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■2015/09/23 (Wed)
第4章 王の宝

前回を読む
 一度中庭に出る。衛兵が中庭を厳重に警備していた。セシルが現れると、直立不動で敬礼する。セシルとオークは、その向こうの館へと入っていく。
 幼い少年がおもちゃの剣を持って飛び出してきた。

カイン
「父様!」
セシル
「よし、戻ったぞ」

 少年に続いて、美しい貴婦人が姿を現す。貴婦人はセシルを見て顔を明るくするが、オークに気付くとはっとして深く頭を下げる。オークも貴婦人に頭を下げる。

セシル
「私の妻と子供だ。楽にしろ。ローザよ、私はもう少し仕事があるからな」

 ローザはセシルに頭を下げて、引き下がった。
 セシルは自身の書斎へと案内した。
 書斎も質素な印象だった。絵画も調度品もない。机が1つ置かれているだけだった。
 セシルが窓から城の様子を眺める。

セシル
「これが今の我が城の現状だ。どう思う」
オーク
「私には何も……」
セシル
「率直に言え」
オーク
「失望しております」
セシル
「ハハッ。正直な男だ。オークよ、国とはなんだと思う。この国には誰も国という意識がない。上は王を王と思う意識はなく、下では民は民だという意識がない。貴族連中は政治をゲームだと思っているし、民にとって王は、理不尽に税を取り立てる厄介な連中でしかない。自由であればこそいいと考えている。だが、自由な世界に規律はない。国や王は、1つの文化や価値意識のもとに民を統率し、守っていくものだ。誰もどこかの民という意識はない。それを統率しなければならない国家とは厄介な仕事だ。貴様はどう思う?」
オーク
「私は……名を失う以前はとある一族の長でした。そこでの務めは、民を守ることでした」
セシル
「私は王子だ。いつか王子であった、と言うようになっているかも知れない。だが今の私はこの国にある。しかし国とは何だ。領土か。民か。財か。……私にはわからんよ」
オーク
「…………」
セシル
「……オーク。貴様の名前はオークで間違いないか」
オーク
「はい」

 セシルはしばらく沈黙して、何か考えるふうだった。
 それから、紙を1枚取り出し、何かを書き始める。

セシル
「ならばオークよ。私に仕えよ。働きがよければ、正式に私の騎士団に加えよう」
オーク
「なぜですか」
セシル
「疑問で返せとは聞いておらん。応か否か」
オーク
「王子の命令ならば、従います」
セシル
「よし。ならば今すぐに東へ行け。そこに港がある。その守備隊として1週間守り通してみよ」

 セシルは書いたものに印を押すと、オークに差し出した。

オーク
「御意」

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