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■2016/03/02 (Wed)
創作小説■
第10章 クロースの軍団
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3
オークが目を覚ますと、暗い光が射し込んできた。昼だが空が厚い。湿り気のある風が、周囲を漂っていた。ベッドの上だった。体中に包帯が巻かれ、ベッドに横たわっていた。上の階で、何者かが動く気配があった。
オークは周囲の状況を確認した。廃墟だった。ベッドの周囲以外はほとんどが崩されて、壁の一部と天井板だけが僅かに残されているだけの場所だった。
ベッドに誰かがもたれかかって眠っていた。ソフィーだった。
オークは少し躊躇われたが、軽く頬を叩いて、ソフィーを起こした。
オーク
「眠っているところをすみません。状況の説明を」
ソフィー
「……あっ、は、はい。あのあと私……」
ソフィーが話を始める。
◇
ソフィー
「オーク様!」
オークが短く呻いて膝をついた。ソフィーが駆けつけようとするが、間に合わない。
騎兵が迫る。刃が振り下ろされる。
が、騎兵が悲鳴を上げた。馬から崩れ落ちる。その背中に、斧が突き刺さっていた。
ルテニーだ。間一髪、ルテニーが斧を投げたのだ。
ルテニー
「ソフィー様、こいつを連れて逃げろ!」
ソフィー
「あなたは……」
ルテニー
「仲間を連れて、必ず脱出する! 急げ!」
ルテニーは気絶したオークを、ソフィーの馬に乗せた。
ソフィー
「南で待ちます。2日来なかったら、城へ行きます」
ルテニー
「ああ!」
ルテニーが馬の尻を叩いた。
ソフィーの馬が、業火の中、突っ切っていく。砦を脱出するが、裏切り兵士達がソフィーを追いかけてくる。仲間達が裏切り兵士を足止めしようと攻撃を仕掛けた。
ソフィーは仲間達を気にしながら、馬を走らせた。
砦が夜の闇の中、赤く燃え上がっていた。ソフィーはその光景を目に留めて、南へと馬首を向けた。
◇
ソフィー
「……その後、2日間馬を休ませず走らせました。追っ手があの後も迫ってきていましたから。しかし馬が倒れてしまってからはあなたをおぶって歩き続けました。その後、この場所を見付けてしばらく潜むことにしました。昨日の夜の話です」
話が終わって、沈黙が漂う。
また、上の階で何かが動く気配があった。
オーク
「誰かいるのですか?」
ソフィー
「リュタンの住まいです。危険はありません」
オーク
「そうですか……。ありがとう。またあなたに救われました。あなたはいつも私を危機から救ってくれます」
しかしソフィーは目に涙を溢れさせた。
ソフィー
「しかし……仲間を見捨てました。救えたかも知れないのに」
オーク
「ソフィー。あなたに業を背負わせてしまいました」
ソフィー
「いえ……」
オーク
「行きましょう。私が狙われたということは、他でも同じように裏切りが行われた可能性があります。城へ行き、王に裏切りを知らせねばなりません。何者かが国崩しを企てています」
ソフィー
「でも、その体では……」
オーク
「大丈夫。あなたの祝福があります」
オークは立ち上がりかけるが、「うっ」と呻いて膝をつく。
ソフィー
「オーク様、まだ立ち上がってはなりません。……魔法が使えぬのです。なぜかわかりませんが、私から魔力が封じられてしまいました」
オーク
「そんな……」
ソフィー
「あなたの助けになりたいのに……今の私では、なにも……」
ソフィーはオークの体に縋り付いて、泣き始める。
オーク
「……あなたは側にいるだけで、私の癒やしになります。行きましょう。ここで留まっている場合ではありません」
オークは再び立ち上がった。
※ リュタン 家に憑く妖精。悪戯好きだが、リュタンの憑く家は幸福が訪れるとされている。
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