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■2016/07/24 (Sun)
創作小説■
第14章 最後の戦い
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19
そこは巨大な建物だった。入口を潜ると、目がくらくらするような広い空間が広がった。無数の柱が立ち並んでいた。どうやら柱と柱の間にはかつて部屋があったらしいが、壁はことごとく破壊され、空間だけが残っていた。そんな空間の奥に、螺旋階段が上へと伸びていた。オークはその階段を登っていった。ひどく静かだった。静寂の中に、これまでになく魔の者の気配を感じていた。悪魔の王がいる。ここまで強烈な気配を、間違えるはずはなかった。
ついに階段を上り詰めた。そこに、果たして悪魔の王はいた。悪魔の王は闇の衣を身にまとい、どうやらその空間に、むりやり体を押し込んでいる様子だった。壁が崩れて、体の一部が外に突き抜けている。悪魔の王が座っている祭壇には、禍々しいペイントが施されていた。悪魔の王のために用意された場所のようになっていた。
悪魔の王はオークに気付くが、しかしただ見下ろすだけで何もしなかった。だがオークは嘲笑されているような気がした。
オークは剣を身構え、まっすぐ突き進んだ。その体に、ダーンウィンを突き立てる。
しかしダーンウィンは悪魔の体を捉えず、すり抜けた。
オークはもう一度ダーンウィンを突き立てた。何度斬りつけても、同じだった。ダーンウィンでは、悪魔の王の体を捉えることはできなかった。
王の衣がすっと伸びてきた。それが巨大な拳のように、オークを叩きつけた。オークは凄まじい衝撃を体に浴びた。
さらに悪魔の王が迫った。避けるには、そこは狭すぎだった。
オークの体が吹っ飛んだ。壁に叩きつけられた。瞬間、死を意識していた。だがまだ死んでいなかった。
オークはそのまま倒れた。しばらく起き上がれそうになかった。それでも這いつくばって、顔を上げた。ダーンウィンはどこだ。
ダーンウィンがどこにもなかった。あっとなって体を起こすと、悪魔の王がダーンウィンを手にしているのが見えた。ダーンウィンは激しく燃え上がって、悪魔の王の闇の衣に火をつけていた。だが悪魔の王は、少しもたじろぐ様子を見せなかった。
闇の衣が、大きく裂けた。口のように見えた。悪魔の王は、その裂け目にダーンウィンを放り投げた。
ダーンウィンは闇の衣の中で炎を噴き上げていた。だがそれは次第に弱くなっていき――。
やがて、ダーンウィンは悪魔の王から排出された。その様を見て、オークは絶望に打ちのめされた。
ダーンウィンは4つに砕けていた。まだ刃の先に炎を宿していたが、その魔力もやがて消えてしまった。聖剣の霊気は、ついに絶えてしまった。
オークはがくりと膝を着いた。完全な敗北だった。死の覚悟を決めた。
悪魔の王が迫った。
オークは顔を上げた。
いよいよ最期の瞬間だった。
しかし不思議と、その瞬間が長く長く間延びしていくように思えた。
そして胸の中で、愛する女性を強く感じていた。
ソフィー……
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