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■2009/08/01 (Sat)
この小説は、『さよなら絶望先生』を題材にした2次創作小説です。2次創作に関する法的問題については、こちらをご覧下さい。【著作物】【二次創作物】【パロディ】【パロディ裁判

P010 第2章 毛皮を着たビースト


私たちはしばし沈黙した。静かに囁く雨の音が、心にのしかかってくる気がした。
「あの、智恵先生。それは、実際の話なんですか? 映画の話とかではなく……。」
千里が軽く手を上げて質問をした。千里の額に、乱れた毛が数本被さっていた。
「もちろん、本当の話よ」
智恵先生はさらっと答えを返した。保健室の空気が、よりどんより曇るような気がした。
「智恵先生、どうしてそんな事件に詳しいんですか?」
今度は糸色先生が尋ねた。糸色先生の顔にも、恐怖が浮かんでいた。
「スクールカウンセラーですもの。神戸での事件以来、その種のテキストも必須になったのよ。性異常者による犯罪は、もう特別な事件じゃありませんから」
智恵先生が糸色先生を振り向いて説明した。なんとなく智恵先生が生き生きと話をしているように思えるのは、私の気のせいだろうか。
私は今さら、頭が重く感じてうつむいた。呼吸が詰まる気がして、胸を抑えた。そんな事件が、この学校で、この身近で起きてしまった。私は自分で抑えられない恐怖を感じていた。
「とりあえず、そういう事件だと理解しました。それで、死体はどこにいったんですか? 切り取られた、その……あれがあるのですから、死体がどこかにあるはずです。そもそもあれは、うちの生徒だったのか、という疑問もあります。」
千里はもう恐怖から克服したらしく、いつものきっちりした真ん中分け富士額に戻っていた。
「今、学校で全生徒の所在を確認しています。死体が出てきていないから、まだうちの生徒のものだ、とはいえない状況よ。そこから後は警察の仕事になるわ。蘭京さんの行方も含めてね。学校はしばらく封鎖されるから、私たちは大人しく家でじっとしているのがいいわ」
智恵先生は安心させるように、声のトーンを軽くして、私たちを見回した。
「とにかく、日塔さんが無事で何よりです。犯人らしき人と接触しかけたわけですから。私のクラスの生徒に、何も起きなくて本当に良かった」
先生がげっそり青ざめた顔に笑顔を作った。
でも智恵先生が厳しく糸色先生を睨み付けた。
「何言ってるんですか。小森霧さんが行方不明なのよ!」
「ええ!」
糸色先生が驚きの声をあげた。私も千里もぽかんと口を開けて智恵先生の厳しい顔を見ていた。
小森霧は、世にも珍しい学校引きこもりだ。だから学校に引きこもったまま、何日も家に帰っていない。学校のある一室で過ごしていて、教室にはあまり顔を出さないけど、2のへ組の一人だ。その小森霧が、学校から姿を消したらしい。
智恵先生があきれたように溜息をついた。
「まったく。いいかげん、毎朝生徒の出席をとる習慣を身に付けてください。自分のクラスの生徒のことでしょ。今すぐ電話するなり確認してください!」
「はい、すぐに行きます!」
智恵先生の言葉は穏やかだったけど、鋭い目つきで糸色先生を叱った。糸色先生は、怒られた生徒みたいに背筋を真直ぐ伸ばし、智恵先生に頭を下げると物凄い勢いで保健室を飛び出していった。
「あの、小森さんはいつからいなくなっていたんですか?」
智恵先生が私たちを振り向くと、千里が訊ねた。
「日塔さんをここに運んだ後、すぐに小森さんの様子を見に行きました。最悪の場合、事件の現場はこの学校ですから。小森さんになんらかの被害が及んでいるかも、と考えたのです。でも、部屋にはいませんでした。食事の跡から推測すると、昨日の夜、食後に失踪したようね。小森さんは引きこもりだから、そんなに遠くに行くはずがないと思うと、やっぱり気がかりで……」
智恵先生の顔に不安な影が映った。
私は暗い気持ちでまたうつむいた。もしかしたら、小森霧ともう会えないかもしれない。そう思うのがあまりにもつらかった。
「ねえ、そろそろ帰りましょう」
可符香が私たちに声をかけた。顔を上げると、可符香の気遣わしげな微笑があった。色を失って灰色に沈むこの保健室で、可符香だけが光を浴びているみたいに明るかった。
「そうね。本来、集団下校ですから、私が家まで送るわ」
智恵先生も微笑を浮かべて、可符香に続いた。
私も千里も、そうね、と同意した。
鞄は、保健室の入口側のベンチに、三つ並べて置かれていた。
私はベッドから降りて、自分の鞄を手に取った。その持ち上げた感触で、千里が持って来てくれたんだな、と理解した。机の教科書が全部入っていたからだ。
それから、私はふとサイドポケットに入れておいた携帯電話に気付いた。
「あの、ちょっと電話してもいいですか。友達のところに。一応、確認したいので……」
私は携帯電話を手に持ち、保健室にいるみんなを振り返った。智恵先生も千里も頷いて了解した。
私は携帯電話の電源を入れ、電話帳を呼び起こした。昨日登録したばかりの野沢の番号を選び、通話ボタンを押した。
携帯電話を耳に当てて、応答を待った。
コール音が聞こえた。1回、2回。3回目に入りかけたところで、音がいきなりブチッと切れてしまった。携帯電話の電源を切った感じじゃない。そういう時は、あんな音はしない。何か、潰されたような音だと思った。
私は、もう一度野沢の携帯に掛けてみた。でも返ってきたのは「現在、電源が入っていないか電波の届かないところに……」という冷たいアナウンスの声だけだった。

次回 P011 第2章 毛皮のビースト8 を読む

小説『さよなら絶望先生~赤い瞳の少女~』目次




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