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■2016/05/31 (Tue)
創作小説■
第13章 王の末裔
前回を読む
5
イーヴォールたちは3日後、隠里に帰還した。オーク達がすでに戻っていて、なにやら事件だというふうに人々が話し合っていた。イーヴォール
「どうした? 何があった」
兵士
「イーヴォール様。お待ちしておりました。急いでください」
ただちに兵が応じて、イーヴォールをオーク達がいる家へと案内した。
その間に、兵士はおおよそのあらましを説明した。オークがダーンウィンの柄を握って無事であったという話を。
オーク達のいる部屋に入ると、彼の忠臣達が集結していた。しかし訳のわからない事態に、みんな神妙な顔をしていた。
イーヴォール
「オーク。話は聞いた。本当か」
オークは沈思黙考に沈んでいて、話しかけられてようやくイーヴォールの存在に気付いたというふうに席を立った。
オーク
「ダーンウィンは奥に保管しています。できれば、あなたの目で検分をお願いしたい」
イーヴォール
「もちろんだ」
ダーンウィンが台座に置かれて運ばれてきた。盗まれないようにするためではなく、誤って柄を握らないようにするためであった。
イーヴォールは聖剣を手に取ると、柄をじっくり眺めて、次に鍔を手に取り、慎重に鞘を抜いて、錵と刀のきめを、一つ一つ逃さず丹念に調べた。
その後、かつてダーンウィンを見た経験のある者、一度でも城の保管室を訪ねたことのある者が集められ、順々に剣を検分した。
その見解は、判を押したように同じものだった。
兵士
「この柄の彫りは、容易に贋作を作り出せるものではありません。それにこの刃に描かれたルーンの文字。刃のきめ細かさに、太古の霊力が残っております。それに斬った者に火を放つ特徴など、ダーンウィンにおいて他にありますまい。これを握られる者は王族だけ。――オーク殿、そなたは王家の血を引いております」
しかしオークは、困惑した様子で頭を振った。
オーク
「どういうことです、イーヴォール」
イーヴォール
「私にも見当がつかない。ダーンウィンを握れる者はケルトの中でもたった1つの血筋の者だけだったはずだ。例外は絶対にない。それを握ったという事実が、それを明白に示している。――ただ……」
オーク
「なんですか?」
イーヴォール
「王城でお前と再び会った時、妙な感じを受けた。以前会った男とどこか違う。それにオークという名前……。オーク。いま再び聞こう。そなたに名を与えたという僧侶は、いったい誰なのだ」
オーク
「――それは、ソフィーです」
部屋にいた全員がソフィーを振り返った。
イーヴォール
「そなたであったか!」
ソフィー
「わ、私は……」
オーク
「私は魔物にかつての名前を奪われ、それを切っ掛けに旅をしました。その最中、偶然出会ったのがソフィーです。ソフィーは名前のない私に、オークの名前を与えてくれました。確かにセシル様にはオークという名前の弟がいたそうです。しかし、私には母がいます。名前が同じなのは、何かの偶然としか……」
ソフィー
「…………」
イーヴォール
「しかし剣がそなたを選んだ。そなたが持つべき者であると。この剣は王の血筋しか持てぬ。どんな例外もない」
ソフィー
「…………」
オーク
「しかし……」
オークに複雑な迷いが浮かんでいた。
しかしそれが言葉にできずにいると、兵士が転がり込んできた。
兵士
「オーク様、大変です!」
次回を読む
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