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■2010/01/02 (Sat)
映画:外国映画■
ベンは、ハリウッドの脚本家だったが、アルコール中毒のために仕事を失った。
友人もいない。頼りになる人もいない。妻も失った。
ベンは人生の終わりを感じていた。
酒に溺れて、酒を手放せなくなっていた。
現実の感覚が、ぐらぐらと歪む。人生の終わりかもしれない。
ベンは家中のものを焼き払い、残ったお金を持って、ラスベガスに向かった。
夢のなかで、人生を終わらせるために。
ラスベガスの通りで、ベンは娼婦のセーラに声をかけた。
俺の部屋にきてくれたら、1時間で500ドル上げよう。
しかしベンは、セーラとの性的快楽を望んでいなかった。
ただ側にいて、話をして欲しい。側にいて、静かに眠って欲しい。
翌日の朝、セーラはベンの部屋を後にする。
セーラは、ベンとの関係はそれきりで終わりにするつもりだった。あの感情は、一夜限りのものだ、と考えていた。
だが、セーラはどうしてもベンを忘れられない。
気付けばベンの姿を探して、ラスベガスの街を歩いていた。
映画の構成は少し変わっている。時間軸に乱れがあるし、オープニングタイトルは15分を過ぎてからだ。ベンの状況をすっかり説明し終えてやっとタイトルだ。タイトル以後は、説明的な台詞や描写はなくなり、心情だけが描かれていく。
ベンは物語のはじめから心を病んでいた。いつも落ち着きがなく、手が震え、酒ばかり求めている。
周囲はベンを遠ざけようとしている。いつも通っているバーのマスターから出入りを禁止され、アルコール中毒のために職場を追い出される。
ベンは自身の死と、人生の終わりを感じていた。
ベンはすべての人間との関わりをすてて、孤独を望み、放蕩の限りを尽くす。
多くの人にとって、死は逃げるものであり、死に追いつかれたときが人生の終わりだ。
死を漂わせる人間を、誰も望まない。
だがベンは、自ら進んで死に向かっていく。
サラ役のエリザベス・シューはかつて『バック・トゥ・ザ・フューチャー』などに出演していた女優。美人だがなぜかあまり注目されない。いまだに知る人ぞ知る女優である。
セーラは死にいこうとするベンに、どこかで共鳴しあうものを感じていた。
セーラも、人生の行き詰まりを感じていた。
ハリウッドでの失敗。ボスであるユリの狂気。
セーラも、自分の人生は終わりかもしれないと予感していた。
一方のベンは、セーラよりずっと深い場所にいる。ずっと暗い場所に。セーラより一歩も二歩も進んだ場所に、ベンはいる。
セーラがベンの死を見守ろうとしたのは、ベンに自身を見出したからかもしれない。
死に魅入られ、誰からも歓迎されないベン。大きな躓きを経験したセーラ。ベンとはどこかで通じ合うものがあったのだろう。孤独な2人……。世界はやがて2人を見放すように遠ざかっていく。
セーラはベンを死から救い出そうとしない。ただ静かに見守るだけだ。最初の約束の通り、死の淵を渡っていくベンを見届ける。
ベンの現実は、おぼろげに霞んでいく。
何もかもが夢の中。ラスベガスの煌くネオンサイトも、ベンの目には残像しか映らない。
あの世なのか、この世なのかもわからない。
すべての境界が取り払われ、その向うに真っ暗な“無”が押し迫ってくる。
ベンが死を間際にしたときに、セーラはやってくる。
君は天使か?
僕の妄想か?
男の死を、女は静かに見守り、連れ去っていく。
映画記事一覧
作品データ
監督・音楽・脚本:マイク・フィギス
原作:ジョン・オブライエン
出演:ニコラス・ケイジ エリザベス・シュー
〇 ジュリアン・サンズ リチャード・ルイス
〇 スティーヴン・ウェバー ヴァレリア・ゴリノ
〇 ローリー・メトカーフ ジュリアン・レノン
第68回アカデミー賞主演男優賞受賞
友人もいない。頼りになる人もいない。妻も失った。
ベンは人生の終わりを感じていた。
酒に溺れて、酒を手放せなくなっていた。
現実の感覚が、ぐらぐらと歪む。人生の終わりかもしれない。
ベンは家中のものを焼き払い、残ったお金を持って、ラスベガスに向かった。
夢のなかで、人生を終わらせるために。
ラスベガスの通りで、ベンは娼婦のセーラに声をかけた。
俺の部屋にきてくれたら、1時間で500ドル上げよう。
しかしベンは、セーラとの性的快楽を望んでいなかった。
ただ側にいて、話をして欲しい。側にいて、静かに眠って欲しい。
翌日の朝、セーラはベンの部屋を後にする。
セーラは、ベンとの関係はそれきりで終わりにするつもりだった。あの感情は、一夜限りのものだ、と考えていた。
だが、セーラはどうしてもベンを忘れられない。
気付けばベンの姿を探して、ラスベガスの街を歩いていた。
映画の構成は少し変わっている。時間軸に乱れがあるし、オープニングタイトルは15分を過ぎてからだ。ベンの状況をすっかり説明し終えてやっとタイトルだ。タイトル以後は、説明的な台詞や描写はなくなり、心情だけが描かれていく。
ベンは物語のはじめから心を病んでいた。いつも落ち着きがなく、手が震え、酒ばかり求めている。
周囲はベンを遠ざけようとしている。いつも通っているバーのマスターから出入りを禁止され、アルコール中毒のために職場を追い出される。
ベンは自身の死と、人生の終わりを感じていた。
ベンはすべての人間との関わりをすてて、孤独を望み、放蕩の限りを尽くす。
多くの人にとって、死は逃げるものであり、死に追いつかれたときが人生の終わりだ。
死を漂わせる人間を、誰も望まない。
だがベンは、自ら進んで死に向かっていく。
サラ役のエリザベス・シューはかつて『バック・トゥ・ザ・フューチャー』などに出演していた女優。美人だがなぜかあまり注目されない。いまだに知る人ぞ知る女優である。
セーラは死にいこうとするベンに、どこかで共鳴しあうものを感じていた。
セーラも、人生の行き詰まりを感じていた。
ハリウッドでの失敗。ボスであるユリの狂気。
セーラも、自分の人生は終わりかもしれないと予感していた。
一方のベンは、セーラよりずっと深い場所にいる。ずっと暗い場所に。セーラより一歩も二歩も進んだ場所に、ベンはいる。
セーラがベンの死を見守ろうとしたのは、ベンに自身を見出したからかもしれない。
死に魅入られ、誰からも歓迎されないベン。大きな躓きを経験したセーラ。ベンとはどこかで通じ合うものがあったのだろう。孤独な2人……。世界はやがて2人を見放すように遠ざかっていく。
セーラはベンを死から救い出そうとしない。ただ静かに見守るだけだ。最初の約束の通り、死の淵を渡っていくベンを見届ける。
ベンの現実は、おぼろげに霞んでいく。
何もかもが夢の中。ラスベガスの煌くネオンサイトも、ベンの目には残像しか映らない。
あの世なのか、この世なのかもわからない。
すべての境界が取り払われ、その向うに真っ暗な“無”が押し迫ってくる。
ベンが死を間際にしたときに、セーラはやってくる。
君は天使か?
僕の妄想か?
男の死を、女は静かに見守り、連れ去っていく。
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作品データ
監督・音楽・脚本:マイク・フィギス
原作:ジョン・オブライエン
出演:ニコラス・ケイジ エリザベス・シュー
〇 ジュリアン・サンズ リチャード・ルイス
〇 スティーヴン・ウェバー ヴァレリア・ゴリノ
〇 ローリー・メトカーフ ジュリアン・レノン
第68回アカデミー賞主演男優賞受賞
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