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■2013/01/22 (Tue)
21332900.jpeg険しい岩山の隙間から吹き上がってきた霧が足下まで届こうとしている。水飛沫のごとく散った霧の切れ間に岩山の姿がちらちらと映るが、いずれもごつごつとした荒涼とした冷たさを見せており、冷たく霜で凍り付いている。まばらに生えている木々も、根をしっかり岩に貼り付いて健気に背を伸ばしているが、やがて岩もろとも崩れて奈落へと落ちてしまいそうだ。
そんな荒涼とした眺めの中に、男が一人、立ち尽くしていた。見る者に沈黙した背中を向けて、果てなく広がる荒涼をただ一人で対峙して、彼方を真っ直ぐに見詰めている。
カスパー・ダーヴィト・フリードリヒが描いた『雲海の上の旅人』の解説である。
カスパー・ダーヴィト・フリードリヒは山を多く描いた作家である。代表作『雲海の上の旅人』を始め、『月を眺める二人の男』『リーゼンゲビルゲの朝』『山上の十字架』……。
カスパー・ダーヴィト・フリードリヒの描く絵画の中に、人間の存在は希薄で、人間が立っていたとしても、こちらに目を向けている絵は少数で、ほとんどが背中を向けて、彼方を見ている。彼らは、あるいはフリードリヒの絵画に接する者は眼前に迫る自然と対峙しなければならない。鑑d6e1f6ec.jpeg賞者の視線は、絵画の中に描かれた峻厳な自然に圧倒された後、絵画中登場人物が向けている水平線へとやがて導かれていき、その絵画に込められたある種の厳粛な神聖さを共有する。それは祈りですらある。
アニメ『ヤマノススメ』はそんなカスパー・ダーヴィト・フリードリヒの絵画からヒントを……いや全く関係ないか。

c761fcbb.jpeg山には不思議な魅力がある。ただそこに立っているだけの場所ではない。山とは古来より信仰の場だった。宗教・武道を問わず修行する者は山にこもり、山と一体になってある種の“悟り”と呼ばれるものを獲得する。
bb11871f.jpeg通俗な文明の香りは山と一体になる過程で剥ぎ取られ、ただ1人の裸となって自然と対峙し、人間としてではなく本来の野生動物に立ち返ることで精神的な解放を得て、人間的なあるいは宗教的な完成を目指すのである。
山という場所は厳しく神聖だ。そこに物質主義の低俗な文明を持ち込む場所ではない。何もかも捨てて、何もかも失って、その先に見えるものを獲得する場所だ。
その時代の潮流や一過性の風俗に流されそうになると、途端に山へこもりたくなる。自然の風景と一体となり、全てを捨てることで自己を取り戻したくなる。山にはそんな効果がある。
だからだろう、インドア傾向の人間ですら、山というものに発作的な欲求を感じるのは。
アニメ『ヤマノススメ』はそういった体験を擬似的に提供するアニメ……ではなさそうだ。

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冗談はここまでにしておこう。
『ヤマノススメ』は登山をモチーフにした作品である。登山の経験のない気弱な女の子が、登山好きの玄人に(半ば強引に)誘われて登山を始める切っ掛けを作る。
093b774f.jpeg昨今アニメにありがちな冒頭・展開を、何の捻りもなく踏襲したストーリーである。あらかじめ用意されたテンプレートに登山という題材を当てはめただけの作品だ。1話2話のストーリーの中には既視感以外のものは何も感じない。
一方で、いかに漫画の物語をスタートさせるか、という課題について、行き詰まり感があるのは確かだ。すでにありとあらゆる手法が試された後である。振り向けば踏み荒らされ踏み固められた荒野ばかり。目の前には壁。さて、どのように登場人物を配して結末に向かって物語を出発させるか。
当然のことながら、見る者の意識を考慮しなければならない。誰にも明らかでわかりやすい冒頭は、どんなものがあるだろうか。突飛であると理解されづらい。ありきたりであると見透かされる。60904c46.jpegその合間を縫っていかねば、読者に新鮮な驚きを与えることはできない。
現代の漫画家や編集者は、ここに独創を込めようという意欲をなくしてしまった。物語全体を俯瞰しながら構想を組み立てられる人材は今や絶滅危惧種だ。だから現代の漫画家は、モチーフ選びに腐心するようになった。
漫画雑誌を開けば、冒頭の展開はほとんど同じフォーマットで描かれている。○○未経験の主人公が、玄人の勢いのいい友達に強引に誘われて……。そして○○活動にのめり込んでいくうちに、才能を開花させる。だいたいこれがデフォルトになっている。
その後の意外性については、選んだモチーフの専門性がどれだけ新鮮味のある展開を引き出してくれるか。作家の力以上に、モチーフの力に寄りかかることが多くなっている。
それだけに、編集者は漫画家の採用に、どれだけうまい絵を描けるか、あるいは可愛いキャラクターを描けるかだけに集中し始めている。可愛いキャラクターが描ければ、それだけでビジネスとしての展望が開ける。だからいま漫画家と言えば、魅力的なストーリーを描ける人ではない。そんな人材は編集者や出版社は求めていない(そもそれを理解できる編集者も絶滅危惧種)。ただ絵がうまく描けるかどうか、あるいは出版社の要求を聞き、それを的確に漫画にできるか、それだけが望まれている。
『ヤマノススメ』はそういった作品の一つである。そういった作品の一つであるが、『ヤマノススメ』が選んだモチーフは登山である。山そのものの魅力や、精神性をうまく引き出せれば、テンプレート的な漫画から1歩も2歩も抜きん出た作品に化ける可能性を秘めている。

9c002afe.jpeg『ヤマノススメ』はやや頭身の低めのキャラクターを中心に描かれる。目はぱっちりと大きく、表情がくっきりしていて魅力的だ。色彩もどちらかといえば中間色が使われ、ぬくもりが感じられる。動きの動線がしっかりしていて、可愛らしいデザインである。
その一方で、風景はしっかりしたロケハンの下で描かれている。キャラクターが通過した場所は、どんな何気ない場所でも実際の場所が存在する。もちろん山の風景であっても、妥協なき描写が優れた画像を作り出している。
そこまで綿密なロケハンをしておきながら、アニメで描く必要があるのか。いやアニメだからこそ、だ。
0f069ea2.jpeg忘れられがちだが、アニメの基本要素はキャラクターではない。キャラクターは一要素だ。アニメの基本要素は絵画であることだ。絵画であるから、実際の風景を自由に操作できるし、さらに作家の精神性や抽象性をそこに込めることができる。
現実にこんな可愛い女の子なんていない。現実にはこんな美しい風景は存在しない。絵画は観念だから、平気な顔をしてそこに描かれる。
実写撮影でも、その人間にしか見えない瞬間を区切り取る芸術的な才能を持った人間は存在する。しかし絵画は、そんな技術や精神論をひらりとかわして観念だけの世界を当たり前として描き出すことができる。
絵画のみで構築される山の風景、山の世界。『ヤマノススメ』は果たしてどんな光景を最後に目指しているのか。

6006a54b.jpegしかし『ヤマノススメ』はたった5分で疾走するアニメである。1話60カット少し出る程度だ。あまりにも短い。わずか5分、物語として一つの山をそこに提示するだけで、そこから一切の寄り道をせず、物語の結末を見せなければならない。《起→結》くらいの勢いだ。
寄り道も淀みもない。作家の主張が込められるとしてもほんの一瞬。作品の中に、情緒が描きにくい構成になっている。物語に乗り越えるべき困難を置きづらいのだ。
この作品は、『アーススター』という新興雑誌が企画した低予算アニメだ。想像するまでもなく、30分構成のアニメを制作するだけの資金力がないのだろう。(5分構成であると、予算割り当てのほとんどデザイン料と演出料で、アニメ本編の制作自体にはあまりお金はかかっていないだろう。1カットの予算およそ5000円であるから、60カットで掛けて30万円。デザイン料や演出料を下回る予算だ)
だからこそ時代の変化を感じられる。かつてであれば、テレビ契約で5分構成と言えば、月~金曜日の帯と決められていた。しかし『アーススター』企画のアニメ『てーきゅう』や『まんがーる』はいずれも週1で5分構成だ。アニメの制作は、5分からでもスタートできるし、ユーザー側にもそれを受け入れる体制ができている。
9ae270b7.jpegもしもここでヒットが出て『アーススター』に充分に資金的な準備ができるようになれば、次は25分アニメの企画も生まれるだろう。5分アニメからチャンスが作られる時代になったのである。
今期に入って、ショートアニメの本数は増えつつある。どんな背景があるかわからないが、考えてみれば5分や3分からアニメを制作できるチャンスがある。ニコニコ動画、YouTubeなど、発表の場もすでにある。これを使わない手はないだろう。
何となれば企業ではなく、個人がお金を出してプロに依頼して、ニコニコ動画にアニメを発表することだって可能なのだ! プロの漫画家であれば、出版社に依存しなくても、原稿料や印税で得たお金で独力の力でアニメを発表することだってできる(最初にこれをやるのは誰だろう?)。デジタルとネットの時代により、より多くの人に、あるいは我々にも平等にチャンスが与えられているのである。
0651e972.jpegアーススター製作ではないが、『gdgd妖精s』は15分、少し前なら中途半端な尺として弾かれそうな長さだが、我々はすでにこの作品を受け入れている。しかも『gdgd妖精s』はプロが制作したアニメではなく、映像の素人が「上から降りてきた安い技術」で制作されている。面白いアイデアとストーリーを考える力、あと気概さえあれば誰でもアニメを作り、発表できることを証明したアニメだ。
もちろん欠点はある。先に書いた通り、ショートアニメだと物語の情緒をそこに描くのは難しい。ギャグならコント風の内容でむしろ5分程度が収まり良くなるが、ドラマ作は不向きだ。ショートアニメならどのように描くか、が大きなポイントになるだろう。
そうした新興のアニメに対して、天の邪鬼な見方をして芽を潰すべきではないだろう。できれば積極的な支援をして、応援をしようではないか。


作品データ
監督:山本祐介 原作:しろ
キャラクターデザイン:松尾祐輔 色彩設計:藤木由香里 美術監督・美術設定:松本浩樹
撮影監督:佐藤洋 編集:木村佳史子
音響監督:本山哲 音楽:Flying-Pan
アニメーション制作:エイトビット 製作:アーススターエンターテインメント
出演:井口裕香 阿澄佳奈 日笠陽子 小倉唯 荻野晴朗

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