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■2015/11/28 (Sat)
創作小説■
第6章 キール・ブリシュトの悪魔
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11
キール・ブリシュトは異様なほど広かった。どの広間も野放図に広く、通路は進んでも進んでもその向こうに果てなく続いた。しかも要所要所にネフィリムの拠点があり、しばしば大群で襲いかかってきた。まるで邪悪なる無間回廊に迷い込んだような感覚だった。戦士達はいずれも英傑であったが、次第に消耗しはじめた。
ゼイン
「ええい、忌々しい! ここはネフィリムが生まれた場所か!」
バン・シー
「騒ぐな。士気を乱しているうちは、悪魔には勝てんぞ」
バン・シーの言い草は冷酷に感じられるほどだった。
セシル
「バン・シーよ。私からも聞きたい。ネフィリムはここで生まれたのか」
バン・シー
「違う。ネフィリムはそれ以前からいる。正確ではないが、5000年前か6000年前だ。ノアの大洪水が話に絡んでくる。その時代の1人の魔術師によって生み出されたのがネフィリムだ」
セシル
「いったい何のために」
バン・シー
「もちろん使役するためだ。人間は常に対立する局面を持っている。光と闇。善と悪。聖と邪。大抵はふたつが混じり合った姿で存在し、そして両立するものだが、ある人にとっては負の部分は厄介でしかない。人間の負の部分は、常に人を悪徳と愚行へと走らせる。だから魔術師は考えた。人間から負の部分の一切を取り除き、実体を与え、これを低級な人間として従わせることができたら……と。しかし魔術は不完全なばかりか、そもそも人間の悪の部分だけで作られたネフィリムが人間に従うはずはなかった」
セシル
「そんなものを、どうやって……」
バン・シー
「もちろん容易ではない。はっきりとわからぬが、悪魔を作り出した技と同じだと伝え聞く」
セシル
「そなたは古い時代から悪魔と戦っている……。悪魔を完全に封じる術は、そなたも知らんのか」
バン・シー
「わかっていることは少ない。悪魔の削除に必要なのは、『聖剣』『封印』『真理』の3つだということだけだ。悪魔を作り出すのも、封じ、存在を消す方法も同じというわけだ」
やがて長い長い回廊の向こうに終わりが見えてきた。
セシル
「詳しく聞きたいものだな。なぜ貴様が悪魔の作り方まで知っているのか」
セシルの殺気が、はっきりとバン・シーへと向けられる。
バン・シーが立ち止まり、セシルを振り向いた。両者の眼光が鋭く輝き、一同に緊張が走った。
しかし、バン・シーは笑った。
バン・シー
「ククク……。ますます父親に似てきたようだな。だがお前は、まだ父親から学ばねばならんようだ。お前の祖父達がしてきたようにな。――剣は収めるな。いよいよだぞ」
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