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■2016/06/06 (Mon)
第13章 王の末裔

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 その時の集まりはそのまま解散となった。
 オークは家の外に出て、1人きりになった。しばらく考えたかった。
 夕暮れの時刻になり、村のあちこちで焚き火が燃やされていた。子供達が騒ぐ声がしている。避難してきた人達は、一応の落ち着きを取り戻しつつあったようだった。オークはその様子を見て、少し安心した。
 夜が訪れて、静かな時間になった。オークはさらに深い思考の中に沈んでいた。時々、背後に気配がするのを感じた。自分を気遣う誰かだろう。
 オークは、ダーンウィンを持ち出して外に出た。改めて自分の目で、ダーンウィンをじっくり眺めた。
 オークは今一度決意を改めて、その柄を握った。
 ――火は放たれなかった。
 オークは鞘を払い、目の前の石に、とん、と切っ先を置いた。すると石は、2つに割れてその断面に赤い熱を残した。それは紛れもなく、ダーンウィンが本物である証だった。

ソフィー
「……運命を受け入れるのが恐いですか」

 振り返るとソフィーが立っていた。

ソフィー
「あなたは普通の人間にない多難な運命を背負って生まれたのです。あなたはそのほとんどを受け入れながら、ここまで進んできました。なのに、どうしてその1歩だけ躊躇うのですか」
オーク
「……私は、これまで国のために戦っていました。王国の騎士として、主君を守ってきました。古里を捨ててからは、国を古里と思い、働いてきました。なのに、突然王であると言われても……。まるで、王を押しのけるようで、気が進みません」
ソフィー
「あなたは誠実な人です」
オーク
「本当の私など、誰にもわかりません。オークなのか、ミルディなのか。ウァシオなのかも知れない……」
ソフィー
「そんな名前を出さないでください。……ねえ、オーク様。自分を信じて。あなたは王座を横から奪うような人ではありません。あなたは王座に戻るのです。国という、古里に」
オーク
「でも私は臣である以前に、人の子です。国というよりも、ただ1人の女性を愛する者として生きたいのです」
ソフィー
「私もあなたを愛しております。あなたを思うと、いつも胸が苦しくなります。でも、ご覧なさい。ここに集まってきた人々を。みんな、あなたを慕い、頼りにしてきたのです。あなたが王であるからではなく、あなたという人物そのものを愛しておられるのです。あなたは血が選んだ王や、剣が選んだ王である以前に、人々から選ばれた王なのです」
オーク
「……これまで国を守るために多くの人が命を落としました。王とはその犠牲の全てを背負って、王という義務を果たす者のことです。……私にはあまりにも重い。しかしここに集まってきた人々の命は、私が背負いましょう。それが私に今できることです」
ソフィー
「…………」

 ソフィーが微笑んだ。

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