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■2010/01/01 (Fri)
映画:外国映画■
子供の頃よく空想遊びをした。
町の外れに人知れず建っている廃墟。窓が破られ、壁紙はボロボロに剥がれ、ゴミと埃ばかり降り積っているのに、不自然に椅子とテーブルだけが残されている。人々はまるであの建物に気付いていないように通り過ぎていく。
暗く荒んだ風景。近付いて覗き込んでみると、表通りの喧騒が一気に遠のき、沈黙が漂っている。でもよく耳を澄ませていると、そこには間違いなく何者かの気配がある。
『スパイダーウィックの謎』の物語は、ある一家が古い屋敷に引っ越してくる場面から始まる。
主人公である少年はジャレッド。双子の弟サイモンがいる。母親ヘレンに強い猜疑心と反抗心を抱いている。なぜ母は父と別れてしまったのか。どうしてこんな見知らぬ場所に引っ越してこなければならないのか。
少年は突きつけられている“今”を受け入れられなかった。
屋敷の生活に馴染みかけた頃、物置に何かが潜んでいるのに気付く。少年ジャレッドは冒険心と好奇心を輝かせて、その何かに目を凝らそうとする。
屋敷には秘密が隠されていた。
それは祖父が描き、隠した謎の書物『妖精観察図鑑』だった。この『妖精観察図鑑』が悪しきオーガーたちの手に渡ると、世界が終ってしまう。
ジャレッドとサイモン兄弟は、『妖精観察図館』を守るために戦いを決意する。
美しい自然の光景やおばあちゃんの昔語りなどは、空想の世界の原点であり、イメージの補強に最適である。
空想の世界は、いつも無口で社会に溶け込めない少年の心の中にある。いや、そういったはぐれものの少年だけが、社会の狭間にある何かと結びつき、空想世界の創作者になれるのだ。
少年が空想世界を作り出すのは現実逃避のため。あるいは現実世界を再構築し、社会性を取り戻すためだ。
だから少年が空想世界に立ち入る切っ掛けは、いつも愛を失った時だ。ジャレッド少年は空想世界を飛びぬけて、愛する者を失った事実を受け入れていく。
子供と大人は物事を同じように捉えているわけではない。子供には子供独自の思考とイメージで世界というものを捉えている。むしろ大人たちがなぜ考えもなしに社会を絶対のものとして共有できるのか不思議でならない。
『スパイダーウィックの謎』は「ごっこ遊び」の映画だ。
あの影には魔物が潜んでいる。あの屋敷には幽霊が支配している。魔物や幽霊は少年の空想の中で、無限の冒険世界の舞台を提供する。古い屋敷は、そうした空想世界を生み出すのに格好の場所だ。
「あのサークルの中は安全地帯だ」
「怪物の弱点はトマトソースなんだ」
大人にはわからない。子供たちだけでルールを作り、子供たちの間で育まれていく世界。空想世界の原理は少しずつ現実世界へと接近し、結びつき、最後には1つに世界として共有されていく。
そうなると大抵の場合、空想遊びはおしまいだ。空想世界はいつの間にか消えていて、思い出になっている。『スパイダーウィックの謎』は思い出となって消えかけた子供の感情を呼び起こしてくれる。あの時、子供だった私たちがどのように考えたか。暗がりに魔物の姿を見つけ、特別のルールを作り、最後には恐るべき呪いに対し英雄のごとく立ち向かった。
なにもかも、オママゴトのように作り出した仮定の世界に過ぎない。だが『スパイダーウィックの謎』に接した時、ふと思いはあの時の子供の頃に戻っている自分に気付かされる。
とにかく楽しい映画だ。
大人は子供時代の感性を呼び起こすだろうし、子供たちは自分たちの空想遊びを補強するだろう。
登場する怪物たちは決して恐ろしくない。怪物オーガーすら、まるまるしていてユーモラスだ。
子供たちは映画が終った後でも、現実世界に映画の続きを見るだろう。
「あの廃墟にはブラウニーが住んでいるんだ」と。
監督:マーク・ウォーターズ
原作:ホリー・ブラック トニー・ディテルリッジ
音楽:ジェームズ・ホーナー
脚本:キャリー・カークパトリック デヴィッド・バレンバウム ジョン・セイルズ
出演:フレディ・ハイモア サラ・ボルジャー
〇 メアリー=ルイーズ・パーカー ニック・ノルティ
〇 ジョーン・プロウライト デヴィッド・ストラザーン
町の外れに人知れず建っている廃墟。窓が破られ、壁紙はボロボロに剥がれ、ゴミと埃ばかり降り積っているのに、不自然に椅子とテーブルだけが残されている。人々はまるであの建物に気付いていないように通り過ぎていく。
暗く荒んだ風景。近付いて覗き込んでみると、表通りの喧騒が一気に遠のき、沈黙が漂っている。でもよく耳を澄ませていると、そこには間違いなく何者かの気配がある。
『スパイダーウィックの謎』の物語は、ある一家が古い屋敷に引っ越してくる場面から始まる。
主人公である少年はジャレッド。双子の弟サイモンがいる。母親ヘレンに強い猜疑心と反抗心を抱いている。なぜ母は父と別れてしまったのか。どうしてこんな見知らぬ場所に引っ越してこなければならないのか。
少年は突きつけられている“今”を受け入れられなかった。
屋敷の生活に馴染みかけた頃、物置に何かが潜んでいるのに気付く。少年ジャレッドは冒険心と好奇心を輝かせて、その何かに目を凝らそうとする。
屋敷には秘密が隠されていた。
それは祖父が描き、隠した謎の書物『妖精観察図鑑』だった。この『妖精観察図鑑』が悪しきオーガーたちの手に渡ると、世界が終ってしまう。
ジャレッドとサイモン兄弟は、『妖精観察図館』を守るために戦いを決意する。
美しい自然の光景やおばあちゃんの昔語りなどは、空想の世界の原点であり、イメージの補強に最適である。
空想の世界は、いつも無口で社会に溶け込めない少年の心の中にある。いや、そういったはぐれものの少年だけが、社会の狭間にある何かと結びつき、空想世界の創作者になれるのだ。
少年が空想世界を作り出すのは現実逃避のため。あるいは現実世界を再構築し、社会性を取り戻すためだ。
だから少年が空想世界に立ち入る切っ掛けは、いつも愛を失った時だ。ジャレッド少年は空想世界を飛びぬけて、愛する者を失った事実を受け入れていく。
子供と大人は物事を同じように捉えているわけではない。子供には子供独自の思考とイメージで世界というものを捉えている。むしろ大人たちがなぜ考えもなしに社会を絶対のものとして共有できるのか不思議でならない。
『スパイダーウィックの謎』は「ごっこ遊び」の映画だ。
あの影には魔物が潜んでいる。あの屋敷には幽霊が支配している。魔物や幽霊は少年の空想の中で、無限の冒険世界の舞台を提供する。古い屋敷は、そうした空想世界を生み出すのに格好の場所だ。
「あのサークルの中は安全地帯だ」
「怪物の弱点はトマトソースなんだ」
大人にはわからない。子供たちだけでルールを作り、子供たちの間で育まれていく世界。空想世界の原理は少しずつ現実世界へと接近し、結びつき、最後には1つに世界として共有されていく。
そうなると大抵の場合、空想遊びはおしまいだ。空想世界はいつの間にか消えていて、思い出になっている。『スパイダーウィックの謎』は思い出となって消えかけた子供の感情を呼び起こしてくれる。あの時、子供だった私たちがどのように考えたか。暗がりに魔物の姿を見つけ、特別のルールを作り、最後には恐るべき呪いに対し英雄のごとく立ち向かった。
なにもかも、オママゴトのように作り出した仮定の世界に過ぎない。だが『スパイダーウィックの謎』に接した時、ふと思いはあの時の子供の頃に戻っている自分に気付かされる。
とにかく楽しい映画だ。
大人は子供時代の感性を呼び起こすだろうし、子供たちは自分たちの空想遊びを補強するだろう。
登場する怪物たちは決して恐ろしくない。怪物オーガーすら、まるまるしていてユーモラスだ。
子供たちは映画が終った後でも、現実世界に映画の続きを見るだろう。
「あの廃墟にはブラウニーが住んでいるんだ」と。
監督:マーク・ウォーターズ
原作:ホリー・ブラック トニー・ディテルリッジ
音楽:ジェームズ・ホーナー
脚本:キャリー・カークパトリック デヴィッド・バレンバウム ジョン・セイルズ
出演:フレディ・ハイモア サラ・ボルジャー
〇 メアリー=ルイーズ・パーカー ニック・ノルティ
〇 ジョーン・プロウライト デヴィッド・ストラザーン
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