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■2010/01/12 (Tue)
シリーズアニメ■
#01 震える夜
私立聖ミハイロフ学園敷地内聖堂――そこから学校へと至る道を織部まふゆが走っていた。その後ろを少し遅れて山辺燈が走って追いかけていた。
「ひどいよ~まふゆちゃ~ん」
燈は走りながら頭を押さえていた。ゆっくりのペースなのに、燈はもう頬を真っ赤にして息を切らしていた。燈は育ちすぎのGカップのバストを足を振り上げるたびにゆっさゆっさと揺らしていた。あまりの大きな揺れに、体全体がつられて走りにくそうだった。
「愛の鞭よ。3日も休んでいたんだから、久々の登校くらいオンタイムで行かなきゃ。それに、伯父様もいつも言ってたでしょう。理事長の娘たる者、欠席も遅刻もまかりならんって」
まふゆは走りながら、遅れて従いて来る燈に元気な声をかけた。燈が従いて来れるぎりぎりのペースを理解しながら、それより少し早いペースを維持していた。これも愛の鞭のつもりだ。
「うん。まふちゃん、ありがと~」
燈は走りながら、朗らかな微笑を浮かべて手を振った。ひどく間延びした暢気な声に、まふゆは何となく笑みを漏らしてしまった。燈にも気持ちが移ったように笑った。いつの間にか2人で走りながら笑っていた。
まふゆと燈は並木通りを抜けて、庭園へと入っていった。するとチューリップの花壇の前に、ベリア=テレサが膝をついて座っていた。
「……チューリップ」
均整の取れた顔に白く透き通るような美しい肌。それがぽつりと呟くさまはまるで人形だった。
マリアはチューリップを植えた鉢を持ち上げて、じっと観察していた。しかし無表情は動かず、何を考えているか読み取れなかった。
「おはよう、テレサちゃん」
まふゆはテレサの前で足を止めて、挨拶をした。
とその横で燈が派手に転んだ。手で自分の体をかばうことすらできず、正面からバタンッと倒れた。
「織部まふゆ……さん?」
テレサは顔を上げて、意思の宿らない目でまふゆを見た。
「そうそう。嬉しいな。やっと名前覚えてくれたんだね。今日もお勤めで欠席?」
まふゆはテレサの前に屈みこみ、親しげに話しかけた。
テレサは立ち上がると、無言で頷いた。それから別れの挨拶もせず、ぼんやりと夢遊病のようにすーっと庭園の出口へと向った。
そのテレサの後ろ姿を、まふゆと燈が茫然と見送った。
「テレサちゃんって、不思議な子だよね~」
燈がやっと身を起こして、ぽつりと呟いた。
「あんたが言う? 特待の編入生ってきっと色々あるんだよ。燈だって何もないところで立派に転べるでしょう? それも才能です」
まふゆはちょっとからかうように微笑んでみせた。
「まふゆちゃんの意地悪~」
燈は不本意だったように頬を赤くして膨らませた。
「もう、しょうがないな。さあ、お手をどうぞ。お姫様」
まふゆは少年のように毅然とした身振りを装うと、燈に手を差し出した。
「うん」
燈は頷いて、まふゆの掌を握った。まふゆは燈の体を引き上げるように立ち上がらせる。
「まふゆちゃんって本当の王子様みたい」
燈が目をきらきらさせて異性に向けるような熱っぽいまなざしを向けた。
「手のかかるお姫様の面倒を見ていますからね」
まふゆは燈の熱っぽい想いを心地よく受け止めて微笑みかけた。
山辺燈は聖ミハイロフ学園の前理事長である山辺雄大の一人娘だった。織部まふゆは雄大に拾われた孤児で、以来気弱で病気がちな燈の面倒を見ながら共に成長していった。
だがある日、雄大は「心配するな」という短い置手紙を残して失踪。以来まふゆと燈は頼るもののない2人きりの暮らしをしていた。
燈の病気がちな気質は変わらず、しばしば学校を休んでいた。そうしてたまに登校しても待っているのはクラスメイトの嫌がらせと無視だった。
いやがらせの首謀者は辻堂美由梨。わかっていたが、原因不明の失踪を遂げた雄大の娘という負い目があって、何も言い返せなかった。
そんなある日の下校時、まふゆと燈は道で倒れている銀髪の少年に出くわす。ボロボロの服に衰弱した体。助けようとまふゆと燈は学生寮の自分たちの部屋へ連れて帰る。
しかし夜になってふと目を離した隙に、銀髪の少年はいなくなっていた。
まふゆは燈に懇願されて、竹刀を手に仕方なく少年を探しに行く。その途上で、黒煙を吹き上げる聖堂に気付いた。
「あそこには伯父様の絵が……」
まふゆはただちに聖堂に向って走り、その中へと入っていった。内部は青い炎で暗く浮かんでいた。奇妙な炎だったが確実に聖堂を焼き尽くそうとしていた。
まふゆはせめて思い入れのあるイコンだけでも持ち帰ろうと思い、演壇の前へ急いで走った。
するとそこに、仮面を付けフード付きマントで身を隠した謎の女が襲い掛かった。仮面の女は無数のソーサーを操りまふゆを追い詰めると、銀色のバンドでその四肢を封じて壁に釘付けにした。
仮面の女は頻発する通り魔事件の犯人だった。まふゆは仮面の女に、山辺雄大が聖堂に隠している物を出せと脅される。
とそこに、銀髪の少年が助けに入った。
「……その顔の傷、聖痕者、神に愛され裏切られし者、致命者サーシャ!」
だがサーシャはすぐに体力の限界で倒れてしまった。
絶体絶命の危機に、テレサが助けに飛びつく。テレサは仮面の女を牽制して隙を作り出すと、サーシャを抱き起こし服を脱ぎ、乳房をむき出しにした。
唖然とするまふゆだったが、サーシャは構わずテレサの乳首に吸い付き、ミルクをすすり上げた。
授乳で力を取り戻したサーシャは、仮面の女に戦いを挑み見事撃退する。
まふゆはサーシャの正体を知りたがったが、サーシャもテレサも多くは語らず夜の闇に去っていった。
その翌日、クラスにいきなりの転校生がやってきた。アレクサンドル=ニコラエビッチ=ヘル――サーシャである。
◇
夜の暗黒を跋扈する謎めいた悪の存在。次々と襲われる少女達。事件の背景には伝承の世界が関連している。
いかにも仰々しい伝奇物語の空気を湛えているが、どうやらヒーローアクションものと捉えて良さそうだ。
物語の背景に悪の組織の存在があり、毎回エピソードの後半にはアクションが繰り広げられる。そしてヒーローは戦闘前の変身という儀式の変わりに、授乳という行為を経て力を得るのだ。
左は学校の風景。単純に女子比率の多い学校という設定なのだろう。注意して見ないと男性の存在を見落としてしまう。もっとも、この作品において男性などいなくても構わない存在だ。
『聖痕のクェイサー』は標準的なヒーローアクションよりはるかに暗く、官能的な空気を強く漂わせている。悪の組織の風貌はありきたりなスタイルだが、その行動はもっと容赦のない猟奇的な凶暴さを孕んでいる。
しかも悪の組織はうら若き乙女を標的とし、行為に及ぶ前に少女を陵辱し、その表情を羞恥で赤く染めそそられるような悲鳴を上げさせる。いっそ少女の殺害ではなく、その過程である陵辱行為を目的と言ってしまったほうがすっきりする。
官能的空気は悪の組織だけではなく、学園の風景そものにもさりげなく漂わせている。男女共学の学園に関わらず、男性の存在は驚くほど影が薄い。学園風景の点描を見ても、男女比率は圧倒的に女たちのほうが上だ。予備知識なく見ると、うっかり女子校の物語だと判断してしまいそうだ。
そんな物語の中心に立っているのはやはり少女達だが、そのルックスはなかなか強烈だ。女性の特徴を強調するかのような圧倒的なプロポーション。制服姿なのだが、その描かれ方はむしろ裸のラインを強調している。大きすぎのバストは圧倒する勢いで正面に突き出され、ヒップラインはスカートを穿いているのに関わらず、桃の形を目でなぞれるように描かれている。裸に制服という模様が描かれているようであり、制服で肌を隠している状態がむしろ少女達の官能を強烈に強めている。
左は嘆きの場面だが、それとはまったく別のエロチックなものを連想してしまう。作り手の意識もむしろそちらにあるようだ。自主規制の多い作品だ。物語以前に放送コードに挑んでいる。この作品が終るまでに新たな規定がいくつ作られるか見物だ。
物語の後半に挿入されるアクションは“戦い”というより、性的な饗宴と呼ぶべきである。激しい動きでカットが消費されるが、戦いの痛快さより官能的な描写がクローズアップされる。
動きを封じられた少女は服を危険な刃で引き裂かれ、放送コードぎりぎりの裸をむき出しにし、羞恥で頬を赤く染め何ともいえない心地にさせる悲鳴を上げる。その表情の動きが実に性的な興奮を引き寄せてくれる。
キャラクターの動きもアクションとしてのぶつかり合いより、揺れ弾むバストやつややかに輝く太もものチラリズムが強調される。
そんなアクションのクライマックスにあるのが授乳シーンだ!
背景にキリスト教的な世界が置かれ、授乳という行為をいかにも神聖なものとして力説されているが、言うまでもなくその全てが方便に過ぎない。いかにしてオッパイをポロリさせて、乳首に接吻する行為を正当化するか。
『聖痕のクェイサー』は放送コードのギリギリのラインに挑戦し、少女の官能を挑みかかるように描写する。その冒険が我々にどんな啓蒙と社会的止揚をもたらすのか、ある意味の注目作品である。
作品データ
監督:金子ひらく 原作:吉野弘幸 佐藤健悦
シリーズ構成・脚本:上江洲誠 脚本:待田堂子 森田繁 スーパーバイザー:名和宗則
キャラクターデザイン:うのまこと 総作画監督:杉本功 飯島弘也
色彩設計:鈴木依里 セットデザイン:青木智由紀 プロップデザイン:大河広行
美術監督:鈴木隆文 撮影監督:林コージロー 編集:廣瀬清志
音楽:加藤達也 音響監督:明田川仁
アニメーション制作:フッズエンタテインメント
出演:三瓶由布子 藤村歩 豊崎愛生 茅原実里
〇 平野綾 日笠陽子 川澄綾子 花澤香菜
〇 清水愛 高垣彩陽 千葉進歩 大川透
〇 斧アツシ 中村知子 岐部公好 荻野晴朗
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