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■2016/03/04 (Fri)
創作小説■
第10章 クロースの軍団
前回を読む
4
リュタンの住み処を出て、東へ向かった。現在地の確認はできなかったが、東に歩き続け、海が見えてくれば現在地が掴めるはずだった。歩き続けるが、行く先は平原ばかりで民家の影すらない。雨はゆるく降り続け、風景を灰色に濁らせていた。
旅は順調に進まなかった。食糧も道具も何もかも置いてきたので、道すがら必要なものを自身の手で作り、食事は木の実などを見付けては少し食べた。
オークとソフィーは茫漠とした平原を、休む間も寝る間も惜しんで歩き続けた。
旅はやがて5日目に入った。ふと向こうの丘を越えたところから、何か音がする。オークとソフィーは身を潜ませて、丘の向こう側を覗き込んだ。
するとそこに、敵の軍隊があった。敵の軍隊は白銀の鎖帷子で身を多い、粛々と行進している。指揮しているのは、胸に赤い十字を入れた神官達であった。
大軍勢だった。列は長く続き、ちょっと見ただけでも1万人。いや、もっといるかもしれない。それだけの軍勢が、おそらく王城であろう方向へ進んでいた。
ソフィー
「あれはいったい……」
オーク
「なんてことだ。王に知らせねば……。彼らより先に、城に辿り着かねばなりません」
オークは敵に見付からないように、そこを離れた。
オークとソフィーは身を潜めながら、敵の軍団に寄り添うように進んだ。
やがて夜になり、軍団が野営を始めた。焚き火を燃やし、食事を始めてくつろいだ様子になりはじめた。人家のない平原であるせいか、見張りもほとんど立てていない。
オークは頃合いを見計らって、軍団に近付いた。ソフィーは少し離れたところで、オークを見守った。オークは茂みと暗闇に身を潜めて、ゆっくりと近付く。
見張りが気付いた様子はない。オークは単独で接近すると、一瞬のうちに見張りの体に取りついた。素早く喉許を掻き切る。
兵士
「うぅ……」
兵士の呻く声が漏れる。
くつろいでいた兵士が何かに気付いたように顔を上げた。
オークは身を潜めて、別の場所へと移った。
ソフィーも茂みの中から這い出た。馬が留められている場所へと向かう。誰にも気付かれていない。ソフィーは慎重に辺りを見回しながら、馬を2頭選び、そこから離れようとした。
そうしている間に、何か不審めいたものを感じた兵士が近付いてきた。茂みの中を松明で照らし、ようやく死体が転がっているのに気付いた。
兵士
「誰かいるぞ! 泥棒だ!」
オークはソフィーの許へ走った。馬に飛び乗ると、すぐに走った。
兵士達の間に緊張が広がった。兵士達が武器を手に駆けつけてきた。矢の攻撃がオークを狙う。
兵士
「馬泥棒だ! 馬泥棒だ!」
兵士達が叫んでいる。
騎馬兵が追いかけてきた。だがオーク達のほうが早かったし、地の利があった。オーク達は夜の茂みの中を突っ切り、あっという間に追っ手を振り払ってしまった。
それでもオークとソフィーは、しばらく草原を走り続けた。敵の軍団からだいぶ離れたところで、少し馬の速度を落とした。
オーク
「城へ急ぎますよ」
ソフィー
「はい」
オークは馬を走らせた。
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