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■2016/03/20 (Sun)
創作小説■
第10章 クロースの軍団
前回を読む
12
昼を過ぎると、雨が降ってきた。再び始まった矢の応酬のほうが圧倒的に凄まじく、鋭い雨滴の嵐が、砦に降り注いでいるようだった。ティーノ
「奴らめ、なかなかしぶとい連中だ」
ジオーレ
「こんなものさ。容易に破れるとは思っていない。それとも、また臆病風かね」
ティーノ
「ななな、何を言うか!」
ジオーレ
「私が指示したものはまだ届かぬのか」
僧侶
「昨日から連絡が途絶えたきり、何も報告がありません」
ジオーレ
「やはり野蛮人だな。報告すらろくにできんとは。穢れた血の民が、言葉を使うべきではない。獣は獣らしく、森に引っ込んでいればいいのだ」
クロース軍の歩兵は、防壁の手前まで迫っていた。長槍で兵士で突き、防壁に長梯子をかけようとしていた。
ガラティア軍は、登ってくる敵に、刃の一撃を食らわせ、梯子を押し倒し、その上に矢と油を注いだ。
しかしクロース軍の勢いは止められなかった。次第に敵の侵入を許すようになり、砦内に戦闘の火が移り始めた。壁の周囲はすでにクロース軍に包囲されていた。
オーク達は防戦一方の状況が続いたが、果敢に戦い、迫る敵を払い落とした。
やがて夕暮れの光が射し始める。
突然、クロース軍右翼側の森が2つに分かれた。その向こうからアステリクスを先頭とする騎馬が突撃した。
アステリクス
「我が王のために!」
横殴りの奇襲に、クロース軍はにわかに混乱した。アステリクスは群がる敵を蹴り倒し、刃でなぎ払い、去り際に火を放った。
草原に炎が噴き上がった。業火が立ち上がってクロース軍の歩兵を焼く。草原に油を染み込ませていたのだ。
炎は激しく渦を巻き、クロース軍の勢力を分断させた。
オーク
「攻めろ! 攻めろ!」
形勢逆転。オークを先頭に、歩兵達が敵陣に突っ込んだ。
炎を前に混乱状態になったクロース歩兵は、オーク達の攻撃に応じきれず、次々に刃の前に倒れた。
勢い付いたオーク達はさらに炎を飛び越えた。敵の本陣へと突っ込んでいく。騎馬も戦車も自由に動けない密集状態に、オークたちの兵士が圧倒した。
ジオーレ
「おのれ、パガンめ……」
見るからに形成は逆転した。ガラティアの歩兵が、クロース軍を切り崩して進んでくる。
ジオーレは自ら混乱の只中に飛び込んでいった。右手の剣で敵を薙ぎ払い、左手の杖で呪文を唱えた。すると、雨雲が雷を放った。雷が彼らのシンボルである十字架の上に落ちる。雨がざっと勢いをつけて降り始め、炎はたちどころに勢いを失ってしまった。
兵士
「……馬鹿な」
しかしジオーレは不敵に笑った。
ジオーレ
「神に不可能はない」
クロース軍は再び勢いを取り戻した。
※パガン 「異教徒」という意味。
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