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■2009/07/27 (Mon)
この小説は、『さよなら絶望先生』を題材にした2次創作小説です。2次創作に関する法的問題については、こちらをご覧下さい。【著作物】【二次創作物】【パロディ】【パロディ裁判

P006 第2章 毛皮を着たビースト
 


花壇の修繕作業は、昼休みだけでは終らなかった。私たちはもう一度、三人で集った。一応用務員室を覗いたけど、蘭京は戻っていないみたいだった。仕方ないので、私たちで修繕作業の続きを始めた。
掘り返された土を集めて穴を埋め、よく均したうえであちこちに散らばった花を元の場所に植えなおした。でも、花はほとんどが踏まれたり萎れたりして、植えても真直ぐ茎が立つものは少なかった。
それが終って、私たちは水飲み場で手や靴についた土を落とした。私の足元はすっかり汚れてしまっていて、靴の中にも土が入り込んできていた。私は靴を脱いで土を取り除きながら、なんとなくグランドを振り返った。
学校は皆帰った後で、静かに沈黙している。かわりに運動部の声がグランドから聞こえてきたけど、そろそろ静まりかけてようとしていた。夏の日射しもやわらいで、空が淡いオレンジを混じらせる頃になっていた。
「今日はありがとうね、野沢君」
可符香が靴を履いて、靴先をとんとんとしながら野沢に声をかけた。
「いいよ。ねえ、日塔。一緒に帰らない?」
水を手ですくって飲んでいた野沢が、頭をあげて返事を返した。それから、蛇口を閉めながら私を振り向く。
「え、なんでそういう流れになるの?」
私は靴を履きながら、びっくりした声をあげて野沢と可符香を交互に見た。可符香はいつもの暖かな微笑を浮かべている。私は胸のなかで、動悸が早くなるのを感じていた。
「何か用事とかあるの?」
野沢が気を遣うように私の表情を探ろうとした。
「ううん、別にそういうわけじゃ……」
「いいじゃない。奈美ちゃん、私、先に帰ってるね。じゃあね」
可符香は私が言うのを遮って、鞄を手にすると校門に向かって駆け出してしまった。
「あ、待って。一緒に……」
と手を伸ばしたけどもう遅かった。可符香はもうずっと向うで、一度振り返って私たちに手を振った。私は茫然とした気持ちで手を振って返していた。
「じゃあ、一緒に帰ろうか」
野沢が自分の鞄を手にして、私を振り向いた。
「うん」
私も自分の鞄を手にした。でも恥ずかしくて、野沢の顔を見られなかった。
私と野沢は、並んで歩き始めた。校門をくぐり、学校の前の通りを歩きぬけて、静かな住宅街に入っていく。そこまで来ると、運動部の掛け声もほとんど聞こえない。時々、金属バッドでボールを打つときの、甲高い音が聞こえるだけだった。
そこまで歩いて、私たちは何一つ言葉を交わさなかった。私はうつむいて歩きながら、時々気になるように野沢を見た。野沢は真直ぐ正面を見て歩き、顔に夕日のオレンジを宿していた。私は何か話さなくちゃ、と思ったけど、丁度いい話題は浮かばなかった。
「日塔は最近、どうだった? 二年生になってから」
野沢はちょっと詰まるようにしながら、私に声をかけた。
「うん。まあ、元気にやってるよ」
私は顔を上げて、野沢の横顔を見た。野沢君もきっと緊張しているんだな、と思った。そう思うと、少し気持ちが落ち着く気がした。
「二年に入って、しばらく学校に来てなかったって聞いたけど、どうしてたの。何かあったの?」
野沢は、私を振り向いて、気を遣うように訊ねた。
「ええ? どうして知ってるの?」
私はごまかすように質問で返した。あれは恥ずかしい思い出。追求されたくない。
「人伝にそういう話を聞いたから。俺、電話しようと思ったんだぜ」
「本当に?」
野沢の言葉が少し強くなった気がした。私は思わず足を止めて、野沢の顔を真直ぐに見た。
「電話番号、わからなかったから……」
でも野沢は恥ずかしそうに目を逸らした。
「ああ、そうか……」
私は納得して頷いた。最近は学校側からクラスの電話番号も明かさなくなった。友達同士でも、よほど仲がよくならない限り、電話番号の交換もしない。
私と野沢は再び歩き出した。私は、さっきより野沢を身近に感じた。私の不登校を気にしている人がいると知って、やっぱり嬉しかった。
「お父さん、失業したって聞いたけど、平気?」
歩きながら、野沢は次の話題に移った。
「え? 違うよ。何で?」
私はびっくりして声のトーンを上げた。
「なんか今日、メールで回ってきたから。みんな知ってるよ」
野沢は、怪訝な顔で私を振り返った。
芽留のやつ……。
私は密かに拳を固めた。
やがて目の前に分かれ道が現れた。左に進めば駅だ。私は徒歩での通学だから、正面の道を真直ぐ。
「あ、私こっちだけど……」
私は足を止めて、正面の道を指差した。
「ああ、そうなの。それじゃ」
「うん、じゃあね」
野沢はちょっと足を止めると、私に手を振って、左の道を進み始めた。
私も野沢に手を振って返し、真直ぐの道を歩き始めた。
でも私は、三歩もしないうちに足を止めてしまった。野沢の後ろ姿を振り返る。鞄を後ろ手に持っている背中は、思ったより広くて逞しく見えた。私は野沢の後ろ姿を眺めながら、なんとなく、行ってしまう、という気持ちが自分の中にあるのに気付いて動揺してしまった。
「野沢君!」
私はとっさに声をあげてしまった。
野沢が振り返った。私はその視線を正面から受けて、思わず視線を落として、声を詰まらせてしまった。
「あの、電話番号を、えっと……」
「教えてよ。今度、電話するから」
詰まってしまった私の言葉の続きを察して、野沢が先に進めてくれた。
「うん」
私はなんとなく目の前が晴れた気分になって、笑顔で野沢を振り返った。

次回 P007 第2章 毛皮を着たビースト4 を読む

小説『さよなら絶望先生~赤い瞳の少女~』目次




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