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■2016/05/25 (Wed)
創作小説■
第13章 王の末裔
前回を読む
2
その翌日。城より南へ9リーグ。森林地帯を背景に、戦が始まっていた。オークとソフィー率いる軍団が、ダラス陣営と戦っていた。
オーク達も奇襲をかけるつもりでいたが、ダラス陣営は襲撃者に対して準備を整えて待ち受けていた。ティーノ陣営を脱出した兵士が、前日に警告を送ったのだ。
ダラス軍は、弓矢と騎馬の攻撃で、オーク軍を圧倒した。奇襲が失敗した今、オーク軍は劣勢どころか壊滅寸前だった。
オーク
「退け! 退くんだ! 退却!」
敵の猛烈な攻撃が続いた。オークはやむなく撤退指示を出す。
仲間達が戦いを諦めて逃げ始める。ダラス軍の騎士が追跡した。
オークは仲間達を逃がすために、戦線に踏みとどまった。
敵の騎兵が迫った。槍の攻撃がオークを狙う。オークは持っている剣で抵抗した。刃は弾いたが、勢いに負けた。オークは馬から転げ落ちる。
敵がさらに迫った。司令官を倒そうと、オークに殺到する。まだ倒れたままのオークに、敵の刃が迫った。
ソフィー
「オーク様!」
ソフィーが駆けつけようとしたが、遠すぎた。
危機一髪。
そこに、アステリクスが飛び込んだ。アステリクスは馬ごと敵に体当たりを喰らわせた。突然の攻撃に敵が落馬する。そこを、オークがとどめを刺した。
アステリクス
「急いでください」
オークは頷いた。
オークは馬に乗り込むと、周囲を見回した。仲間達の多くがすでに撤退した後だった。それを確かめると、オーク自身も森の中へ入った。
森に入ると、走る仲間達と、それを追跡するダラス騎兵がいるのに気付いた。オークはダラス騎兵を背後から攻撃し、1人1人蹴散らしながら森の奥へと進む。
しかし、行く手を恐るべきものが遮った。悪魔だ。クロースの神官たちに伴われて、悪魔がこちらを目指して進んでいた。
背後からダラスの騎兵が次々にやってくる。前方には悪魔が立ち塞がっている。
ソフィー
「オーク様、戦ってください!」
オークがまごついている横に、ソフィーがやって来る
オーク
「ソフィー?」
ソフィー
「戦う以外に、道はありません!」
ソフィーが悪魔に立ち向かっていった。
オークは了解して、剣を抜いた。悪魔へ挑戦する。
クロースの神官達が光る杖の向きを変えた。悪魔が解き放たれる。向かう兵士達は、丸太のような太い腕をぶつけられ、薙ぎ払われた。
オークは悪魔の最初の一撃をかわし、懐にとびこんだ。その脇腹に、刃の打撃を与える。
悪魔は痛みに唸り声を上げた。だがそこに刃の傷はなかった。聖剣以外の攻撃は、無に等しい。
だが悪魔は攻撃を受けて怒り狂った。オークを標的に定めて、追いすがる。
ソフィーが横から飛び込んだ。杖の先に光を宿らせる。悪魔は目を眩ませて、その場に踏みとどまった。その間に、オークとソフィーは悪魔から離れた。
周りを見ると、ダラス騎士団が完全にケルトの軍団を取り囲んでいた。あちこちで戦いが再開されていた。
ソフィー
「オーク様、あの杖を!」
ソフィーが光る杖を持っている神官達を示した。
オークは了解して、馬の腹を蹴った。近くにいた兵士達も、神官に狙いを定める。
突然の襲撃に、神官達がまごついた。オークは神官たちが持っている杖を、剣で叩き折った。
その様子を、悪魔が見ていた。自分を縛るものがなくなったのを察すると、悪魔の反逆が始まった。悪魔はクロースの神官たちに飛びつくと、次々と襲いかかった。
まだ杖を持っていた神官が、悪魔に光を向ける。だがその光は、たった1つではいかにも弱かった。悪魔は光の前でたじろぐが、火の玉を飛ばし、神官を殺した。
クロースの神官達が全滅し、悪魔が自由を得た。
すると、オークに新たな策がひらめいた。
オーク
「進め! 私に続け! 敵陣に突っ込むぞ!」
オークは号令を出しつつ、悪魔の目の前に飛び出した。
思惑通り、悪魔はオークに狙いを定めた。オークは追いつかれないように馬を走らせた。
悪魔を伴って走るオークに、ダラス騎士団は困惑した。悪魔はオークを追いかけながら、その途上で塞がる兵士を次々と掴み、殺した。
優位に立っていたはずのダラス陣営は、突っ込んでくる悪魔に足並みを乱して、号令をかけるのも忘れて四散し始めた。
形勢逆転。オーク達の軍団は勢いを取り戻してダラス陣営を切り崩し始めた。悪魔は修羅に飛び込んでいくと、敵味方構わず襲いかかった。悪魔の襲撃に、ダラス陣営はばらばらに分断され、一気に壊走寸前に陥った。
ダラス
「逃げろ! 逃げろ!」
ダラス兵団が、蜘蛛の子を散らすように戦場から逃げ出していく。
その中に、オークは聖剣ダーンウィンを持って逃げようとする騎士を見付けた。
オーク
「あれだ!」
オークは馬の腹を蹴った。騎士を追跡する。
騎士は熟練の乗り手だった。森の中を速度を緩めず疾走する。オークも手練れであった。距離は次第に縮まっていく。
いよいよ追いつく――とその時、騎士はダーンウィンを放り投げた。
ダーンウィンはオークの頭上を飛び越えて、別の騎士の手に渡った。
オークは馬首を変えて、ダーンウィンを預かった騎士を追いかけた。
が、さっきの騎士が剣を抜いてオークに斬りかかってくる。
背後から炎の矢が飛びついた。炎が騎士の背中を貫く。振り向くと、ソフィーが馬に乗って駆けてくるところだった。
オークは今度こそ方向を変えて、ダーンウィンを持った騎士に接近した。
森が次第に深くなっていく。オークは木をかわしながら、騎士に近付く。
だが騎士はオークが近付いたところでダーンウィンを投げた。
歩兵がダーンウィンを受け取る。が、柄を握ってしまった。ダーンウィンは相応しからぬ持ち主を炎で焼き払った。
持ち主を失ったダーウィンが、草むらに放り出される。
オークも騎士も、慌てて馬を止めて方向転換した。
そこに、別の騎士が現れた。騎士は素晴らしい馬術で鞍の上で体を捻り、草むらに落ちたダーンウィンを拾い上げた。
オークは当然、この騎士を追いかけた。敵兵もオークを留めようと走る。ふと辺りを見回すと、オークは敵に取り囲まれていた。
だがオークは怯まなかった。むしろ馬の速度を早める。ダーンウィンを持った騎士に、馬ごとぶつかった。
2頭の馬がもつれ合いながら倒れる。巨体が吹っ飛び、地面に激突した。草むらが潰され、土砂が巻き上がる。乗り手も遠くまで吹っ飛ばされる。
オークは一瞬気を失うが、すぐに目を覚ました。我が手を見ると、ダーンウィンがあった。ついにダーンウィンを取り戻したのだ。
しかし辺りを巡らすと、味方の姿はなかった。敵の騎兵が迫ってくる。
オークは、腰に手を伸ばした。だが、剣はなかった。
敵兵
「あいつは武器を持っていないぞ! ダーンウィンを奪い返せ!」
敵の騎兵が一気に迫る。
逃げ場はない。武器もない。あるのは手の中のダーンウィンだけ。
オークはダーンウィンに目を落とした。なぜかオークは混乱や動揺を感じていなかった。他に選択肢がないという状況が、その行動へと導かせていた。
オークはダーンウィンの柄を握った。
敵兵
「……馬鹿な」
火は放たれなかった。ダーンウィンはオークを主と認めた。
なぜかわからない。しかし考えている暇はなかった。オークはダーンウィンを抜刀した。
騎兵が肉薄した。槍の穂先がオークを狙う。
オークは槍を弾いた。さらに騎馬にダーンウィンの一撃を食らわせる。刃が火を放ち、騎士を焼き払った。
敵に動揺が広がった。オークの仲間達が森の向こうから駆けつけてくる。敵兵はダーンウィンを諦めて、撤退した。
ソフィー
「オーク様! ご無事でしたか。――そ、その剣は……。ううん。今は乗ってください。急いで!」
ソフィーはオークの手の中にある剣に驚きつつも、自身の馬に乗せて、森を去った。
森を出ると、ダラスの陣営が悪魔と戦っていた。大きな勢力だったが、無敵の悪魔を相手にして壊滅寸前に陥っていた。もはや、誰もオーク達を気にかけなかった。
オークはその様子を見届けて、仲間達を引き連れその場を去った。
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