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■2009/07/08 (Wed)
第1話 天文部へようこそ!

e135a04a.jpgそうだ。あの日。あの夜。
僕は、物凄い勢いで走っていく美星を追いかけて、走っていた。
小学3年生。あの街ですごした最後の夜。最後の思い出。
美星は原っぱを走って、大きな杉の木の前までやってくると、急に足を止めた。
c20aa258.jpg「うわあ! 朔ちゃん見て! 星!」
美星は大きく両手を広げた。
空には一面の星が瞬いていた。夜の空は、無数のネオンの煌きのように輝いていた。空は暗黒の風景の中に、夜とは思えないくらい明るく浮かび上がっていた。
81871c86.jpg辺りは、建物も何もなかった。原っぱがずっと広がって、真っ黒に沈んだ森が、青く輝く空の下にあった。
およそ遮るもののない夜の眺め。でも僕は、星が見たくて走ってきたわけじゃなかった。
「なに言ってんだよ、みーちゃん。僕の本を人質にして、連れてきただけだろ。僕2772ccce.jpgの本、返して!」
僕はやっと美星に追いついて、はあはあと乱れる呼吸を整えようとした。
「星より本がいいなんて、朔ちゃん、変なの」
美星は本と手に振り向くと、きょとんとした顔をした。
「うるさいな! 僕の勝手だろ」
91067644.jpg僕は美星の手から本を取り戻すと、取られないように胸にしっかり抱えた。
「それよりも朔ちゃん、いいもの見せてあげる」
美星は気にする様子もなく、首に巻いたマフラーを解いた。それから、首から何かを引っ張り出す。
31cae0a0.jpg「お星様の光だよ。パパがくれたの。お星様に、光を分けてもらったんだって」
美星が引っ張り出したのは、星の形をしたペンダントだった。ペンダントは、暗闇の中、黄緑の蛍光色を放っていた。
「それ、おもちゃじゃない」
僕は一瞬、綺麗だなと目を奪われたけど、仕掛けがわかるとぷいっと向こうを向いてしまった。
「朔ちゃんにも、分けてもらうね」
美星は微笑むと、真っ黒な姿で浮かび上がる杉の木へと走っていった。
cac242e5.jpgあっという間もなく、美星は杉の木をよじ登り、一番高い枝の先に出てきたそうして、枝の上に立ち上がって手を高く伸ばした。
「みーちゃん、危ない!」
「へいき、へいき。ほら、もうすぐ……」
僕が声をあげるも、美星は危険など感じていない笑顔だった。
だけど、美星が枝から足を外した。美星は、何かを掴もうと手を振り回していた。でも何も掴めず、美星の体は宙に投げ出されてしまった。
僕は、とっさに飛びついた。美星を守ろうと、走っていた。

e5a84983.jpg「じゃあ、行って来ます」
僕は真新しい制服に身を包んで、教科書も入れていない鞄を手に玄関から出ようとした。
「ああ、待って! 写真!」
すると母が廊下に飛び出してきた。右手にはデジカメ、左手には携帯電話。
「入学式の時、散々撮っただろ!」
01ac54ac.jpg僕は母を振り返ってしかりつけた。でも、こういう時の母はとどまらない。母は大はしゃぎで僕を写真に収める。
それがやっと終ると、母はにこやかに話を始めた。
「そういえば、どうしているかしらね、あの子。上の階に住んでいたみーちゃん。いっこ上の。朔ちゃん、この話をすると、すぐに不機嫌になるから、あんまり言ってないけど、みーちゃんね……」
「もう行きます!」
僕は話を中断して、乱暴にドアを閉めた。

09114ff4.jpg僕は小学校1年生から、2年間を過ごしたこの街に帰ってきていた。ほどよく田舎で、ほどよく開けた、よくある街。平凡で平和そうに見えるこの風景。
でもこの街には、悪魔がいた。
みーちゃん。明野美星。あの頃の恐怖の象徴。静寂の侵略者。
7b81e312.jpg当時の僕はマンション住まいで、その周辺で同年代といえば、みーちゃんだけだった。小1でそのマンションに入居した僕は、ミーちゃんの格好の餌食だった。
おかげで僕は、それまでの優雅で知的な時間が奪われてしまった。活発だったみーちゃんは、僕を未知と野性の生活に引きずり出そうとした。
美星の父親が星好きだったのが災いして、連れまわしは昼と夜の区別もなかった。
それで、あの夜。僕がこの街を離れる最後の夜。最後の思い出。あの事件は起きてしまった。
美星を庇って、僕は全治3ヶ月の骨折。僕は学校の友達に別れを告げられず、病院を最後にこの街にお別れした。
ああ、神様。なぜ僕はこの地で、新生活を送らねばならないのでしょうか。

06698efa.jpg高校の校門をくぐると、桜の咲いた並木通りが現れた。花びらが散って、辺りの風景を桃色に変えている。部活勧誘の声が賑やかに聞こえてきた。
とはいえ、あれからもう7年。なんだかんだで、ちょっと懐かしい気持ちもあった。街はすっかり変わってしまっていた。緑で一杯で田舎そのものだった街は、建売の家で埋め尽くされ、それなりに街らしい顔を見せ始めていた。あの夜、美星と行った、恐いと思っていたお化けの木も、もうこの街にはない。
何もかも、変わっちゃったな。美星も、随分変わったんだろう。あっちもきっと高校生。女ジャイアンにみたいになって、星なんて興味なくなっているのかもしれない。
ff82775c.jpgそんなふうに考えながら歩いていると、ふと視界に金色に輝くものが飛び込んできた。
何だ。
僕は足を止めて、空を見上げた。
星だ。キラキラ輝く星が、空一面に降っていた。
いや違う。折り紙の金色を、星の形に切ったものだった。
でも星は、春の淡い青空を、印象的にキラキラと輝かせていた。校舎までの道を歩いていたみんなは、足を止めて、「何だ何だ」と空を見上げていた。
4a08ff5f.jpg見上げていると、校舎の屋上に、誰かが立っているのに気付いた。柵を乗り越えて、危険なくらい校舎の端っこに身を乗り出していた。
「みなさーん、こんにちわ! 星、好きですか!」
女の子の声だ。拡声器でひび割れんばかりの声が辺り一杯に響いた。
「天文部は今、部員を大、大、大、大、大募集中でーす! 一緒に、星を見ませんか!」
誰もが茫然と、屋上の端っこに建つ女の子を見ていた。
僕はその女の子を見て、頭の中のピースが、ある場所にぴたりと当てはまるのを感じていた。でもまさか、と僕はそれを否定しようとしていた。
450822c4.jpg「ちょっと、何やっているの、美星! 派手な勧誘すると、生徒会長に何を言われるか……」
「そうだぞ。ただでさえ、創部間もないというのに……」
上級生らしい男と女が飛び出してきた。
今、間違いなく“美星”といった。僕の疑念は、確信へと変わってい5ad71ec0.jpg91a1b0a3.jpgた。
僕はもう一度、屋上にすっくと立っている女の子を見上げた。
女の子も、僕の存在に気付いて、じっと見ていた。地上と屋上。数十メートルの距離を隔てて、僕と彼女はじっと目を合わせていた。
「朔ちゃん!」
女の子はにっこり笑うと、僕の名前を呼んだ。
1bcfc66b.jpg7f06bca0.jpg5e9091f4.jpg


 

設立間もない部室に、珍メンバーが次々と集まり、風変わりな騒動を引き起こしていく。
つい最近、どこかで似たような文章を書いた気がするが、おそらくこれから何度も繰り返し書く羽目になるだろう。
『宙のまにまに』は学園物語の典型的な形式を、なんの捻りもなく描かれた作品だ。
この種のジャンルは、すでに過去作品の中に、必要なテンプレートがふんだんに準備されている。作り手は、その中からいくつか手に取り、カスタマイズすればオリジナル作品を作ることができる。
そこに何の努力も苦労もなければ、才能も独創も必要ない。王道作品の特徴は、誰でも簡単に作れることである。
408b7a97.jpg73f881ba.jpg元気な女の子。生徒会との対立。
もはや原型がなんであるか、私にはよくわからない。漫画内ノスタルジーと呼ぶべき設定であり、光景である。あるいは、漫画内原風景と呼ぶべきだろうか。


それだけに、商業作品の中で制作し、注目を集めるのは非常に難しい。
キャラクターや部活内容がよほど魅力的で、それでいて誰も目にした経験のない特殊性を持っていなければ、誰の興味をひきつけることはできない。
王道とされるスポーツものは、概ねすべてやり尽くされていて、新しく入っていく余地がない。スポーツ物は今やマイノリティスポーツ以外に活路が見出せない状況である。文芸部ジャンルにおいても状況は似たり寄ったりで、題材の選択に作家は頭を悩まし続けている。
キャラクターの設計が特殊すぎると、作品風景から浮かび上がって調和をなくす。題材の専門性が高すぎると、誰も見向きしなくなる。
ある程度誰でも知っていて、しかしそれほど注目されてなく、もしかしたら、その作品を切っ掛けに広がりそうな予感を持った題材(例:スラムダンク)。それを探して、作家は彷徨し続けている。
10e80157.jpg70037429.jpg王道は誰でも手を出せる。誰でもルールを知っているから、ゲームを始めやすいと同じ理屈だ。だが、実際にやってみて、成功するか、となると別問題だ。相当に切り口を工夫しないと、誰も見向きしないだろう。

学校は社会生活の規律厳しい日本においては、ほとんどの人が平均的に体験する場所である。
だから背景世界への解説を不要とするし、経験が共有できるから作品世界に対してある程度の愛着も抱ける。
一方で、極端に氾濫しすぎて埋没しやすいのが学園ものだ。
学園ものは、世界構築の造形に、少しでも隙があると、作品への魅力は失われる。世界とキャラクターの調和は、より堅固でなければならない。
そこに余程の個性が際立っていなければ、あるいは、技術と才能、打算がそこになければ、見向きもされないジャンルである。
cb44799d.jpg3c22c4ea.jpg王道に手を出すのは、挑戦であり、挑発だ。とりあえず、健闘を祈る、といったところだ。



『宙のまにまに』は果たしてどうであろうか。
この作品について、改めて何か語らねばならないことがあるように思えない。
あえて言えば、あらゆる部分において、平凡な作品だといえる。
作品の美術は、標準的なアニメから一歩も下でなければ上でもない。キャラクターのデザイン、世界観の造形、ともに際立った何かがあるとも思えない。
何もかもが、平均的な感性で、平均的な製作体制で制作されたアニメーション。
『宙のまにまに』は“星”という題材だけで、どこまで王道から飛躍し、我々に驚くような映像体験を提供してくれるのか。王道という難しさにあえて挑戦した『宙のまにまに』は、果たして成功作品になれるのか。新たな分野への開拓者となりうるのか。

作品データ
原作:高松信司 原作:柏原麻美
キャラクターデザイン・総作画監督:渡辺はじめ
美出監督:根本邦明 美術デザイン:谷内優徳 カラーコーディネイト:海鋒重信
撮影監督:斎藤仁 CGディレクター:三沢伸 編集:村井秀明 三宅圭貴
音響監督:岩浪美和 音楽:CooRie 大久保薫
アニメーション制作:スタジオコメット
出演:前野智明 伊藤かな恵 小清水亜美 早見沙織
   高木礼子 間島淳司 寺島拓篤 渕上舞 葉山いくみ



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