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■2009/09/19 (Sat)
この小説は、『さよなら絶望先生』を題材にした2次創作小説です。2次創作に関する法的問題については、こちらをご覧下さい。【著作物】【二次創作物】【パロディ】【パロディ裁判

P060 第6章 異端の少女


糸色医院に到着すると、私たちはそれぞれで治療を受けた。糸色先生は別室に運ばれて、外科手術の準備に入った。藤吉も看護婦と一緒に別の部屋へ行った。千里は藤吉の付き添いだった。
私は一人きりで待合室で待った。全員どこかしら負傷していたし、小さな診療所だったから、命先生も看護婦もみんな手一杯のようだった。そんな中、意外にも私が一番の軽傷だったので、後回しにされてしまった。
30分が過ぎて、命先生が手術室から出てきた。私は命先生と一緒に診察室に入った。命先生は私とスツールに座って向き合うと、私の両手を取って感覚を確かめたり捻ったりした。
「骨に異常はないが、相当に関節を痛めているな。湿布を貼っておくが、しばらく何も持たないほうがいい。料理や勉強も駄目だ。誰かに面倒見てもらえ」
「はい」
命先生の忠告に、私は大人しく頷いた。
命先生は私の腕にひんやり冷たい湿布を貼り付け、そのうえに包帯をぐるぐる巻きにした。
「つらい思いをしたな。でも安心しろ。弟はあれでも、優秀な人間だ。信頼していい」
命先生は治療を終えると、私を励ますように言った。
腕に目を落としていた私は、命先生の顔を見上げた。そこに、糸色先生そっくりな顔があった。目元がじわりと滲むものがあった。腕の包帯が巻かれていないところで目元を拭った。それだけで涙は納まってくれた。心の深いところで錠前が重く閉ざしていて、泣けそうな気分ではなかった。
「終りましたか?」
ドアが開いて、糸色先生が入ってきた。まといも一緒だった。
「糸色先生。……あ、望先生。あの、もういいんですか?」
私は糸色先生を振り返って、いつものように「糸色先生」と呼びかけて口を押さえた。今ここには、糸色先生が二人いるんだっけ。
「ええ、点滴を打って少し眠ったら、体力が回復しました。名前はアレですが、兄は医者としてはかなり優秀なんですよ」
「名前のことは言うな。さっき時田が来たぞ。机の上に置いてある」
命先生は軽く言い返して、後ろ手に机をペンで指した。
糸色先生は、珍しく着物の下に何も着ていなかった。だから胸の下に、厚く包帯で巻かれているのが見えた。
「何か物々しいですね」
糸色先生は机に向かいながら、世間話でもするような気軽さで口にした。まといがそれとなく二人分のスツールを用意して、私の左隣に座った。
「ああ。糸色家の警備の者に来てもらった。話を聞くと、ここもやばそうだからな。倫のところも警戒態勢に入っているはずだ」
命先生は姿勢を逸らして、糸色先生の姿を追った。
「景兄さんは?」
「拒否したらしい。景兄さんらしいよ」
命は冗談を言うみたいに肩をすくめた。
景というのは命先生と糸色先生のお兄さんの名前だ。確か、芸術家だったはずだ。一度も顔を見ていないけど、どんな人なんだろう。私は筋骨逞しい孤高の芸術家を想像していた。
糸色先生が机の前へ行き、書類の束を探った。しかし机の上は整理されず、色んな書類で溢れかえっていた。私はちょっと糸色先生が机の上を探る様子を観察した。すると、机の棚に『ブラックジャック』の文庫本がずらりと並んでいるのに気付いてしまった。命先生にも、悩みがあるのかもしれない。
「これですね。……おや、これは何ですか?」
しばらくして、糸色先生は目的のものを見つけたらしかった。でも、他に気になるものを見つけたらしく、手に取った。
「ああ、それか。知り合いの外科医からタレコミがあってな。面白いからカルテをコピーさせてもらったんだ。一応身内であるとはいえ、医者としての守秘義務がある。見ないでくれるか」
命先生は持っていたペンの先を振って忠告した。
「医者だったらいいんですか?」
私は呆れる調子で命先生に尋ねた。
「警察は警察同士、医者は医者同士。まあ、職業上の特権ってやつだよ」
命先生は私を振向いて、悪者っぽくにやりとした。
「それで、望……先生、それ、何ですか?」
望先生、と下の名前で呼ぶのはちょっと言いづらくて、声をすぼめてしまった。
糸色先生は私を振向いて、気を遣うように軽く微笑みかけてくれた。
「今だけ望先生で構いませんよ。これは時田に頼んで取り寄せたものです。10年前、男爵の屋敷から保護されたある13人の子供のリストです。まあ、これについては順を追って説明しますよ」
糸色先生は命先生の後ろを横切って、まといと命先生の間の席に座った。そうして、少しリストに目を落として、考えるふうに顎をなでた。
診察室のドアが開く気配がしたので振り向いた。看護婦に付き添われて、千里と藤吉が一緒に入ってきた。
藤吉は右肩から二の腕にかけて包帯が巻かれていた。他にもあちこちに白い絆創膏が貼られていた。左こめかみのところにもガーゼが当てられていた。可符香に似た女の子に引っ掻かれたところだ。
藤吉は目を赤くしていた。どうやら泣いていたらしかった。
「あびるちゃんは?」
私は姿の見えないあびるが気になった。
「寝てるわ。ショックが大きかったみたい。眠りながらうなされてたわ。」
千里が心配そうな顔で答えた。千里は白いシャツに着替えていた。私が抱きしめたせいで、服に血がついてしまったからだ
「藤吉さん、大丈夫ですか?」
糸色先生が気遣うように訊ねた。
藤吉さんはいつもにはない暗い顔で、うつむいたまま小さく頷いた。
「なんともないと思ったけど、鏡を見たら、なんかショックで……」
言葉にも、いつもの気軽さはなくなっていた。
「傷はちゃんと治るんでしょうね?」
糸色先生は念を押すように、一緒に入ってきた看護婦に声をかけた。
「ええ。傷そのものは浅いですから。数日で痕も残らず回復します」
看護婦は事務的な調子で言葉を返した。
「大変でしたね。さあ、こちらへ」
糸色先生が優しい声で、藤吉と千里を手招きした。
「はい。……あれ、なんで?」
藤吉が顔を上げて頷いた。でもその拍子に、眼鏡が涙で曇った。それを切掛けに、藤吉は感情を溢れ出させたみたいだった。
藤吉は眼鏡を外して、腕で目元を擦った。でも感情が収まらず、喉の奥から嗚咽がこぼれた。千里が何も言わず、藤吉を抱きよせて、その背中をなでた。
藤吉は声を抑えながら泣いた。小さくしゃくりあげる嗚咽が、何かを堪えるみたいだった。藤吉の感情はしばらく収まらない様子だった。私はずっとうつむきながら、藤吉の泣き声を聞いていた。

次回 P061 第6章 異端の少女2 を読む

小説『さよなら絶望先生~赤い瞳の少女~』目次




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