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■2009/07/27 (Mon)
創作小説■
この小説は、『さよなら絶望先生』を題材にした2次創作小説です。2次創作に関する法的問題については、こちらをご覧下さい。【著作物】【二次創作物】【パロディ】【パロディ裁判】
P005 第2章 毛皮を着たビースト
2
正面玄関まで戻るのは面倒くさいので、ズルして渡り廊下の出入り口から校舎に入った。客用スリッパをはいて、職員室をできるだけ早く歩いて通り過ぎる。用務員室は校舎の一番端の、階段と宿直室に挟まれた場所にあった。
用務員室の前まで行くと、私はまず扉にノックした。
「蘭京さん、入りますよ」
そう呼びかけて、扉の取手に手をかけたまま返事を待つ。
でも、答えは返ってこない。いつもならすぐに返事があるのに。私は、可符香に意見を求めようと振り返った。
蘭京太郎はこの学校に常駐している用務員だった。先生も生徒も、なにかあると蘭京太郎に頼るようにしている。だから、自然と皆から「蘭京さん」と呼ばれて親しまれていた。
しかし、もしかしたら留守かもしれない。私は扉を開けようと取手に力を込めた。
と、いきなり扉が開いた。気配も同時に現れて、私の前に少年が立った。
「おう、日塔か」
現れたのは私よりちょっと背が高いくらいの、坊主頭の少年だった。
「野沢君?」
私はびっくりして野沢を見上げた。
野沢夏樹。高校1年生のときの同級生だ。特に親しかった男子というわけでもなく、印象も薄かったので、こんなところで顔を合わせるとは思っていなかった。
「蘭京さんに用事? 今いないみたいだけど」
野沢は私を促すように一歩身を引いた。
「本当?」
私は野沢を気にしながら、おずおずと用務員室を覗き込んだ。
用務員室は狭い。手前に土間のような作業場があって、奥が4畳くらいの座敷になっていた。そのどちらも一杯にいろんな道具が置かれて雑然とした印象だった。ドライバーやスパナなどの工具に、細かなねじやボルト。空気入れや、タイヤやボールのパンクを修理する道具も置かれている。その風景を見ると、どこかの工務店みたいな場所だった。
小さな空間だから、人影がないのは一目で明らかだった。
「最近、蘭京さん、よく姿を消すんだ。授業時間中はとりあえずいると思ったけど、どうしたんだろうな」
野沢は用務員室の風景を眺めつつ説明した。
私は、ふうんと話を聞く振りをしながら、ちらちらと野沢の顔を見ていた。ちょっとスポーツでもやっていそうな、丈夫そうな体型。わずかに小麦色がかった肌の色。坊主頭で飾りっ気はないけど、顔立ちはきりっと整っている。
今まで意識しなかったけど、こうして間近にすると、私は野沢君から男の子を感じてしまっていた。
「それで、蘭京さんに何か用事だったの。俺にできることない?」
野沢が私を振り返った。
「え、えっと別に。花壇が荒らされていたから、報告とスコップを借りようと……」
急に振り向かれて、私は至近距離で野沢と目を合わせてしまった。私は慌てて後ろに下がって、もしかしたら赤くなっているかもしれない顔をうつむかせた。
「もしかして、日直? 俺もなんだけど、じゃあ、手伝おうか」
野沢は一歩前に進み出て、手に持っていたスコップを見せた。
そういえば、野沢は2のほ組だっけ。ということは、同じ花壇。野沢のクラスも、被害にあっていて、それで私たちと同じようにスコップを借りに来たのだ。
「ううん。別にいいよ。そんなに大変でもないし……」
私は声を上擦らせて、顔と手をブンブン振った。
だけど、
「じゃあ、お願いしようかな」
可符香が私の前に進み出て、野沢にお願いした。
次回 P006 第2章 毛皮を着たビースト3 を読む
小説『さよなら絶望先生~赤い瞳の少女~』目次
P005 第2章 毛皮を着たビースト
2
正面玄関まで戻るのは面倒くさいので、ズルして渡り廊下の出入り口から校舎に入った。客用スリッパをはいて、職員室をできるだけ早く歩いて通り過ぎる。用務員室は校舎の一番端の、階段と宿直室に挟まれた場所にあった。
用務員室の前まで行くと、私はまず扉にノックした。
「蘭京さん、入りますよ」
そう呼びかけて、扉の取手に手をかけたまま返事を待つ。
でも、答えは返ってこない。いつもならすぐに返事があるのに。私は、可符香に意見を求めようと振り返った。
蘭京太郎はこの学校に常駐している用務員だった。先生も生徒も、なにかあると蘭京太郎に頼るようにしている。だから、自然と皆から「蘭京さん」と呼ばれて親しまれていた。
しかし、もしかしたら留守かもしれない。私は扉を開けようと取手に力を込めた。
と、いきなり扉が開いた。気配も同時に現れて、私の前に少年が立った。
「おう、日塔か」
現れたのは私よりちょっと背が高いくらいの、坊主頭の少年だった。
「野沢君?」
私はびっくりして野沢を見上げた。
野沢夏樹。高校1年生のときの同級生だ。特に親しかった男子というわけでもなく、印象も薄かったので、こんなところで顔を合わせるとは思っていなかった。
「蘭京さんに用事? 今いないみたいだけど」
野沢は私を促すように一歩身を引いた。
「本当?」
私は野沢を気にしながら、おずおずと用務員室を覗き込んだ。
用務員室は狭い。手前に土間のような作業場があって、奥が4畳くらいの座敷になっていた。そのどちらも一杯にいろんな道具が置かれて雑然とした印象だった。ドライバーやスパナなどの工具に、細かなねじやボルト。空気入れや、タイヤやボールのパンクを修理する道具も置かれている。その風景を見ると、どこかの工務店みたいな場所だった。
小さな空間だから、人影がないのは一目で明らかだった。
「最近、蘭京さん、よく姿を消すんだ。授業時間中はとりあえずいると思ったけど、どうしたんだろうな」
野沢は用務員室の風景を眺めつつ説明した。
私は、ふうんと話を聞く振りをしながら、ちらちらと野沢の顔を見ていた。ちょっとスポーツでもやっていそうな、丈夫そうな体型。わずかに小麦色がかった肌の色。坊主頭で飾りっ気はないけど、顔立ちはきりっと整っている。
今まで意識しなかったけど、こうして間近にすると、私は野沢君から男の子を感じてしまっていた。
「それで、蘭京さんに何か用事だったの。俺にできることない?」
野沢が私を振り返った。
「え、えっと別に。花壇が荒らされていたから、報告とスコップを借りようと……」
急に振り向かれて、私は至近距離で野沢と目を合わせてしまった。私は慌てて後ろに下がって、もしかしたら赤くなっているかもしれない顔をうつむかせた。
「もしかして、日直? 俺もなんだけど、じゃあ、手伝おうか」
野沢は一歩前に進み出て、手に持っていたスコップを見せた。
そういえば、野沢は2のほ組だっけ。ということは、同じ花壇。野沢のクラスも、被害にあっていて、それで私たちと同じようにスコップを借りに来たのだ。
「ううん。別にいいよ。そんなに大変でもないし……」
私は声を上擦らせて、顔と手をブンブン振った。
だけど、
「じゃあ、お願いしようかな」
可符香が私の前に進み出て、野沢にお願いした。
次回 P006 第2章 毛皮を着たビースト3 を読む
小説『さよなら絶望先生~赤い瞳の少女~』目次
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