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■2009/08/04 (Tue)
この小説は、『さよなら絶望先生』を題材にした2次創作小説です。2次創作に関する法的問題については、こちらをご覧下さい。【著作物】【二次創作物】【パロディ】【パロディ裁判

P014 第2章 毛皮を着たビースト
 

11

可符香のノートをチェックし終えて、糸色先生は次のノートを手に取りながら、私を改まったふうに振り返った。
「それで、日塔さん。あれから1週間が経ちましたが、具合はどうですか。そろそろ落ち着きましたか」
糸色先生は、少し私に気を遣うみたいだった。
「ありがとうございます。でも、もう随分経ちますから。平気ですよ」
私は軽く笑顔を作った答えを返した。
本当はまだ、落ち着いているとは言えなかった。夜、眠ろうとすると、あのホルマリン漬けを夢に見るのではないかと思う日はあった。
それに、あれから何度か野沢の携帯電話に掛けてみたけど、一度も応答はなかった。友達の情報を頼って、やっと家の電話を調べたけど、家族の人から「行方不明だ」と告げられた。
あの事件はまだ終っていない。私の心の底にできた闇と恐怖は、まだ晴れずに静かに漂っている。もしも、野沢君の身に何か起きていたとしたら……。私は、その時の心の準備はできているだろうか。
「野沢君、大丈夫かな」
私は何となくそれを口にするのが嫌だった。それを口にしたら、野沢が無事でないと認めるみたいだったから。
「失踪届けが出たそうです。死亡ではありません」
「失踪届け、ですか?」
糸色先生が簡単に説明した。でも私は意味がわからなくて、聞き返してしまった。
「失踪者に出される届出です。失踪届けが出れば、全国の警察に伝わり、仕事ついでに探してくれるようになるんですよ。だから、もしかすると、どこかでひょっこり見付かるかもしれませんよ」
糸色先生は私を安心するように微笑みかけた。ちなみに失踪届けは、7年が過ぎると、死亡扱いになるそうだ。7年も経つと、もう発見されないだろう、という意味だ。
「蘭京さん、まだ見付からないそうですね」
でも私の気分は晴れず、ぽつりと声を沈ませた。
「警察が目下捜索中です。すでに町中くまなく捜索されましたが、発見されていないようです。自宅にも帰った痕跡がないようです。蘭京さんには親類もいなかったそうですから、行き先は不明のまま。でも、とりあえず町内にはいないでしょう。これだけ探していないのですから。だから日塔さんも安心してもいいですよ」
糸色先生は私を元気付けるように、ちょっと笑顔で顔を上げた。
「そうですか……」
私はすぐには明るい気持ちになれず、やっぱり声を沈ませた。
蘭京太郎は発見されていなかった。糸色先生が言ったように、痕跡を残さず忽然と姿を消していた。
行方不明になった生徒も発見されていない。だからあのホルマリン漬けの持ち主が、行方不明の生徒なのか、それすらわからないままだった。
私の個人的な気持ちが、ではなく、実際に事件は終っていなかった。なのに、不思議なくらい平和な日常は戻ってきた。みんな事件などなかったみたいに、笑ったり騒いだりしている。
町に出ると、蘭京太郎の指名手配写真が一杯に貼り出されていた。事件は継続中だ、と警告するように。でもそんな風景すら日常のひとコマにしてしまって、平凡な毎日が続いている、という感じだった。
「さて、日塔さん。私は仕事があるので。そろそろ、通知表をつけねばなりませんし」
しばらく黙って立っていると、糸色先生が私に声をかけた。
私は、あっと顔を上げた。糸色先生は抽斗を開けて、これみよがしに通知表の束を引っ張り出していた。
「あ、失礼します!」
私は背筋を真直ぐ伸ばして挨拶をすると、逃げるように糸色先生の机を離れた。
そうして職員室を出て行こうとしたとき、
「……非通知にしちゃおっかな」
糸色先生が小さな声で呟くのが聞こえた。
私はふと足を止めて、糸色先生を振り返った。糸色先生は憂鬱そうに首をうなだれさせて通知表と向き合っていた。
糸色先生、私、非通知賛成です。
私は「失礼しました」と職員室を出て行った。
職員室を出ると、正面の窓に鮮やかに冴えた緑色が現れた。ミンミンと叫ぶようなセミの大合唱が聞こえていた。
そういえば、もうすぐ夏休みだな、と私は思った。
子供の頃は、楽しみに日を数えて待っていた夏休み。でも今の私の気持ちは、ぼんやりと暗いものを背中に抱えたままだった。

次回 P015 第3章 義姉さん僕は貴族です1 を読む

小説『さよなら絶望先生~赤い瞳の少女~』目次




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