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■2009/07/07 (Tue)
シリーズアニメ■
episode1-1 opening
1986年10月4日。
伊豆諸島の一つである六軒島に、右代宮(うしろみや)家一族がやってくる。
右代宮戦人をはじめとして、譲治、真里亞、桜座、絵羽、秀吉、霧江、留弗夫、朱志香……。
六軒島は右代宮家が所有する島で、年に一度、右代宮家の者たちはこの島に集合し、それぞれの近況を報告するのが慣例になっていた。
だが、その年は事情が違っていた。
右代宮家当主である金蔵が原因不明の病に伏せって、医者の診断によれば、あと3ヶ月の命であるという。
金蔵には莫大な資産がある。金蔵が死ねば、右代宮家の誰かがその資産を受け継ぐこととなる。遺産の分配を巡って、右代宮家の者たちが対立を始める。
さらに、金蔵には一つの噂があった。
かつて右代宮家が現在のように繁栄する以前、金蔵は魔女ベアトリーチェと契約を交わしたという。そこで金蔵は己の魂を引き換えにして、10トンの金塊を手に入れた。その金塊を運営資産にし、事業を興し、現在のような富と名誉を手に入れたのだ。
だがそんな物語も、右代宮家の間で伝説として伝えられるのみだった。
『ひぐらしのなく頃に』で知られる作家集団、竜騎士による新シリーズである。
隔絶された孤島を舞台に、殺人事件が次々と発生。残された何人かで、難解としかいいようのない謎解きに挑む。
果たして犯人は誰なのか。事件は超常現象によるものなのか。
奇怪な何かが起きそうな設定が充分に準備された作品である。
絶海の孤島と、そこに建つ怪しげな洋館。魔女の噂と、隠された黄金の謎。
奇妙な名前の登場人物を含めて、何もかもが、異世界的な空気を演出するために用意された小道具である。
エピソードを追うごとに、真実が少しずつ明かされていくが、一方で謎は際立って深めていく。果たして、幸福な結末はありえるのか。
絶海の孤島。密室の洋館。典型的だからこそ、難しい。小説コンテストなら、梗概だけで落とされるだろう。それだけに語り口、トリックの巧妙さが求められる。果たして『うみねこのなく頃に』はどこまで健闘するか。
『うみねこのなく頃に』は強烈なキャラクターと異界的雰囲気の孤島が舞台だが、映像の印象は弱い。
奥行きのない平坦な美術。奇怪な感性を強調するキャラクターたちは、背景のどのパース上にいない。実在感のないディティール。色彩は、一切背景と調和していない。
まるで指揮者のいないオーケストラを映像にして見ているようだ。
左は少女漫画に出てくる典型的な表情。観察の力がなく、過去作品の雰囲気だけで描かれているということがよくわかる。この調和のなさが、ビジュアル全体に与える影響は大きい。漫画のイメージを切り貼りしただけでエモーショナルを感じない。
まとまりのない印象は、キャラクターにこそ決定的だ。
そのデザインはあまりにも主張が強く、背景となる世界イメージと何一つ調和していない。原色そのまま塗りたくったような色彩は、主張が強すぎて鮮やかとはいわず、すでに毒々しいというべきであって、正面から見ている眩暈すら感じる。デザインというにはあまりにも統括力のないままアウトプットされている。
作品の表現方法や文法などは、既存の作品イメージから採用され、作品独自の模索は一切に見られない。
キャラクターの設計、演技、表情の作り。どれも過去作品に見られたものばかりだ。
『うみねこのなく頃に』の映像は、すでに版権フリーとなった過去のアニメ作品から表現をコピーして、なんの独創もなく映像を組み立てただけだ。
おそらく、『うみねこのなく頃に』におけるオリジナルの部分は、辛うじて台詞の中に現われるのみだろう。
『うみねこのなく頃』のビジュアルには、作家は存在しないようである。
だから、『うみねこのなく頃に』における作品的興味は、物語の中に、あるいはミステリとしての謎解きに集中される。
『うみねこのなく頃に』は、果たしてどんな過程を経て、どんな結末を迎えるのか。
確実に言って、すでに作者の頭脳の中には、謎を解くすべての構造が描かれているはずだ。
我々は大人しく、作者が仕掛けるゲームに挑戦し、純粋な対決者としてミステリを楽しむべきだろう。
作品データ
監督:今千秋 原作:竜騎士07/07th Expansion
キャラクターデザイン:菊池洋子 総作画監督:番由紀子 菊池洋子
美術監督:東潤一 色彩設計:北爪英子 編集:松村正宏
シリーズ構成:川瀬敏文 音響監督:郷田ほづみ
アニメーション制作:スタジオディーン
出演:小野大輔 井上麻里奈 堀江由衣 鈴村健一
小杉十郎太 篠原恵美 伊藤美紀 広瀬正志
小山力也 田中敦子 小清水亜美 麦人
小林ゆう 船木真人 釘宮理恵 上別府仁資
羽鳥靖子 石住昭彦
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