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■2016/05/19 (Thu)
創作小説■
第12章 魔王覚醒
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8
夜が明ける頃、森の中に騎馬が飛び込んできた。兵士
「オーク様! オーク様は!」
オーク
「どうした」
一晩眠っていなかったオークは、すぐに兵士の許へ駆けつけた。警備に当たっていた兵士も、何事かと集まってくる。
兵士
「戦でございます。森の入口で、アステリクス率いる戦士達が、ラスリンが指揮する部隊と戦っております。今すぐに加勢を!」
オーク
「アステリクスが……」
オークはすぐに兵士達をたたき起こして、鎧を身につけ、馬に跨がった。兵士達も手早く準備を済ませて馬に乗った。
オークは軍団を引き連れて森の中を疾走した。しばらく戦の様子はなかった。慌ただしい兵士の様子とは裏腹に、穏やかな風景が続いた。
夜はじわりと明けて、森に落ちた影がゆっくりと色彩を浮かべていく。
間もなく鳥たちがさえずる向こうから、兵達の掛け声と刃の混じり合う音が聞こえた。武装のない人達が、森の中に駆け込んでくる。セルタの砦を脱出した、捕虜達だ。
オーク
「戦えぬ者はこの先の村を目指せ! この先の村を目指せ!」
オークは指示を与えると、一気に森を出た。
すると、突然に合戦の騒音が辺りを包んだ。粉塵と矢が飛び交うのが見えた。すでに騎馬達が戦場でぶつかり合う混沌が生まれていた。
オーク
「加勢するぞ! 進め!」
オークは号令を出し、自身が引き連れた騎馬隊を進めた。
オーク達が修羅に飛び込み、敵兵を一気に薙ぎ倒した。そんな最中で、オークはアステリクスと再会した。
オーク
「アステリクス! 生きていたか!」
アステリクス
「オーク殿も無事でなにより!」
オーク
「話は後だ! 戦うぞ!」
その時、敵陣で動きがあるのに気付いた。兵士達が掛け声を上げる。敵が騎兵を出したのだ。
アステリクスが率いていた部隊は、わずか50人という小勢だった。それに対するラスリンは700人。農民達を集めて、急ごしらえで作った軍隊は決して強くなかったが、数の面では圧倒的だった。
オーク達の軍団が加わって勢いに火が点いたとはいえ、700人の軍団を相手にようやく五分五分といったところだった。
イーヴォール
「苦戦しているようだな」
ソフィー
「私も手伝います」
イーヴォール
「魔力はもう戻ったのか」
ソフィー
「気力充実。勇気凛々です」
イーヴォール
「よし結構だ」
騎兵の進行から少し遅れて、2人の魔術師が戦線に加わった。
ソフィーとイーヴォールが同時に呪文を唱えた。2人の呪文は、双子のようにぴったりと合わせられ、同じ動作で印を結び、同じ奇跡が2人を囲んだ。そして同時に、魔術が放たれた。
敵本陣に巨大なリングが現れた。火の玉が霰のように降り注ぐ。突然の業火に、騎士達は慌てふためき、足並みを乱して散り散りに逃亡を始めた。
ラスリン
「何をしている! 幻術に惑わされるな! ドルイドなどインチキだ! 逃げるな!」
及び腰になる兵達に、ラスリンの言葉には説得力はなかった。兵達はソフィーとイーヴォールの魔術に怯えきってしまい、戦線はあっという間に乱れてしまう。
そこに、オーク達の部隊は突撃した。オークは兵達を薙ぎ倒し、炎を飛び越えていくと、その向こうにいたラスリンの首を刎ね飛ばした。
指揮官を失った敵兵は、いよいよバラバラに四散した。兵士達は戦意を失って逃亡するか命乞いをするかした。
◇
戦が終わり、平原は急速に沈黙する。後に残されたのは荒れた土地と、夥しい数の死体。血生臭い空気が辺りを満たしている。頭上を見ると、カラスの群れが渦を巻いていた。
アステリクス
「同族同士の戦いほど虚しいものはない……」
オーク
「戦のたびに友を失う……。かつてセシル様が言っていました。アステリクス、よくぞ生きてくれました」
アステリクス
「何度も死線を潜り抜けました。この国は乱れきっています。南の異教徒が、この国に混乱を持ち込みました」
オーク
「国を取り戻さねばなりません。……しかし何から手を付けていいのか……」
アステリクス
「希望は人が持ち込みます。オーク様が生きていてよかった。オーク様の顔を見れば、人々は勇気を取り戻します。希望は再び見出されます」
オークが途方に暮れる様子で座り込んだ。
そこに、イーヴォールがやってくる。
イーヴォール
「なるほどそうかも知れんな」
オーク
「イーヴォール殿?」
イーヴォール
「聖剣を取り戻そう」
オーク
「しかし……扱える者がおりません」
イーヴォール
「そうだな。私もどうしていいかわからない。でも取り戻そう。どこかで道が開かれるかも知れない。今はとにかく、考えるより動こう」
アステリクス
「それならば、私にお任せを。聖剣の行方なら、すでに突き止めております」
次回を読む
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