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■2009/09/21 (Mon)
この小説は、『さよなら絶望先生』を題材にした2次創作小説です。2次創作に関する法的問題については、こちらをご覧下さい。【著作物】【二次創作物】【パロディ】【パロディ裁判

P062 第6章 異端の少女


私はしばらく、糸色先生が提示したリストを眺めていた。その中に自分の近しい人はいないだろうか、と探していた。でも、どの名前も住所も聞き覚えのないものばかりだった。私の人生とは、多分、接点はないだろう。
「それで、どうするんだ。これからそのリストを一件一件調べるのか?」
リストを眺めていた命先生が、糸色先生を振り返った。
糸色先生はすぐには答えず、しばらく考えるように顎をなでていた。
「……その必要はないと思います」
糸色先生はまだ思考中らしく、ぽつりと呟いた。
「あの、蘭京さんはリストにいないんですか? だって蘭京さん、どう考えてもそっち寄りの人でしょう? 私、絶対に蘭京さんがリストにいると思ったんですけど」
藤吉がちょっと手を上げて注目を集めた。
「僕も同じように思った。蘭京太郎というのは本名か? まだあいつは行方不明のままなんだろう
命先生が同意らしく後を継いだ。
「いえ、わからないですが。兄さんは何か思い当たるところでも?」
糸色先生はちょっと顔を上げて命先生を振り返った。まだ糸色先生は考え中みたいな表情だった。
「いや、どう考えても怪しいだろう。お前のところの生徒を4人も殺害して姿をくらましたんだ。事件に無関係とは思えない」
命先生は断言するように意見を告げた。
「私も同感です。蘭京太郎の事件は未解決のままですから。すっきりしません。蘭京太郎という人物について、改めて考えてみてもいいと思います。先生、蘭京太郎とはもちろん会ったことはありますよね。」
千里も命先生に追従した。
糸色先生は考えるように顎をなでて、うつむいてしまった。
「確かに会ったことはありますよ。同じ職場ですから。でも、挨拶をかわした程度の関係ですから、正直なところ、よくわからないです」
糸色先生は顔を上げるが、答えが見つけられないらしくもどかしそうな表情をしていた。
ここで話が途切れてしまった。みんな目線で何か言い出すのを譲り合っているみたいだった。でも、誰ひとりとして、蘭京太郎に関する情報を口にする人はいなかった。
私もそういえば蘭京太郎についてよく知らなかった。用務員として高校に駐在している人。考えてみれば、私にとっての蘭京太郎はそれで全部だった。
「それじゃ、話を元に戻しましょうよ。男爵が戻ってきた理由はなんなんですか? それに、あの可符香ちゃんそっくりの女の子はいったい誰なんですか?」
私たちが沈黙していると、藤吉がちょっと身を乗り出して、私たち一同を見回した。
「そりゃ、望の抹殺だろう。あるいは、糸色家全員かもしれんがな」
命先生が他人事みたいに答えを返した。
「でも、そんなことをしたら殺人罪でしょ? 人を殺したら男爵だって、ただで済むわけないじゃないですか。」
千里が命先生を見て、疑問で返した。
糸色先生は厳しい顔で頷いた。
「ええ、確かに。しかし、殺人の罪を被るのは男爵でも、あの風浦さんにそっくりの女の子ではありません。風浦さんただ一人です。どうやら別人らしいと我々はわかっていますが、世間的に見れば、どう考えてもあれは風浦可符香さんです。だからもし、町中であの風浦さんに似た女の子が私を刺した場合、見ていた人はみんな風浦可符香さんが刺したと証言するでしょう。男爵の目論見は風浦可符香そっくりのあの女の子で私を殺し、その後で風浦可符香さんと摩り替えるつもりなのでしょう」
「警察に捕まるのは風浦可符香ただ一人。そしてお前は、自分の生徒に殺されたという不名誉を世間に残し、死んでいくわけだ。そうなると、糸色家の名声も大きくがたつくだろう。まったく悪趣味な計画だ」
糸色先生の推測の後に、命先生が重い調子で追従した。

次回 P063 第6章 異端の少女4 を読む

小説『さよなら絶望先生~赤い瞳の少女~』目次




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