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■2009/08/10 (Mon)
この小説は、『さよなら絶望先生』を題材にした2次創作小説です。2次創作に関する法的問題については、こちらをご覧下さい。【著作物】【二次創作物】【パロディ】【パロディ裁判

P020 第3章 義姉さん僕は貴族です
 


私たちは初めて見るような高級な車に勧められるままに乗った。座席が3列並んだキャデラックだった。内装は濃い茶色とホワイトのトーンに統一されて、落ち着いた雰囲気があった。ソファはふっくらと暖かい。私たち7人が乗っても、まだ余裕のある広さだった。
私たちが座席に座ると、キャデラックが出発した。蔵井沢の駅前とおりをゆるやかな速度で走っていく。車道は幅が広く、車両が賑やかに行き交っていた。だけど、キャデラックの周囲だけは避けるように車が少なかった。
通りを歩く人の数が少ない。窓の外は強烈な光の中で輝き、車の中の静けさとは、別世界のように思えてしまった。
「先生の家って、もしかしてお金持ちなんですか?」
真ん中席の真ん中に座った千里が、助手席の時田に話しかけた。先頭の運転席はガラスで仕切られていて、時田と運転手が乗っていた。
「糸色家は元禄の頃から続く、名家でございます。かつてほどの権勢はありませんが、今日においても、地元に対し絶大な影響力を持っております」
時田は首をこちらに向けて、私たちに厳かに説明した。
「そうだったんだ。なんで、うちの学校で先生なんかやってるんだろう」
私はぽかんとしつつ、疑問を口にした。糸色先生は古風な感じの人だったので、金持ちという雰囲気は今まで感じなかった。
「おぼっちゃんの里帰りってわけか」
後ろの席のカエレが、納得したように呟いた。
「マリアも里帰りしたい!」
カエレとあびるに挟まれて座るマリアが声をあげた。ちなみに可符香はあびるの隣だ。
《お前の場合、強制送還だから》
芽留が素早くメールで突っ込みを入れる。でもそれ、マリアちゃんには届いてないから。
窓の外の風景は、間もなく駅周辺から離れていった。辺りから住宅街が消えて、のどかな田園風景に変わる。緑に色づく稲が、夕暮れの光を浴びて穂先を黄金色に輝かせていた。ずっと向うのほうに、青く霞む山脈の連なりが見えた。
蔵井沢は江戸時代の頃は交通の要衝として、重要な地位を与えられた宿場町だった。だけど明治に入って交通機関が急速に発展すると、蔵井沢は宿場としての機能を失ってしまった。
その後、しばらく蔵井沢は衰退していたけど、涼しげな気候に注目した宣教師たちが別荘を建て始めた。それが切掛けとなって、蔵井沢は高級避暑地として新たに認識され始めた。
糸色家が元禄の時代から続く名家なら、おそらくそんな歴史を体で感じ、通過していったのだろう。移りゆく風景も、変わらないのどかな風景も、糸色家はすべて記録し続けたのだ。
私は感慨深げにどこまでも続く田舎の風景を眺めていた。
するとそこに、ひょろと背の高いシルエットが現れた。白いシャツで、エナメル質の黒いズボンを穿き、髪をつんつんに立てている。いかにも、チャラチャラした風貌の、二人組みの若者だった。
ああいうのは、やっぱりこういう風景の中にもいるんだ。私は目を合わせてはいけないと思い、窓から顔を逸らそうとした。
しかし千里が、私を押しのける勢いでいきなり窓にすがり付いてきた。
「停めて! ちょっと停めてください!」
千里は物凄い勢いで運転手に命令した。
キャデラックは二人の若者をちょっと通り過ぎたところで停車した。
「ちょっとどうしたの、千里ちゃん」
私が訊ねるのも無視で、千里はドアを開けて外に飛び出そうとした。必然的に、私も押し出されて外に出た。
「糸色先生、何をやっているんですか!」
千里は若者の前に仁王立ちにして怒鳴りつけた。
私はやっとチャラチャラした若者の正体に気づいた。糸色先生だった。後ろに続いているのは、やはりチャラチャラした格好のまといだった。
他の女の子たちも、ドアを開けて外に出てくる。糸色先生は私たち全員に目を向けられて、顔に動揺を浮かべていた。
「何でいるんですか!」
「先生こそ、なんですか! そのチャラチャラした格好。髪にツヤまで入れて。きっちりしてください!」
千里が容赦なく感情をぶつける。糸色先生ははっとして、自分の顔を腕で隠そうとした。
「知ったな! 私が地元でチャラチャラしているのを知ったな!」
糸色先生は回れ右をして走り出した。まといも当然一緒に走り出す。
「待ちなさい!」
「待ちません!」
千里が後を追って駆け出す。糸色先生は走る姿はみっともなかったけど、意外な俊足だった。千里は追いつけず引き離されていく。
私たちは、糸色先生と千里のやりとりを茫然と見ていた。というか、入る余地がなかった。
千里を追い越すように、俊足の影が通り過ぎる。時田だ。
「お待ちなさい!」
「いやだー!」
糸色先生は水中をもがくように手足をバタバタさせて走る。
時田はすぐに糸色先生を追い詰めると、そのまま体当たりを食らわせた。二人で茂みの中に転がる。時田は糸色先生をしっかり掴んでホールドした。
「離せー!」
糸色先生がじたばたともがく。でも時田は決して離さなかった。

次回 P021 第3章 義姉さん僕は貴族です7 を読む

小説『さよなら絶望先生~赤い瞳の少女~』目次




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