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■2016/03/06 (Sun)
創作小説■
第10章 クロースの軍団
前回を読む
5
そのまま夜通し馬を走らせた。夜が明け、辺りが白み始めてもなお走った。旅は順調だったが、昼を過ぎた頃、急にソフィーが調子を乱して、馬の首に寄りかかった。
オーク
「どうしたんだ。早く」
ソフィー
「は、はい」
ソフィーの声に元気はなかった。
ソフィーは馬を北へ向けて、走らせようとした。
だがそこに、矢が放たれた。矢はソフィーが乗る馬の首に命中する。馬が倒れた。
草むらの向こうから、ネフィリムの一団が現れた。全部で5体。多勢に無勢だ。
倒れたソフィーはしばらく起き上がれなかった。ネフィリムたちが向かってくる。オークは馬を下りて、ネフィリムに立ち向かった。
ネフィリムが山刀を手に飛びかかる。オークはネフィリムの攻撃をかわし、山刀を奪い取った。向かってくるネフィリムを山刀で斬り倒す。
間もなく雲間から光が射し込んで、ネフィリムたちは退散した。オークは辺りを見回す。手に入れたはずの馬は、もうどこにも見当たらなかった。
オーク
「ソフィー、行きますよ」
ソフィー
「はい……」
ずっと膝をついたままだったソフィーを立ち上がらせて、オークは再び進み始めた。
オークは走って北へ向かった。ソフィーがオークを追って走る。しかしそのペースはみるみる落ちていく。顔色もよくない。目が虚ろになり、頬も病気のようにこけはじめた。
だがソフィーは不平を漏らさず、走った。オークはソフィーが気がかりだったが、それでも走り続けた。
それも、2日が過ぎると限界に達した。ついにソフィーは膝をついた。
オーク
「ソフィー、駄目です。立ってください」
留まるわけにはいかず、オークは厳しく言った。
ソフィーは応じようとした。だが立ち上がれず、倒れてしまった。
オークはソフィーの側に駆け寄った。
ソフィーは明らかに異常な状態だった。白い肌の向こう側に、黒い何かがうごめくのがはっきりとわかった。何かしらの呪いのようなものを感じさせた。
ソフィー
「ごめんなさい……オーク様。……私は……もう……」
オーク
「いけません。あなたを残して行けません」
ソフィー
「いいえ。魔力を失った私に何の価値はありません。オーク様1人で城に向かってください」
オークは向かうべき先を見詰めた。草原ばかりで、まだ何も見えてこない。
オーク
「ソフィー、あなたをここに置いて行くわけにはいきません。共に行きましょう」
ソフィー
「オーク様……」
オークはソフィーを抱き上げて走った。ソフィーはいくらか抵抗しようとしたが、オークに身を委ねた。
オークはその後も走った。決して歩みを落とさず、草原を進み続けた。ソフィーの体は軽いとはいえ、次第に偉丈夫の体力を奪っていった。ソフィーは何も言わず、オークの背中で揺さぶられていた。
翌日。
昼を過ぎた頃、風に混じって蹄の音を聞いた。
オークははっと足を止めて、膝をついた。草むらに身を潜ませて、蹄の音をただ追った。
西の方からだ。西の方から、わずか5騎という数の騎馬が走っているのが見えた。
オークは隠れてやり過ごそうとしたが、騎馬はまっすぐこちらに向かって走ってくる。避けられそうになかった。
オークはそっとソフィーを草むらの上に置いた。
ソフィー
「……オーク様」
オーク
「もしもの時は声を上げます。じっとしているのですよ」
それだけ言って、オークは草むらから飛び出した。山刀を手に身構える。
騎馬もオークに気付いて指をさし、弓矢を構えた。
しかしオークはようやく気付いて、はっとした。
オーク
「――アステリクス! 私だ! オークだ!」
騎馬も慌てて武器をしまった。速度を緩めて、オークの手前までやってきて馬を止める。
アステリクス
「オーク殿ではありませんか。いったいどうなされた。北の砦を守備していたのではありませんか」
オーク
「アステリクスこそ。あなたはネフィリムの討伐で、南へ遠征の旅に出ていたはず……」
アステリクス
「……どうやら、お互いに同じことが起きたようですな」
オーク
「反乱ですか」
アステリクス
「はい。仲間に裏切り者が混じっておりました。とある村にさしかかったところで、突然寝返り、村人達にも襲われました。あれは農民などではありませぬな。訓練された暗殺者です。我々は全力で振り切って逃れたのですが、生き残ったのはご覧の通り。オーク様もまさか……」
オーク
「同じです。はじめから兵士達に反逆者が紛れ込んでいました。おそらくは私の暗殺が目的だったのでしょう」
アステリクス
「いったい誰がこんな罠を……」
オーク
「証拠はありませんが、首謀者はおおよその見当がついています。今回の遠征隊の人選を行ったのは……」
アステリクス
「ウァシオか! あの男……」
オーク
「すでに伝令を放ちました。王に知らせが届いているはずです。南で軍団が城に向かっているのを見ました。早急に準備をしなければなりません」
アステリクス
「また戦ですか……。あなたはつくづく不運に見舞われる。伝令ですが、それは確かに信頼できる者でしたか?」
オーク
「まさか……」
アステリクス
「今は最悪の事態を想定しましょう。城まで急ぎますよ」
オーク
「待ってください」
オークは草むらに隠していたソフィーを抱き上げた。アステリクスは事態を察して、聖女のやつれた顔を覗き込んだ。
アステリクス
「なんてことだ。美しい貴婦人がこんなに顔を暗くさせるなんて」
オーク
「この人を先に乗せてください」
アステリクス
「わかりました。一番の俊足の者に任せましょう」
アステリクスは部下の馬に乗せると、先に行かせた。俊足の馬は、仲間を待たず、一気に草原を駆け抜けていった。オーク達も馬に乗って、走り始めた。
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