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■2016/01/04 (Mon)
創作小説■
第7章 王国炎上
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16
バン・シー「ナヴァン、無事か!」
バン・シーは思わず王を昔の名前で呼んで駆け寄った。
王
「バン・シーか。そなたが死神に見えたぞ」
バン・シー
「私は死神を欺いてきた人間だ。まだ死ぬな。――何をしている! 早く王を連れて行け!」
恐怖でまごついている女官に怒鳴りつけた。
とそこに気配がした。振り向くと悪魔がそこに立ちはだかっていた。
悪魔は先の一撃で横顔を歪ませ、バン・シーを憎しみのこもった目で睨み付けた。
バン・シーも憎しみを込めて悪魔を睨み付ける。
悪魔は口の中に炎を溜めた。全身の毛を逆立てさせ、口元の炎が大きく燃え上がった。 バン・シーも両掌に、魔法の光を輝かせた。
次の瞬間。炎と魔法が炸裂した。
激しいぶつかりあいだった。爆音が周囲に衝撃を走らせる。火の粉が派手に噴き上がった。
火の粉を割いて、光が走った。光の鞭が、悪魔の体を叩きつける。聖剣しか通じないはずの強靱な体が引き裂かれ、そこからどろりと血が垂れた。
手負いの悪魔はさらなる怒りに震えながら、魔術師を睨み付けた。
バン・シーも怒りでは負けていなかった。次なる一撃の備えて、呪文の詠唱を始めた。掌に雷の珠を浮かばせた。
その時だ。
セシル
「悪魔め! こっちだ!」
思いがけず声がした。振り向くと、城のバルコニーにセシルがいた。鎧すら身につけず、手には聖剣ゲー・ボルグがあった。魔を引きつけ、討つための聖剣だ。
バン・シー
「よせ! 無茶だ!」
しかし何者もそれを留められなかった。
悪魔はゲー・ボルグに引き寄せられるように、王子に標的を変えた。バン・シーは悪魔を引き留めようと光の珠を放った。が、とっさに放った攻撃は弱く、悪魔を引き留めるには至らなかった。
◇
街は炎に包まれ、魔の者に蹂躙されていた。全住民が戦いに無関係ではいられない混乱が広がっていた。
そんな最中、ソフィーの呪文は続いていた。街中に光の輪が次々と現れ、誰もがソフィーの詠唱を耳にした。
ソフィーの周囲にはいくつもの光の輪が浮かび、それはゆっくりと持ち上がってソフィーの頭上で折り重なって、複雑な図形を描き始めた。
しかし、かの防衛線もついに突き崩されてしまった。ネフィリムたちはバリケードを越えて、一気になだれ込んできた。
オークはそれでも踏みとどまって、通り過ぎようとするオークを斬りつけた。兵士達も戦い続けた。
オーク
「戦え! これ以上は一歩も退くな! ケルトの勇気と意地を見せろ!」
オークの檄が飛んだ。兵士達は最後の戦いに挑んでいた。
ネフィリムたちはソフィーを標的に定めた。オークはソフィーを守ろうと戦う。だが全ての刃を防げず、切っ先がソフィーの衣を引き裂いた。
しかしソフィーは、自身が斬られていると気付いていないみたいに、呪文を一呼吸も留めず詠唱を続けた。
◇
悪魔はセシルに近付き、捕まえようと手を伸ばした。セシルはそれをかわし、悪魔の体に飛びついた。悪魔はセシルを振り落とそうと、体を大きく揺り動かした。セシルは悪魔の体毛にしっかりしがみつき、ゲー・ボルグを振り上げ、悪魔の頭に突き立てた。
悪魔は痛みにのたうって、大階段を転げ落ちた。セシルは投げ出され、そのまま気を失った。
悪魔はすぐに起き上がり、セシルを探した。
セシルは悪魔の側で倒れ、気を失っていた。
悪魔は拳を振り上げた。セシルは目を覚ました。だが体に力が入らず、ぼんやりと悪魔の巨大な拳を見上げていた。
間一髪。兵士が飛びついて、セシルを救い出した。悪魔の一撃は、セシルの足下に落ちていたゲー・ボルグに命中した。聖剣の刃はその衝撃に砕け散ってしまった。
バン・シー
「セシル!」
バン・シーは何かを投げ渡した。セシルは考えるより先に、それを受け取った。聖剣ダーンウィンだった。
悪魔が振り返った。セシルも悪魔と対峙した。両者の目線が、炎の中で交叉した。
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