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■2016/02/08 (Mon)
第6章 フェイク

前回を読む

 ツグミはEOSを片手に持ち、画廊を飛び出した。杖をつきながら、全速力でコンビニを目指した。
 日が暮れると、兵庫区の町並みは急速に静まりかえっていく。家々の明かりが、点々と真っ黒なアスファルトに落ちていた。
 時々、賑やかなテレビの音が漏れ聞こえてきた。どこの家庭もそろそろテレビでも見ながら夕食の時間だ。
 ツグミは走りながら、ちらちらと辺りを見回した。はあはあと喘ぐ自分の呼吸が、ひどく浮かび上がって聞こえてくる。
 そこはツグミがよく知っている、いつも歩いている通りだった。なのに、その瞬間だけは何もかもが奇怪に歪んでいるように思えてしまった。知らないどこかに迷い込んだような気がした。
 間もなくコンビニの明かりが見えてきた。広々とした駐車場の向こうに、平坦な四角の建物がちょこんとと建っている。わずかな青を滲ませた闇の下で、コンビニは相変わらずの白色灯の光で満たされていた。
 ツグミはそんなコンビニの明かりの前に来て、ようやく少しほっとするような気持ちになれた。どんな非日常が迫っても、あの周辺だけはいかなる異変のない日常を堅牢に守っているように思えた。
 夕食前のピーク時間を過ぎているので、コンビニ内に客の姿はまばらだった。搬入用トラックが横付けされている。バイトが慌ただしく働いていた。
 ツグミは駐車場を横切って、店舗脇に置かれている公衆電話の前へ進むと、EOSを電話機の上に置き、受話器を手に取った。受話器を握りながら、急に疲れが来たみたいになって、杖に寄りかかった。
 ここまで来るのに、多分5分くらいだ。でも今日の分の体力を全部使い切ってしまった。普段の運動不足の皺寄せが、こんなところに出るとは思いもしなかった。
 ツグミはちょっとかがみ込むようにして、受話器を持った手で胸を押さえる。心臓がトクトクと早瀬のように流れていて苦しかった。
 やっと呼吸を整えると、迷わず緊急ボタンを押し、110番を押した。
「はい。兵庫県警本部です。何かありましたか」
 オペレーターは若い女の声だった。はきはきとしていて、某教育番組の“お姉さん”みたいな印象だった。
「あ、その、人が、私の、えっと……」
 あれ? えっと……。
 ツグミの頭に言葉がどっと溢れてきて、自分でも何を言っているのかわからなかった。自分の混乱した言葉に、さらに混乱してしまう。
「落ち着いてください。ゆっくり、ゆっくり。息を吸って、吐いて……。それでは、もう一度お願いします」
 オペレーターははきはきとしたお姉さんの印象を少しも崩さず、見事な手練を披露した。
「はい。あの……私の姉が連れ去られました」
 ツグミはオペレーターの調子に釣られるように、さらりと言葉が出た。そう言ってから、自分の言葉に軽く驚いてしまった。
「誘拐事件ですね。犯人を目撃しましたか」
 重大事件なのに関わらず、オペレーターは“お姉さん”的イメージを少しも崩さなかった。
「はい。いえ、あの、目撃はしなかったけど、犯人は宮川大河という男に間違いありません! あの、私、えっと……」
 ツグミはうまく言葉を捉えられず、捲し立てるように言葉を並べるが、するとかえってもどかしい気持ちになってしまった。
「わかりました。すぐに巡回中のパトカーに指令を出します。あなたのお名前と、住所をお願いします」
 まるで何かの司会進行の調子で、オペレーターのお姉さんは話を進める。
「はい。私、妻鳥ツグミと言います。住所は兵庫区の……」
 ツグミもお姉さんの調子にうまく乗せられるみたいに、読み上げるみたいに自分の住所を伝えた。
 電話はもうしばらく続いた。事件が起きたのはいつか。ツグミは事件の時、何をしていたのか。自宅電話の状況はどうなっているのか。ツグミの今の服装。犯人から身代金の要求などはあったのか……などなど。
「状況はわかりました。それでは、すぐにパトカーが到着しますので、受話器を置いて、そのまま現在地でお待ちください」
 オペレーターは最後まで“お姉さん”的な調子だった。
「はい、お願いします」
 ツグミはなんだか順路通りに歩かされたみたいな、変な気持ちになりながら、見えざる相手にお辞儀をして、それから受話器を置いた。

次回を読む

目次

※ 物語中に登場する美術家、美術作品、美術用語はすべて空想のものです

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