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■2016/02/07 (Sun)
創作小説■
第9章 暗転
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6
オーク達は隊列を組んで進んでいく。空は暗く濁り、風景が灰色に沈んでいる。隊列に対話はなく、妙な静けさが漂っていた。風の音だけが際立っている。オークは妙な気配に捕らわれるように、辺りを見回しながら、馬を進めた。
丘を登っていくと、不意に海が見えた。海は灰色に煌めいて、静かに凪いでいる。浜辺に小さな要塞が築かれていた。あれがオークが任された北方の砦だった。
オーク達が砦に入っていくと、駐在していた住人達が迎え入れた。
パッツォ
「オーク殿、よくぞおいでなすった。砦の管理を任されておる、パッツォと申す者です。長旅でお疲れでしょう。さあどうぞ」
オーク
「出迎えご苦労。ずいぶん荒廃していますね」
パッツォ
「長年使われておりませんでしたからな。ブリデンの船が時々偵察に来るのを見ます。ここは僻地で、あちらにとっても遠征になりますからすぐに狙って来ないとは思いますが、いずれは……」
オーク
「急いだほうがいいようですね。建築家を呼んでください。明日にも仕事が始められるようにします」
パッツォ
「はい」
翌日には砦の補修作業が始まる。
埃だらけになった建物の清掃。ひびだらけになった道路を剥がして敷き直す。涸れた井戸をさらに掘り進めて水が出るようにする。海に向けた防壁を補修。防壁に備えられた大砲の補修。試し打ちで、ドーン! ドーン! と海に大砲を撃ち込む。オークは地図を見ながら、兵士達に次々と指示。
仕事には兵士だけではなく近隣の村の住民達も協力する。砦は徐々に復旧し、新しい建物が築かれ、生命を取り戻し始める。
復旧作業が一段落したある日の夕暮れ。
パティオに豪華な食事が運ばれていた。兵士達が村人達と和やかに食事の時間を楽しんでいる。吟遊詩人たちの演奏が宴会を華やかに飾る。暖かな夕暮れの光がパティオを照らしていた。夜の時間に移り変わる最中で、じわじわと蝋燭の明かりが際立ち始めている。
オークはそんな様子を、2階のバルコニーから見下ろしていた。
ソフィー
「ここに来てから2ヶ月。大きな事故もなく、順調に進んでいますね」
オーク
「ええ。困難な時期です。国の守りを、少しでも強くしなければなりません」
ソフィー
「順調に進みますよ。オーク様が指揮していますから……」
見張り兵士
「敵襲! 敵だ!」
突然、見張り塔の兵士が声を上げた。
兵士達に緊張が走る。オークも武器を手にして、砦の外壁に飛びついた。兵士達がそれぞれの配置に着き、攻撃の準備に入る。
見ると、騎士団の隊列が砦に向かってくるところだった。その数は50騎ほど。しかし、戦闘を始める気配はなかった。
見張り兵士
「何者か! 名を名乗れ!」
騎士の1人が前に進み出た。
流浪騎士団
「待て! 武器を収めろとは言わん。旅の者だ。用心棒を雇わぬか。しばしの滞在を認めてくれたら、街を守ってみせるぞ」
オーク
「もしかして……流浪騎士団ですか」
流浪騎士団
「おう! まさしく我こそ流浪騎士団。俺は団長のアレスだ!」
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