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■2016/04/19 (Tue)
創作小説■
第11章 蛮族の王
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4
戦いが終わり、城の整理が始まった。かつての王を示す様々な証が破壊され、焼き払われ、ヴォーティガンに忠誠を尽くした召使いたちは処刑された。王と王子が住まいとしていた館は完全に破壊された。
ドルイド達は城から追放し、あるいは異端審問にかけて火あぶりにした。その死骸は、長く街の広場で晒し者にされた。王城が代わりに迎えたのは、クロースの神官達だった。城の大広間に、大きな十字架が掛けられた。
捕らわれたセシル王は投獄され、拷問が加えられた。ウァシオに王権を譲るよう強要したが、セシルはあらゆる苦痛に耐えて、これを拒否し続けた。だが、呻き声の1つが承認であると見なされ、ウァシオはついに王冠を手にした。
◇
戴冠式は城の謁見の間で厳かに行われた。
ウァシオに付き従っていた貴族達が式典を見守る。クロースによるラテン語の祝詞が広間を包む。
ウァシオがマントと王笏を身につけ、玉座に座る。クロースの神官がウァシオの頭に冠を載せた。
貴族達がその瞬間を拍手で喝采した。
◇
ウァシオの戴冠は、最新のニュースとして街の人々に広まった。
街の人達
「ウァシオ様が王になったぞ!」
街の人達
「嬉しいわ! これで生活が楽になるのね!」
街の人達
「前の王は無能だったからな。これで俺達のための政治が始まるぞ!」
街の人達
「俺達は平和を掴み取ったんだ!」
街の人達
「ウァシオ王! 万歳! ウァシオ王に栄光を!」
街は祝福ムードに包まれていた。
が、城壁の周囲では緊張が走っていた。いまだ戦争の爪痕が残る平原。死体と壊れた武器が残る禍々しい修羅の中を、ゼーラ一族の人々が列を作って城へと向かっていた。
戦争か! 城壁を監視していた兵士達に緊張が走った。
兵士
「ゼーラ一族だ! 戦闘配置! 警戒せよ!」
兵士
「待て! 武器を収めよ! 武器を収めよ! ウァシオ様からの命令だ。ゼーラ一族を城下町に入れろ!」
兵士達にどよめきが走る。兵士達は武器を手にしたまま、命令を理解できず、茫然としていた。
それでも、命令通り大門が開かれた。ゼーラ一族が行列を作って街の中へと入っていく。
街の人達は、西の蛮族が街に入ってくる様子を、困惑と不安の顔で見守った。なぜ彼らが街にいるのか、なぜウァシオが彼らを招き入れたのか、誰も理解できない様子だった。
ゼーラ一族は街の中を真っ直ぐ進み、城へと入った。迎えたのはウァシオ王であった。
ウァシオ
「よくぞ来たな。我が友よ」
ゼーラ一族
「長い戦いであったな。よくぞ耐えてくれた」
ウァシオ
「苦労は忘れよう。喜びは分かち合おう。国も城の財産ももはや我らのものだ。住居の心配もしなくてもいいぞ。先の戦いで多くが死に、多くが街を去った。街へ行けば、お前達全員が住むのに不都合がないくらいに空き家がある。なんなら、王の権限で人を追い出すくらいいくらでもできる」
ゼーラ一族
「お前は一族最大の英雄だ。歴史を持たぬ我らだが、ウァシオの名前は英雄の代名詞として残そう」
ウァシオ
「今日は喜びの日だ。ゼーラ一族全員で分かち合おう。宴だ! 宴の用意をしろ! これより7日間の宴を催す! 記録に残る宴にするぞ! 今すぐに食事を用意しろ!」
従者
「……ウ、ウァシオ様、我が城には財産は多くありません。先代は民に負担を掛けないため、質素倹約を貫いておりました。今すぐに宴というのは……」
ウァシオ
「何を言うか、この間抜けめ。あそこを見ろ。財産ならいくらでもあるわ」
ウァシオが指し示したのは、城下町だった。
ウァシオ
「城に財産がないのなら、民からふんだくれ! 我は王であるぞ! 従わぬ奴は死罪にしろ! わかったら、早く宴の用意をしろ!」
従者
「……は……ははぁ」
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