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■2009/07/28 (Tue)
この小説は、『さよなら絶望先生』を題材にした2次創作小説です。2次創作に関する法的問題については、こちらをご覧下さい。【著作物】【二次創作物】【パロディ】【パロディ裁判
P007 第2章 毛皮を着たビースト
 


翌日の朝、教室に入ると、千里が凄い剣幕で私に迫ってきた。
「あなた! 用務員室からスコップ持ち出して片付けなかったでしょ。きっちり片付けてきなさい!」
というわけで、私は可符香と一緒に中庭に向かった。中庭の、花壇があるスペースへ行く。確かに、花壇の前にスコップが放置されていた。先の部分に黒い土がついていて、昨日、作業したままの状態だった。
そこまでやってきて、私はようやく、昨日用務員室に行かなかったっけ、と思い出した。多分、千里はこの花壇にやってきて、スコップの返し忘れに気付いたのだと思う。気付いたんなら、返しておいてほしいけど。
花壇には異常はなかった。植えなおした花は、茎をしっかりさせて葉を広げている。いくつかぐったりしたものもあったけど、ちょっとだけだった。何とか持ち直したらしいのを見て、私はホッとした。
私はスコップを持って、用務員室に向かった。
「蘭京さん、います?」
私は用務員室の扉をノックした。
すると、扉の向うで気配がした。慌てるようなバタバタとする音だ。それから、用務員室に不自然な沈黙が漂い始めた。待っていても、返事が返ってきそうな雰囲気はない。
私は可符香と顔を見合わせた。可符香も、なんだろう、と首を傾げていた。
「入りますよ」
私は断ったうえで、ゆっくりと扉を開けた。
用務員室に、誰もいなかった。昨日見たままの状態で、何か大きな異常があるようには思えなかった。
「おかしいな。確かにさっき、誰かいる気配したよね」
私は慎重に用務員室全体を見ながら中へ入っていった。といっても、狭い用務員室に誰かが潜んでいるとは思えない。
私はとりあえず、スコップを壁際のフックに引っ掛けた。
「窓開いているよ、奈美ちゃん」
可符香が奥の座敷に身を乗り出して、窓をさした。
座敷の向うに窓があり、確かに開けたままになっていた。窓の向こうに、広い運動場が見えた。こんな時間でも、活動している運動部がぽつぽつといるのが見えた。
私は、奥の座敷をよく見ようと思って、畳の上に右の膝をついて身を乗り出してみた。すると、畳の上にくっきりとした靴跡があるのに気付いた。
もしかしたら空き巣かもしれない。私は緊張して畳の上の靴跡に目を向けた。靴跡は、右側の空間から始まり、開けたままの窓で終っていた。
しかし、右側の空間には、大きな棚が一つあるだけだった。高さは1メートル80センチほど。棚は、ドライバーやねじといった工具がきちんと整理して並べられていた。
その棚が、中間あたりからほんの少し、手前にせり出しているように見えた。
「なんだろう?」
私は呟いて、靴を脱いで座敷に上がった。
「どうしたの、奈美ちゃん」
可符香も靴を脱いで、私の後を追った。
私は棚の側に近付いた。気のせいじゃない。棚は三つに区切られていて、その中間が間違いなく手前にせり出していた。さらにもっとよく見ると、一方の縦板に、まるで取手のようなへこみがあるのに気付いた。隣の棚と繋がるように作られた小さな穴もあった。
私は、取手を掴んで、棚を手前に引き出してみた。棚にコロが仕込まれているらしく、力を掛けなくても棚は扉のように手前に動き出した。
棚の裏側に、真っ黒な空間が現れた。可符香が、左側の棚との狭間にスイッチがあるのに気付いて押した。真っ暗な空間に裸電球の明かりが宿り、ぼんやりと浮かび上がった。
「なにこれ。気持ち悪い」
私はちゃんと中を確認する前に、直感的にそう思った。
どうやら、用務員室の隣の階段の裏に、秘密の隠し部屋を作ったらしい。部屋の右側が斜めに切り取られ、左側に天井一杯までの棚が置かれていた。
私はそんな部屋の光景よりも、扉を開けた瞬間に迫ってきた悪臭に面食らった。隠し扉の風景以上に、悪臭はもっと強烈だった。
「面白そう。入ってみようよ、奈美ちゃん。もしかしたら妖精さんが匿われていたかもしれないわ」
可符香は目を輝かせて、靴を手にやってきた。
「ちょっと可符香ちゃん……」
私はさすがに止めようとした。でも可符香は、靴を隠し部屋の中に置いて、中へ入っていった。隠し部屋は土間と同じ高さになっていた。
しょうがない。私も靴を持って隠し扉に向かった。靴を履いて、ポケットから出したハンカチを口元に当てる。
中に入ってみると、そこそこの広さがある。鋭角的な台形の部屋は、天井ほど詰まっているけど、自分達の立っている場所はなんとか両手を伸ばせるくらいの幅はあった。
左一杯の棚には、本や文庫本、手製のファイルなどがあった。本の背を見ると、写真集や小説、医学書などのようだった。標本らしい木のケースも並べて置かれていた。それから医療器具のような道具に、何かをホルマリン漬けにした瓶。
棚は高さ1メートルほどのところで、机のように手前にせり出していて、筆記用具などの道具が置かれ、何か作業をしたらしい痕跡もあった。
なんだか、底のほうからぞくぞくする不気味さがある気がした。天井に吊るされている二つの裸電球の明かりはぼんやり暗くて、埃が舞い上がるのを浮かび上がらせ、部屋のあちこちに陰鬱な影を落としていた。靴で床を踏んだ感触は何となく湿っていたし、それに7月とは思えないくらいひんやり冷たかった。
「なんなんだろう、この部屋」
私はハンカチで口元を覆いながら、疑問をつぶやいた。
「そうね。……そうだ、きっと蘭京さんはお医者さんになりたかったんだよ。でも両親に反対されて仕方なく学校の用務員に。それでも夢を諦められなかった蘭京さんは、こうやって秘密の部屋を作り、誰にも見られていないところで勉強をしていたんだよ。蘭京さんは頑張り屋さんなんだよ」
可符香は信じられないくらいポジティブだった。私は絶対に違う、と思ったけど、呆れて口に出して言えなかった。
「ねえ、可符香ちゃん。そろそろ出ようよ。なんか恐い。早く出て先生に報告しようよ」
私は自分の膝が震えるのを感じた。ゆるりとこみ上げてくる恐怖を、自分で律することができなかった。
でも可符香は恐怖なんて少しも感じていないように、楽しげに棚に並んでいるものを眺めていた。部屋全体を覆っている悪臭も、ぜんぜん平気そうだった。
「あ、奈美ちゃん、見て見て。これ、かわいい!」
と可符香はホルマリン漬けの瓶を手に取り、声を弾ませた。
「え、可愛いって、可符香ちゃん、これはちょっと……」
私は可符香に瓶を押し付けられてしまって、右手に瓶を持った。
私は瓶の中の物を、なんだろう、と覗き込んだ。瓶には、白く漂白された肉の塊が浮かんでいた。異様に太いイモムシのような形で、筋が張っていて、先のほうが顔を出すように皮がめくれていた。反対側には、切り取られたような切断面があった。
気味が悪かったけど、私はこういう形をどこかで見たなと思って、じっとその物体を見詰めた。
不意に、わかってしまった。ずっと幼い頃、お父さんとお風呂に入ったときを思い出していた。
私は、腹の底から悲鳴を上げてしまった。映画やドラマで、あんなふうに悲鳴を上げる人なんていない、とずっと思っていたけど、私は信じられないような声で叫んでいた。
それから、頭からふっと力が抜けて、体が崩れてしまった。ショックで気を失うってこんな感じなのか、と意識が消える瞬間、思った。

次回 P008 第2章 毛皮のビースト5 を読む

小説『さよなら絶望先生~赤い瞳の少女~』目次




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