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■2015/09/29 (Tue)
創作小説■
第4章 王の宝
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6
その後、オークは港の守備隊として働き続けた。毎日のように港のどこかで繰り広げられる抗争を鎮圧、外国から持ち込まれる禁制品の没収、違法な仕事や商品のやりとりの規制。事件は時と場所を選ばず。オークは休む間もなく駆りだされ、危険に放り込まれ、戦った。王の役人であるが、港の人達はその仕事を尊重しておらず、機会を狙っては反撃を目論んできた。街の中であるとはいえ、戦場と変わらないくらい危険な任務だった。そんな仕事も、やがて1週間目に入ろうとしていた。
オークは守備隊本部の塔へと案内された。そこから、港全体の様子が俯瞰できる。
夜が深く、辺りは暗く影を潜めている。静かな夜だった。法があってないような混沌としたこの街では、こんな静けさが不思議に思えるくらいだった。
トリンは、ランタンをかざしながら、海を指差した。
トリン
「見えるか。あいつを監視しろ」
トリンが差したはるか向こう、海の只中に、「点」が1つ置かれているのが見えた。
オーク
「あれは何ですか?」
トリン
「ブリテン島の軍艦さ。あの野郎、こっちの海域ぎりぎりのところにああやって軍艦を置いて、挑発していやがるのさ。ここ最近、あちらもやけに慌ただしく、警戒を強めていやがる」
オーク
「なぜですか」
トリン
「知らん。とにかく、これが王子からの密命だ。あれを厳重に警戒しろ……ってな」
オーク
「王子が……」
トリン
「何だかわからない命令だが、ちょっとした噂は聞いている。お宝があるって話だ。もうずっと前から、王はブリテン島に密偵を放ち、ある宝を探しているって話だ。それが、最近ついに見付かったそうだ」
オーク
「宝? それはどんな品ですか」
トリン
「さあ、そこまでは知らんよ。噂だからね。しかし王家の連中は長年そのお宝に執心だったようだ。港の警備にも力を入れているようだし、それにあんたも送り込んできた。きっともの凄いお宝に違いないぜ」
オーク
「…………」
トリン
「なあ、お宝が運ばれてきたら、いくらか貰ってしまわないか。なぁに、どうせ箱の中身が1つ2つなくなっていたところで、気付かれはしないよ」
オーク
「……それはなりません」
トリン
「そう言うと思ったぜ。つまらん奴だな」
オークは無言で海の風景を眺めた。変化は何もない。静かに凪いだ海の上に、点はじっと留まっていた。
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