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■2016/07/26 (Tue)
創作小説■
第14章 最後の戦い
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20
ゆるやかな雨が降っていた。雨が葉に当たって、しとしとと静かな音を立てている。大きな木の足下で、ソフィーが放心した体で蹲っていた。オークから別れて数時間。ソフィーは気力を失ってただそこで茫然と座り込んでいた。
雨はやみそうになく、そのうちにも勢いをつけそうな気配だった。
そんな時、どこかで馬の蹄を聞いたような気がした。ソフィーはしばらく無関心に音を聞いていたが、それがあまりにも近くに迫り、しかも乗り手が自分の名前を呼ぶような気がして、ようやく顔を上げた。
そこに、思いがけない人物がいた。イーヴォールだった。イーヴォールは馬を走らせて、ソフィーの側に近付いた。
ソフィーは立ち上がってイーヴォールを迎えた。イーヴォールは馬を止めるのがもどかしく、走る馬から飛び降りてソフィーの側まで駆け寄った。
イーヴォール
「ソフィー! 無事か!」
ソフィー
「イーヴォール様!」
ソフィーはイーヴォールに抱きつき、その胸にすがりついてわあっと泣き声を上げた。イーヴォールは突然のことに驚くが、その髪を撫でて、ソフィーが落ち着くのを待った。
イーヴォール
「いったい何が起きた。どの里を訪ねても人の気配がない。私のいない間にこの国は滅んでしまったのか」
ソフィー
「みんな……みんな滅んでしまいました。オーク様が王権を継いだ後、国をブリデンに譲り、私たちは大パンテオンに向かい、最後の戦いに挑みました。しかし……」
イーヴォール
「それで、オークはどうした? あの者はどこへ行った」
ソフィー
「別れました。1人で行かれました」
イーヴォール
「なんてことだ!」
ソフィー
「あの人は1人で王としての責任を果たしに行ったのです。もう国は滅んだから、共はいらないと。ダーンウィンだけを持って、1人で行かれました」
イーヴォール
「そんな……封印の術はどうした?」
ソフィー
「いまだ城の地下です」
イーヴォール
「するとあやつは何も持たずに悪魔の王のもとに行ってしまったのか」
ソフィー
「やむを得ませんでした。もう何もかも失われてしまったのです。国も、あらゆる神器も、聖剣エクスカリバーも……。もう我々には何も残されていないのです」
イーヴォール
「エクスカリバーだと? それならここだ。エクスカリバーならここにある」
イーヴォールは手に持っていた剣の鞘を抜いて、刃をソフィーに見せた。
神々しいまでの白銀が、灰色の風景の中で輝いていた。
ソフィー
「……まさか。あんなに錆だらけだったのに。こんなふうに輝いているなんて」
驚くべき刃のきらめきがソフィーの目の中に移り、ソフィー自身の中でも何かが変わるのを感じた。
イーヴォール
「グリシャの神に仕事を依頼したのだ。――あの男はキール・ブリシュトに向かった。間違いないか」
ソフィー
「はい」
ソフィーの顔にいつの間にか希望の色が射し、声に活気を取り戻していた。
イーヴォール
「ならばまだ間に合う。ソフィー、従いて来い」
ソフィー
「はい!」
イーヴォールとソフィーが馬に乗った。馬首を北東に向けて、一気に駆け出した。
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