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■2016/07/20 (Wed)
第14章 最後の戦い

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17
 大広間に飛び込むと、やはりそこにも悪魔が待ち受けていた。奥の十字架の下に儲けられた玉座に、角を持った獣が、まるで王族のごとく座り、訪れる者を待ち受けていた。
 悪魔がオークと対決するために立ち上がった。立ち上がると高さは約4メートル。悪魔の中では小ぶりなほうだが、向き合ってみるとこれほど恐ろしいと感じる巨人はいなかった。しかも巨人の右手には、恐るべき鎚が握られ、左手には巨大な斧が握られていた。
 オークは巨人の悪魔に立ち向かった。巨人の鎚は地面を叩き割り、斧は石壁をバターのように切り裂く。しかも巨人は、武器を巧みに操り、驚くべき速度でオークを追い詰めた。
 しばらく1対1の戦いが続いたが、やがてネフィリム達が通路から現れ、戦いに参加した。オークはかつてないほど早く剣を走らせてネフィリムを斬り殺し、かつてない腕力で巨人に立ち向かった。オークの一撃は悪魔の鎚を押し返し、破壊力は斧を上回った。
 オークも攻撃を受けた。一瞬の油断で、鎚の一撃がオークの背中に命中した。鎧が砕かれ、骨にも衝撃が走った。
 しかしどんなに体力を奪われようとも、血が失われようとも、オークをまとう鬼気迫る殺気は毫とも衰えず、剣の力が弱くなることはなかった。
 オークの力は巨人を圧倒し、凄まじい攻撃の連打でついに巨人が膝を着いた。オークはとどめの一撃を巨人の頭頂部に叩き落とした。
 辺りに群がり集まるネフィリムを1匹残らず倒すと、突然にふらりと膝が折れた。気を失いかけた。背中に受けた一撃は、思った以上に致命的だった。
 だがそこは魔の巣窟。とどまるわけにはいかなかった。
 オークは再び走り始めた。回廊を抜けて、広間を2つ横切った。
 突然、上方の吹き受けに、ズンズンと気配が迫った。はっと顔を上げる。壁を覆う壮麗なるステンドガラスが砕け散った。色とりどりの光が空間一杯に煌めく。その向こうから、恐ろしく巨大な黒い塊がどすんと落下してきた。
 次なる悪魔は固有の形を持たなかった。ただただ巨大な黒い塊に、無数の手足をにょきにょきと生やしていた。
 悪魔の手を長く伸ばし、オークを掴もうとする。ネフィリム達も当然のように集まってきた。
 オークは悪魔の腕を叩き落とした。だが、いくら叩き落としても次々に新しい手が生えてきた。いくら叩き落としても、ダメージにはならなかった。
 オークは構わず斬り続けた。すでに戦いが本能であり、その本能に従った。オークは目に映る全てを斬っていた。いつの間にかオーク自身の魂に悪魔のような狂気が映っていた。
 気付けば悪魔を倒していた。悪魔の体が真っ二つに裂かれて、その周囲に夥しい数の手足が散らばっていた。オークはいつどうやって倒したか覚えていなかった。
 オークは次の階層へと進んでいった。そこにも悪魔が待ち受けていた。全身で炎で覆われた、恐ろしく巨大な悪魔だった。
 オークは炎の獣と対峙し、剣を構えたまま、ふらりと膝が崩れた。目の焦点が定まらず、近付いてくる獣の姿が2重にぶれた。
 悪魔がオークの体を掴んだ。燃え上がる手がオークの体を燃やす。悪魔はオークの体を高く高く放り投げた。どこまで放り投げたかわからないくらい長く宙を舞った後、オークは激しく地面に激突した。
 周囲が暗転した。今の衝撃で、目の前のものが何も見えなくなった。なのに、目の前に悪魔が迫るのを感じた。感じていたが、体が動かなかった。
 悪魔の拳が迫った。1発1発が恐ろしく威力のある鉄塊だった。オークは拳を避けられず全身に浴びたが、手に持った剣だけは放さなかった。
 さらに悪魔は再びオークの体を掴み、放り投げた。
 オークは窓の外へ。そのまま地面に激突するかと思いきや、どんな幸運か向かいの空中庭園がオークを抱き留めていた。
 オークはようやく意識を取り戻した。剣を手に、立ち上がった。あの怪物が、建物の壁を這い上り、こちらに登ってくるのが見えた。こちらの庭園に移るつもりだ。
 悪魔が跳躍した。オークも同時に飛んだ。
 オークはタイミングを誤らず、悪魔の頂点にダーンウィンを振り落とした。悪魔の体が空中で仰け反った。悪魔は目的地に辿り着けず、壁に激突した。オークは悪魔の体に取り付いて、落下の衝撃をかわした。悪魔が壁に叩きつけられてたじろいでいる隙に、その首を叩き落とした。
 首を落とされても悪魔はすぐに死ななかった。断末魔の叫びを上げて、悶え暴れた後、自身をまとった炎に焼かれて死んだ。
 オークは悪魔の死を見届けて、次の回廊に入った。

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