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■2009/07/05 (Sun)
第1話 & 作品解説。

ひたぎクラブ 其の一

高校2年生から高校3年生の狭間である春休みに、僕は彼女に出会った。
それは、衝撃的な出会いであったし、また壊滅的な出会いでもあった。いずれにしても、僕は運が悪かったと思う。
もちろん、僕がその不運をたまたま避けられなかったのと同じような意味で、その風をたまたま避けられていたのだとしても、僕でない他の誰かが同じ目に遭っていたかといえば、多分、それはないだろう。
運が悪かったなどというのは、非常に無責任な物言いであり、僕が悪かったと素直にそういうべきなのかもしれない。結局あれは、僕が僕であるがゆえに起きた、そういう一連の事件だったと思う。
3e5b2bcd.jpg戦場ヶ原ひたぎは、クラスにおいていわゆる病弱な女の子という立ち位置に与えられている。戦場ヶ原とは、1年2年、そして今年三年生と、高校生活、ずっと同じクラスだけれど、僕はあいつが活発に動いている姿を、いまだかつて見たことがない。戦場ヶ原は、いつも教室の隅のほうで、一人、本を読んでいる。
難しそうなハードカバーのときもあれば、読むことによって知的レベルが下がってしまいそうな表紙デザインのコミック本のときもある。
頭は相当にいいようで、学年トップクラス。試験の後に張り出される順位表の最初の10人の中に、戦場ヶ原ひたぎの名前は、必ず記載されている。
友達はいないらしい。一人でも、である。もちろん、だからといってイジメにあっているということでもない。いつだって戦場ヶ原は、そこにいるのが当り前の顔をして、教室の隅で、本を読んでいるのだった。自分の周囲に、壁を作っているようだった。
そこにいるのが当り前で、ここにいいないのが当り前のような、まあ、だからと言ってどういうということもない。
例え3年間クラスが同じなんて数奇な縁があったところで、それで一言も交わさない相手もいたところで、僕はそれを寂しいとは思わない。それでいい。戦場ヶ原も、きっとそれでいいはずだ。そう思っていた。
しかし、そんなある日のことだった。
1860543c.jpgd00a5dfe.jpg例によって、遅刻気味に、僕が校舎の階段を駆け上がっていた。ちょうど踊り場に差し掛かったときに、空から女の子が降ってきた。
僕はとっさに、女の子の体を受け止めよ9e8ebcec.jpgうと、体を動かしていた。よけるより、正しい判断……だっただろう。
いや、間違っていたかもしれない。受け止めた瞬間、いや、受け止めてずっと後になって、そう思った。
なぜなら、彼女は、洒落にならないくらい、不思議なくらい、不気味なくらい、ここにいないように、軽かったからだ。僕の手の中に、彼女はふわりと、降りてきたみたいだった。
そう、彼女、戦場ヶ原には、体重と呼べるものが、まったくといって言いほどなかったのである。
戦場ヶ原の、衝撃を受けた目が、じっと僕を見詰めた。おそらく僕も、同じ目をして彼女を見ていたのだろう。

03b6eb01.jpg放課後、僕は委員長の羽川翼と教室に残っていた。文化祭の出し物について話し合うためだ。副院長の僕は、委員長の仕事につき合わされているわけだ。
僕は、委員長の仕事から逃れるように、「忍野メメさんに呼び出されているんだ」なんて言い訳を作って、席を立った。
鞄を持って教室を出る。そこに、ふらりと誰かの気配が現れた。
932686dc.jpg「羽川さんと、何を話していたの?」
振り向くと彼女、戦場ヶ原がいた。
いきなり、僕の口に鉄の味が一杯に広がった。戦場ヶ原が僕の口に、カッターナイフの刃を突っ込んだからだ。
「動かないで」
df342a5e.jpg戦場ヶ原は冷淡な声で警告した。
僕は了解して、彼女の言うまま、体の動きを止めた。カッターの刃は、僕の右の口に、強く押し当てられていた。
「ああ、違うわ。動いてもいいけど、とても危険よ、というのが正しかったわね」
戦場ヶ原は髪を掻き揚げながら、サディステック的な微笑を浮かべた。
僕は事態を把握した。冗談や脅しではない。こいつは本気だ、と。
「好奇心というのは、まったくゴキブリみたいね。人の触れられたくない秘密ばかりこぞってよってくる。うっとおしくてたまらないわ」
aa1022cf.jpgしかし戦場ヶ原は、それが迷惑というのではなく、むしろそういう場面を楽しんでいるかのような口ぶりだった。
僕は言い返したくなって、塞がれた口で「おい」と言葉を発した。
「何よ。左側が寂しいの? だったらそう言ってくれればいいのに」
右の口に、別の何かが突っ込まれた。ホッチキスだ。刃の部分を、口3a2ef9b8.jpgの内側に押し当てられていた。
「まったく、私も迂闊だったわ。まさか、あんなところに、バナナの皮が落ちているなんて、思いもしなかったわ。気付いているんでしょう。そう。私には重さがない。といっても、まったくないわけではないのよ。私の身長体格だと、平均体重は40キafd7e35d.jpgロ後半強といったところらしいけれど、実際の体重は5キロ。中学校を卒業して、高校に入る前よ。一匹の蟹に出会って、重さを根こそぎ持っていかれたわ。ああ、別に理解しなくていいのよ。これ以上、嗅ぎ回られたら凄く迷惑だから喋っただけ。阿良々木君、阿良々木君、ねえ、阿良々木暦君……」
戦場ヶ原は、ゆっくりと重ねるように僕の名前を呼んだ。
よく喋る女だ。むしろ、知ってほしかったんじゃないか、と思うくらいに。
僕の口の中に、吸い込めなかった唾液で溢れ、鉄の味が口いっぱいに広がってきた。でも、僕は動けない。ぴくりとでも動くわけにはいかなかった。
「さて、私はあなたの秘密を黙ってもらうために、何をすればいいのかしら。私は私のために、何をすべきかしら。口が裂けても喋らないと、阿良々木君に誓ってもらうためには、どうやって口を封じればいいかしら。とにかく、私が欲しいのは、沈黙と無関心。沈黙と無関心を約束してくるなら、2回頷いて頂戴、阿良々木君。それ以外の動作は、停止であれ、敵対行為と見做して、即座に攻撃に移るわ」
141c10ad.jpg僕は彼女に服従して、二度頷いた。
すると戦場ヶ原は、にこりと、信じられないくらい悪意を含んだ微笑を浮かべた。
「そう、ありがとう」
戦場ヶ原は、右の口に当てていたカッターを引き抜いた。カッターの50b14e15.jpg刃を、カチカチと収める。僕は、やっとこのいかれた事態から解放されると思って体から力が抜けた。
だが戦場ヶ原は、僕に微笑みかけて片目を閉じた。
ホッチキスの刃が、僕の口の中に食い込んだ。
僕はその場にうずくまって、右の顔を抑えた。ひどい痛みが、口から顔全体に一気に広がってきた。
「悲鳴を上げないのね。立派だわ。今回はこれで勘弁してあげる」
戦場ヶ原は膝に手を置いて、僕を見下ろした。
「お前……」
僕は恨み言をいってやりたくて、顔を上げた。でもそこで、行為を終えて恍惚とした表情を浮かべる戦場ヶ原の顔にぶつかって、言葉が堰き止められてしまった。
「それじゃ、阿良々木君。明日からはちゃんと私のこと、無視してね。よろしくさん」
戦場ヶ原はそう言い置いて、その場を去ってしまった。
僕は初めて、これまで何とも思わなかった戦場ヶ原という女に、特別な感情を抱いた。悪魔みたいな女だ、と。
やっと最初の衝撃から逃れ、ゆっくり立ち上がった。口の中から、ホッチキスの刃を引き抜く。血の味が口いっぱいに広がる。左の頬を、いたわるように撫でた。
僕は、激しい憤りを感じた。バナナを階段に捨てた、何者かに。
僕は決心した。校内でバナナを食べている人間を、決して許さないと。いや、食べてもいい。そのバナナの皮を、階段なんぞにポイ捨てするような奴がいたら。僕は本気で許さない。
そこまで決意を新たにして、僕は走り出した。廊下を一気に駆け抜け、階段を飛ぶように降りた。
ようやく一階の廊下が迫ったところで、戦場ヶ原に追いついた。
98a6ef42.jpg「あきれたわ。いえ、ここは素直に驚いたというべきね。あれだけのことをされておいて、すぐに反抗精神に立ち上がることができたなんて」
戦場ヶ原が意外そうな顔をして、それから待ってましたというような微笑を浮かべた。
「戦場ヶ原……」
593cb290.jpg僕ははっきり言ってやろう、と口を開いた。
「いいわ。わかった。わかりました。アララギ君。戦争、しましょう」
戦場ヶ原は楽しげに言葉を弾ませた。
その両手に、文房具が溢れ出した。鉛筆やカッターやペンやセロテープ。それらは、ひとつひとつは恐れる必要もない文房具だ。でも1a926f9e.jpg戦場ヶ原がそうやって文房具を手に身構える姿は、例えようもないくらい恐ろしかった。
「違う、違う。戦争しない」
僕は一歩下がった。うっかり間合いに入ったら、殺されそうだ。
「しないの? なーんだ。じゃあ、何の用よ」
5edfc1a3.jpg戦場ヶ原はおもちゃを取り上げられた子供のように残念そうにした。
「ひょっとしたらなんだけど、お前の力になれるかもしれない、と思って」
「力に? ……ふざけないで。あなたに何ができるって言うのよ。黙って気を払わないでいてくれたら、それでいいの。優しさも、敵対行為と見做すわよ」
むしろ戦場ヶ原は瞳を怒りに燃やし、僕をにらみつけて一歩、階段を上がった。
これ以上うっかりしたことを言うと、また地雷を踏みつけてしまいそうだった。
僕は、口に指を突っ込んで、左の口を裏返して見せた。
はじめて、戦場ヶ原の顔に、衝撃が浮かんだ。そこに、ホッチキスの傷跡がなかったからだ。
「傷が……ない。あなたは、それって、どういう?」
饒舌な戦場ヶ原も、さすがに言葉が見付からないようだった。
「僕は吸血鬼だったんだ。もと、吸血鬼。だからこれは、不死身だったときの名残なんだ」
彼女が秘密を明かしてくれた代わりに、僕も自分の秘密を明かした。

『化物語』のイメージは、かつてない特別な後味を残す。
幾何学的なイメージが覆う映像。トーンを重ねられた色彩。独特のコントラスト。明朝体の文字の羅列。テキストのみの画像。
なにもかもが、この作家でしかありえない、この作品でしかありえない、独創的な印象を描き出している。
aac2a381.jpgaca05df8.jpg5a0cdb78.jpg




『化物語』においては、あらゆるものがデザインの素材でしかない。あらゆるものがデザインの感性に合わせて解体され、独自の方法で再構築されていく。
アニメキャラクターもその例外ではない。
『化物語』のキャラクターたちは、徹底して動きを持たない。全ての動作は、決定的な瞬間を維持したまま静止し、指先の一本に至るまで、その瞬間の緊張で引き攣っている。
要所要所に配される動画は、むしろ静止した瞬間を強調している。
いやむしろ、動かないのはテレビアニメーションというジャンル自体である。
作業的、あるいは予算的理由により、テレビアニメーションの動きは徹底的に抑制され、動かせない故に、いかに動いた印象を与えられるか。日本のテレビアニメージョンはその黎明期以来、その演出手法の模索に腐心してきた。
テレビアニメーションの動きのほとんどが、クロースアップの目パチと口パクだけで終る。それがキャラクターを中心に置き、実在感を炙り出すための、最も簡単で、マニュアル的な手法だからだ。とりあえず止めの絵に、目パチと口パクだけ描いていればとりあえずの生命観がそこに現れて見えるからだ。
だが新房昭之監督の映像は、徹底的にキャラクターは動かない。むしろ動かさないことを、演出的な信条としている。
f8c0cbe7.jpgアニメのパロディも採用されるのが新房昭之監督の特徴だ。だが、パロディもそれ自体が目的ではなく、あくまでも断片化されて、素材として物語世界の一部として描かれる。



b160ecb9.jpgアニメキャラクターは動かさない、というルールの上で、キャラクターたちは徹底的に切り刻まれ、解体され、意識的な再構築を試みられている。
人物は断片にまで解体され、背景の幾何学模様と一体となり、あるいは色彩に埋没する。
キャラクターなどただの線の集まりでしかない、というd61fb76d.jpg新房昭之の言葉が聞こえてきそうだ。
アニメキャラクターはカットという言葉どおり、構図の中で分解され、作家のデザイン的な世界の中に埋没する。一方でコピー&ペーストされて、新たなイメージの素材にされていく。
一方で、デザイン世界がカットの全体が覆う中で、切り刻まれたアニメキャラクターは何ともいえない官能を匂わせ始める。切り刻まれたキャラクターの身体の印象は、むしろSM的なフェテッシュな感覚を増大させ、バイオレンスで溢れる『化物語』の中に鮮烈なエロティシズムを漂わせ始めている。
5dbedfed.jpgキャラクターは動かないが、カメラは動く。キャラクターを動かすのではなく、映像イメージを動かしていく感じだ。のパンモロカットは、作家の意思意図云々は別として、ここは素直においしく頂こう。あちらも勝負パンツだし。


『化物語』の映像イメージは、ディティールで埋め尽くされる昨今のアニメーションと逆行するように、むしろディティールが剥離されていく。
キャラクターは立体と実在を失ってただの線画というレベルにまで解体されるし、風景から色彩が省かれていく。リアリズムの作家が追求する全てが、映像から間引かれていく。
その代わりに代入されているのが、説明的な明朝体の文字だ。
その文字の羅列も、高密度アニメーションのようにディティールを補強する効果を与えていない。むしろ、それは意図されていない。
6c159b81.jpg冒頭の場面。赤い色が点々と広がっていくシーン。赤の点の一つ一つに、「血」の文字が当てはめられていく。ただの色彩に過ぎず、何であるかわからないそれに、それが「血」であることを解説するかのように、「血」の文字が与えられている。
映像から説明的なディティールを剥ぎ取る代わりに、明朝体の文字で直接解説を試みているのだ。
だが、羅列される文字のほとんどが、現代においては馴染みの薄い、おそらくほとんどの人が判別不明であろう旧字体である。
むしろこれは、読めないことを意図している。だが、なんとなくぼんやりと理解できる。ディティールの洪水のように作られたアニメが意図するのは、ディティールの洪水を「無意識」の領域で受け止めさせるためだ。判読不明の旧字体の羅列も、意図としては同じだ。シンプルなシルエットラインに置かれた文字の洪水を「無意識」の領域で受け止めさせようとする。そうして、ひとつの密度を持った映像として、作品が補完されている。
392be5df.jpg0eb7e23b.jpg時折挿入されるバイオレンスは、モノクロ映画におけるパートカラーようなビビッとな印象を与える。断片的だが、直裁的に見せるより、衝撃力は強い。左は実写で作られたカット。「アホ毛」に注目したい。
ほとんどのユーザーは、映像に描かれているものがなんだかわからいまま、強引な勢いで作品世界に引き込まれていく。
通常の映像体験での感覚をぼろぼろに狂わせて、まったく新たな様式美の世界が生まれようとしている。これは、新たな形式のアニメーションであり、作家個人の感性そのものが刻印されたアニメーションだ。
鑑賞後、一つのデザイン帖を見終えたかのような、贅沢な後味を残す作品だ。



作品データ
監督:新房昭之 原作:西尾維新
キャラクター原案:VOFAN キャラクターデザイン・総作画監督:渡辺明夫
シリーズディレクター:尾石達也 ビジュアルディレクター:武内宣之
美術監督:飯島寿治 色彩設定:滝沢いづみ ビジュアルエフェクト:酒井 基
音楽:神前 暁 音響監督:鶴岡陽太
撮影監督:江藤慎一郎 編集:松原理恵
アニメーション制作:シャフト
出演:神谷浩史 斎藤千和 加藤英美里 沢城みゆき
   花澤香菜 堀江由衣 櫻井孝宏 喜多村英梨
   井口裕香



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