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■2015/10/07 (Wed)
第5章 蛮族の軍団

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 港では、ブリテンの軍艦との戦いがまだ続いていた。
 ブリテンの軍艦は港のすぐ側まで接近して、砲弾を次々と放ってきた。停泊していた船は次々と沈められ、港の設備は壊滅状態に陥った。さらに弾幕で真っ白に閉ざされた視界に紛れて、ブリテン兵士が乗り込んでくる。
 戦いははじめから完全な劣勢だった。規律だったブリテン兵の攻撃は強力だった。オークは仲間たちを引き連れ、先頭に立って白兵戦に臨んだ。
 仲間たちは次々と命を落とした。ブリテンの攻撃は近くの住民や商人すら巻き添えにして、港は阿鼻叫喚の様相を呈した。
 戦いは長期化した。一日が過ぎても、ブリテンの攻撃は尽きなかった。終わらない砲撃に、港は灰色に沈み込み、火薬の臭いが充満した。あちこちで戦闘の声が上がり、もはやどこに仲間がいて、どこで戦闘が行われているのかわからない有様だった。
 オークも反撃に乗り出した。仲間たちを引き連れて、夜の闇に紛れて敵船に乗り込んだ。ブリテン兵の強力な攻撃に晒されたが、砲台をいくつか乗っ取り、これで他のブリテン船を沈めた。
 3隻のブリテン船のうちの1隻が沈むと、それだけで戦況は劇的に変わった。夜が明けると、セシル王子が率いる軍団が戦いに加わり、ブリテン兵を蹴散らした。
 やがてブリテン軍の弾数が尽き、兵力も底を尽き始めると、その後の展開は速く、ブリテン兵は港を離れて逃亡を始めた。
 こうして、港での戦いは終わった。
 だがその爪痕は大きい。ブリテン軍の攻撃で、港は再生不能なまでに叩き潰され、守備隊のほとんどが死亡した。住民たちは家を失ったし、商人たちは商売の場所を失った。
 硝煙は一日が過ぎる頃、ようやく散り始めたが、その後に現れたのは地獄のような瓦礫と死体の群れだった。オークは残った僅かな仲間と、住人たちと共に、生き残った者の手当を始め、さらに瓦礫の下から死体を集める作業も始めた。
 死体の中にトリンも見付かった。剣を強く握ったまま死んでいた。
 オークの側に、セシルが近付く。

セシル
「戦いは初めてか」
オーク
「いいえ。物心ついてから何度も戦いを目撃しています。父も妻も、戦いで失いました。戦の度に、こうして死体の数を数えさせられています」
セシル
「私も初めて戦に連れて行かれたのが少年の頃だった。戦になれば、必ず友を1人失う。自分はいつも無事に帰ってくるのに、一番大事だと思っている友人から失っていく」
オーク
「あなたにとって大切なものはなんですか。国と民。どちらが重いですか」
セシル
「わからん。国を喪ったことはいないからな。国を失くせばどんな気持ちになるか、見当もつかん」
オーク
「それでも守りますか。私なら国ではなく民を守ります」
セシル
「何が一番正しい判断なのか私にはわからん。――オーク。よくぞ1週間港を守り抜いた。王が呼んでいる。城に行くがよい」

 オークは厳しい顔のまま、セシルに頭を下げた。

オーク
「私は港の守備に失敗しました」

 オークはセシル王子の許を去った。

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