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■2015/09/25 (Fri)
第4章 王の宝

前回を読む
 オークは城を後にした。城の前では、兵士たちが慌ただしく仕事をしている。馬の世話をしたり、鎧の手入れをしたりで忙しそうな様子だ。
 オークはそんな様子を珍しそうに見ながら、城の前を通り過ぎていこうとする。
 すると、オークを呼び止める声があった。

ゼイン
「おーい、待て待て! 1人で行くつもりか」

 オークが立ち止まって振り返る。大柄な鎧の男と、優男が駆けてくる。
 鎧の男は、古参兵らしく白い髭を垂らしていた。優男はずっと若く、肌の色の黒い、精悍な青年だった。

ゼイン
「わしはゼインだ」
ルテニー
「俺はルテニー」
オーク
「オークです。あなた達は?」
ゼイン
「王子の命令でな。お前さんとしばし旅を共にすることになった」
ルテニー
「見張り役だ。お前が間者ではない証拠もないからな」
ゼイン
「それから案内役だな。港、と言われても田舎から出てきたばかりで場所もわからんだろう。従いてこい。わしが連れて行ってやろう」

 オークたちは兵舎から馬を3頭預かると、王城を後にした。
 寄り道もせずに、王都を出て行く。
 城を出ると、草原が目の前に広がる。向こうの方に、森の影が黒く見えた。城壁は城下町だけではなく、その外にも長く続いていた。海外沿いの絶壁に沿って、堅牢な壁が延々続いている。要所要所に塔が建てられていて、兵士たちが警備しているのが見えた。
 草原に穏やかな風が吹いている。オークは馬を進めながら、壁を眺める。

オーク
「古い時代のものですね」
ゼイン
「ケール・イズ時代のものじゃな。ケール・イズ……話は聞いたことはあるだろ」
オーク
「ええ。しかしお伽話としか」
ゼイン
「カカカカカ……。ケール・イズの物語はお伽話ではない。実際の王の物語だ。森に入れば、いくらでも証拠は見付かる。かつて栄華を誇り、滅んでいった偉大なる一族の物語だ」
オーク
「へえ……」
ルテニー
「そこまでにしとけ。オーク、このオッサンに昔の話をさせるな。2時間は無駄になるぞ」
ゼイン
「ルテニーよ、昔話を軽んじてはならんぞ。昔話には人々が長く伝え、守ってきた心が眠っておる。土地が物語を生み、人と土地を結びつけるのが昔話だ。語り継いで守らねばならんものだぞ」
ルテニー
「ガキに聞かせる話に、そんな大層なものあるわけねぇだろ」
ゼイン
「若いもんはわかっておらぬのぉ。お前さんはどうだ、オーク」
オーク
「私も子供に聞かせる話なら、いくつか知っています」
ゼイン
「そうかそうか。それは良い。子供もお前さんに聞いた物語を、その子供に託すであろう。そうやってその土地が持っている心は守られていくんじゃ」
ルテニー
「また始まりやがった……」

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