力)
初春飾利はレベル1(低能力)だがどんな能力を持っているか不明
佐天涙子は完全な無能力者。一般人である。
そして御坂美琴はレベル5のレールガンだ。
ちなみに学園都市には警察が存在せず、治安維持はジャッジメント(風紀委員)が独自に担当していた。白井黒子、初春飾利の二人は、ジャッジメントに所属する一員である。

b17c98e6.jpgアニメの後半に入り、物語は解説から本筋へと戻ってくる。学校を終えた白井黒子は、御坂美琴とともに喫茶店でくつろいでいた。
「私のファン?」
白井から話を聞いて、美琴はそれだけで重く溜め息を吐いた。
ea3b5897.jpg「ジャッジメント第177支部で、私のバックアップを担当してくれている子ですの。一度でいいからお姉さまにお会いしていた、ことあるごとに……」
白井はココアを啜りながら、美琴の様子を確かめた。美琴はうんざりしきった顔で、平坦なテーブルを見詰めていた。
「お姉さまが常日頃からファンの子からの無礼な振る舞いに閉口されているのは存じておりますわ。けれど、初春は分別をわきまえた、大人しい子。それに何より、私が認めた数少ない友人。ここは黒子に免じてひとつ。もちろん、お姉さまのストレスを最小限に抑えるべく、今日の予定は私がバッチリ……」
白井は長々と説明を続けて、学生鞄からメモ帳を引っ張り出した。
と御坂がメモ帳を奪い取った。白井があっと取り戻そうとするが、御坂は長い腕で白井を押し付けた。
75f8c66d.jpg「なになに……。初春を口実にしたお姉さまとのデートプラン。その1、ファミレスで親睦を深め、その2、ランジェリーショップ(勝負下着購入)、その3、アロマショップでショッピング(媚薬購入)。その4、初春駆除。その5、お姉さまとホテルへGO……。つまり、大人しくて分別のある友人を利用して自分の変態願望を叶えようと。読んでいるだ27e63f8a.jpgけで、すんげぇストレス溜まるんだけど!」
御坂が怒りを浮かべて、白井の両頬をつまんだ。思い切り白井の顔を崩すくら両頬を引っ張ってそれからパチンッと元に戻した。
「……まあでも、黒子の友達じゃしょうがない、か」
その後で、御坂は背に体を預けて、諦めたように呟いた。
ef6a8dc7.jpg「お、お姉さま! お姉さまがそんなに黒子のことを思ってくださったなんて! 黒子はもう、どうにかなってしまいそう!」
白井が目の前からすっ姿を消した。あっと思う間もなく御坂の側に出現すると、御坂に抱きつき、頬ずりをはじめた。
「お、おい、やめろ……」
御坂は引き剥がそうとするが、白井はがっちりと御坂にすがり付いている。
ふと視線に気付いて振り返った。ガラス窓の向うに、頬を染めてじっと見ているセーラー服の女の子がいた。頭に花の飾りを乗せた、大人しそうな女の子だった。初春飾利だった。その側に、他人の振りして目を逸らそうとしている同じセーラー服の女の子がいた。佐天涙子だ。
e6e887b9.jpgこうして合流した四人は、親睦を深めようと街へと繰り出す。その途上で、一同は突然の銀行強盗に出くわす。ただちにジャッジメントとして出動する白井は、鮮やかに銀行強盗のうち2人を倒す。
しかし、残りの一人が子供を連れて逃走を図ろうとしていた。とっさに佐天が飛びついて、子供を救うが、犯人の蹴りが佐天の頬を直撃する。
その様を見て、御坂が飛び出した。白井を「ここからは私の個人的な喧嘩だから。悪いけど、手、出させてもらうわよ」と制する。犯人は車に乗り込み、御坂に突撃した。御坂は逃げもせず疾走する車の前に立ちはだかり、自らの能力、レールガンを発動した。激しい稲妻が走り、車が吹っ飛んだ。
73e44ea1.jpge20b4dc5.jpg一つの都市が舞台となっているが、実体として都市社会は学園の一部として描かれている。学園世界が社会世界へ延長されている構造だ。だから学生たちが社会の治安を維持しているわけである。

00fee3b0.jpeg『とある科学の超電磁砲』の物語において、男性の影は薄い。第1話の段階で、役名をもった男性は一人も登場してこない。異能力を持った少女たちが中心となって物語が進行する。
男性の役割といえば、その女性を取り囲んで襲い掛かるか、社会の秩序を乱すか、そのどちらかでしかない。男性の直線の力は、高度に発達した文化的な都市社会においては、秩序を破壊するものでしかない。男性の力は都市社会の中で野放図に迸り、穏やかな丸みをもった都市の景観を破壊せんと暴走する。
男性の力に対して、女達は力だけでぶつからず、軽やかに受け流し、その力挫いてしまう。男性の特徴である力は、秩序社会の中において発揮されるのは犯罪と暴力のみであり、その力は女性によって捻じ曲げられ封じられてしまう。男性は調和によって整えられた社会において、存在意義を発揮されないのだ。
『とある科学の超電磁砲』において社会を統治し、維持しているのは美しき少女たちである。いや男性が担うべき立場に、少女が当てはめられているのだ。あの少女たちは男性を女性化させた姿だ。
抑圧的に押し黙るか、その力を暴走させるしかない男性は、自身の存在に失望し、少女たちに憧れを抱く。美しく、自由に振舞い、楽しげな笑顔を浮かべて、躊躇なく消費に身を投じる。肉体的な憧れと性的な欲望も同時にそこに現れている。
だから『とある科学の超電磁砲』は少女たちが中心となって、可憐な姿を、時には艶やかに戦う姿が強調的に描かれる。男性の影は物語から排除され、少女たちだけによる戯れが描かれる。
現代男性の失望を隠そうともせずに描かれ、映像の中に刻印されたアニメである。しかしそこに陰鬱なものはなく、むしろ爽やかな明るさが全体を満たしている。
f2bd1de5.jpg歩道は煉瓦敷きになっている。窓と空のブルー、煉瓦のレッドと空と地上でくっきりと色が切り分けられている。そのどちらにも温かみのある色調が使われ、落ち着きのある画面を作り出している。緻密に描かれる背景美術だが、それだけにパースの歪みが目につく。奥に向かうほど平面的に描かれているのも気になるところだ。

7de75166.jpg『とある科学の超電磁砲』はアニメーションにおいて一大ジャンルを形成する学園ものの形式を踏襲している。この種のジャンルにおいては、学園ものという場所をいかに異空間として再解釈するか、そこに魅力を見出せるかに全てがかかっている。
『とある科学の超電磁砲』においては超能力というオカルト的な色彩2a592412.jpgがあるものの、超科学的な法則性が与えられ、学園世界の風景に取り込まれている。解説が多く、物語の進行がしばしば停止して解説の時間に取られがちなのが気になるところだ。
だが一つ一つのデザインがよく練りこまれている。観察で描写された実景と独自に作られたデザインとがうまく組み合わされ、異世界的空d93b9a90.jpg気が演出されている。その中を活躍する少女たちの楽しげな表情の移り変わりを見ていると、解説の退屈さを感じない。物語以上に、作品のデザイン部分に魅力を感じる作品だ。
どの場面も描写がよく練りこまれているが、多すぎる線の圧迫感を色彩がうまく緩和している。おそらくはそんな都市を中心とした、少女たちのおだやかな日常が中心となるのだろう。少女たちの日常と進展を目的としない対話に付き合う余裕があれば見続けたい作品だ。



作品データ
監督:長井龍雪
原作:鎌池和馬+冬川基 キャラクター原案:灰村キヨタカ
キャラクターデザイン:田中雄一 プロップデザイン:阿部望
シリーズ構成:水上清資 美術監督:黒田友範 色彩設計:安藤智美
撮影監督:福世晋吾 編集:西山茂 音響監督:明田川仁
音楽:I’ve sound/井上舞子 音楽プロデューサー:西村潤
オープニングテーマ「only my railgun」
作詞:八木沼悟志/yuki-ka 作曲・編曲/八木沼悟志 歌:fripSide
アニメーション制作:J.C.STAFF
出演:佐藤利奈 新井里美 豊崎愛生 伊藤かな恵
〇〇〇寿美奈子 遠藤綾 瀬戸さおり 田中晶子 関山美沙紀
〇〇〇大原崇 興津和幸 間宮康弘 橘田いずみ



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■2009/10/03 (Sat)
第1話 豹頭の仮面&作品解説

1ae36bfb.jpgレムスとリンダの二人は、モンゴール軍の襲撃から逃れて、森を彷徨っていた。ルードの森と呼ばれるそこは、古来より死霊と魔物が跋扈すると言われている。森は深く、大木に蔦植物が絡みついている。頭上を鬱蒼とした木の葉が覆っている。夕暮れの光が、その向うからちらちらと落ちていた。
森の小道をモンゴールの騎馬隊が通り過ぎた。人の管理のない森だが、蹄が踏み固めた道がまっすぐに伸びていた。
レムスとリンダの二人は、大木の陰に隠れて兵士たちをやり過ごした。だが兵士たちは異変に気付き、戻ってきた。レムスとリンダは発見されてしまった。
63992486.jpg走って逃げるレムスとリンダ。だが兵士たちは俊足だった。鬱蒼とした茂みを掻き分けて、レムスとリンダを追跡した。
間もなく、レムスが掴まってしまった。リンダははっとして振り返った。密林の影から次々と兵士たちが現われる。
リンダは兵士たちと毅然と向き合い、ナイフを抜いた。
4818e765.jpg「野蛮人。モンゴールの犬。お前たちなど、ヤヌスの雷が落ちて、黒焦げになってしまうがいい!」
リンダが呪いの言葉を呟いてナイフを振り上げた。
兵士が悠然とリンダに近付いてきた。リンダは兵士に向かってナイフを振り落とした。しかし、ナイフを持つ腕がつかまれてしまった。兵士ad4c5e1c.jpg4c030125.jpgの拳がリンダを叩く。リンダは衝撃に地面に崩れた。
「リンダ!」
レムスが悲鳴のような声をあげた。
「助けて。誰か……」
リンダは地面にうずくまったまま、震える声で呟いた。
68af011c.jpgその時、兵士がはっと一点を振り返った。リンダとレムスもその方向を振り向いた。
少し進んだところに小さな池があり、夕暮れの光で金色に輝いていた。その光を背にして、巨大な影がゆらりと立っていた。誰もが息を飲んで、巨人を見ていた。巨人は筋骨隆々の裸で、豹の頭を持っていた。
「化け物。ルードの悪魔だ」
兵士の一人が怯えた声をあげた。
「ええい、うろたえるな!」
隊長らしき男が叱咤し、剣を抜いた。剣の切っ先を向けて、豹頭の巨人に近付く。
突然、手刀が落ちた。兵士の仮面が掌の形に潰れて、その体が地面に埋ってしまった。
さらに豹頭の仮面が兵士を殴る。兵士の仮面が潰れて、中から血を吹き出させた。
22ae2073.jpg全員が唖然とした。豹頭の男は問答無用で飛びついた。レムスを掴んでいた兵士に襲い掛かり、殴った。兵の体が数メートル背後に吹っ飛んだ。
別の兵士が剣を手に襲い掛かる。豹頭の巨人は身軽にかわし、強烈な蹴りで返した。兵士の体が崩れ、地面に倒れた。
a3bc69fd.jpg兵士が一人だけ残された。残された兵士は、自分が最後の一人だと気付くと、剣を収めて回れ右して走った。
それを見送った直後、豹頭の男は膝をついた。
「……グイン」
豹頭の男は、気絶する瞬間そう呟いた。

『グイン・サーガ』は栗本薫による伝説的なファンタジー小説である。ギネスにこそ認定されなかったものの、間違いなく世界最長のファンタジー小説である。謎めいた豹頭の男を中心に、壮大にして壮絶な物語を繰り広げる。
残念ながら作者の死により完結されなかったが、今も熱烈に支持され、残された遺稿による続編が待ち望まれる作品である。
作品人気に関わらず、連載開始より30年間、映像化とは縁がなかった。複雑にして長大、壮大な世界観を映像化する方法がなかったからだあろう。だが2009年、我々は待望の映像化を見ることとなる。
9a0e5f16.jpg『グイン・サーガ』の物語は1979年に始まり、以来30年間巻数を重ねてきた。正伝が128巻、外伝が21巻。シリーズ総合で149冊に及ぶ。しかし、2009年5月、原作者である栗本薫が膵臓癌のために死去。世界最長の物語は惜しくも未完で終ってしまった。正伝は130巻まで執筆されているとされ、発表が予定されている。

63b7b6d1.jpgアニメ『グイン・サーガ』の物語はパロ王国の陥落から始まる。モンゴールの突然の襲撃により、王と王妃は殺害され、世継ぎであるレムスとリンダは古代機械の手を借りて脱出する。
だが送られた先は、モンゴール領であるルードの森だった。鬱蒼とした森で、夜になれば魑魅魍魎が出現し、生きた者を襲い掛かる呪わfcc6be93.jpgれた場所である。そんな場所で逃亡生活を続けるレムスとリンダだったが、追跡のモンゴール兵士に追い詰められ、掴まってしまう。
そんな最中、突然現れる豹頭の男――グイン。
グインは剛腕でモンゴール兵士一個小隊を全滅させる。危機を脱したレムスとリンダだったが、グインが自分の名前と「アウラ」の名前以9a55dbe9.jpg外、すべてを忘れてしまっていると知る。
やがて夜が訪れ、死霊グールがレムスたち三人を襲う。戦い、水の中に逃れた三人は、何とか朝を迎える。しかし待ち構えていたのは、モンゴールの兵士たちであった。
ce8944f6.jpgアニメーションの動きは、アニメのありがちなアクションをモンタージュ的に並べているだけだ。間を埋めるべきアクションが省略されている。それが大袈裟、大味な雰囲気を作り出し、カートゥーンアニメような雰囲気を出してしまっている。これは日本人が作った作品か?と疑いたくなる。

b5b08c0d.jpg壮大な物語のプロローグである。何かが始まろうとするそんな予感と異変が全体に張り詰めている。没落する栄光の王国。記憶を失った謎の男の出現。次々と迫り来る戦い、冒険。
しかしアニメーションの演出は、原作の壮大さを支えるに至ってない。
高詳細に描かれたセル画は非常に密度が高く、一本一本に妥協は9cba6776.jpgない。背景画も詳細に描かれ、異世界の独自的な様式を描き出している。キャラクター、背景いずれにしても圧倒するようなディティールで描きこまれている。
だがこの両者は、一切調和していない。キャラクターは背景画に溶け込まず、水と油のように分離して浮かび上がっている。繊細に塗りこfb1f58b8.jpgまれた背景画に対して、キャラクターはべったり原色むき出しで塗られ、背景から浮かび上がる。
装飾過剰ぎみに描かれたキャラクターの衣装や装飾は、90年代初めに流行したファンタジーの様式をそのまま踏襲している。現代の技術で何もかもが鮮明になった分、キャラクターの絵画は背景画にも馴b21174e6.jpg染まず、高詳細に作りこまれた世界イメージとも調和していない。キャラクターだけが絵画、世界を無視して華麗でしかも現代的に描かれすぎてしまっている。
映像の流れも、物語が持っている力を具現化しているとは言いがたい。
835e38fd.jpgキャラクターの動きは直線的に動き、走り、飛ばし、そこにカット間の繋がりが意識されていない。ただ走るカットがあり、跳ぶカットがあり、その間にどんな動きがあるのか説明されていない。どのカットもカットで切り抜かれ、間にあるべきもっと繊細なキャラクターのアクションが省略されている。
勢いがあるが、強引としかいいようのない。壮大な演出に装飾されているが、実体としては何もかもがちぐはぐな紙芝居演劇でしかない。何か大きなものを仰々しくやってみようとして、空振りに終った印象だ。
6f701bb7.jpg60a9fa27.jpg高詳細に世界が描かれる一方で、キャラクターの演技空間が全く意識されていない。それが世界のイメージを小さくすぼめている。また、キャラクターのつくりも典型的なだけで学術的な考証が見えてこないのが個々の説得力を弱くさせてしまっている。
bbd2ada3.jpgだが物語は始まったばかりである。アニメーションもまだ始まったばかりである。壮大かつ長大な物語の、まだプロローグに過ぎない、
このアニメーションが作り手の才能にどのような刺激を与え、変質し、成長していくか。壮大なドラマは物語の登場人物だけでなく、作り手に対しても大きな影響を与えるはずである。
『グイン・サーが』がどのように変質し、成長していくか。あらゆる可能性と余地はまだまだ残されているはずである。

作品データ
監督・絵コンテ・演出:若林厚史
原作:栗本薫
シリーズ構成:米村正二 キャラクター原案:皇なつき
キャラクターデザイン・総作画監督:村田峻治 コンセプトデザイン:大河広行
美術設定:松元浩樹 高橋武之 美術監督:東潤一 平柳悟
色彩設計:甲斐けいこ 篠原愛子 撮影監督:久保田淳
編集:岡祐司 助監督:ヤマトナオミチ
音響監督:明田川進 音楽:植松伸夫
アニメーション制作:サテライト
出演:堀内賢雄 中原麻衣 代永翼 内田夕夜
〇〇〇小形満 大原さやか 梅津秀行 樫井笙人
〇〇〇滝知史 金光宣明 御園行洋 宮坂俊蔵
〇〇〇利根健太郎 田中晶子 小幡記子



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■2009/09/29 (Tue)
前巻までのあらすじ(第14集より)
cc6540e8.jpgシャツに描いたyoungの文字のYの字が上にはみ出したというだけで児童ポルノ禁止法に抵触すると逮捕起訴された漫画家の望。守ってくれると信じていた出版社からもスルーされ国選弁護士からも「こーゆうの個人が勝つことってまれなんだよねー」と諦め顔で語られる。絶体絶命のこのピンチに「異議あり」と証言台に立ったのはケータイのアンテナマークを持った元携帯電話開発者「このマークは俺が先に考えた! だから著作権法違反でもこいつを裁いてくれ」ええー・・・・?始まったばかりの裁判員制度で見事な全員一致の有罪で最北端の流刑地に護送され収監される。早速牢名主に挨拶に行こうとすると後方からマッキー似の男が歌いながら近づいてきた。「漫画家は嫌いだけど君は好きになりそうだ」夢・・・・だったらいいな。

誤字院原の敵討
原作187話 昭和84年7月8日掲載
51020289.jpg木津千里が指をフレームにじっと見詰めていた。視線の先には額縁に収められた絵画が一枚。
「うーん。ちょい右。もう少し水平に。ちょい上……。」
細かく細かく指示を出す千里。間もなく納得いったらしく頷いた。
「完璧。いい絵だな。」
千里はうったりと絵画を眺めた。
“さかさのふじ”
2のへ組生徒である丸井が描いた作品だった。
863d01fc.jpgその後ろを、小節あびるが横切る。あびるは美術展パンフレットが入った箱を抱えていた。
「あのさ、すごく言いにくいんだけど、その絵、上下逆さま」
「…………。」
千理の顔に、真っ暗な影が落ちた。
「ごめん。なんか」
あびるはパンフレットを置いて、小さな声で詫びた。
3493464f.jpg「よくあることですよ、実際――」
糸色望が現れ、教室にいる一同に向かって言う。
「フランスであった話で、美術館でモネの『睡蓮』を逆さまに展示してしまったそうです。専門家であろう学芸員の誰も気付かぬままに。ものごとそんなものです。人間小さな間違いには気付くものですが、大きな間違いには気付かないものなのです!」
望がいつもの調子で捲くし立てる。
西武→西部
シミュレーター→シュミレーター(このミスは私もよくやらかします)
常識人→上司奇人
9fa5c00d.jpg「木津さんが逆さまに展示していても、構いませんよ」
場の空気を宥めるように現れたのは久藤准一だった。
「今回の展覧会の趣向はまさにそれ。気付かれなかった大きな間違い展なんです!」
久藤は宣言するように言って、教室の中を示した。
2のへ組少女達全員でぞろぞろと教室の中へ入っていく。間もなくして、台に展示された野球ボールが現れた。プレー63fd05e5.jpgトには“アウト”と書かれている。
「これは?」
風浦可符香が不思議そうに野球ボールを覗き込んだ。
「これは野球ボールだよ」
久藤が説明した。
ストライク2 ボール1 アウト2
45b04dbe.jpgピッチャーがボールを投げる。
審判「ス……いや、ボール!」
捕手「今、ストライクって……」
審判「いや、ボール半分外れていた」
ストライク0 ボール0 アウト3
「それで?」
1ad0fcec.jpgまだわからないというように、可符香が首を傾げる。
「ボールは半分外れているのに気付けるのに、アウトカウントの間違いに気付かない。ストライク3本目だから、本来チェンジでしょ?」
次に現れたのは、フレームに収められた社会科のテスト答案用紙だった。
2b629325.jpg「うん? これなんか見覚えが……。ああ、これこのあいだの試験の私の答案用紙じゃん」
日塔奈美がなんだろうと見上げて、すぐに思い当たったように声をあげた。
「私、ちゃんと気付きましたよ。引っ掛け問題でしょ。気付いて直しましたから」
奈美は困ったように望を振り向いて笑いかけた。
4f693dbe.jpgしかし望は呆れように奈美を振り向いた。
「いや、だから。普通すぎて言うのも憚れるのですが、解答欄が一つずつずれていたんです」
「ええ!」
「さらに驚くことに、解答欄がずれてなかったとしても、点数が変わらないんですよ!」
「ええええ!」
be430917.jpg愕然。
次に現れたのは、漫画原稿だ。
「細かな誤字や写植ミスに気付くくせに、大きなミスには気付かなかったりするのです。実際あったミスを再現してみましょう。日塔さん、前へ」(本当に恐ろしい話です)
望は重大事のように告げて、奈美を指定した。
「私?」
b873cbd2.jpg61abf3b8.jpg奈美は緊張しながらおずおずと前に進み出る。
「最近、駅前にできたラーメン屋さん、行かれましたか?」
ああ、もろチン!
4c8c73b3.jpg全てが、凍りついた。
「もちろんと言おうとしたら、もろチンと言ってしまった! もろチンと言ってしまった!」
奈美が頭を抱えて苦しみにのたうち始めた。某漫画のトリックを暴いた瞬間の台詞だったらしい。
13654868.jpg「奈美ちゃん、もうエヴァの映画見た?」
可符香がすっと奈美の前に進み出て、話しかけた。
ああ、もろチン!
さらにあびるが奈美に話しかけた。
「逃げる?」
もろチン!
クレジット表記/誤字・脱字/服装/ネタ選択/季節感/谷怨、哀しみのあまり奈美の作画が
絵コンテ・演出:近藤一英 作画監督:原田峰文 色指定:大谷和也
制作協力:スタジオイゼナ
0ef2318a.jpg5a22a751.jpg80a0a07c.jpg

われらライナス
原作第179話 昭和84年5月2日掲載
14a075c6.jpg風薫る五月――。
窓に青い太陽の陽射しが落ちていた。空気がさらさらと木の葉をなでている。
「いい天気ですね。たまには窓を開けないと、不健康ですよ」
望が窓をからりと開けた。
18f8533f.jpg途端に、風が部屋を駆け巡った。風が小森霧の毛布をさらっていく。
「毛布が! 大事な毛布が!」
霧が慌てて手を伸ばす。しかしその時には、毛布は風に飛ばされてどこかへと消えてしまった。
すぐにでも、望が新しい毛布を買ってきた。高級タオルケット。望は慎重に霧の前で頭を下げる。
57af8713.jpg「新しいの買って来ました。言っては何ですが、アレよりかなり上質なものをご用意させていただきました。きっと、お気に召すかと……」
「あれがいいの! あの毛布じゃなきゃダメなの!」
霧が怒った顔で振り返った。その目が涙に濡れて赤く腫れている。
いわゆる、安心毛布と呼ばれるものがある。子供とかがボロボロになっても離さない、ぬいぐるみとかスプーンとか持っていると安心できる特定の愛着品。霧にとって、あの毛布こそが愛着品だった。
2624e95a.jpgあの毛布がないと霧が安心できない。2のへ組全員で毛布を探す展開となった。間もなくして毛布は発見するが――それは総理官邸だった。
「なぜこれだけばら撒いても金が消費に回らんのだ?」
総理らしき男が新聞を見ている。
「やはり将来に対する不安から、貯蓄に回してしまっているのかと。国民は安心309bd413.jpgが欲しいのです」
参謀らしき男が答える。
そこに、空から毛布が飛び込んできた。毛布は総理の身体に被さる。
「ああ、すいません、すいません! 国政の邪魔をしてすいません」
加賀愛が総理らしき男の前に飛び出して、直角に身体を折り曲げて頭を下げた。
「これがないと、小森さんが安心できないんです!」
加賀愛は慌てて事情を告げる。
「安心? この毛布があれば安心できるの?」
「はい」
「それだ」
総理らしき男がにやりと笑った。
さっそく翌日、学校が改造された。
a6d4ac23.jpgae853b7d.jpg「大変です、先生! 政府は小森ちゃんの安心毛布を量産して、国民に配るそうです! すでに校内に生産ラインが組まれています!」
工場内を進む無数の毛布。毛布は小森42215517.jpg霧に一度包まれ、次に箱詰めされていく。
給“布”によって安心感が生まれ、消費が活性化するのだという。そんなもので景気が回復するわけがない――。
翌月、景気はV字ラインを描いて急速に回復した。
しかしそれが、不穏な影を引き寄せる結果にもなった。
「不況に喘ぐ世界が小森さんを狙っています! ほら、もう怪しげな影が!」
9c335b77.jpg常月まといが警告を発する。すでに学校を狙うエージェントが集ってきている。
「なんとしても守らねば。お国のために健気に包まれている霧ちゃんを、守らねば!」
千里が決心を固めて望と霧の前に現れた。
「でも、プロから守り通すのは至難の業かと!」
「注意を分散させるんです。カモフラージュに皆の安心毛布を集めるんです」
ぞろぞろと集ってくる安心毛布的アイテム。野球部の洗っていないユニフォーム。長年継ぎ足した洋食屋さんのデミグラスソース。タラちゃんの三輪車。
しかし望が指摘する。
「木津さん、あなたは間違っています! 結局のところ、物なんかでは人は安心できないんです! 本当の安心毛布は、自分よりダメな者の存在です!」
〇〇女の子は自分より可愛くない子を見て安心。
〇〇学生は自分より成績の悪い人を見て安心。
〇〇漫画家は自分よりつまらない漫画を見て安心。
〇〇ニートはこーいうブログを書いている人を見て安心する。
〇〇プロはこーいう三流の文章のブログを見て安心する。
「……とはいえ、私のような最低最下の者は人様を見て、安心できないのです」
言いたいことを全部言った後で、望は憂鬱そうに視線を落とした。
「先生、安心じゃないですか。公務員だし、クビになる心配もないし。安心よね」
可符香が朗らかに望むに微笑みかけた。
「それだ。国民全員公務員になれば安心!」
漫画の面白さ/スタッフの頑張っている姿/原作者の全裸/アシスタントの全裸(受け継がれる精神)/化物語のスケジュール表/それにつけても嫁がほしい
絵コンテ:飯村正之 演出:宮本幸裕 作画監督:青葉たろ 色指定:佐藤加奈子
acc863f3.jpg5b9621ae.jpg5c79135f.jpg

楽天大賞
番外編 昭和84年1月7日掲載
c235858f.jpg夜の宿直室。望、可符香、霧、マリアの四人がコタツに足を突っ込みながら、のんびりとテレビを見ていた。
「今年の流行語大賞が決まりました!」
アナログ放送が華やかな式典を中継していた。
「流行語タイショウって、ランニング着て、傘背負ってるのか?」
マリアが腹ばいになりながら両頬に頬杖をつきながらテ7765d9c7.jpgレビを見ていた。
「その大将ではないでしょう、マリアちゃん」
可符香が軽く訂正して笑った。みんな釣られるように朗らかに笑った。
「そんなことを言うと、本当に来ちゃうぞ」
さらに可符香がイタズラっ子を嗜めるように言った。
56efd76e.jpgそのとき、ふっと窓に気配が現れた。宿直室にいた全員がはっと振り返った。
からりと窓が開く。現れたのは太った体型にランニングシャツ、鞄に傘を背負った男だった。
男は現れるや突然に、
「グ~」
両手の親指を突き立ててみせる。
「流行語大将がやってきた!」
望が驚愕の声をあげた。しかも出オチである。
a939a9d5.jpg「み、みんな僕のこと、流行ってるって言ってくれるんだな」
大将はどもりながら笑顔を浮かべた。
しかし望は、大将に疑わしい挑発の目を向けた。
「はあ。一つ聞いてもいいですか。――今年の流行語大賞の言葉は、大将の中で流行っていたのですか!」
決定的な事実。大将の表情が凍りついた。
d04de017.jpg「……実は、アラフォーなんて決まってから知りました」
「でしょう? 私もそうです」(私なんて決まったことすら知らず、随分後になって、いつの間にかぽつぽつと使われるようになってから知りました。いつもそんな感じです。私が流行に疎いせいなのか?)
大将ががっくりとうなだれる。重い沈黙が宿直室を包みつつあった。
「あなた自身の流行語大賞を決めればいいんですよ!」
010efb4f.jpgすると、可符香が明るい声で大将を諭した。
「ぼ、僕自身の?」
大将がはっとして顔を上げる。
「ちなみに、我々の業界の流行語大賞です」
〇〇金賞:トレース
〇〇銀賞:この三流が!
〇〇銅賞:かのん
〇〇次点:紙芝居(化物語)
9da65aa1.jpg「こら!」
「わかったんだな。僕自身の流行語を考えるんだな」
大将は悟ったように笑顔を浮かべた。
窓の外に、ぞろぞろと人が集まってきた。みんな、ランニング姿に傘を背負っていた。
「どげんかせんといかん!」
始めに声をあげたのは07年の流行語大将だ。
e36ca28d.jpg「気持ちいいー! 超気持ちいいー!」
次に04年の流行語大将。
「ああはなりたくいないんでな。もう流行語なんて使わない」
次の大将が、全てを悟ったというニヒルな微笑で皮肉った。
「それがいいと思うよ」
可符香が同意して頷く。
大将たちが流行語大将を振り返った。
「お前も俺らのようにすぐ失笑される対象になる」
「選ばれた時点で終わりだ」
「ぼ、僕はそ、そんなふうにはならないんだな。……あなたとは違うんです!」
大将はとっさに出た言葉で返した。しかし、自分の口から出た言葉に、衝撃で凍りつく。
「ああああああ!」
大将は泣き叫びながら宿直室から飛び出していった。
「あ~あ。さすが流行語大将。流行語の呪縛から逃れられなかったのですね」
望は呆れたものと同情を半々に大将を見送った。
原作どおりでお願いします/格好良ければ何でも/いい色ですね/面白い処理ですね/すいません、あと1時間待ってください/あと5分待ってください
絵コンテ:龍輪直征 演出:宮本幸裕 作画監督:田中穣 色指定:佐藤加奈子
709b0ff6.jpg40b2063a.jpga7e9cd4e.jpg

aef7be56.jpgクリスマスに入って、宿直室には大きなクリスマスツリーが置かれた。大きさは天井ぎりぎりの届かないほどで、すでに華やかな飾りつけが施されている。
「“きよひこ”って、誰だ?」
とんがり帽子を被ったマリアが望に訊ねた。
「きよひこ?」
「だって今夜は、きよひこの夜だろ?」
4b82d5f8.jpgマリアは不思議そうな顔をして、首をかしげた。
「“清し、この夜”でしょ」
奈美が訂正した。
「きよひこの夜って」
千里が訂正する。
「きよひこが来るんですか?」
さらに望が言う。それから、抑えられないように皆で笑い声を上げた。
52b1a2aa.jpgさて、その夜。明かりを消して、望が眠っていた。
窓に、何者かの気配が現れた。望は気配に気付いてぼんやりと目を覚ます。
窓がからりと開いて、冷たい空気が流れ込んでくる。何者かの影が部屋のなかに落ちた。
89a75aed.jpg望ははっと飛び起きて、眼鏡をかけた。
「誰!」
「きよひこだ」
窓に現れた男が答えた。
「本当に来るな!」
dd4ff9b3.jpg「それはきよひこも来るさ。だって今夜は、きよひこの夜だから!」
きよひこは堂々と宣言して宿直室へと入ってきた。
「それで、きよひこの夜って、どんな夜なの?」
望と一緒の部屋で眠っていた霧が、きよひこに指摘した。
「どんなって……」
きよひこが困惑して返答に詰まった。
「完全な出オチだから、そういうことになるんです」
望は冷淡にきよひこを指摘した。
するとそこに、可符香が飛び出してくる。
1136b2fd.jpg「自信を持って、きよひこ。今夜は、きよひこの夜なんだから。きよひこのやりたいようにやればいいのよ」
可符香がきよひこにすばらしい笑顔で微笑みかけた。
きよひこの顔に、感動が生まれた。
「ありがとう、可符香ちゃん。やりたいように……思えば、今までやりたいようになんて、いつもできなかった。親に敷かれたレールの上をひたすら走っているだけ……」
「何の話をしているんですか」
急に生い立ちを話し始めるきよひこに、望はあきれて突っ込みを入れる。
「ヤングドーナツとか、買い食いしてもいいのかい?」
「もちろんです!」
「子供が産まれたら、ノアって名前付けてもいいのかい!」
「もちろんです!」
「ロストプラスワンできよひこナイトとかやっちゃっても!」
「きよひこのやりたいようにやればいいよ! だって、今夜はきよひこの夜だから!」
きよひこの顔が、希望に包まれていった。
「で、トナカイの飼っているトナって、どんな動物だ?」
とそこに、マリアが次の疑問を口にする。
窓がからりと開いた。
「トナ?」

絵コンテ:龍輪直征 演出:宮本幸裕 作画監督:岩崎安利 色指定:佐藤加奈子
9fcb2c46.jpg01d821a7.jpg36841317.jpg


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さよなら絶望先生 シリーズ記事一覧へ

作品データ
監督:新房昭之 原作:久米田康治
副監督:龍輪直征 キャラクターデザイン・総作画監督:守岡英行
シリーズ構成:東富那子 チーフ演出:宮本幸裕 総作画監督:山村洋貴
色彩設計:滝沢いづみ 美術監督:飯島寿治 撮影監督:内村祥平
編集:関一彦 音響監督:亀山俊樹 音楽:長谷川智樹
挿入歌:『さよなら! 絶望先生』
作詞:大槻ケンヂ 作曲・作詞:NARASAKI 歌:大槻ケンヂと絶望少女達
アニメーション制作:シャフト
出演:神谷浩史 野中藍 井上麻里奈 谷井あすか 真田アサミ
〇〇〇小林ゆう 沢城みゆき 後藤邑子 新谷良子 松来未祐
〇〇〇矢島晶子 後藤沙緒里 根谷美智子 堀江由衣 斎藤千和
〇〇〇上田耀司 水島大宙 杉田智和 寺島拓篤 高垣彩陽
〇〇〇立木文彦 阿澄佳奈 中村悠一 麦人 MAEDAXR
この番組はフィクションです。レバー入れ大ピンチ、石田の復活、ブラ外し下無し、前田さん、さよなら!絶望先生とは一切関係ありません。



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