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■2015/11/01 (Sun)
※ 物語中に登場する美術家、美術作品、美術用語はすべて空想のものです。

第4章 美術市場の闇

前回を読む

 アトリエの入口から見て、左の壁際に設置された来客用ソファに、ツグミとコルリは光太と向き合って座った。
「叔父さんは、もう画壇に出さへんの?」
 ソファに落ち着くと、コルリが軽い調子に訊ねる。
 光太は顔に不満を浮かべ、手と首を左右に振った。
「あれはアカン。出来レースやで。あんなところ出しとったら、絵描きも絵も駄目になるわ」
 光太の前職は、アニメ制作会社《マッチョハウス(※1)》に所属する美術スタッフだった。
 多くのアニメ作品を手がけて、忙しい日々を送っていたが、その合間に画壇に発表し続けていた。
 当時の光太の夢は、本当の画家として生活していくことであった。だからアニメの制作をしつつ、画壇に挑戦し続け、何度も院展、日展に作品を出品した。
 入選回数は20回を越えたが、特選から先にはどうしても進めない。無鑑査より上に選ばれるのは、いつも巨匠の弟子や身内作品。それから愛人作品だった。
「一時は自分の修行不足かと思って、随分と勉強したけどな。結局、審査員にお金払わねばならんシステムやとわかって、きっぱりやめたわ」
 画壇で成功していくために必要なのは実力よりお金。あるいは政治力だった。
 ランクが上のほうへ進むと、画壇は絵の審査というより、審査員同士の勢力争いになる。絵画の審査を口実に、審査員はお互いの思想や政治性をぶつけ合い、政争を始める。
 絵描きはその年の審査員が決まると同時に、その審査員が好みそうな画題で絵を描くようにする。まるで某美大の受験戦争的な光景が絵描きの間で繰り広げられ、結果として判子で押したように同じような絵が大量に作られる結果になる。
 そうなると、純粋に絵を審査しようという人は誰もいなくなる。最終的に評価されるのは、その年で一番強い政治力を発揮した審査員の側についた画家だった。
 審査員に媚びて絵を描くなど真っ平ごめんだった光太は、日本画壇をすっぱりと諦めて、フランスに飛んだ。フランスの官展に挑戦の場を移したのである。
 そうして3年後、光太は見事、実力だけで1等をもぎ取ったのである。
 以来、光太の絵は世界中で注目を集め、引っきりなしに注文が舞い込むようになった。ヨーロッパでは、光太の前職がアニメであることが、さらに「箔」になるらしかった。日本では逆にマイナスになる部分だが、ヨーロッパの美術家や批評家の目線は違っていた。手がけたアニメが有名作品とわかると、評判はまた上昇する。
 世界で仕事をするようになると、「評判の逆輸入」で、日本でも仕事ができる環境が整う。こうして、光太は順風な画家生活を送れるようになったわけである。
 ――と、一通り話を終えたところで、奥さんの頼子さんが絶妙なタイミングでコーヒーを運んできた。
 頼子は光太がアニメ時代に知り合った女性だ。《マッチョハウス》で『制作進行(※2)』を担当していた。
 制作進行とは、基本的にズボラな性質であるアニメーターの面倒を見て、その仕事を潤滑に運営する人のことである。
 頼子のスタンスは今も変わらず、光太の仕事の調整からアトリエの徹底的な整理整頓まで、仕事の以外の全てのイニシアチブを手にしていた。
 何事にもきっちりしたものを要求する性格で、ちょっと厳しいところがある。しかし、頼子自身の格好はいつも地味で、今日もピンクのセーターに、ちょっと色褪せたジーンズだった。
 顔はそれなりに整った美人だったが、やはり地味で、背中まである髪をいつも首の後ろで束ねているだけだった。化粧っ気もほとんどなく、もったいないくらい地味な印象の女性だった。
 ちなみに、頼子の入れるコーヒーは常に完全無欠であった。とてもインスタントとは思えない、見事な香りを放つ。どうやって作っているのか、一度訊ねてみたいものである。

※ マッチョハウス 架空のアニメーション会社。東京都中野区にあるという設定。様々な名作を世にだした《マッドハウス》とは無関係。
※ 制作進行 アニメ現場の調整を行う人。アニメは一つの制作会社では作ることができないので、素材を各社に送り、期日までに完成させることが仕事。基本的にだらしないアニメーターに「仕事しろ!」と尻を叩くのも制作進行の務め。詳しくはアニメ『SIROBAKO』を参照。

次回を読む

目次

※ 物語中に登場する美術家、美術作品、美術用語はすべて空想のものです。

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