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■2016/07/18 (Mon)
創作小説■
第14章 最後の戦い
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16
悪魔の王の行進には、悪魔達だけではなく、闇に潜んでいた多くの魔界の者や、ネフィリムが加わった。悪魔の王は夥しい数の百鬼夜行を引き連れて、真っ直ぐキール・ブリシュトを目指した。土砂降りだった雨はやんだが、雲は晴れるかわりに悪魔の王が撒き散らした暗闇が周囲を暗く染めている。それが魔界の者達の花道を彩った。
オークは悪魔達を追って、ひたすら馬を走らせた。野を駆け、山脈を飛び越えていき、馬の尻に鞭を振るい続けた。
しかしどんなに全力で走ろうとも、あらゆる地形を無視して行進する悪魔達の行列に追いつけなかった。徐々に引き離されてしまう。悪魔達はたった1人で追ってくる人間など気にもしなかった。
ただし、目的ははっきりしていた。オークは知る限りの近道を馬で走らせて、キール・ブリシュトを目指して走った。
間もなく邪悪なる山脈へと到着した。魔の山はクロースが立ち入って以来、再び闇の眷属の巣窟となっていた。山道に入っていくと、ネフィリム達がオークの行く手を遮った。すでに悪魔の王たちはこの山に入っていて、魔の者は本来の主を得てますます血気盛んな様子になっていた。
オークはネフィリム達を蹴散らしながら、山の奥へと入っていった。やがて山脈の谷間に、あの巨大な聖堂が姿を現した。すでに夜明けの時間なのに、あの周辺だけひどく暗く、不気味に禍々しい気配を放っていた。その気配に馬が怯えて踏みとどまってしまった。オークは馬を乗り捨てて、目の前の斜面を自らの脚で駆け下りていった。
ネフィリムの大軍がオークの前に立ち塞がった。キール・ブリシュトの玄関口に至る道を、数えようのない大量のネフィリムが集結していた。
だがオークは避けるつもりも逃げるつもりもなかった。正面からネフィリムに立ち向かっていった。
オークは驚くべき腕力でダーンウィンを振りかざす。ダーンウィンはオークの意思に呼応して神秘の力を発揮した。オークが一振りする度に、数十のネフィリムが一度に吹き飛び、炎で燃え上がった。
そうやってネフィリムを一気に薙ぎ払うと、いよいよ入口の門を潜り抜けていった。
すると、やはりいた。門を抜けた広場に、巨大な怪物が一体、オークを待ち受けていた。
オークは剣を身構えて、悪魔と向き合う。
不意に、頭上から翼を持ったガーゴイルの軍団が飛び降りてきた。
オークはガーゴイルの群れを剣で振り払おうとしたが、宙に浮かぶ敵は容易に捉えがたかった。ガーゴイルは空に浮かんで剣を避けて、隙を見付けてはオークに飛びかかった。
ガーゴイルに気を取られているうちに、ぬっと巨大な影が迫った。オークははっと振り返る。悪魔の掌が、オークを掴んだ。悪魔はオークを高く放り投げた。
オークは長く長く宙を舞い、地面に叩きつけられた。敷石が砕け、体のどこかが折れる感触があった。気付けばダーンウィンがその手にない。
痛みにのたうつ間もなく、悪魔とガーゴイルがオークに襲いかかった。
オークは飛び起きた。次の攻撃を避けると、敵と距離を置き、ダーンウィンを探した。
ダーンウィンはずっと向こうに転がっていた。ネフィリムの大軍が集まって、持ち去ろうとしていた。
しかし、ネフィリムがダーンウィンの柄を握ると、火が噴き上がった。慌てふためいたネフィリムは、ダーンウィンを投げ渡そうとするが、その度に持ち手が火に包まれた。
オークはネフィリムの群れの中に飛び込んでいった。ダーンウィンを奪い取る。
ネフィリム達がオークに攻撃の矛先を向ける。オークは迷わず剣で薙ぎ払った。ダーンウィンの神秘の力で、魔の者は次々と業火に焼き尽くされた。
悪魔が迫ってきた。悪魔が拳を振り落とす。オークは拳の一撃を避けた。悪魔の拳は、同族であるネフィリムを叩き潰した。
瞬間、わずかな隙が生まれた。オークはとっさに悪魔の腕に飛びつき、その体に取り付いた。悪魔は体を大きく揺さぶった。オークは耐えきれず吹き飛ばされた。
だが狙い通りだった。オークは空中を飛んでいたガーゴイルの足を掴んだ。ガーゴイルは慌てて翼をばたばたとさせた。ガーゴイルはオークをぶら下げたまま、高く高く上昇した。
悪魔はオークの姿を見失っていた。うろうろと辺りを見回している。
隙だらけだった。オークはガーゴイルから飛び降りた。落下の勢いに、剣を振り落とす勢いを加えた。剣が怪物の頭頂部に激突する。固い頭蓋骨が真っ二つに砕けた。
尋常ならざる生命力を持った怪物は、それでも死ななかった。喉の奥で断末魔の悲鳴を漏らし、激しい痛みにのたうった。
オークはそれ以上戦う必要なしと判断すると、聖堂の中へと駆け込んだ。
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