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■2015/09/27 (Sun)
第4章 王の宝

前回を読む
 日が暮れる頃、港町に到着した。オークたちはその足で、直接、守備隊の詰め所へと向かった。
 守備隊隊長の男にセシルから授かった書面を差し出す。

トリン
「命を粗末にしたい馬鹿をまた送り込みやがったか。オークは……どいつだ」
オーク
「私です」
トリン
「お前は何でここにいる?」
オーク
「王子の命令です」
トリン
「なぜ王子の命令に従った」
オーク
「この国の最も尊き方の命令で、その命令に異議がなかったからです」
トリン
「ほう。結構な心がけだ。王子の命令なんざ放っといて、褒美さえもらってさっさと消えれば良かったのに。仕事がしたいのなら、その辺に転がっているだろ。なんでわざわざ王子の命令なんぞ真に受けて従った」
オーク
「それは……賢明な考えだとは思いません」
トリン
「王子の命令が賢明だと盲信するほうが危険だとは思うがな。お前は国とは何だと思う?」
オーク
「民が暮らす場所です」
トリン
「暮らす場所なら、それこそ勝手に見付ければいい。国も王もいらないだろ。政治は食うか食われるかだ。明日にも王は代わって、国境線が変わっているかも知れない。国に片想いしたって、応えてくれるわけでもなし。だったら、好き勝手にやればいいだろう? どうしてあんたはそうしない」
オーク
「……ならばあなたは、どうしてここで働いているのです?」
トリン
「それはな……」
隊員
「隊長! 第3倉庫で抗争が始まった!」
トリン
「よし行くぞ。お前たちは死なないように後ろで見ていろ」

 トリンたちが部下たちを引き連れ、詰め所を飛び出していく。オークがその後に続いた。
 トリンたちの部隊は港の倉庫街へと入っていく。路地を通っていくと、地元の荒くれたちが乱闘を始めているのが見えた。罵声が飛び交い、拳で殴り合っている。すでに喧嘩という様相ではなくなり、大人数で殴り合い、殺し合う、規模の大きな乱闘に展開していた。

トリン
「よし、野郎ども! 暴れろ! 祭りだ!」

 トリンたちが乱闘に加わる。トリンたちは荒くれたちを次々と殴り倒して縄で縛り上げてしまう。トリンたち守備隊の出現で、荒くれたちの喧嘩もいくらか削がれた感じになったが、その程度で大人しくなる連中ではなかった。抗争していた2つの勢力が、今度は共同してトリンたち守備隊に挑みかかろうとする。
 港の荒くれたちは強力で激しいものだったけど、トリンたちは慌てず、粛々と仕事を進めるように、荒くれたちを1人1人殴り倒しては、縄で縛り上げていった。
 間もなく抗争は下火になっていく。荒くれたちは劣勢だとわかると、ただちに戦闘から逃げ出していく。
 ようやく抗争が鎮火した。後に混乱だけが残った。ぐちゃぐちゃになった積み荷と、積み荷の中にあったはずの食糧や飲み物があちこちにぶちまけられている。その破壊の様相から、抗争の規模が大きなものだとわかった。

トリン
「この仕事は寝る暇もないぞ。ここの連中は馬鹿ばかりだからな。明日には死ぬかもしれねぇぞ」
オーク
「それでもあなたがこの仕事を続ける理由は何ですか」
トリン
「俺達の存在意義を守るために必要だからさ」

次回を読む

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