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■2016/05/15 (Sun)
創作小説■
第12章 魔王覚醒
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6
セルタの砦が炎に包まれていた。夜が明けようとしていた頃、アステリクスを筆頭とする騎士達に攻撃を受けたのだ。クロース達が占拠してから、セルタの砦は外部からの攻撃を想定しておらず、充分な防備もしていなかった。それに、内部でも反乱が起きて、防衛どころではなかった。
セルタの砦に繋ぎ止められていた囚人達が反乱を起こす。その猛烈な攻撃に逃げ出したクロース兵が、アステリクス達によって討たれる。セルタの砦に持ち込まれたクロースのシンボルは次々と破壊され、焚刑のための施設も破壊された。
アステリクス
「真の王に従う者は従いて来い! 弑逆の王に従う者は裁きの時を待て!」
アステリクスの姿を見ると、捕虜達が歓喜の声を上げた。みんな躊躇わずアステリクスに従いて行った。
◇
王城の会議室では、ウァシオ王と忠臣たちが集まっていた。
ウァシオ
「馬鹿者! 何をやっていた。あれほど厳重に警備しろと命じていたはずなのに。やすやすと奪い返されるとは……」
臣下
「しかし連中は、いったいどこから忍び込んだのか、皆目わからず……。魔法で忍び込んだとしか思えません」
ウァシオ
「それを考えるのが貴様らの仕事だろうが! ……まずいぞ。セシルが生きていると知られると、我が王座は安泰というわけにはいかん。……クソッ! 情けを掛けず殺しておけばよかった」
老賢者
「しかし前王に情けを与えれば、民が支持すると言ったのは王自身ですぞ」
ウァシオの腰の剣が瞬いた。次の瞬間には、老賢者の首が跳ね飛んでいた。
老賢者の首がテーブルの上で弾む。首なしの体は絶命前に何かを求めるように手を伸ばすと、倒れた。
ウァシオ
「生意気なジジイだ。黙っていろ」
貴族
「なんてことを。貴重な知恵の持ち主だったのに」
ウァシオ
「何が貴重だ! 私を不愉快にする知恵なんぞ、片っ端から刎ね飛ばしてくれるわ!」
貴族
「…………」
貴族達は、ウァシオの恐ろしさに押し黙ってしまう。ウァシオの恐怖政治は誰もが辟易としていたが、反論できる者はいなかった。
そんな間の悪い時に、伝令の兵士が駆け込んできた。
兵士
「申し上げます。住民の一部が反旗を翻して結集し、城へと進行しています。鎮圧のために兵が投入されましたが、住民の反抗は甚だ激しく、苦戦は必至。ただちに援軍の要請を」
どよめく暇もなく、また兵士が転がり込んできた。
兵士
「申し上げます。たった今、セルタの砦が落ちました。明朝にかけて騎馬の一団が砦を襲撃。これに呼応した捕虜達が反乱を起こし、たちまち砦を制圧。火が点けられ、反乱軍は捕虜を連れて逃亡しました」
ウァシオ
「うがぁぁぁぁぁぁ!」
ウァシオが獣のような唸り声を上げて、椅子を蹴り上げた。
ウァシオ
「……よしわかった。徴兵をかけよ」
兵士
「徴兵? しかし何のために」
ウァシオ
「決まっておるだろう。反乱が起きるのは抑止力が足りんからだ。兵をもっと増やし、2度と反乱など起こらんようにしろ。金を撒けば、馬鹿な農民どもは誰にでも忠誠を誓う」
兵士
「……はっ」
兵士は少し困惑を浮かべるが、了解して会議室を出て行った。
ウァシオ
「ラスリン。お前が軍隊を指揮しろ」
ラスリン
「は? い、いや私は引退を……」
ウァシオ
「お前がやれ。今度こそオークを殺すのだぞ」
ラスリン
「……うむ」
ラスリンはしぶしぶ頭を下げて、会議室を退出した。
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