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■2016/03/30 (Wed)
創作小説■
第10章 クロースの軍団
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17
間もなく夜明けだった。しばらく降り続いた雨はようやくやみ、辺りは朝日を目前にした青い輝きに包まれる。ソフィー達の部隊が砦に辿り着く頃には、砦は敵の猛攻撃に押し込まれているところだった。敵兵が長城の内側になだれ込んで、あちこちで戦闘が始まっていた。砦はもはや防壁として機能していない。塔に、敵の旗が翻ようとしていた。砦の陥落は間もなくだった。
兵士
「……ソフィー様」
ソフィーに従いて来た騎士達が絶句した。あそこに入り込むにはあまりにも戦闘が激しく、無謀のようにも思えた。
しかし美しき乙女の横顔に、恐れなど微塵もなく、むしろ凜とした勇ましさを際立たせていた。
ソフィー
「もののふ達よ、今こそ踏ん張る時です。自ら炎の衣をまといましょう。彼らの勇気に応えるために!」
ソフィーが先頭に立って、修羅に飛び込んでいった。騎士達がソフィーに遅れまいと勇気を振り絞ってそれに続いた。
戦場の兵士達は思いもしない援軍に、歓声を上げた。美しき乙女を筆頭にした騎士団は、疾風の如く砦の中を駆け抜け、混乱を浄化するように砦の中の敵を薙ぎ払った。その数は圧倒的だったが、劣勢一方であった仲間達には心強く、にわかに形勢は変わろうとしていた。
攻められるままであった砦は、防壁としての役割を取り戻そうとしていた。迫り来る敵を縁で払い落とす。登ってくる兵士を槍で突き、長梯子を倒し、矢で射落とした。砦の内部に残る戦いも、騎士達の疾風のごとき刃で次々と鎮静化していく。
ドルイドの乙女の援軍に、ガラティアの軍団は3日に及ぶ徹夜の疲労を忘れ、勢いを取り戻していた。
ソフィー
「オーク様……オーク様」
ソフィーはオークが長城の縁で敵と刃を交えているのを見付けて、助けに向かおうとした。
しかし、目の前を敵が遮った。刃が馬を襲った。馬が跳ね上がり、地面に放り出される。一瞬、気を失ってしまった。
はっと目を覚ます。すると敵のとどめの刃が目の前に迫っていた。
ソフィーはとっさに杖を突きだした。だが杖は魔力を宿さない。
絶体絶命――。その刹那、敵兵がゆっくり膝をついて倒れた。
兵士
「ソフィー様、ご無事ですか」
その背後から兵士が現れた。兵士は敵の背中から剣を抜き取ると、ソフィーの手を掴んで起こさせた。
ソフィー
「ええ、ありがとう」
ソフィーは立ち上がると、オークのいる場所を見上げた。だが、そこまでの道のりは長く、あちこちで繰り広げられる戦闘が激しく、とても行けそうになかった。
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