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■2009/09/23 (Wed)
映画:外国映画■
モトラが仕事場を出て通りに出ると、突然、切迫した声がした。
「頼む、捕まえてくれ! 私の財布を引ったくった!」
モトラが振り向くと、足を引き摺りながら叫ぶ老黒人がいた。その手前を、財布を持った男が疾走している。
モトラは突然すぎて、ぽかんと引ったくりを見送ってしまった。するとそこに、ハンチングの若者が飛び出してきて、持っていたトランクを投げた。
引ったくりは、トランクをぶつけられて倒れた。その手から財布が落ちた。
引ったくりはすぐに起き上がって、ナイフを手に身構えた。
ハンチングの若者が、引ったくりに立ち向かおうと対峙する。モトラも、ここで応戦するようにハンチングの若者に並んだ。
引ったくりは二人の姿を見て、形勢不利と見て退散する。
モトラは財布を拾って、老黒人の下へ向かった。老黒人は足を怪我して、その場に倒れこんでいた。
「すまないが、この金をある場所に届けてくれ。実はこの金はマフィアの金なんだ。四時までに、ある場所に届けなければならないんだ。私は足を怪我してしまった。頼む、代わりに金を届けてくれ!」
財布の中には5000ドルのお金が入っていた。
モトラは了解して、財布を受け取った。だが、ハンチングの若者が、
「待って。さっきの奴が待ち伏せしているはずだ。ハンカチは持っていないか?」
老黒人がハンカチを持っていた。ハンチングの若者はハンカチを受け取り、財布を包んだ。
「君の財布もだ。君のも狙われるぞ。いいか。これを、こうやってズボンの中に入れるんだ。いいな。こうしたら安全だ」
ハンチングの若者は、モトラの財布もハンカチに包むと、ズボンの中に押し込んだ。
「わかった。キン隠しだな」
モトラは納得して若者からハンカチに包んだ財布を受け取った。若者に言われたとおり、モトラは自分のズボンの中に財布を押し込む。
モトラは駆け出した。そのままタクシーに飛び乗り、行き先を告げた。しかし、老黒人が言った住所とは、反対方向だった。
タクシーが走り出すと、モトラは大笑いした。
「どうしたんですか?」とタクシーの運転手が尋ねた。
「大儲けだ! 5000ドルが手に入ったぞ!」
モトラはズボンの中に入れていたハンカチを取り出す。開けてみると、そこに財布はなく、大量のちり紙が包まれていた。
……騙された!
時代は1936年。アメリかは大恐慌の真っ只中だった。冒頭シーンなどに失業者が溢れる光景が描かれている。大金などお目にできないつらい時代だ。
ジョニーたちは、手に入れたお金をマフィアのお金だと知らない。通行人の財布を騙し取ったと思っていた。老齢のルーサーは引退を考えていた。
実は、ハンチングの若者(ジョニー)、老黒人(ルーサー)、引ったくりの三人は、詐欺師だった。三人で共謀して、モトラを騙たのだ。
ジョニーたちは、こうしてモトラの財布を騙し取ったのだが、中から出てきたのは思いがけない大量の札束。
実は、その財布こそ、シカゴマフィアの金だったのだ。
間もなくジョニーたちは、シカゴマフィアから命を狙われるようになる。
ルーサーが殺され、ジョニーは命からがらシカゴから脱出する。
ルーサーの仇を誓ったジョニーは、稀代の詐欺師であるヘンリー・ゴンドーフに協力を申し出る。
こうして、史上最大の詐欺師たちのショーが始まる。
ヘンリー・ゴンドーフとともに、詐欺ショーを共謀する事になったジョニー。だがジョニー自身、警察にもマフィアにも追われる身である。ジョニーは警戒して、アパートのドアに紙切れを挟み込む(←)。これをみて、「あっ!」と思ってしまった。『デスノート』の元ネタだ。
『スティング』は犯罪映画だが、暴力描写は少なく、安心して鑑賞できる作品だ。
詐欺師達の物語は軽妙で、リズムのいい音楽が心地よい。最近では見られないワイプが、物語の速度を早めている。
色使いも暖色系が中心で、落ち着いた印象がある。
ストーリーラインは複雑で、様々な思惑が錯綜するが、見ている側は物語を見失うことはない。
単純に物語を追っていける作品だ。
ヘンリー・ゴンドーフ(左)は、まずポーカーでマフィアボスを騙す。ヘンリーを演じたポール・ニューマンは、吹き替えなしでトランプマジックを披露した。
『スティング』の登場人物は、ほとんどが詐欺師である。
主人公のジョニーをはじめとして、登場人物はことごとく詐欺師だ。
詐欺師たちは、皆それぞれ策を練り、罠を張り込み、誰かを陥れようとしている。
ジョニーは、シカゴマフィアを騙してやろとしているし、シカゴマフィアはジョニーの命を狙っている。稀代の詐欺師ヘンリー・ゴンドーフも、FBIに狙われている。
ジョニーたちは追跡する者たちを払いのけ、いかにして儲けを手にするのか。いかにルーサーの復讐を成功させるのか。
なかなか隙のない、優れたエンターティメントだ。
映画記事一覧
作品データ
監督:ジョージ・ロイ・ヒル
脚本:デヴィッド・S・ウォード マーヴィン・ハムリッシュ
出演:ロバート・レッドフォード ポール・ニューマン
〇〇〇ロバート・ショウ チャールズ・ダーニング
〇〇〇アイリーン・ブレナン レイ・ウォルストン
〇〇〇サリー・カークランド チャールズ・ディアコップ
〇〇〇ダナ・エルカー ディミトラ・アーリス
アカデミー賞:作品賞受賞/監督賞受賞/脚本賞受賞/音響賞受賞
美術監督・装置賞受賞/ミュージカル映画音楽賞受賞/
「頼む、捕まえてくれ! 私の財布を引ったくった!」
モトラが振り向くと、足を引き摺りながら叫ぶ老黒人がいた。その手前を、財布を持った男が疾走している。
モトラは突然すぎて、ぽかんと引ったくりを見送ってしまった。するとそこに、ハンチングの若者が飛び出してきて、持っていたトランクを投げた。
引ったくりは、トランクをぶつけられて倒れた。その手から財布が落ちた。
引ったくりはすぐに起き上がって、ナイフを手に身構えた。
ハンチングの若者が、引ったくりに立ち向かおうと対峙する。モトラも、ここで応戦するようにハンチングの若者に並んだ。
引ったくりは二人の姿を見て、形勢不利と見て退散する。
モトラは財布を拾って、老黒人の下へ向かった。老黒人は足を怪我して、その場に倒れこんでいた。
「すまないが、この金をある場所に届けてくれ。実はこの金はマフィアの金なんだ。四時までに、ある場所に届けなければならないんだ。私は足を怪我してしまった。頼む、代わりに金を届けてくれ!」
財布の中には5000ドルのお金が入っていた。
モトラは了解して、財布を受け取った。だが、ハンチングの若者が、
「待って。さっきの奴が待ち伏せしているはずだ。ハンカチは持っていないか?」
老黒人がハンカチを持っていた。ハンチングの若者はハンカチを受け取り、財布を包んだ。
「君の財布もだ。君のも狙われるぞ。いいか。これを、こうやってズボンの中に入れるんだ。いいな。こうしたら安全だ」
ハンチングの若者は、モトラの財布もハンカチに包むと、ズボンの中に押し込んだ。
「わかった。キン隠しだな」
モトラは納得して若者からハンカチに包んだ財布を受け取った。若者に言われたとおり、モトラは自分のズボンの中に財布を押し込む。
モトラは駆け出した。そのままタクシーに飛び乗り、行き先を告げた。しかし、老黒人が言った住所とは、反対方向だった。
タクシーが走り出すと、モトラは大笑いした。
「どうしたんですか?」とタクシーの運転手が尋ねた。
「大儲けだ! 5000ドルが手に入ったぞ!」
モトラはズボンの中に入れていたハンカチを取り出す。開けてみると、そこに財布はなく、大量のちり紙が包まれていた。
……騙された!
時代は1936年。アメリかは大恐慌の真っ只中だった。冒頭シーンなどに失業者が溢れる光景が描かれている。大金などお目にできないつらい時代だ。
ジョニーたちは、手に入れたお金をマフィアのお金だと知らない。通行人の財布を騙し取ったと思っていた。老齢のルーサーは引退を考えていた。
実は、ハンチングの若者(ジョニー)、老黒人(ルーサー)、引ったくりの三人は、詐欺師だった。三人で共謀して、モトラを騙たのだ。
ジョニーたちは、こうしてモトラの財布を騙し取ったのだが、中から出てきたのは思いがけない大量の札束。
実は、その財布こそ、シカゴマフィアの金だったのだ。
間もなくジョニーたちは、シカゴマフィアから命を狙われるようになる。
ルーサーが殺され、ジョニーは命からがらシカゴから脱出する。
ルーサーの仇を誓ったジョニーは、稀代の詐欺師であるヘンリー・ゴンドーフに協力を申し出る。
こうして、史上最大の詐欺師たちのショーが始まる。
ヘンリー・ゴンドーフとともに、詐欺ショーを共謀する事になったジョニー。だがジョニー自身、警察にもマフィアにも追われる身である。ジョニーは警戒して、アパートのドアに紙切れを挟み込む(←)。これをみて、「あっ!」と思ってしまった。『デスノート』の元ネタだ。
『スティング』は犯罪映画だが、暴力描写は少なく、安心して鑑賞できる作品だ。
詐欺師達の物語は軽妙で、リズムのいい音楽が心地よい。最近では見られないワイプが、物語の速度を早めている。
色使いも暖色系が中心で、落ち着いた印象がある。
ストーリーラインは複雑で、様々な思惑が錯綜するが、見ている側は物語を見失うことはない。
単純に物語を追っていける作品だ。
ヘンリー・ゴンドーフ(左)は、まずポーカーでマフィアボスを騙す。ヘンリーを演じたポール・ニューマンは、吹き替えなしでトランプマジックを披露した。
『スティング』の登場人物は、ほとんどが詐欺師である。
主人公のジョニーをはじめとして、登場人物はことごとく詐欺師だ。
詐欺師たちは、皆それぞれ策を練り、罠を張り込み、誰かを陥れようとしている。
ジョニーは、シカゴマフィアを騙してやろとしているし、シカゴマフィアはジョニーの命を狙っている。稀代の詐欺師ヘンリー・ゴンドーフも、FBIに狙われている。
ジョニーたちは追跡する者たちを払いのけ、いかにして儲けを手にするのか。いかにルーサーの復讐を成功させるのか。
なかなか隙のない、優れたエンターティメントだ。
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作品データ
監督:ジョージ・ロイ・ヒル
脚本:デヴィッド・S・ウォード マーヴィン・ハムリッシュ
出演:ロバート・レッドフォード ポール・ニューマン
〇〇〇ロバート・ショウ チャールズ・ダーニング
〇〇〇アイリーン・ブレナン レイ・ウォルストン
〇〇〇サリー・カークランド チャールズ・ディアコップ
〇〇〇ダナ・エルカー ディミトラ・アーリス
アカデミー賞:作品賞受賞/監督賞受賞/脚本賞受賞/音響賞受賞
美術監督・装置賞受賞/ミュージカル映画音楽賞受賞/
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