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■2009/07/26 (Sun)
創作小説■
この小説は、『さよなら絶望先生』を題材にした2次創作小説です。2次創作に関する法的問題については、こちらをご覧下さい。【著作物】【二次創作物】【パロディ】【パロディ裁判】
P004 第2章 毛皮を着たビースト
1
昼休みに入って、私は可符香や千里とお弁当を食べた。お弁当を残さず食べ終えたところで、可符香が私を振り返った。
「奈美ちゃん、日直でしょ。花壇に行こう」
可符香はそう言って席を立った。今日は可符香と日直だった。
「うん、そうだね」
私はお弁当を包んで鞄に戻すと、席を立った。
実は、私は1週間連続で日直だった。これも、二ヶ月連続で無断欠席したバツみたいなものだった。不条理だと思ったけどこれを受け入れたのは、早くクラスに馴染みたかったからだった。
私は可符香と一緒に、靴に履き替えて校舎の外に出た。正面玄関の裏側に回り、校舎からちょっと外れた場所にある中庭へと入っていった。
中庭は壁のような高い生垣に囲まれていて、入口も松を刈り込んだゲートになっていた。
それをくぐると、ちょっとした広場が現れ、中央に噴水が置かれていた。噴水は水のみ場のように小さく、ちょろちょろと水を噴き上げていた。
花壇、とはいってもそこはちょっとした庭園みたいな場所だった。全体の構造はイギリス式庭園だけど、木や花はどれも日本の植物で構成されていた。
そこへ入っていくと、暑い熱射は少しやわらいで、清涼感のある香りが辺り一杯に漂うようだった。汗で肌に張り付いたセーラー服に、涼しい風が入り込んでくるのを感じた。
私たちは、丸木で作られた小さな用具入れから、スコップとじょうろをそれぞれ手に持ち、奥へ入っていった。
花壇はそんな庭園の奥、迷路のような壁に囲まれた場所にあった。
私たちは、その広場へと入っていく。広場は正方形の形になっていて、そこそこの広さがあった。各クラスの花壇が段々になって並び、どの花壇も色鮮やかな花で一杯だった。
しかし、私たちの花壇は荒らされていた。ちょっと花が踏まれているとか抜き取られているとか、そういうものではない。私たちの花壇だけ、驚くほど深く掘り返されていた。黒く染まった土が辺りに一面に広がり、その土の中に、抜き取られた花の色が点々と浮かんでいた。
「ひどい! 誰がやったのよ!」
私はストレートに憤慨して声をあげた。
「違うよ、奈美ちゃん。これはお墓を掘ろうとしたんだよ。きっと、どこのお寺にも受け入れてもらえなった旅人を埋めようと、親切な人が密かにここにやって来て穴を掘ったんだよ」
でも可符香は、信じられないくらいポジティブな意見を朗らかに言った。
「いや、違うから。ありえないから。それじゃ、どうしてここに穴を掘る必要があったの?」
私は怒りを忘れて、可符香の妄想エンジンを宥めようとした。
「それはお花畑と一緒にしたかったから。旅人は過酷な荒野ばかりを旅し続けてきたから、最後だけはこんな美しい場所に埋められたい、と願ったんだよ」
可符香のポジティブイメージは停止不能なようだった。
私は色んなものを諦めて、がっくり肩を落とした。
改めて、私は穴の側に近付いて、膝に手を置いて覗き込んでみた。考えたくないけど、人が入れる深さだな、と思った。私くらいの体格なら、問題なく入っていける深さだった。
穴は深くなるほどに色を暗く沈めていた。私は、闇に吸い込まれそうな眩暈を感じて、穴から離れた。
「どうしよう。放ったらかしは、まずいよね」
私は可符香を振り返って意見を求めた。
「蘭京さんに報告しよう。埋めるんだったら、道具も借りなくちゃいけないし」
可符香が現実的な提案をしてくれた。
うん、そうだね、と私も同意した。
次回 P005 第2章 毛皮を着たビースト2 を読む
小説『さよなら絶望先生~赤い瞳の少女~』目次
P004 第2章 毛皮を着たビースト
1
昼休みに入って、私は可符香や千里とお弁当を食べた。お弁当を残さず食べ終えたところで、可符香が私を振り返った。
「奈美ちゃん、日直でしょ。花壇に行こう」
可符香はそう言って席を立った。今日は可符香と日直だった。
「うん、そうだね」
私はお弁当を包んで鞄に戻すと、席を立った。
実は、私は1週間連続で日直だった。これも、二ヶ月連続で無断欠席したバツみたいなものだった。不条理だと思ったけどこれを受け入れたのは、早くクラスに馴染みたかったからだった。
私は可符香と一緒に、靴に履き替えて校舎の外に出た。正面玄関の裏側に回り、校舎からちょっと外れた場所にある中庭へと入っていった。
中庭は壁のような高い生垣に囲まれていて、入口も松を刈り込んだゲートになっていた。
それをくぐると、ちょっとした広場が現れ、中央に噴水が置かれていた。噴水は水のみ場のように小さく、ちょろちょろと水を噴き上げていた。
花壇、とはいってもそこはちょっとした庭園みたいな場所だった。全体の構造はイギリス式庭園だけど、木や花はどれも日本の植物で構成されていた。
そこへ入っていくと、暑い熱射は少しやわらいで、清涼感のある香りが辺り一杯に漂うようだった。汗で肌に張り付いたセーラー服に、涼しい風が入り込んでくるのを感じた。
私たちは、丸木で作られた小さな用具入れから、スコップとじょうろをそれぞれ手に持ち、奥へ入っていった。
花壇はそんな庭園の奥、迷路のような壁に囲まれた場所にあった。
私たちは、その広場へと入っていく。広場は正方形の形になっていて、そこそこの広さがあった。各クラスの花壇が段々になって並び、どの花壇も色鮮やかな花で一杯だった。
しかし、私たちの花壇は荒らされていた。ちょっと花が踏まれているとか抜き取られているとか、そういうものではない。私たちの花壇だけ、驚くほど深く掘り返されていた。黒く染まった土が辺りに一面に広がり、その土の中に、抜き取られた花の色が点々と浮かんでいた。
「ひどい! 誰がやったのよ!」
私はストレートに憤慨して声をあげた。
「違うよ、奈美ちゃん。これはお墓を掘ろうとしたんだよ。きっと、どこのお寺にも受け入れてもらえなった旅人を埋めようと、親切な人が密かにここにやって来て穴を掘ったんだよ」
でも可符香は、信じられないくらいポジティブな意見を朗らかに言った。
「いや、違うから。ありえないから。それじゃ、どうしてここに穴を掘る必要があったの?」
私は怒りを忘れて、可符香の妄想エンジンを宥めようとした。
「それはお花畑と一緒にしたかったから。旅人は過酷な荒野ばかりを旅し続けてきたから、最後だけはこんな美しい場所に埋められたい、と願ったんだよ」
可符香のポジティブイメージは停止不能なようだった。
私は色んなものを諦めて、がっくり肩を落とした。
改めて、私は穴の側に近付いて、膝に手を置いて覗き込んでみた。考えたくないけど、人が入れる深さだな、と思った。私くらいの体格なら、問題なく入っていける深さだった。
穴は深くなるほどに色を暗く沈めていた。私は、闇に吸い込まれそうな眩暈を感じて、穴から離れた。
「どうしよう。放ったらかしは、まずいよね」
私は可符香を振り返って意見を求めた。
「蘭京さんに報告しよう。埋めるんだったら、道具も借りなくちゃいけないし」
可符香が現実的な提案をしてくれた。
うん、そうだね、と私も同意した。
次回 P005 第2章 毛皮を着たビースト2 を読む
小説『さよなら絶望先生~赤い瞳の少女~』目次
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