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■2016/07/28 (Thu)
創作小説■
第14章 最後の戦い
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21
俊足の馬は素晴らしい速力で雨の中を駆け抜け、本来2日かかる旅程を、わずか半日で走破し、翌日の朝にはもう王城の前まで辿り着いた。雨はあの頃から一時も止まずに降り続けている。城下町は朝なのにひどく暗い。
目抜き通りを、ソフィーとイーヴォールが馬に乗って駆け抜けていった。あまりにも早い馬に、住人達が何事かと驚き、その背にソフィーとイーヴォールの2人があるのに騒然とし始めた。聖女と魔女が2人で戻ってきたぞ、と。
ソフィー
「気をつけてください。もうここはヴォーティガンが統治する城ではありません」
イーヴォール
「そのようだな」
間もなく兵士が2人を引き留めようと飛び出してきた。兵士はブリデンの紋章を掲げ、やんごとなき2人の素性を知らず、呼び止めようとした。
イーヴォールは、兵士を構わず踏みつぶした。
街は悪魔の襲来による爪痕がまざまざと残されていた。立ち並ぶ家は破壊され、炭になっている。各所に設けられていた門も破壊されていた。おかげで、イーヴォールは門を素通りできた。
王城の前までやってきた。ついに行く手に門が立ち塞がった。そこだけ門が修復させ、兵士達が物々しい様子で警備していた。
兵士
「何者だ! 馬を止めよ」
兵士が何人も飛び出してくる。
イーヴォールとソフィーは馬を下りた。兵士達は武器を手に、2人を取り囲む。
兵士
「何用だ、貴様ら!」
イーヴォール
「城の地下に用事だ。即刻通してもらいたい」
兵士
「ならん!」
イーヴォール
「ならばどうすれば入れる?」
兵士
「そうだな。――まず正式な書類を作り、しかるべき筋に提出せよ。そして許可が降りれば、入場可能な日時を追って知らせよう。――おっと、婦人達は我々が直々に念入りな身体検査をさせてもらうがな」
イーヴォール
「そうか。ソフィー、覚悟はできているか」
ソフィー
「はい。あの人は何もかも覚悟をしていきました。恐れるつもりはありません」
イーヴォール
「よくぞ言った。では参るぞ」
ソフィーとイーヴォールが両掌を突き出した。兵士があっという間もなく、掌に4つの魔法が瞬いた。
爆音が轟いた。兵士が吹っ飛んだ。積み上げた石が崩壊する。重い鉄扉がずずずと倒れた。
騒動を聞いて、背後から兵士が飛び出してきた。ソフィーとイーヴォールは無視してその向こうへと進んだ。代わりにスレプニールが明らかに馬ではない雄叫びを上げて、兵士に突撃した。
ソフィーとイーヴォールは城へ入った。知らせを受けた兵士達が大挙して押し寄せてきた。
イーヴォール
「時間がないんだ! 足を止めるな!」
ソフィー
「わかっています!」
ソフィーとイーヴォールは立ち止まらず走った。正面から兵士達が殺到する。ソフィーとイーヴォールが両掌を前に突き出す。そこに、巨大な光るリングが現れた。
魔法のリングが出現するのに、兵士達が慌てふためいた。しかし廊下に密集しすぎたせいで、かわすゆとりがなかった。
兵士達は、砂でも掻き出されるみたいに、光のリングに押し分けられた。ソフィーとイーヴォールは走る速度を落とさず、兵士を向こうの壁まで押しのけていき、光るリングで道を塞いでしまうと、脇道へと入っていった。
通路を走り、次の角を曲がった。地下階段はすぐそこだ。
が、何かが弾けた。イーヴォールが小さく呻いて膝を着いた。
ソフィーがはっと振り向いた。通路に向こうに、弓矢を持った兵士が現れていた。
兵士達は次の矢を放った。
イーヴォールが魔法の盾を作る。矢が魔法の盾に弾かれた。
ソフィーが光の矢を放った。廊下を無数の光線が走る。光の矢は兵士らを貫いた。
ソフィー
「イーヴォール様!」
イーヴォールの背中に矢が突き刺さっていた。
イーヴォール
「とどまるなと言ったはずだ」
ソフィー
「……でも」
後方からまた兵士の気配が迫った。
イーヴォール
「ここまでだな。――ソフィー、これを持って行け」
イーヴォールはソフィーにエクスカリバーを差し出した。ソフィーはエクスカリバーを受け取る。
イーヴォール
「行け、ソフィー。そなたは最高の弟子であった」
ソフィー
「イーヴォール様。あなたは最高の師でした。ありがとう。ケール・イズの魔法使いよ」
ソフィーはイーヴォールに恭しく頭を下げて、そこを立ち去った。
イーヴォールは重い体を持ち上げて、廊下を振り返った。すでに兵士がぞろぞろと集まってきている。
イーヴォール
「来るがいい! そして見るがいい! これが最強と称えられた魔術師の最後の技だ!」
イーヴォールの両掌に魔力が輝いた。かつてない魔道の力に、空間全体が叫びを上げて震えていた。兵士達もこの異変に慌てふためき、動揺が広がった。とてつもない魔法を予感させるものだった。
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