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■2016/05/13 (Fri)
第12章 魔王覚醒

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 やがて朝日が登り始めた。空が淡く白み始める。だが地上はまだ暗く、あちこちに夜の影を残していた。
 ソフィーとイーヴォールが馬を連れて歩く。

イーヴォール
「やはり、そなたが“真理”を持つ者だったか」
ソフィー
「はい。幼い頃に、村を訊ねたドルイド僧が、私の力を見抜きました。しかし私の持つ力は、多くの魔物が狙っている。私の両親……いえ、多くの親族が私を守ろうとして、魔物に殺されていましたから」
イーヴォール
「それで、ドルイド達がお前の力に気付いたというわけか」
ソフィー
「幼い頃の私は、何が起きたかわかりませんでした。周りにいた色んな人に不幸が訪れ、ただ恐ろしいばかりでした。それで私と周囲の人達の安全のために、パンテオンに預けられました。それからはずっと結界の中で過ごしていました。隠れていないと、魔物に狙われてしまいますから。……ずっと一人きりで、寂しい時間を過ごしました」
イーヴォール
「私がケール・イズ時代の魔法使いだと、はじめから知っていたのだな」
ソフィー
「いいえ。厳重な結界がかけられていましたから……。すぐには名前は見えませんでした。しばらくしてイーヴォールの名前は見えたけど、それがケール・イズの伝説に関係のある名前だとはすぐに思い当たりませんでした。あの戦いの後……あなたがキール・ブリシュトで倒れた後、古い文献を調べて、その過程でようやく気付きました。あなたがケール・イズ時代にバン・シーと呼ばれた宮廷魔術師だった、ということに」
イーヴォール
「そうか」
ソフィー
「バン・シー様」
イーヴォール
「イーヴォールの名前で呼んでくれ。本当の名前が明かされているのだし、お前にはイーヴォールの名前で呼んで欲しい」
ソフィー
「……イーヴォール様。あなたが最初に出会ったという“真理”を持つ方って……」
イーヴォール
「1000年前だ」
ソフィー
「やはりそうだったのですね」
イーヴォール
「ケール・イズの姫。私が会った、唯一の“真理”の力を持つ者であり……悪魔の王を生み出した人だ」
ソフィー
「……そんな」
イーヴォール
「事実だ。言葉には魔力がある。言葉が当てはめられると、存在しない物があたかも存在するように振る舞いはじめる。まったく違い性質を持っていた物も、言葉に当てはめられた通りのもののように振る舞い始める。言葉が当てはめられたものは存在し、言葉が当てはめられないものは存在しない。存在していたとしても、人間はそれを認識することができない。言葉は全てであり、全ては言葉だ。言葉を軽々しく操ってはならない。愚か者が誤った言葉を当てはめると、思いもしない怪物を生み出してしまうからだ。“真理”を持つ者の特異性というのは、言葉自体に魔力を持ち、無条件に実像を与えてしまうところにある。ケール・イズの姫は、南からやってきた黒の貴公子に騙され、籠絡され、言われるままに姿なき魔物に実像を与えていった。かつては森の奥に沈殿する闇の中にも、聖性があった。聖と邪は混じり合っていたし、それが正しい姿だった。だが今では、すべて人間に敵意を持つ怪物になってしまった」
ソフィー
「黒の貴公子というのは……クロースの使者ですね」
イーヴォール
「その通りだ」
ソフィー
「しかし、どうして自らの敵を作るような行為を……?」
イーヴォール
「彼らにとって必要だったからだ。クロースは自分のする全ての行為が神から与えられた使命――正義であるという前提で動いている。だがその行為は一方で残虐極まりない殺戮だ。神から使命を与えられている自分たちの行動が、聖邪混じり合っているのは、彼らにとって不都合だった。信者は矛盾と取るだろう。神の名を語る聖職者が、悪魔的な行為をしている……と。だから、自分たちの行為や意思の中から、闇の部分を取り去りたかった。そこでクロースはケール・イズの姫が持っていた魔力に目を付けた。クロースは美しい貴公子を派遣し、甘い言葉でケール・イズの姫を騙し、忌まわしき悪魔を作り出した。概念でしかなかった悪魔を現実の世界に作り出し、切り離すことで、クロースから魔の部分が消え去った。今や当人も信者も、自分たちの行動に潜む暗部に目を向けられなくなってしまった。クロースは、自分たちの正義を疑えない組織になった」
ソフィー
「あの……その時イーヴォール様はいったい……。いえ、失礼なようだったら……」
イーヴォール
「構わんさん。人から信用されないのは昔からでね。追放されていたんだ。もっとも、追放したのは、クロースの神官たちだ。私は早くから連中が姫の力を使って、何をするつもりだったか気付いていたからね。ただ、連中の暗部がいかに大きいか、までは把握していなかった」
ソフィー
「それでも、悪魔達を石に封印するのには成功したのでしょう」
イーヴォール
「私の成果じゃないよ。いや、私は情けないことに、悪魔のあまりにの力に怯えるばかりだった……。悪魔達を石にしたのは、あの時代の優れたドルイド達だった。あの時代に失ったものは大きい。この国が今のように乱れる原因を作ったのは、あの時代に知恵と信仰を失ったからだ。いまだに、国全体があの時代の爪痕を引き摺っている。1つの事件が歴史に与える歪みがいかに大きいか、長く生きているからよくわかる。……クロースは再びこの地に訪れた。悪魔の王の封印を解くつもりだ」
ソフィー
「どうして? いえ、どうやってそんな……」
イーヴォール
「200年前、私は放浪していた王族がある魔法の杖を所有しているのに気付いた。秘密の里を作るよう助力して、絶対に守るように……と言いつけた。だが魔法の杖はクロースの侵略者に奪われてしまった。あの魔法の杖には太陽と同じ力が宿されている。あの力を使えば……」
ソフィー
「そんな……。クロースにとって、あの力は忌まわしきものであるはずなのに……」
イーヴォール
「忌まわしきものだったのは、昔の話だ。今のクロースは、魔王を単に“武器”だと思っているし、そう利用するつもりだ。その提案をして中心に立っているのがジオーレという男だ。あの男、稀なる魔術の天才だ。しかし驕りすぎた。自分の才能を神から与えられ、選ばれたのだと本気で信じている。力も、“魔力”ではなく“神の力”と思い込んでいる。自分の才能と、杖の力があれば、魔王すら手なずけられる……と」
ソフィー
「なんと愚かな……。危険です」
イーヴォール
「ネフィリムもかつて人が使役するつもりで召還された者だ。どういう結果を招くか、目に見えている……」
ソフィー
「…………。ソフィー様、この馬はもしや……」
イーヴォール
「いい馬だろう。不死身だったとはいえ、地獄に落ちたからな。その時にいただいてきた。スレプニールだ」
ソフィー
「伝説上の馬です。まさか、目にする機会があるとは……。それにしても、私に取り憑いていたのは何だったのでしょう。魔物とは違う気配でしたけど……」
イーヴォール
「ああ、それなら構わん。私の問題だ。お前が気をとられる必要はない」
ソフィー
「…………?」
イーヴォール
「どうやら、お迎えが来たようだ」

 ソフィーが行く手を振り返った。
 気付くと夜がすっかり明けていた。辺りは光で満たされ、健やかな風に草の穂先がゆったりと揺れていた。その風景に、騎馬の一団がこちらに向かって走ってくるのが見えた。その先頭にオークの姿があるのを認めて、ソフィーは泣きながら手を振った。

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