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■2009/08/08 (Sat)
創作小説■
この小説は、『さよなら絶望先生』を題材にした2次創作小説です。2次創作に関する法的問題については、こちらをご覧下さい。【著作物】【二次創作物】【パロディ】【パロディ裁判】
4
命先生から実家の住所を聞き出すと、私たちはすぐに糸色医院を後にした。そのまま近くの茗荷谷駅から電車に乗り、東京駅に向かった。東京駅に着くと、長野方面の新幹線に乗った。
新幹線はやがて東京の都会を離れていき、賑やかな風景も遠ざかって畑や山ばかりが現れた。
私はなんとなく千里に従いてきてしまったけど、都会の風景が見えなくなって、急に「来ちゃった」という気になってしまった。それから不安も感じてしまった。ちょっと糸色先生の顔を見ようかな、と思っただけなのに。ちゃんと日帰りで帰れるだろうか。家に電話もしなくちゃいけない。
私の隣に可符香が座っていた。可符香はのんびりと窓に肘を置いて、鼻唄を歌っていた。可符香の手前には、千里が座って厳しい顔で窓の外を眺めている。その千里の隣に、いつの間にか合流していた藤吉晴美が座っていた。
「藤吉さんも、先生の家に行くの?」
新幹線での移動の時間は退屈だった。私は退屈を紛らすつもりで藤吉に話しかけた。
「ううん。なんか面白そうだから見に行くだけ。ちょうど方向も一緒だし、ついでにね」
藤吉は楽しそうに微笑んでいた。
私は藤吉という女の子について、よく知らない。どうやら千里とは幼馴染らしく、いつも一緒にいて、子供時代を語り合ったりしていた。
藤吉さんはちょっと背が高く、手足がすらりと伸びて健康的な印象があった。髪は肩に届くくらいで、変に手を加えていない。いつも眼鏡を掛けていて、なんとなく知的な雰囲気があり、私にはお姉さん、という感じに思えた。千里と可符香と一緒だと不安だけど、藤吉がいてくれるのは心強かった。
藤吉はキャミソールの上にタンクトップを重ね着していて、ハーフパンツを穿いていた。崩したファッションだけど、藤吉のスタイルだとかっこよく思えた。
いきなり私のポケットの中で、携帯電話が振動した。私は何だろうと携帯電話を引っ張り出してメールボックスを開いた。
《そっち行ってもいいか》
文章の感じを見て、差出人の名前を見る前に芽留だと思った。
でも、《そっちに行って……》ってどういう意味だろう。私は身を乗り出して、通路に目を向けた。すると、私たちの席からちょっと離れたところに、芽留が携帯電話を片手にしょんぼりした感じに立っていた。
「どうしたの、芽留ちゃん。こっちにおいでよ。そっち席空いてるから」
私は芽留に呼びかけて、通路を挟んだ向かい側の席を指差した。もっとも、新幹線のなかはすいていて、どの席も開いているんだけど。
《すまねえな 今度ジャニーズの裏画像送ってやるよ》
芽留は素早くメールを打ち込むと、私が指さした席にちょこんと座った。芽留はオレンジのTシャツに、デニムスカートを穿いていた。芽留みたいな小さな女の子だと、そんな格好も子供みたいで可愛かった。
「いや、いらないから。でも芽留ちゃん、どうしたの? 家族とはぐれちゃったの?」
私は身を乗り出させて、向かい側の席の芽留に話しかけた。
でも芽留は、私から目を逸らし、もじもじとメールを打った。
《電波が急に切れて うろうろしていたら何か乗ってた》
やっぱり返事はメールだった。
「そうなんだ。偶然ってあるんだね」
私は姿勢を戻して、頬杖をついた。側にいるんだから、正面を向いて「ありがとう」て言えばいいのに。
次回 P019 義姉さん僕は貴族です5 を読む
小説『さよなら絶望先生~赤い瞳の少女~』目次
P018 第3章 義姉さん僕は貴族です
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命先生から実家の住所を聞き出すと、私たちはすぐに糸色医院を後にした。そのまま近くの茗荷谷駅から電車に乗り、東京駅に向かった。東京駅に着くと、長野方面の新幹線に乗った。
新幹線はやがて東京の都会を離れていき、賑やかな風景も遠ざかって畑や山ばかりが現れた。
私はなんとなく千里に従いてきてしまったけど、都会の風景が見えなくなって、急に「来ちゃった」という気になってしまった。それから不安も感じてしまった。ちょっと糸色先生の顔を見ようかな、と思っただけなのに。ちゃんと日帰りで帰れるだろうか。家に電話もしなくちゃいけない。
私の隣に可符香が座っていた。可符香はのんびりと窓に肘を置いて、鼻唄を歌っていた。可符香の手前には、千里が座って厳しい顔で窓の外を眺めている。その千里の隣に、いつの間にか合流していた藤吉晴美が座っていた。
「藤吉さんも、先生の家に行くの?」
新幹線での移動の時間は退屈だった。私は退屈を紛らすつもりで藤吉に話しかけた。
「ううん。なんか面白そうだから見に行くだけ。ちょうど方向も一緒だし、ついでにね」
藤吉は楽しそうに微笑んでいた。
私は藤吉という女の子について、よく知らない。どうやら千里とは幼馴染らしく、いつも一緒にいて、子供時代を語り合ったりしていた。
藤吉さんはちょっと背が高く、手足がすらりと伸びて健康的な印象があった。髪は肩に届くくらいで、変に手を加えていない。いつも眼鏡を掛けていて、なんとなく知的な雰囲気があり、私にはお姉さん、という感じに思えた。千里と可符香と一緒だと不安だけど、藤吉がいてくれるのは心強かった。
藤吉はキャミソールの上にタンクトップを重ね着していて、ハーフパンツを穿いていた。崩したファッションだけど、藤吉のスタイルだとかっこよく思えた。
いきなり私のポケットの中で、携帯電話が振動した。私は何だろうと携帯電話を引っ張り出してメールボックスを開いた。
《そっち行ってもいいか》
文章の感じを見て、差出人の名前を見る前に芽留だと思った。
でも、《そっちに行って……》ってどういう意味だろう。私は身を乗り出して、通路に目を向けた。すると、私たちの席からちょっと離れたところに、芽留が携帯電話を片手にしょんぼりした感じに立っていた。
「どうしたの、芽留ちゃん。こっちにおいでよ。そっち席空いてるから」
私は芽留に呼びかけて、通路を挟んだ向かい側の席を指差した。もっとも、新幹線のなかはすいていて、どの席も開いているんだけど。
《すまねえな 今度ジャニーズの裏画像送ってやるよ》
芽留は素早くメールを打ち込むと、私が指さした席にちょこんと座った。芽留はオレンジのTシャツに、デニムスカートを穿いていた。芽留みたいな小さな女の子だと、そんな格好も子供みたいで可愛かった。
「いや、いらないから。でも芽留ちゃん、どうしたの? 家族とはぐれちゃったの?」
私は身を乗り出させて、向かい側の席の芽留に話しかけた。
でも芽留は、私から目を逸らし、もじもじとメールを打った。
《電波が急に切れて うろうろしていたら何か乗ってた》
やっぱり返事はメールだった。
「そうなんだ。偶然ってあるんだね」
私は姿勢を戻して、頬杖をついた。側にいるんだから、正面を向いて「ありがとう」て言えばいいのに。
次回 P019 義姉さん僕は貴族です5 を読む
小説『さよなら絶望先生~赤い瞳の少女~』目次
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